ご訪問いただきありがとうございます。当社ウェブサイトでは快適な閲覧のためにCookieを利用しております。プライバシーポリシーに基づいたCookieの取得と利用に同意をお願いいたします。

2016.3.18

From VIS

意図的なものと偶発的なもの両方あって面白い。オフィスをデザインするということ

今回のオフィスで2回目のオフィス移転を迎えたスマートニュース株式会社。ヴィスとの出会いのきっかけや、プロジェクト期間中の想い出話、鈴木氏の考えるオフィスのあり方や想いを伺いました。

今回の登場人物1:スマートニュース株式会社 代表取締役会長 共同CEO 鈴木 健氏

スマートニュースの共同創設者の一人。東京大学特任研究員。1998年慶応義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房)など。情報処理推進機構において、伝播投資貨幣PICSYが未踏ソフトウェア創造事業に採択、天才プログラマーに認定されている。

鈴木会長ブログ:仕事する身体−−スマートニュースのオフィス移転物語
こちらをご覧いただいてからお読みいただくとより一層お楽しみ頂けます!

今回の登場人物2:アールイー株式会社  代表取締役 ボタニカルデザイナー 江原 理恵氏

分野も違う複数のプロジェクトにオーナーシップを持って関わりながら、ハード開発からオフィス空間まで手掛けるパラレルアントレプレナー。
スマートニュース株式会社には、ボタニカルデザイナーとしてデザインディレクションとして参加。
※アールイー株式会社「個々の持つ資源(Resource)を最大限に活用した、新しいライフスタイルの 創造(Recreate)を通じて、社会に貢献する」を創業理念とし、植物を直接的にだけではなく、様々な形に変換させて、つながりのデザインに取り組んでいる。アールイー株式会社HPはこちら

今回でヴィスとして2回目のオフィス移転を担当させていただいたとのことですが、そもそもの出会いはどのような形だったのでしょうか。

鈴木会長(以下敬称略):出会いのきっかけは江原さんの紹介ですね。オフィスを移転するにあたり、パートナーを選ぶ際に江原さんからこんな会社がありますよとヴィスさんをご紹介いただきました。当初、2社ほどコンペをさせていただき、見事ヴィスさんに決まりました。ところでヴィスさんと江原さんとの関係は?

T・K(ヴィス常務取締役):ヴィスの社外取締役でお世話になっているヒューマネクストの浜本社長が主催する勉強会で、ボタニカルデザイナーである江原さんをご紹介いただきました。我々も移転祝いにお花を贈ることが多いので、移転花のコーディネートでお仕事できるのでは?ということでご紹介いただきました。そんな江原さんより、ゴクロさん(現在のスマートニュース株式会社)が移転するとのことでご紹介いただいたのがきっかけです。ゴクロさんはその当時からSmartNewsを展開しており、提案にも気合を入れて臨んだのを覚えています。

江原社長(以下敬称略):あの時のプレゼンいまだに覚えています。レイアウトの落とし込みと、フィードバックが速かった印象がとてもあって。そして、プレゼンに愛情があったのを感じました。それがヴィスさんがコンペで選ばれた理由だと思う。コンセプトがダジャレで、それもとても印象に残っています。(笑)

ヴィスと実際仕事をしてみてプロジェクトの進行や対応はいかがでした?

鈴木:無理な依頼をしても、常にポジティブな姿勢で実現に向けた対応をしてくださったのが心の支えになっていました。

江原:基本的に何かを提案すると鈴木さんから新しいアイデアがでてくるし、それに対して私が違うことを思いついたりして拡散していくタイプだったので、やりたいことを遠慮なく伝えることができて、ぎりぎりまで対応してくれたことが本当に助かりましたね。

T・K:僕自身そうやって成長してきたタイプです。また、鈴木さんのオフィスや社員への熱い思いを感じることができたので、その想いを形にしたいと思えました。ビジネスライクにはしたくなくて、いいものを作ろうという気持ちで取り組みました。

鈴木:ヴィスさんの対応は本当にすごい。自分たちのやりやすいようにしようとか楽しようとは思っていない。良質なものを作っていこうという気持ちがあり、ありとあらゆるところで最善を尽くしてくれたと思いますね。いろいろな方と仕事をしてきましたが、オフィス設計に限らずIT業界でも通用するレベルで、プロジェクト管理能力がきわめて高かったと感じます。


実際お引越ししてからの社員のモチベーションはいかがでした?

鈴木:目に見えてテンションが上がっているのがわかりました。当初最初のオフィスは僕がデザインしたのですが、雑居ビルで、快適性がなく人口密度も高くそっけない場所でした。狭いところで肩を付き合わせながら仕事をしている状況で。それが、こんな素晴らしいオフィスで仕事ができるようになって、みんなのテンションが上がってましたね。何しろ僕のテンションが一番高かったのは秘密ですけどね。(笑)

T・K:側転してましたよね!!引き渡し日に!

鈴木:江原さんの提案で、1回目の移転のときにオフィスづくりのプロセスにちょっとだけだけど社員も関わったんです。一緒に家具を選びにお店にいったりね。それがオフィスに愛着が湧く理由になったんじゃないかなと思いますね。2回目の移転では、オフィスとはこうあるべきだというようなトップダウンでのビジョンも描きつつ、社内でのブレスト・ワークショップや江原さんに日々オフィスで生活することになる社員一人一人にヒアリングしてもらいにいったり、ボトムアップな要望をいれてすり合わせた。しかもそのプロセスが現在進行形でプラン作成と同時に進んで行っていたから、ヴィスさんにとっては過酷な案件であっただろうと思います。(笑)

今回の2回目の移転、実はゾーニングにはかなり苦戦したとのことですが・・・

T・K:おもしろい絵があって、思い出の1枚なんですが。(額に入れられたトレーシングペーパーに書かれた一枚のスケッチがでてくる)2、3回レイアウトの提案をした後、レイアウトが少し息苦しいという意見をいただいていました。当初ご要望の席数が多く、隙間なく席をつめたレイアウトの中でしたが、さらに靴脱ぎスペースを拡大したいという気持ちが鈴木さんにあり、どうしたらいいかを悩んでいたところ、鈴木さんに神が降りてきて出来上がったゾーニングなんです。

鈴木:そうですね。一応説明しておくと、思い描いた構想を実現したいけれど制約条件があるわけですよ。なるべく多くを実現するためにいろいろ考えて議論していく中で、最後にこれだというものを思いつきました。※右図スケッチ鈴木会長ブログより引用

T・K:ゾーニングは大きくS字に分かれていて、Sラインの上部が執務で、下部がフリースペースで動きのある空間にしたいという。S字にすることによってフリースペースと集中できるスペースが混在しているイメージですね。

江原:普通の人はやっぱり、こういう風に曲線でゾーニングしようとは考えないですよね。鈴木さんはどうもこのS字の境界線を行ったり来たりとか、交流が生まれるようにしたいと思っていたんですよね。

鈴木:そうですね。固定席とフリースペースを1つにつなげたかったんですよ。最終的に席を150席置きたいけど席をゾーニングしたくないとか、靴ぬぎスペースが必要であるとか、いろいろな要望があり問題が複雑になって悩みました。エリアとエリアがなめらかにつながっていて、その時に応じて役割が拡張したり、縮小したり、そういうことがどうしたら実現可能になるかを考えていたら、あるときアイデアが降りてきたんですよね。

役割分担含め、社員の要望もうまく取り入れられ全体のバランスがとれたプロジェクト

T・K:通常は全体のコンセプトはお客様が考えられて、それをヒアリングした我々が形にしていくのが一般的ですが、今回も前回も含めてよりスマートニュース側の立ち位置で、スマートニュースのことを考えたデザインをする江原さんがいらっしゃったことで、内容ごとに鈴木さんと江原さんにお伺いすることができ、非常に役割分担が明確でした。

それも鈴木さんがプロジェクトのメンバーの役割を最初から明確にしてくれていたおかげだと感じています。社員の意見に対しても、通常アンケートをとると突拍子もないことが自由にでてきますが、だいたいの経営者の方は、自分のイメージしているものを優先して残していきます。ただ鈴木さんの場合は、どの意見も真剣に取り入れようとしていました。「足湯入れたいなー」とか「蛇口からレッドブルが出てほしい」とかね。
みんなの意見をいかにしたら実現できるかを本当に素直にアウトプットしていただいて、いわば僕も試されていると思いながら、足湯だったらこうやったらできますとか、レッドブルはちょっと難しいですね・・・。でも香川県にうどんダシが出てくる蛇口があるから、その仕組みを一回調べますとかね。そうゆう事をしながら進めていって楽しかったです。

鈴木:真剣に検討しましたね。(笑) 滝を作れないかとかね。(笑)

鈴木会長にとってオフィスとは?環境が人に与える影響について

鈴木:人間単体で仕事をしている訳ではなく、紙やパソコンであったり道具を使いながら仕事をしている。その道具と体がインタラクション(相互作用)することによって、いろいろな仕事ができる。たとえばテーブルの高さだとか肌触りだとか、照明だとか。そういうものも含めて、一緒に仕事のパフォーマンスの結果が生まれていくのです。

さらにオフィスになると、1個の机が存在するだけではなく、社員同士のインタラクションがあるので、どういうタイミングやきっかけで社員同士がすれ違って会話するのかという、コミュニケーションのデザインをも誘発していくことになりますよね。それは結果的に意図的なものと偶発的なものの両方があったのですが。
そういう環境全体をデザインすることによって、社員の仕事のパフォーマンスが上がったり、1人ひとりのパフォーマンスだけではなく集合的なパフォーマンスもすごく上がると思っていて、そこに関してはメンバーと一生懸命考えて議論を重ねました。その結果、かなり実現できたと思っています。
意識的にこのプロセスをチームメンバーとできたことは本当によかったなと。

ただ、偶発的な産物もあって"そういうことも起きるんだ"っていう結構面白い結果になったのですが、たとえばカフェを作ったんですけど、時間になるとカフェに待ち行列ができるんですね。こういうところは意図していたわけではないんですが、結果としてコーヒー待ちの人たちが行列を作り、そこで普段話さない人たちのコミュニケーションが起きたりとか。

あとは、フリースタイルゾーン。もともと作業スペースとしてみんなが自由にリラックスしながら仕事ができる場所として作ったんですが、結果として全社ミーティングをする場所としても使われているんです。みんな地べたに座りながら話すので、普段より距離が近い感じがしていい。今日も昨日も使っていたよね。そういう使われ方をするようになりました。
意図しない使われ方も生まれてきてすごく面白いなと思いますよね。

T・K:僕たちもロジカルに考えて、それぞれの場所の提案をしますが、結局いろいろな会社から同じような意見をいただきます。こういう副産物みたいなところみたいなものが本質にあるのかなと思っていて、その積み重ねが、またいいオフィスにつながるなと思っています。

T・K:江原さんがオフィスを創るにあたって大事にしているポイントはどこですか?

江原:基本的に最初のシェアオフィス時代からそうですが、働いている人を普段から観察しています。
経営層の方がマネジメントとして実現していきたい部分とか、現場の方たちも。現場でいうと特にエンジニアの方って、普通の会社の中でのパフォーマンスの発揮の仕方やアウトプットが、環境の作り方で変わってくる。普通と違うということを少しずつ経験の中から理解していたんですよね。

まずはなるべく近い感覚を持つということを自分の中で重視していて、ヒアリングする時も、これは仕事のパフォーマンスに影響しそうだと思う時には、実現可能かというところをあまり考えず重視したり、逆にお客様をお迎えする部分は、人が気を遣わなくても空間全体でおもてなしの気持ちが表現できさえれば、そこまで重視しなくてもいい感じになるんじゃないかとか。

デザイナーズオフィスを検討されているスタートアップの企業に対してアドバイスをいただけますか?

鈴木:移転のスケジュールは気をつけよう。笑

T・K:それは絶対お願いしたいですね。笑 やっぱり、いいものができる出来ないっていうのはお金も大事ですが、スケジュールが非常に大事ですからね。

鈴木:本当に反省点としては、「スケジュールを考えたうえでやりましょう」というところと、「できる限り早めに物件を見つけて、しっかりコンセプトを考え抜く時間を取る」ということですね。
“移転”というものは、思ったよりも初期におけるデザインのコンセプトを考えるところと企画というところが最も重要で、後戻りはできないので。

ほとんどのスタートアップの社長は忙しいので時間が取れないとは思うんですが、スケジュールとコンセプトを考え抜くことにしっかり時間が取れれば後は何とかなる。その時間が取れないと、後々結構つらいことになりますよ、と。
企画の最初の最初のところが特に重要で、何をやるか・やらないか、何を実現したいかっていうところをしっかりと考え抜く
やりたいことのアイデアってだいたい後から出てくるんですよね。ただ、空間は限られているので、それをできるだけ最初の方に出し尽くしてしまうっていうのが、何をとっても大事なことかなと思います。そうすると1個の場所を複数の機能として使えるっていうアイデアが生まれてくる。そうするためには、オフィスが使われているイメージをしっかり最初の時点で考えることが大事です。

2つ目は「誰のためのデザイン?」というノーマンの本にもありますが、まさにオフィスを「誰のためにデザインするのか」っていうことを決して忘れてはいけないということ。いろいろやりたくなるんですが、オフィスを使う人は誰か、日々仕事をする人のためにデザインしていくという原点を常に考えることは大事かな。PR効果とか採用効率とかお客様のためにとか複数の目的を考えると思いますが、でも最後の最後に、やっぱり、1番長い時間を過ごしていく社員とか働く人のためにこのオフィスがあるんだ、という第一原則に常に立ち戻れるようにすることは大事だと思います。

あともう1つ、3つめがあるとしたら、「大事なプロジェクトを進めるにはいいパートナーを選びましょう」ということ。われわれはヴィスさんと一緒にできて本当に幸運でした。

江原:私は1つの物を長く使っていけるような家具を選んでもらえるといいのかなと。やっぱり特にスタートアップは節約文化ですよね。それも正しいしそういう時期はあっていいと思いますが、内装に費用をかけるよりは、長く使えるものに費用を使うのも重要かなって。家具も自分の体の一部と同じなので、使っていくうちに体感できていくものかなと。

長く使えるものには理由があるし、今は中古などの取扱いも多いから、その中からでもいいものを選んでいけば、空間の質自体が変わってくると思う。もう少し"これから!"っていう方にはおすすめしたいですね。

スマートニュースとしての今後の会社の展望をお聞かせください。

鈴木:スマートニュース自体、今後目指していく方向は2つあります。1つ目は、今現在SmartNewsは、プロダクトとして非常にユーザーに愛されていますが、進化を止めずにさらに加速する勢いで成長していきたい。現状に甘んじないで、次々とイノベーションを起こしたいと思います。もう1つは、日本だけでなく、海外展開をしっかり加速していき、世界中の人たちに良質な情報を届けられるようにしていきたい。ダウンロード数としては現在は世界1600万DL、そのうち日本が1000万を超えています。日米が逆転するくらい、スマートニュースのコンセプトである「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」を実現していきたいと考えています。