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職場環境を整えるためには、良好な人間関係の構築が不可欠です。快適に働けるオフィス空間や労働条件が整備されていても、人間関係の問題を放置していると、生産性や従業員の心身の不調や離職率の上昇といった多くの面で影響が出る可能性があります。
本記事では、職場の人間関係が悪化する原因と、改善しない場合に考えられる弊害について詳しく解説します。職場環境における人間関係を改善して、従業員満足度や生産性の向上を実現するためにぜひお役立てください。
職場における人間関係の重要性とは?
職場の人間関係は、従業員の満足度や心身の健康、パフォーマンスにつながる要素です。そのため、企業は良好な人間関係を構築できる環境を作る必要があります。まずは、職場環境における人間関係の重要性について、調査データをもとに説明します。
職場の人間関係に悩んでいる人の割合
厚生労働省の「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関して、「強い不安やストレスを感じている」と回答したビジネスパーソンは82.7%に達しています。
そのうち、ストレス要因として「対人関係」を挙げた人は29.6%を占めており、多くの人が職場の人間関係に関して心理的な負担を抱えているといえます。
職場の人間関係を理由に離職する人の割合
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果」によれば、転職者が前職を辞めた理由として、「職場の人間関係が好ましくなかった」と答えた人の割合は、女性で13.0%と最も多く、男性でも2番目に多い9.1%でした。
また、エン・ジャパンが2024年に行った「本当の退職理由」調査(2024)」では、「離職時に会社に伝えなかった本当の退職理由」として、「人間関係が悪い」が46%とトップに挙がっています。
これらの調査結果より、表面化しているか否かに関わらず、実際に人間関係の悪化が離職の要因となっているケースが多いことが読み取れます。自社では問題ないと思っていても、会社側が離職者の本当の退職理由を把握しきれていない可能性もあるのです。
職場の人間関係が悪くなる原因と起こり得る弊害
職場の人間関係が悪化すると、個人の業務だけでなく組織全体に影響が及ぶ可能性が高まります。ここからは、人間関係が悪くなる以下の原因と、放置した場合に起こり得るリスクについて整理していきます。
・個人の業務負荷が高すぎる
・コミュニケーションが不足している
・世代間による価値観のギャップに対応できていない
・相手を尊重する文化・企業風土がない
・社内にコンプライアンスが浸透していない
・人材の教育体制が整っていない
社内で問題が起こっていないか確認してみましょう。
個人の業務負荷が高すぎる
業務範囲が広すぎる、あるいは業務量が多すぎる場合、従業員は忙しさから心身に大きな負担を抱えることになります。長時間労働や休日出勤が常態化すると、十分な休息が取れないまま働き続けなくてはならず、ストレスや疲労が蓄積しやすい状態が続きます。また、疲労回復ができないと、業務効率やパフォーマンスの悪化を招く上、体調不良から休職や離職へつながる可能性も高まります。
組織全体の生産性や健全な経営にも影響を及ぼしかねないため、企業は業務過多の状態を放置せず、適切な人員配置や業務配分に取り組むことが重要です。
コミュニケーションが不足している
職場におけるコミュニケーション不足は、人間関係が悪化する代表的な要因の1つです。例えば、基本のやり取りである挨拶が少ないと、人間関係を築きにくく、チームでの業務に支障が出やすくなります。また、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が不十分な場合、適切に他のメンバーに情報が伝わらず、結果として業務の遅延やチームの連携ミスを招く可能性があります。
さらに、相互理解が深まらないと、信頼関係の希薄化やチームワークの低下にもつながるでしょう。組織としての生産性を高めるためにも、日常的なコミュニケーションの質と頻度を意識的に高めることが必要です。
世代間による価値観のギャップに対応できていない
世代間の価値観のギャップに対応できていない職場では、相手を理解できず、認め合えないために人間関係が悪化しやすくなります。
「ジェネレーションギャップ」と呼ばれるように、世代によって価値観や常識、行動様式などにズレが見られます。令和時代の若者であるZ世代とそれ以前の世代では、特にプライベートの優先度やホウレンソウの方法、企業への帰属意識といった面で違いが現れやすく、意思疎通やチームワークに影響が及ぶ可能性があります。
お互いが歩み寄る姿勢がなければ、信頼関係を構築できず、結果的に若手社員の早期離職や中間層・管理職候補の不在といった問題が発生します。最終的には企業の存続リスクにつながることも考えられるため、相互理解を促すための対策も検討すべきです。
相手を尊重する文化・企業風土がない
年齢や役職に関わらず、相手の意見や立場を尊重する文化や企業風土がないと、職場の人間関係は悪化しやすくなります。
現代は、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材が、同じ職場や組織で働く時代です。お互いを認め合える組織文化がないと、職場内に派閥が生まれ、対立や衝突のリスクが上昇します。また、ミスや課題を安心して共有することができず、情報隠蔽による不祥事に発展する可能性もあるでしょう。
前述したジェネレーションギャップにも関係しますが、個人の価値観の違いに対する理解が乏しい場合、ハラスメントによるトラブルや離職率の上昇にもつながります。従業員の心理的安全性を確保し、互いの意見を尊重し合う環境づくりが重要です。
社内にコンプライアンスが浸透していない
社内にコンプライアンスが浸透していない職場では、理不尽な指示や攻撃的な言動、ハラスメントなどのトラブルが発生しやすくなります。「コンプライアンス」は、直訳すると法令遵守という意味の言葉ですが、社内規約やモラルを守ることを含む概念です。企業には、社会の一員としてコンプライアンスを守る責任があります。
コンプライアンス違反が発生する原因として、コミュニケーションの不足や、違反行動が見過ごされる、あるいは正当化されるといった点が挙げられます。また、表面的な対策ばかりで、職場環境の風土が改善されないと根本的な解決に至らず、従業員同士で信頼関係を築くことは難しいでしょう。
コンプライアンス違反が横行している企業では、企業イメージの悪化や優秀な人材の離職といったリスクが高まり、業績悪化にもつながります。組織の健全な成長のためにも、全社的にコンプライアンス意識を根付かせることが重要です。
人材の教育体制が整っていない
良好な人間関係の構築には、従業員一人ひとりのレベルに合わせた教育体制が重要です。
人材育成の制度が確立されていないと、必要な知識やスキルを習得できず、業務の停滞を招く可能性があります。若手から中堅の場合、業務の習熟度に差が生まれ、できる人とできない人の軋轢が生まれるリスクが高まります。管理職の場合、部下と上層部との板挟みになることでストレスが溜まり、関係悪化を招く可能性もあるでしょう。
結果的に、生産性の低下や離職率の上昇による人手不足、サービス品質の低下といった問題を引き起こすことも考えられます。
本来、新入社員には基本的な知識・スキルの習得、管理職にはマネジメント力向上を目的とした適切な教育・研修が必要です。
関連記事:職場の人間関係を改善させる方法を解説!企業が良好な職場環境を作るには?
まとめ
職場における良好な人間関係は、働きやすい環境づくりにとどまらず、組織全体の生産性の向上にも直結します。人間関係の悪化を招く原因として、業務負荷の偏りやコミュニケーション不足、世代間ギャップ、コンプライアンス意識の欠如、教育体制の不備などさまざまな要因があり、それぞれが絡み合っているケースも少なくありません。
課題を放置すると、離職率の上昇や企業イメージの悪化、さらには経営リスクにもつながります。人間関係の構築に向けた根本的な職場環境の改善が企業に求められています。
人間関係の改善にはは、オフィス環境も含めた職場環境も重要です。ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。