目次
フリーアドレスとは?
そもそもフリーアドレスとはどのような意味でしょうか?
フリーアドレスとは、社員が個々の自席を持たず自由に働く席を選択できるオフィススタイルです。従来のオフィスですと、決められた位置にデスクを配置し、一人一台デスクが与えられ、その与えられたデスクで働いていました。要はその「自席」という概念をなくし、空いている席や自由な場所で働くことができるのです。それがフリー(=自由な)アドレス(=所在)です。
フリーアドレスの導入が向いている企業
ここではフリーアドレスの導入が向いている企業の特徴を紹介します。
ABWを推進している企業
ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の頭文字をとった言葉で、効率良く仕事ができる場所を自分で選べるワークスタイルを指します。フリーアドレスと異なるのは、オフィス内だけでなく自宅やコワーキングスペース、カフェなども働く場所の選択肢に入る点です。
フリーアドレスは社員自ら働く場所を決められるワークスタイルですが、その範囲はオフィス内に限定されます。しかし、オフィス内であれば業務にあたる場所を自由に選択可能です。
ただし、工夫によってABWに近いワークスタイルを実現できます。例えば、範囲がオフィス内のみと限定的であっても、カフェスペースを設けたり個人ブースを設けたりすることで段階的にABWを実現できます。
このように、オフィス内に複数のワークスペースやブースを設置することで、ABWを推進している企業に向いています。
関連記事:【オフィス事例4選】「ABW」とは?5つのメリットと導入の流れ
ペーパーレス化が進んでいる企業
フリーアドレスを導入すると自席がなくなるので、これまで社員が各々のデスク周りに収納していた紙文書の保管場所がなくなります。紙媒体でのやりとりが主流である企業では、書類の保管場所を用意したり、保管場所まで逐一書類を取りに行ったりしなければならないため非効率の要因になっているケースも。
対してすでにペーパーレス化を推進している企業であれば、スムーズにフリーアドレスを導入するといえます。
フリーアドレスを推進しやすいワークスタイルである企業
フリーアドレスを導入しやすいワークスタイルであることも重要です。例えば、ノートPCやタブレットで業務可能な企業なら、場所や席の移動に手間がかからないので、フリーアドレスを導入しやすいといえます。全社的でなくても会議やミーティングが多い、また外出や離席が多い部署にも向いています。
一方、デスクトップパソコンでなければ使えないシステムがある企業は、フリーアドレスの導入に向いていません。
フリーアドレスの導入を検討する際は、自社のワークスタイルとの相性を考慮することが大切です。
社内のコミュニケーションを強化したい企業
固定席がなく自分の好きな席を選べることから、社員同士や部署間など、社内のコミュニケーションを強化したい企業に適しています。偶然近くに座ったのがきっかけで、新たなコミュニケーションが生まれることも。また、部署や役職を超えたコミュニケーションの活性化も期待できます。普段違う仕事をしていてあまり関わりがなかった社員との会話から、新たなアイディアが生まれ、付加価値の創造に効果的です。
スペースを有効活用したい企業
社内の限られたスペースをより有効に活用したい企業にも向いています。例えば、テレワーク率50%だと、固定席の場合は50%が余ることになりますが、フリーアドレスにすることで、執務面積が50%に収まります。
オフィスを適正面積にできることにはふたつのメリットがあります。ひとつは固定費が削減でき、利益の増加につながることです。事業発展を考えた、新たな投資も可能になるでしょう。
ふたつめはより働き方に合わせたスペースの活用ができることです。現状と同じオフィスのまま、余ったスペースをオンラインMTGに対応するエリアにしたり、休憩スペースにしたりと、変化していく働き方に合わせて様々な用途で使用することが可能になります。
フリーアドレスの過去と今
フリーアドレスが発案されたのは、1987年の日本。それから30年以上経ちましたが、発案当初からは目的や取り巻く環境が大きく異なっています。
フリーアドレスの変遷
フリーアドレスが発案された当初は、オフィスのスペースを効率化して、コストを削減することが主な目的でした。外回りの社員が多い企業で座席を共有し、空席を減らすことが狙いです。しかし、当時はパソコンや電話の小型化が進んでおらず、オフィスは紙の資料であふれていました。そのため、状況にあわせて座席を変えるのは難しく、フリーアドレスは狙いどおりに定着しませんでした。現在では、この時期を「フリーアドレス1.0」と呼んでいます。
その後、パソコンはノート型やタブレットへ、電話はスマートフォンへと進化し、持ち運びができるだけでなくメールやチャット、ビデオ通話など豊富な機能が備えられるようになりました。離れた場所にいても社員同士や取引先と情報共有することが容易になり、フリーアドレスが再び認識されるようになりました。いわゆる「フリーアドレス2.0」の到来です。
それまで導入するうえで期待されていたスペースの効率化やコスト削減は、フリーアドレス2.0から「従業員の自由な働き方を実現すること」へと変化しました。柔軟な働き方の推進によって、生産性の向上やコミュニケーションの活性化を目指すものです。
現代に求められているナレッジワーク
もうひとつ、フリーアドレスを導入する企業が増えたのは、「ナレッジワーク」が重視されるようになったことも影響しています。ナレッジワークとは、知識から新たな価値を生み出す働き方です。近年、金融工学やデジタル技術が進み、体系化できる仕事や、高度なスキルを必要としない仕事は徐々にAIやロボットに置き換えられています。決められた作業をこなすワーカーではなく、「人間だけが生み出せる値」が求められるようになった現代。市場に対して価値を創造する「ナレッジワーク」は、必然的に確立された考え方といえます。
知的創造を行うナレッジワーカーこそ様々な垣根を越境できる環境、つまりオープンでインタラクティブな“ノンテリトリアル・オフィス”空間が必要になってきました。
ノンテリトリアル・オフィスとは、領土を持たないオフィス空間を意味し、機能でいうところのフリーアドレスです。偶発的な出会いや接触を生み出すことに効果的なノンテリトリアル・オフィス環境。
ナレッジワーカーのコミュニケーションパフォーマンスを高め、能力を最大限サポートする為に、オフィス空間をフリーアドレス化させノンテリトリアル・オフィス環境を整えることは重要事項なのです。
フリーアドレスのメリット
さてここで、フリーアドレスのメリットについてまとめてみます。
<フリーアドレスメリット>
- コミュニケーションパフォーマンスが高くなる
- スペースソリューションに繋がる
- コラボレーションの促進
- チーム編成が容易
- 決断のスピードが上がる
- 環境美化
- 省スペース化
フリーアドレスであることは、いつでもどこでも他部署の人と関わる機会にあふれるため、組織の縦の壁がなくなり横に繋がりやすくなります。今まで関わることが少なかったメンバーとコミュニケーションをとることで、多様なコラボレーションが生まれるのです。
新しい発想は「頭の中」ではなく、「会話の中」から創出される。フリーアドレスは多様なコラボレーション、豊富なコミュニケーションを助長させ、新しいアイディアの創造を促進させることができます。また、自席を持たないことによりオフィス空間全体が共有の場所となる為、抱える書類ストックも減り、環境美化の意識も高まることになります。
フリーアドレスのデメリット
反対に、フリーアドレスのデメリットについてまとめてみます。
<フリーアドレスデメリット>
- 適度な距離感を保てない
- 組織の中でのアイデンティティロス
- 集中しにくい
- ルールの浸透不足
- 固定の場所になりがち
- 従来のマネージメント方式では対応しきれない
フリーアドレスを導入することにより、オープンコラボレーションの場がスタンダードのオフィス空間となります。プロジェクトの内容やその時の作業内容、そして個々のパーソナリティによっては、あまりにもオープンすぎる空間や、他者との距離が近すぎることにストレスを感じる場合も。
また、フリーアドレスで自由に働く場所を選べるがゆえに、集団意識が希薄となり「組織への所属意識の低下」へ繋がることも懸念されます。これら課題を補うには、適切な相互作用が維持できるように配慮したオフィス空間作り、および組織への所属意識保持(アイデンティティの確保)の為の新たな文化を創造する必要があります。
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フリーアドレスに対する課題を解決する方法
では、フリーアドレスに課題があるときは、どのように解決すれば良いのでしょうか。
集中スペースの確保
オープンコラボレーションは、他人の集中を阻害してしまう場合もあります。一人集中できるスペースを設けてあげることで、自身で働き方を選択できるようにします。
フリーアドレスをルール化
フリーアドレスでありながら、いつも同じ席にいては利点が最大限に発揮されません。「ルーレットやくじ引きなどでその日に座る席を決める」など、必然的に座る席を毎日変えてしまう仕組みも適切な運用には重要です。
関連記事:フリーアドレスオフィスのルールとは?スムーズな運用に必要なこと
モバイルロッカーにネームプレート
フリーアドレスになり自席がなくなることで、自分は企業のどこの位置にいるのかが不明瞭になったり、自分がその企業に属している意識が薄くなってしまう場合もあります。モバイルロッカーに自身の写真や名前が存在するだけで、「自分はこの企業に存在しているのだ」という帰属意識へと繋がります。
グループアドレスを導入する
「グループアドレス」とは、部署ごとにエリアを決め、その中で自由に席を選べるスタイルです。フリーアドレスのメリットを享受できるうえ、部署のメンバーが必ずエリア内にいて一体感を保つことができるため、帰属意識が薄れることがありません。
フリーアドレスより導入のハードルも低く、多くの企業にマッチするスタイルといえるでしょう。
関連記事:グループアドレスとは?オフィスに導入する流れとメリットを解説
コロナ禍におけるフリーアドレス導入の流れ
フリーアドレスを導入する上で大きな課題となるのが「コロナ禍」の影響です。どのように導入すれば良いのか、流れを見てみましょう。
1.導入する範囲を決定する
まずは、導入する範囲を決定します。これまで説明したとおり、すべての業種や部署にフリーアドレスが向いているわけではありません。そのため、いきなりオフィス全体で始めるのではなく、営業部門など、フリーアドレスによるメリットの大きいところから導入するのがおすすめです。部署の特性や仕事の内容によっては、エリアを決めてグループアドレスにする方法もあります。
一定の成果が得られたら、ほかの部署への拡大も検討しましょう。
2.座席数を決定する
次に座席数を決定します。営業部門のように外回りが中心で、不在がちな社員の分はもちろん、テレワークで出社回数が少ない社員の分についても、削減する対象です。対象の社員のうち、何人が同時に出社するか、その際にどれくらいの座席数が必要か検討した上で「座席設定率」を割り出します。対象の社員が50人いて、座席設定率が70%であれば、必要な座席数は35です。座席数が決まったら、デスクの配置などレイアウトを考えましょう。
3.運用形態を決定する
次に運用形態を決めます。本来であれば、対象の社員が自由に座席を決められるなら、運用の手間はかかりません。しかし、コロナ禍では、万が一感染者が発生したときに濃厚接触者を素早く特定することが大事です。自由に座席を決められると、濃厚接触者の特定が遅れて、感染が拡大するおそれがあります。そのため、運用する側で座席を把握できるようにしたり、逆に座席を指定したりするなどの対策が必要です。
フリーアドレスオフィスに関する資料
フリーアドレスオフィスのメリットとデメリットをダウンロードできる資料にまとめました。運用のヒントやABW(Activity Based Working)についても紹介しています。ぜひご活用ください。
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https://vis-produce.com/download/abw/index.php
フリーアドレスを導入したオフィスデザイン事例
■アポクリート株式会社様
働き方やデザインを一新しフリーアドレスを導入。社員の皆さまにとって誇りとなり、働きたいと思えるオフィス
■株式会社シイエヌエス様
温かみのある木目やグリーンが印象的。開放的なフリーアドレスオフィス
■株式会社K-BIT様
自由に働く場所を選べる、おしゃれなABWオフィス
■株式会社ブラス様
多層階にまたがるフリーアドレスへの挑戦
■日本経営 グループ様
フリーアドレスを軸に回遊コミュニケーションが生まれるオーバルオフィス