多様な働き方が求められるなかで、「ABW」というワークスタイルを導入する企業が増えています。「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方は、社員にとって大きなメリットです。
本記事では、ABWにはどのような特徴があり、どう導入すれば良いのか紹介します。ABW導入に成功した企業事例についてもみていきましょう。
この記事のまとめ
結論
ABWとは、社員が業務内容や目的に応じて、適した時間、場所、環境を自律的に選ぶワークスタイルです。
ABWを成功させるには、フリーアドレスやテレワークを導入するだけでなく、社員の活動に合ったワークスペース、ICT環境、社内制度、セキュリティ、マネジメントを一体で設計する必要があります。
3つの要点
- ABWは、活動や業務目的に適した環境を選ぶ働き方
- フリーアドレスよりも働く場所の対象範囲が広く、社員の生産性や自律性を高めることが主な目的
- 導入前の調査、活動に応じた空間設計、試験運用、効果測定が重要
この記事で解決できる悩み
- ABWの意味や特徴、必要なスペースや設備を正しく理解したい
- 自社や自部署にABWが向いているか判断したい
- ABWを導入したオフィス事例を参考にしたい
ABWとは?

ABWとは、”Activity Based Working”の頭文字を取った、オフィススタイルを示す用語です。仕事の内容に応じて、社員が働く時間や場所を自由に選べるワークスタイルを指します。まずは、どのような特徴があるのか知っておきましょう。
ABWは単に自由な場所で働く制度ではない
ABWでは、社員が業務内容や目的に応じて働く環境を選択します。
ただし、ABWは、社員が制限なく好きな時間と場所で働く制度を意味するものではありません。企業が定める就業規則、勤務制度、情報セキュリティポリシーなどの範囲内で、業務に適した環境を選ぶ考え方です。
たとえば、集中して資料を作成する場合は個人ブース、チームでアイデアを出す場合はオープンミーティングスペース、オンライン会議を行う場合はWeb会議ブースを選びます。
自宅やサテライトオフィスを選択肢に含める場合も、機密情報の取り扱い、利用できるネットワーク、勤務時間の記録方法などを事前に決めておく必要があります。
ABWの目的は「どこでも自由に働くこと」ではなく、活動に適した環境を選び、社員と組織のパフォーマンスを高めることです。
ABWの特徴
ABWは、1990年代初頭に、オランダのコンサルティング企業が導入したことをきっかけに普及しました。”Activity Based”という言葉の通り、業務内容や目的に合わせて、オフィスの内外を問わず働く環境を社員が自律的に選べるのが特徴です。
たとえば、オフィス内の環境としては個人ブースや集中ブース、少人数でミーティングができるフリースペース、周囲の音が遮られるWEB会議スペースなどを導入する企業が増えています。オフィス外の環境としては、会社で契約しているコワーキングスペースやサテライトオフィス、カフェなどを用意すると、外回り中の社員が快適に業務を進めることが可能です。
ほかにも、リモートワークやフレックスタイムといったフレキシブルな働き方の導入も、ABWの1つといえます。
ABWの導入に向いている職種
ABWは、取引先への訪問や会議などで自席から離れる機会が多い業種に向いています。
たとえば、営業活動で1日の大半を移動に費やしている営業職は、自宅から訪問先に直行したり、訪問の合間にコワーキングスペースを使ったりできるようになると、業務効率が大幅に向上します。ほかにも、仕事の大半をリモートで行えるIT関連職や、打ち合わせで席を外していることが多いマーケティング職・企画職などもABWに向いているでしょう。
反対に、機密情報を取り扱う事務職や、業務に専門的な機材が必要な研究職などは、ABWを導入してもあまり活用する機会がないかもしれません。
ABWとフリーアドレスとの違い

フリーアドレスとは、社員が固定席を持たず、毎日自由に席を選んで業務を行うワークスタイルです。固定席に割いていたスペースを削減し、オフィスを効率的に活用できるといったメリットから、近年導入する企業が増えています。
また、席が固定されないため、普段業務で関わりのない社員とも交流の機会ができ、社内コミュニケーションが活性化するという点も特徴です。
ABWと共通点の多い制度のように見えますが、以下のような違いがあります。
働く場所
フリーアドレスはオフィス内で自由に席を選べる制度であり、社内での勤務を前提とした制度です。
一方、ABWでは自宅でのリモートワークやコワーキングスペース、カフェなど、オフィス外の場所での就労も選択できます。
導入の目的
フリーアドレスは、固定席を削減することで、限られたオフィススペースを効率的に利用することが目的です。
対して、ABWでは社員が自律的に働く環境を選択できることを重視します。業務内容や就労形態に合わせて柔軟な選択ができるよう、オフィスのレイアウトや制度を作り変えるのがABWの特徴です。
ABWとフリーアドレスとの違いを比較表で解説
ABWとフリーアドレスは、どちらも社員が固定された自席以外で働ける点で共通しています。
一方、自由度、対象となる場所、導入目的には違いがあります。
| 比較軸 | ABW | フリーアドレス |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 業務内容や目的に適した時間・場所・環境を選ぶ | 固定席を設けず、オフィス内の共有席を選ぶ |
| 自由度 | 非常に高い。活動に合わせて環境を選択する | 高い。オフィス内の空席から座席を選択する |
| 対象範囲 | オフィス内、自宅、サテライトオフィス、コワーキングスペースなど | 主にオフィス内 |
| 主な目的 | 社員の生産性、創造性、自律性、働きやすさの向上 | オフィススペースの効率化、部署間交流の促進 |
| 選択の基準 | 集中、共創、Web会議など、そのときの活動 | 空席の有無や部署・チームの運用 |
| 必要な空間 | 活動に応じて機能の異なる複数のスペース | 複数の社員が共有できる執務席 |
| 必要な制度 | 勤務制度、評価制度、ICT、セキュリティなどの総合的な整備 | 座席管理、収納、電話対応、クリアデスクなどの運用整備 |
| オフィス外勤務 | 選択肢に含まれる場合がある | 原則として対象外 |
| 導入の難易度 | 比較的高い | ABWより導入しやすい |
| 向いている企業 | 業務や活動の種類が多く、働く場所を柔軟に選べる企業 | 外出やテレワークによって空席が多い企業 |
自由度の違い
フリーアドレスでは、社員がオフィス内の共有席から働く位置を選びます。
ABWでは、座席だけでなく、集中、相談、学習、Web会議などの活動に合わせて環境を選びます。企業の制度によっては、オフィス外の場所や勤務時間も選択肢に含まれます。
そのため、ABWの方が選択できる範囲が広いといえます。
対象範囲の違い
フリーアドレスは、基本的にオフィス内の座席運用を指します。
一方、ABWはオフィス内の多様なスペースに加え、自宅、サテライトオフィス、コワーキングスペースなどを含む場合があります。
ただし、オフィス外で働くことを認めなければABWにならないわけではありません。オフィス内でも、社員が活動に適した場所を自律的に選べる環境を整えれば、ABWの考え方を取り入れられます。
目的の違い
フリーアドレスは、固定席を共有化し、オフィススペースを有効活用する目的で導入されることが多い運用方式です。
ABWの主な目的は、社員が活動に適した環境を選ぶことで、生産性、創造性、自律性、働きやすさを高めることです。
フリーアドレスは、ABWを実現するための手段の一つになる場合があります。しかし、フリーアドレスを導入しただけでABWが実現するわけではありません。
ABWにおける活動分類と必要なスペース
ABWのオフィスでは、座席を一律に設けるのではなく、社員が行う活動を分類し、それぞれに適したスペースを用意します。
業務内容だけでなく、必要な集中度、会話の量、機密性、利用人数、滞在時間などを整理することが重要です。
代表的な活動は、次の5つに分類できます。
- 集中
- 共創・協働
- Web会議・通話
- 情報収集・学習
- リフレッシュ・交流
集中
集中は、一人で資料作成、分析、企画、設計などを行う活動です。
周囲の会話や人の動きが視界に入りにくく、一定時間落ち着いて仕事に取り組める環境が求められます。
- 集中ブース
- 個室
- 壁向きのカウンター席
- パーティション付きのデスク
- 静かなエリア
- ライブラリー型スペース
オープンな執務席と集中エリアを近づけすぎると、音や人の往来によって集中しにくくなります。音環境や動線を分けることが重要です。
共創・協働
共創・協働は、複数の社員が意見を交換し、アイデアを出したり、課題を解決したりする活動です。
資料を共有しやすく、会話や書き込みを行いやすい環境が適しています。
- オープンミーティングエリア
- プロジェクトテーブル
- 大型モニターを備えたスペース
- ホワイトボードエリア
- 可動式家具を備えたスペース
- 少人数用のミーティング席
短時間の相談と長時間のワークショップでは、必要な広さや設備が異なります。利用人数や活動時間に応じた複数のスペースを用意すると使いやすくなります。
Web会議・通話
Web会議・通話は、オンライン会議、顧客との商談、社内の遠隔ミーティング、電話対応などを行う活動です。
周囲への音漏れと、周囲の音がマイクへ入ることの両方を抑える必要があります。
- 一人用Web会議ブース
- 複数人用オンライン会議室
- フォンブース
- 吸音材を使用した半個室
- モニター、カメラ、マイクを備えた会議室
Web会議ブースは利用が集中しやすいため、必要数を感覚だけで決めないことが重要です。オンライン会議の回数や時間帯を調査し、利用実態に合わせて設計しましょう。
情報収集・学習
情報収集・学習は、資料の閲覧、調査、研修、eラーニング、社員同士の知識共有などを行う活動です。
集中できる静けさと、必要な情報へアクセスしやすい環境が求められます。
- ライブラリー
- 資料閲覧コーナー
- ラーニングスペース
- ソファ席
- 研修スペース
- 大型モニターを備えた共有エリア
企業のナレッジやプロジェクト情報を共有できる掲示、デジタルサイネージ、社内ポータルなどと組み合わせる方法もあります。
リフレッシュ・交流
リフレッシュ・交流は、休憩、飲食、雑談、社員同士の偶発的なコミュニケーションなどを行う活動です。
リラックスできるだけでなく、人が自然に集まり、会話が生まれやすい場所に配置することが重要です。
- カフェスペース
- パントリー
- リフレッシュラウンジ
- ソファ席
- テラス
- バルコニー
- コーヒーカウンター
複合機、給湯設備、ロッカーなど、日常的に社員が利用する設備の近くに交流スペースを設けることで、偶発的な会話を促せます。
ABWにおける活動分類の比較表
| 活動分類 | 主な活動 | 求められる環境 | 主なスペース |
|---|---|---|---|
| 集中 | 資料作成、分析、企画、設計 | 静けさ、視線の遮断、長時間利用 | 集中ブース、個室、カウンター席 |
| 共創・協働 | 相談、アイデア出し、プロジェクト推進 | 会話のしやすさ、情報共有、可変性 | オープンミーティング、プロジェクトテーブル |
| Web会議・通話 | オンライン会議、商談、電話 | 防音・吸音、通信環境、プライバシー | Web会議ブース、フォンブース、会議室 |
| 情報収集・学習 | 調査、読書、研修、eラーニング | 静けさ、情報へのアクセス | ライブラリー、ラーニングスペース |
| リフレッシュ・交流 | 休憩、飲食、雑談、偶発的交流 | 快適性、開放感、人が集まる動線 | カフェ、パントリー、ラウンジ |
活動分類は社員の行動調査から決める
すべての企業に、同じ割合のスペースが必要なわけではありません。
Web会議が多い企業ではWeb会議ブースを多めに設ける必要があります。一人で集中する仕事が多い企業では、オープン席よりも集中席の割合を高める方が適しています。
ABWのレイアウトを検討する際は、次の情報を調査しましょう。
- 社員が一日に行う活動
- 活動ごとの所要時間
- 一人で行う業務と複数人で行う業務の割合
- Web会議の回数と時間帯
- 会議の参加人数
- オフィスへの出社率
- 現在の座席や会議室の利用率
- 社員が感じている不満
- 業務上必要な機密性
- 将来の組織変更や増員計画
調査結果をもとに、必要なスペースの種類、数、面積、配置を決めることが重要です。
ABWを導入する5つのメリット

それでは、ABWを導入すると、どのようなメリットがあるでしょうか。
・ワークライフバランスを実現できる
・社員満足度が向上する
・優秀な人材を確保できる
・創造性・生産性が向上する
・オフィス維持のコストが削減できる
主なものを5つ確認していきます。
ワークライフバランスを実現できる
ABWによって自宅での勤務が可能になれば、オフィスまで通勤する必要はありません。そのため、通勤にかかる時間を有効に使えます。集中できる環境を自ら選ぶことができるので、子育てや介護など、家族の世話をしながら働くことも可能です。
業務を効率良く進められて、プライベートの時間も充実させることができるでしょう。結果として、理想的なワークライフバランスを実現しやすくなります。
社員満足度が向上する
働く時間や場所に制約されなければ、仕事上のストレスは軽減されるでしょう。ストレスが軽減され、理想的なワークライフバランスが実現すれば、会社に対する満足度や幸福度が向上します。その結果、仕事のモチベーションアップや帰属意識の高まりによる定着率アップが期待できます。
優秀な人材を確保できる
ABWの導入によって、これまで家庭の事情や距離の問題で就職を諦めていた優秀な人材を確保できる可能性が高まります。従来の方法に捉われない働き方を模索している人にもアプローチできるでしょう。社員が働きやすい環境を整備している会社として、企業のイメージも良くなります。
創造性・生産性が向上する
ABWではオフィスや自宅に限らず、業務内容に合わせて社員が働きやすい場所を選べるのがメリットです。ある程度、人の気配を感じたいときはカフェやコワーキングスペース、集中したいときは個室といった具合に、自分の状況や仕事内容に合わせて働く場所を選べます。最適な場所を選べれば、パフォーマンスを発揮しやすくなり、創造性や生産性も向上するでしょう。
オフィス維持のコストが削減できる
ABWによって、オフィスで勤務する社員の数が少なくなれば、その分だけスペースを縮小できます。別の用途に使っても良いですし、適切な広さのオフィスに移転すれば賃料や光熱費を削減できるでしょう。
とくに会議室は、多くの企業で使われていない時間が長いといわれています。収容可能な人数よりも少人数で利用することもあるため、このスペースを有効活用できます。
ABWを導入する4つのデメリット

メリットを見てきましたが、一方でABWにはデメリットもあります。
・勤怠管理や人事評価体制の見直しが必要になる
・新しいシステムの導入・整備にコストと時間がかかる
・セキュリティリスクが高くなる
・社員が孤独感を感じやすくなる
ABWの導入前に確認して、対策を講じましょう。
勤怠管理や人事評価体制の見直しが必要になる
ABWは、上司にとって部下の動向を把握するのが難しく、コミュニケーションを取るのも容易ではありません。そのため、マネジメントや適切な評価が難しくなるおそれがあります。毎日一回はオンラインでミーティングに参加して進捗状況を報告したり、週に一度は出社して直に顔を合わせたりするなどの対策が必要となります。
また、導入の際に、ルールの設定や改革は必要になるでしょう。たとえば、リモートワークやフリーアドレス席になると仕事のプロセスが把握しづらくなるので、成果や目標達成度をより重視した評価制度への見直しが必要になる場合があります。。
新しいシステムの導入・整備にコストと時間がかかる
管理体制や制度だけでなく、新しい社内体制に対応したシステムやツールの導入が必要になります。たとえば、フレキシブルな勤務体制に対応するためにはチャットツールやタスク管理ツール、スケジューラー、勤怠管理システムなどが必要です。
導入には初期投資や定期的なメンテナンス費用がかかるだけでなく、システムやツールの使い方が社員に浸透するまでには、ある程度の時間や労力がかかることも覚悟しましょう。
セキュリティリスクが高くなる
ABWでは、仕事のために会社の情報を外へ持ち出す機会が多くなるため、どうしても情報漏洩のリスクが高くなります。情報の持ち出しにルールを設けるのはもちろん、万が一漏洩したとき、会社や社員にどのような影響があるのか、社内研修などで周知させましょう。
ほかにも、業務で使うPCやスマートフォンにセキュリティソフトをインストールしたり、インターネットに接続するときの回線を限定したりするなどの対策が必要です。ファイルのやり取りは、USBメモリやSDカードといった外部媒体を介さず、指定されたクラウド上で行うと、紛失や盗難のリスクを軽減できます。
もちろん、PCやスマートフォンは勝手に見られないように、パスワードや指紋認証、二段階認証などの設定を済ませておきたいところです。
社員が孤独感を感じやすくなる
ABWでは、オフィス以外の場所で働けるので、ほかの社員と顔を合わせる機会が減ります。それを心地よいと感じる社員がいる一方で、孤独を感じやすい社員もいます。先ほど触れたとおり、毎日オンラインでミーティングで進捗状況を報告したり、週に1度は出社して直に顔を合わせたりするなど、何らかのルール決めが必要です。
顔を見る機会が少ないことは、社員の健康状態に気付きづらいというデメリットもあります。しばらくオフィス外で働いているうちに、大きく体調を崩しているかもしれません。
対策としては、社員の心身状況を把握できるツールを導入するとよいでしょう。たとえば、ココエルというサービスなら、アンケートの実施から、社員のストレスチェック・分析・課題抽出まで行えます。
【4ステップ】ABWをオフィスに導入するまでの流れ
次に、ABWをオフィスに導入するまでの流れを見てみましょう。
1.現状を調べる
2.ABWの導入が適しているかを判断する
3.社内制度やシステム・セキュリティの見直し
4.社内レイアウトを決める
順を追ってみていきましょう。
①現状を調べる
まずは、現在のオフィスの使われ方を調べます。たとえば、社員の平均的な在籍率や1日の過ごし方です。また、どのような不満があるか、社員にヒアリングしてみるのも良いでしょう。
ヴィスでは、ワークプレイス構築に新たな視点をもたらすDXツール「WORK DESIGN PLATFORM」を提供しています。詳しくは下記URLからお問い合わせください。
②ABWの導入が適しているかを判断する
データを分析したら、ABWの導入が本当に適しているか判断します。仕事の内容や働き方によっては、向いていない場合もあるからです。職場の現状を調べた結果、生産性の向上や職場環境の改善ができそうか判断しましょう。
在籍率が100%であれば、わざわざABWで働く場所を分散する必要はないでしょう。総務など、オフィスに常駐していないと困る部署もあります。経理や人事のように機密情報を扱う部署も向いていません。研究職や開発職では、オフィス以外で必要な環境を整えるのが難しいでしょう。
反対に、日中は常に空席があり、外出する社員が多い企業であればABWの導入が向いています。
営業職の場合、自宅からお客様への直接訪問や、外出先でサテライトオフィスの利用など、状況に応じたフレキシブルな働き方が可能となります。外出先に合わせて働く場所を選択できるようになれば、移動時間の削減や業務効率化につながるでしょう。
③社内制度やシステム・セキュリティの見直し
働く場所が分散するため、遠隔操作や社外からのアクセスが必要になります。社外での仕事は、紛失や盗難、ネットワーク接続に関するリスクが高まります。そのため、新しい働き方に適したシステムへの変更と、セキュリティ面の強化が重要です。
④社内レイアウトを決める
ABWを導入するのであれば、オフィスのレイアウトをどのように変更するか考えなければなりません。自由な働き方ができても、目的に応じたスペースはオフィス内に必要です。電話やオンラインミーティング向けのブース、ミーティング用のテーブル、リフレッシュスペースなど、適宜配置するようにしましょう。
⑤一部の部署やエリアで試験運用する
制度やレイアウトを整えた後は、全社へ一斉に導入するのではなく、一部の部署やエリアで試験運用する方法が有効です。
実際にABWを運用すると、Web会議ブースが不足する、集中席があまり使われない、特定のエリアに利用が集中するなど、計画段階では分からなかった課題が見えてきます。
試験運用では、次の項目を確認しましょう。
- 社員が活動に適した場所を選べているか
- 各エリアの利用率に偏りがないか
- Web会議ブースや会議室が不足していないか
- ICTツールを問題なく利用できているか
- 社員の所在を把握できているか
- 勤怠管理や評価に問題がないか
- セキュリティルールが守られているか
社員へのアンケートやインタビューも実施し、制度と空間の両面を改善してから対象範囲を広げましょう。
⑥効果を測定して制度や空間を改善する
ABWは、導入後も継続的な改善が必要です。
導入目的に応じてKPIを設定し、導入前後の変化を確認します。
代表的な指標は次のとおりです。
- 社員満足度
- 生産性に関する自己評価
- エンゲージメント
- 出社率
- 座席利用率
- 会議室やWeb会議ブースの稼働率
- 部署間コミュニケーション
- 通勤時間
- オフィスコスト
- 採用応募数
- 離職率
- セキュリティ事故や問い合わせ件数
測定結果をもとに、制度、ルール、ICTツール、スペースの種類や数を定期的に見直しましょう。
ABWの導入に成功したオフィス事例4選
つづいては、ABWを実際に導入し、社内の改善に成功した企業事例を4つ紹介します。
・株式会社オークファン:オフィスの適正化×コミュニケーション活性化
・株式会社スタイラジー:偶発的なコミュニケーションを生む
・Vialtoパートナーズ税理士法人 / Vialtoパートナーズ行政書士法人:フラットな組織をブランディング
・農林中金全共連アセットマネジメント株式会社:社外には信頼を、社内には心地よさを
ヴィスが手がけたABWオフィスでも、企業ごとの課題や働き方に合わせて、複数の活動スペースを組み合わせています。自社のオフィスリニューアルの参考としてご覧ください。
オフィスの適正化×コミュニケーション活性化「株式会社オークファン」

オークファンは、価格比較メディア「aucfan.com」をはじめ、「RE」に関わるさまざまなサービスを展開している企業です。
コロナ禍をきっかけにハイブリッドワークを導入したことから、オフィス面積を50%削減しつつ、少ない出社機会のなかでもコミュニケーションを活性化させたいという課題からABWを導入しました。
「Re-Café terrace」というコンセプトのもと、コーポレートカラーのグリーンを取り入れたカフェのような空間を設計しています。人が集まりやすいミーティングスペースを中心に、窓際には集中スペースやWEB会議ブースを設置。結果として出社率が向上し、社内コミュニケーションの活性化という課題もクリアしました。
事例の詳細はこちら:株式会社オークファン
偶発的なコミュニケーションを生む「株式会社スタイラジー」

スタイラジーは「テクノロジーで世の中を便利に」というミッションを掲げ、ソーシャルアプリの企画や開発、システム構築や運用事業などを行っています。
スタイラジーでは、テレワーク中心でオフィスへの出社が週2、3回という働き方が可能なことから、大阪オフィス移転の際にABWを導入しました。
街を歩いて誰かと会うように偶発的なコミュニケーションが生まれるよう「STREET」というコンセプトを掲げ、動線のあるワークスペースをデザインしています。また、出社する意味や価値を見出せるよう、さまざまなタイプの席を用意しました。
事例の詳細はこちら:株式会社スタイラジー
フラットな組織をブランディング「Vialtoパートナーズ税理士法人 / Vialtoパートナーズ行政書士法人」

Vialtoパートナーズ税理士法人 / Vialto行政書士法人は、国境を超えた人事異動や配置転換、それに伴う税務や入国管理、海外出張、リモートワークといったグローバルモビリティ分野に関するサービスを提供する企業です。
元から社内コミュニケーションが活発で、フラットな組織が特徴のVialtoでは、「交流・出会い」を加速させることを目指してオフィスブランディングを行いました。
働き方においてABWを導入していたことから「Community」「Co-creation」「Drive」の3エリアで空間を構成しました。また、各エリアをシームレスにつなぎ、個人とチーム双方の生産性を高める仕組みを施しています。
事例の詳細はこちら:Vialtoパートナーズ税理士法人 / Vialtoパートナーズ行政書士法人
社外には信頼を、社内には心地よさを「農林中金全共連アセットマネジメント株式会社」

農林中金全共連アセットマネジメントは、JAグループの資産運用会社です。同社はオフィス移転をきっかけに、ABWを取り入れたリニューアルを行いました。
九段下テラスの9階、10階という眺望抜群の立地を活かして、「お客様をおもてなしする空間」「職員の一体感醸成」「働きやすい環境」「ポストコロナ」をキーワードに、社外へ「信頼」を、社内へ「心地よさ」を発信する空間を設計しています。
執務スペースの窓際にはさまざまな席タイプを選べるABWスペースを設け、気持ちよく働けるオフィスを目指しました。
事例の詳細はこちら:農林中金全共連アセットマネジメント株式会社
ABWに関するよくある質問
ABWの導入を検討する際に生じやすい疑問について回答します。
Q1. ABWとフリーアドレスの違いは何ですか?
フリーアドレスは、社員が固定席を持たず、主にオフィス内の共有席から働く場所を選ぶ運用方式です。
ABWは、業務内容や目的に応じて、社員が適した時間、場所、環境を選ぶワークスタイルです。選択肢には、オフィス内の集中ブースやミーティングスペースだけでなく、自宅やサテライトオフィスなどが含まれる場合もあります。
フリーアドレスは座席やスペースの効率化を主な目的として導入されることが多い一方、ABWは社員の生産性、創造性、自律性、働きやすさを高めることを重視します。
Q2. ABWの導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
ABWの導入費用は、オフィスの面積、内装工事の範囲、必要なスペースの種類、家具、ICT環境、セキュリティ対策などによって変わります。
主な費用には、現状調査、コンサルティング、レイアウト設計、内装工事、家具、Web会議ブース、ネットワーク整備、クラウドツール、セキュリティシステムなどがあります。
正確な費用を把握するには、導入目的と必要な活動スペースを整理し、専門会社から見積もりを取得することが大切です。
Q3. ABWはどのような会社や部署に向いていますか?
営業、企画、マーケティング、IT関連など、外出、会議、集中作業、チーム作業といった複数の活動を行う会社や部署に向いています。
テレワークやハイブリッドワークを導入しており、社員がノートパソコンやクラウドサービスで業務を進められる企業とも相性がよいでしょう。
一方、専用機器が必要な部署、紙の書類や機密情報を頻繁に扱う部署、常時対応が必要な受付やコールセンターなどでは、固定席を残した方が効率的な場合があります。
Q4. ABWにはどのようなスペースが必要ですか?
代表的なスペースには、集中ブース、オープンミーティングエリア、Web会議ブース、少人数用会議室、ライブラリー、カフェスペース、リフレッシュラウンジなどがあります。
必要なスペースは、社員が一日に行う活動、Web会議の回数、会議の参加人数、出社率などによって異なります。
すべてのスペースを同じ割合で設けるのではなく、社員の行動調査や利用データをもとに構成を決めることが重要です。
Q5. ABWを導入するとどのような効果がありますか?
業務内容に適した環境を選べるようになることで、生産性や創造性の向上が期待できます。
働く場所の選択肢が増えることで、通勤時間の削減、仕事と生活の両立、社員満足度の向上にもつながる可能性があります。
また、出社人数や座席利用率に合わせてオフィス面積を適正化できれば、賃料や光熱費などのコストを見直せます。
Q6. ABWの効果はどのように測定しますか?
社員満足度、エンゲージメント、生産性、出社率、座席利用率、会議室稼働率、部署間コミュニケーション、オフィスコストなどを測定します。
導入目的によって確認する指標は異なります。生産性向上が目的なら集中しやすさや業務効率、コミュニケーション活性化が目的なら部署間の交流や社員アンケートを確認しましょう。
導入前の数値を記録し、導入後と比較できる状態にしておくことが重要です。
Q7. ABWでは勤怠管理や人事評価をどのように行いますか?
勤怠管理システム、スケジューラー、タスク管理ツールなどを利用し、働く場所が異なっても勤務状況を確認できるようにします。
人事評価では、勤務時間や上司から見える行動だけでなく、目標の達成度、成果、チームへの貢献などを評価できる仕組みが必要です。
評価基準を明確にし、上司と部下が定期的に目標や進捗を確認する機会を設けましょう。
Q8. ABWではどのようなセキュリティ対策が必要ですか?
端末認証、多要素認証、アクセス権限の管理、通信の暗号化、クラウドストレージ、端末管理などの対策が必要です。
社外で働く場合は、公共Wi-Fiの利用、画面ののぞき見、端末の紛失、資料の持ち出しなどに関するルールも定めます。
システムによる対策だけでなく、社員研修を実施し、情報の取り扱いに関する理解を深めることが重要です。
Q9. ABWが失敗する主な原因は何ですか?
目的が曖昧なまま、フリーアドレスやテレワークだけを導入すると、ABWが機能しない可能性があります。
ほかにも、集中スペースやWeb会議ブースの不足、社員への説明不足、マネジメントの見直し不足、複雑な運用ルールなどが失敗の原因になります。
導入前に社員の活動を調査し、一部の部署で試験運用を行ったうえで、制度と空間を改善しましょう。
Q10. ABWの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
導入期間は、対象となる社員数、オフィスの規模、内装工事の有無、制度やシステムの変更範囲によって異なります。
小規模な試験導入であれば比較的短期間で始められますが、全社的な制度変更やオフィス移転を伴う場合は、調査、設計、工事、社員説明、試験運用に十分な期間が必要です。
スケジュールを決める際は、空間の完成だけをゴールにせず、社員が新しい働き方へ移行するための準備期間も確保しましょう。
まとめ
ABWは社員に柔軟な働き方を提供して仕事のパフォーマンスを高める一方で、マネジメントが難しくなったり、セキュリティリスクが高くなったりするデメリットもあります。導入にあたっては、現状を把握して本当にABWを導入する必要があるのか検討しましょう。デザイン会社など専門家のアドバイスも参考になります。
株式会社ヴィスは、『はたらく人々を幸せに。』というパーパスのもと、働く場を設計する「ワークプレイスデザイン」と、そこで生まれる体験を設計する「エクスペリエンスデザイン」という二つのアプローチを通して『ワークデザイン』を実現し、人と組織のエンゲージメントを高めながら、企業価値の持続的な向上に貢献します。
ワークデザイン、オフィス・ワークプレイスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。