【オフィス事例4選】「ABW」とは?5つのメリットと導入の流れ

多様な働き方が求められる中で、「ABW」というワークスタイルを導入する企業が増えています。「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方は、社員にとって大きなメリットです。どのような特徴があり、どのように導入すれば良いのか紹介します。

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ABWとは?

ABWとは、「Activity Based Working」の略です。仕事の内容に応じて、社員が働く時間や場所を自由に選べるワークスタイルを指します。まずは、どのような特徴があるのか知っておきましょう。

ABWはオランダ発祥のワークスタイル

ABWは1970年代から概念として存在していましたが、初めて導入されたのは1990年代に入ってからです。オランダの保険会社を皮切りに、ほかの会社でも導入されるようになりました。

仕事のパフォーマンスと環境には密接な関係があり、環境が良くなければパフォーマンスも最大限に発揮できません。すべての社員にとって、従来のオフィスで座席を固定されるのが必ずしも最良とは限らないため、時間や場所に捉われず働けるようにしたのがABWです。

社員は、仕事の内容やその日の気分に合わせて、自由に働く時間や場所を選べます。効率良く業務を進められる自由なワークスタイルは、社員の満足度向上に繋がるでしょう。

また、ミーティングスペースやカンファレンススペースなどを設置することで、社内のコミュニケーションの場として活用できます。

フリーアドレスとの違い

フリーアドレスも、座席を固定しない点ではABWと同じです。どちらも、座席を固定しないワークスタイルですが、目的や発祥の経緯が異なります。ABWは企業理念を実現するために、働き方の改善策を見つける手法として誕生しました。

一方、フリーアドレスはコスト削減のため、オフィスのスペースを効率化する手法として誕生しました。

 

そのため、フリーアドレスは選べる場所がオフィス内に限られています。ABWはオフィスを離れて、自宅やコワーキングスペース、カフェなどで仕事をすることが可能です。


また、両者では期待できる効果が若干異なります。フリーアドレスではコミュニケーションの活性化やスペースの削減に重点が置かれていますが、ABWでは社員のパフォーマンス向上や柔軟な働き方の導入を目的としています。

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ABWを導入する5つのメリット

ではABWを導入すると、どのようなメリットがあるのか、主なものを5つ見てみましょう。

ワークライフバランスの実現

ABWによって自宅での勤務が可能になれば、オフィスまで通勤する必要はありません。そのためにかかる時間を有効に使えます。集中できる環境を自ら選ぶことができるので、子育てや介護など、家族の世話をしながら働くことも可能です。

業務を効率良く進められて、プライベートの時間も充実させることができるでしょう。結果として、理想的なワークライフバランスを実現しやすくなります。

社員満足度の向上

働く時間や場所に制約されなければ、仕事のストレスは軽減できるはずです。ストレスが軽減されて、かつ理想的なワークライフバランスも実現すれば、会社に対する満足度や幸福度が向上します。

それによって、帰属意識が高まり、定着率がアップします。社員の生活や職種に合った働き方ができれば、モチベーションアップの効果も期待できます。

優秀な人材を確保できる

ABWの導入によって、これまで家庭の事情や距離の問題で、就職を諦めていた優秀な人材を確保できる可能性が高まります。従来の方法に捉われない働き方を模索している人にもアプローチできるでしょう。社員が働きやすい環境を整備している会社として、企業のイメージも良くなります。

創造性や生産性の向上

ABWではオフィスや自宅に限らず、業務内容に合わせて社員が働きやすい場所を選べるのがメリットです。ある程度、人の気配を感じたいときはカフェやコワーキングスペース、集中したいときは個室といった具合に、最適な場所を選べます。最適な場所を選べば、パフォーマンスを発揮しやすくなり、創造性や生産性も向上するでしょう。

フリーアドレスのように、場所を選べるのはオフィス内に限定する場合も、用途に応じたスペースを配置することで、同様の効果を期待できます。例えば、コラボレーション用のスペースやリフレッシュ用のスペース、個室型のブースなどです。

コストの削減

ABWによって、オフィスで勤務する社員の数が少なくなれば、その分だけスペースを縮小できます。別の用途に使っても良いですし、適切な広さのオフィスに移転すれば賃料や光熱費を削減できるでしょう。

とくに会議室は、多くの企業で使われていない時間が長いといわれています。収容可能な人数よりも少人数で利用することもあるため、このスペースを有効活用できます。

ABWの導入前に知っておくべきこと

メリットを見てきましたが、一方でABWにはデメリットもあります。導入前に問題点がないか知っておきましょう。

マネジメントがしづらくなる

ABWは、上司にとって部下の動向を把握するのが難しく、コミュニケーションを取るのも容易ではありません。そのため、マネジメントや適切な評価が難しくなるおそれがあります。

導入の際に、ルールの設定や改革は必要になるでしょう。前者であれば、毎日一回はオンラインでミーティングに参加して進捗状況を報告したり、週に一度は出社して直に顔を合わせたりするなどです。後者であれば、評価制度を成果主義に変えるなどの方法があります。

情報漏洩やセキュリティリスクが高くなる

ABWでは、仕事のために会社の情報を外へ持ち出す機会が多くなるため、どうしても漏洩のリスクが高くなります。情報の持ち出しにルールを設けるのはもちろん、万が一漏洩したとき、会社や社員にどのような影響があるのか、社内研修などで周知させましょう。

ほかにも、業務で使うPCやスマートフォンにセキュリティソフトをインストールしたり、インターネットに接続するときの回線を限定したりするなどの対策が必要です。ファイルのやり取りは、USBメモリやSDカードといった外部媒体を介さず、指定されたクラウド上で行うと、紛失や盗難のリスクを軽減できます。

もちろん、PCやスマートフォンは勝手に見られないように、パスワードや指紋認証などの設定を済ませておきたいところです。

ABWの働き方が社員に浸透しない

せっかくABWを導入しても、社員が従来と同じような働き方をしている会社もあります。最大限にパフォーマンスを発揮できて、創造性や生産性が向上したとしても、ABWの導入にかけた費用が無駄になりますし、コストも削減できません。コストの削減が主な目的であれば、大きなデメリットです。

導入にあたっては、社員に目的や活用方法を説明しましょう。十分に理解・納得させた上で導入すれば、大きな失敗を防げるはずです。

社員が孤独感を感じやすくなる

ABWでは、オフィス以外の場所で働けるので、ほかの社員と顔を合わせる機会が減ります。それを良しとする社員がいる一方で、逆に孤独を感じやすい社員もいます。先ほど触れたとおり、毎日一回はオンラインでミーティングに参加して進捗状況を報告したり、週に一度は出社して直に顔を合わせたりするなど、何らかのルール決めが必要です。

顔を見る機会が少ないのは、社員の健康状態に気付きづらいというデメリットもあります。しばらくオフィス外で働いているうちに、大きく体調を崩しているかもしれません。

対策としては、社員の心身状況を把握できるツールを導入すると良いでしょう。例えば「ココエル」です。社員が簡単なサーベイ(アンケート)に回答するだけで、会社側ではストレスの度合いや取り組むべき課題を把握できるようになります。

オプションで24時間電話相談できたり、オンラインでカウンセリングを受けたりすることが可能です。ご興味がある方は、こちらからお問い合わせください。

ABWをオフィスに導入するまでの流れ

最後に、ABWをオフィスに導入するまでの流れを見てみましょう。

現状を調べる

まずは、現在のオフィスの使われ方を調べます。例えば、社員の平均的な在籍率や一日の過ごし方です。また、どのような不満があるか、社員にヒアリングしてみるのも良いでしょう。

ただし、集められたデータから、どのようにオフィスを改善すべきか判断するのは難しいかもしれません。そこでおすすめしたいのが、ワークプレイス可視化レポートwit」です。

ワークプレイス可視化レポートwit」は、「空間分析」、「稼働率分析」、「ロケーション分析」を通じたワークプレイス、ワークスタイルの現状把握、「コストシミュレーション」、「スペースプログラミング」を通じた変革の可能性の示唆を提供します。

ワークプレイスおよびワークスタイルにおける現状を把握するとともに、それらの数値を元に実現可能なオフィス変革のシナリオを客観的な目線で構築できます。詳しくは下記URLからお問い合わせください。

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ABWの導入が適しているかを判断する

データを分析したら、ABWの導入が本当に適しているか判断します。仕事の内容や働き方によっては、向いていない場合もあるからです。職場の現状を調べた結果、生産性の向上や職場環境の改善ができそうかどうかを判断することが大切です。

例えば、在籍率が100%であれば、わざわざABWで働く場所を分散する必要はないでしょう。経理や人事のように機密情報を扱う部署も向いていません。総務など、オフィスに常駐していないと困る部署もあります。研究職や開発職では、オフィス以外で必要な環境を整えるのが難しいでしょう。

逆に、日中は常に空席があり、外出する社員が多い企業であればABWの導入が向いています。

例えば営業職の場合、自宅からお客様への直接訪問や、外出先でサテライトオフィスの利用など、状況に応じたフレキシブルな働き方が可能となります。外出先に合わせて働く場所を選択できるようになれば、移動時間の削減や業務効率化につながるでしょう。

社内制度やシステム・セキュリティの見直し

働く場所が分散するため、遠隔操作や社外からのアクセスが必要になります。社外での仕事は、紛失や盗難、ネットワーク接続に関するリスクが高まります。そのため、新しい働き方に適したシステムへの変更と、セキュリティ面の強化が重要です。

社内レイアウトを決める

ABWを導入するのであれば、オフィスのレイアウトをどのように変更するか考えなければいけません。自由な働き方ができても、目的に応じたスペースはオフィス内に必要です。電話やオンラインミーティング向けのブース、ミーティング用のテーブル、リフレッシュスペースなど、適宜配置するようにしましょう。

ABWを導入したオフィス事例4選

実際にABWを導入したオフィス事例を4つ紹介します。

フリーアドレス・ABWのオフィスデザイン・レイアウト事例はこちら

【株式会社PR TIMES】対話から信頼と創造性が高まる、“共感を育む”オフィス

「オープン&フラット」「フェイス・トゥ・フェイスによる共感醸成」「健康」をコンセプトに、リモートワークとのバランスを追求しました。

1フロア全体で対面でのコミュニケーションを重視したレイアウトです。固定席+ABWのワークスペースでは、対面による共感と自律した働き方が両立できます。

上品さを残しつつインパクトのある発光サインが印象的で、家具や備品は各種ブランドを取り扱い、ストーリー性のあるオフィスです。

【エムエム建材株式会社】「ABW」×「クリエイティビティ」×「コミュケーション」×「リブランディング」

「ABW」「クリエイティビティ」「コミュケーション」「リブランディング」をコンセプトとし、多様な働き方ができるスペースを構成しました。

エントランスは、光と植栽が印象的なデザインに一新し、建材の堅いイメージを払拭しています。ラウンジエリアには、ソファミーティングなどを設け、クリエイティブな空間を演出しました。

ワークエリアは、高層階の眺望をいかして窓面にミーティングエリアや集中エリアを配置しています。

【株式会社ヴィス(東京オフィス)】2フロアのABWで自由に働く「HOME+」オフィス

「HOME」をコンセプトに掲げた、居心地の良いオフィスです。こだわりの照明や家具を設置したサロンや、書斎をテーマとした会議室を設置しました。ABWの導入にともない、コミュニケーションが取りやすいレイアウトにするため、可変性のある家具を活用しています。

ワークスペースには、スクエアデスクと窓際カウンターデスクを設置しています。フリースペースは業務以外に多用途で活用でき、2フロアを目的や役割で選択できる自由度の高いオフィスです。

【REGAIN GROUP株式会社】宮崎から地方創生を加速させる「働き方変革」のモデルセンター

「ABR(Activity Based REGAIN GROUP)」をコンセプトに掲げた、ABWとRGCを掛け合わせた新しいオフィスです。働きやすさと生産性向上、地域活性の意味も含まれています。壁面をガラスにして開放感を演出し、ソファを設置することで活気が生まれました。スケルトン天井に、効果的に配灯したペンダントライトがアクセントになっています。

まとめ

ABWは社員に柔軟な働き方を提供して仕事のパフォーマンスを高める一方で、マネジメントが難しくなったり、セキュリティリスクが高くなったりするデメリットもあります。導入にあたっては、現状を把握して本当にABWを導入する必要があるのか検討しましょう。デザイン会社など専門家のアドバイスも参考になります。