目次
職場環境のストレスによって、従業員の心身に悪影響が及ぶだけでなく、生産性の低下や離職率の増加など、さまざまなリスクにつながる可能性があります。ただ、職場環境の改善と言っても、具体的にどこに問題があるのか、何から手をつけていいのかわからず、悩む場合もあるでしょう。
本記事では、職場におけるストレスの実態や要因、放置することで生じるリスク、そして効果的な改善策について詳しく解説します。従業員が健康的に働ける職場環境を構築するために、ぜひ参考にしてください。
職場におけるストレスの実態
職場におけるストレスは、多くの人が抱えやすい課題です。厚生労働省の「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、「現在の仕事や職業生活に関することで強い不安や悩み、ストレスを感じる事柄がある」と答えた労働者の割合は82.7%に上ります。
また、主なストレス原因として、「仕事の失敗・責任の発生等(39.7%)」「仕事の量(39.4%)」「(セクハラ・パワハラを含む)対人関係(29.6%)」などが挙げられています。
さらに、エン・ジャパンが実施した「本当の退職理由調査」では、退職理由のトップは「人間関係(約46%)」でした。これらのデータからも、職場における人間関係のストレスは、離職の大きな要因になっていることがわかります。
参考:厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」
参考:エン・ジャパン株式会社「本当の退職理由調査」
ストレスを生む職場環境とは?
職場環境は、オフィスや設備などの「物理的要素」、人間関係などの「心理的要素」、給与・待遇・労働時間などの「業務的要素」という3要素で構成されています。ここでは、ストレス度の高い職場がどのような環境なのか、3つの項目に分けて詳しく紹介します。
物理的なストレス要因
職場の設備や家具、レイアウトなどがストレス要因となることがあります。具体的には、以下のような点が挙げられます。
・オフィスの動線が複雑で移動しづらい
・デスクや椅子が体に合わず、疲労がたまりやすい
・物が多く、乱雑な状態で整理整頓がされていない
・室温や湿度、照明が適切でなく、集中しづらい
・設備や備品が老朽化し、性能不足で効率が悪い
上記のような環境では、集中力が低下し、生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります。
心理的なストレス要因
職場の人間関係や組織文化、仕事の評価などが心理的ストレスの原因になる可能性があります。具体的には、以下のような要因が挙げられます。
・上司や同僚との関係性が悪く、コミュニケーションが円滑でない
・職場に心理的安全性が確保されていない
・ハラスメント(パワハラ・セクハラなど)が発生している
・社内の雰囲気が悪い
・仕事が適正に評価されず、不公平感がある
目標や役割があいまいで、不安を感じやすい
人間関係の悪い職場では、トラブルや問題が起きやすく、従業員のモチベーションも低下しがちです。
業務的なストレス要因
業務量や労働時間、労働条件などもストレスの要因になります。具体的には、以下のような課題が挙げられます。
・業務量が多すぎて、常に時間に追われている
・仕事内容が単調で、やりがいを感じられない
・責任が重く、精神的なプレッシャーが大きい
・長時間労働や休日出勤が多く、ワークライフバランスが崩れている
・有給休暇や産休、介護休業が取得しにくい
・裁量権がなく、やらされ感が強い
・給与が低く、モチベーションが上がらない
上記の要因を放置すると、従業員の負担が増え、健康被害や離職率の増加につながる可能性があります。
関連記事:「職場環境が悪い会社の特徴とは?働きやすい職場を作るための改善策も解説」
職場のストレスにおけるリスク
職場でのストレスを放置していると、企業においてさまざまなリスクが考えられます。ここでは、職場環境のストレスがもたらす可能性のある以下のリスクを紹介します。
・生産性が低下する
・事故・トラブルが発生する
・離職率が上がる
・損害賠償責任を追及される
1つずつ確認しましょう。
生産性が低下する
ストレスがたまると集中力や作業効率が下がるため、生産性の低下や業務進捗の遅れに直結します。また、ストレスを抱えた状態では従業員が十分なパフォーマンスを発揮できず、商品・サービスの品質低下を招くこともあるでしょう。
生産性の低下は企業の業績悪化に繋がり、会社の信用も落としかねません。
事故・トラブルが発生する
ストレスの多い職場では、従業員のメンタルヘルスに影響が及び、判断力や注意力の低下を招きます。その結果、ヒューマンエラーが増加し、事故やトラブルに発展するリスクが高まります。
また、ストレスを抱えた従業員同士が衝突し、社内の人間関係が悪化して、チームワークの崩壊や協調性の低下が起こる可能性もあるでしょう。チームの連携が上手くいかないことでも、事故やトラブルのリスクは高まります。
離職率が上がる
ストレスの多い職場では、精神的・肉体的負担に耐えられなくなり、離職する従業員が増加します。人手不足が深刻化すると、採用や人材育成に多くの時間とコストがかかるため、企業経営に影響を及ぼすことも考えられます。
また、離職率が高い企業は求職者から敬遠されやすくなり、優秀な人材の確保が困難になるでしょう。さらなる業務の質や競争力の低下を招く可能性もあります。
損害賠償責任を追及される
企業には安全配慮義務があり、ストレスが原因で発生した健康被害に対し、適切な対応を取らない場合は企業の責任が問われる可能性があります。例えば、職場のストレスによるうつ病などの健康被害や、ハラスメントの常態化が認められた場合、労働安全衛生法違反として損害賠償請求を受けることが考えられます。
過労死や精神疾患による自殺といった深刻なケースでは、多額の賠償金を支払うリスクが伴う上、企業の社会的信用を損なってしまうでしょう。
職場のストレスの対処法・改善方法
職場のストレスによるリスクを未然に防ぐためには、労働環境・人間関係・労働条件のすべてにおいて、ストレスを軽減させる必要があります。ここからは、職場環境を改善し、ストレスとなる要因を排除するための対策について具体的に解説します。
労働環境の改善施策
オフィスレイアウトを見直し、多様なスペースを設けることで、職場にメリハリが生まれ、モチベーションや生産性の向上が期待できます。例えば、コミュニケーションを活性化するオープンなミーティングスペースや、リフレッシュできるカフェエリア、集中ブースなどを導入すると効果的です。
また、家具や備品の配置を工夫し、効率的な動線を確保することも重要です。エルゴノミクス(人間工学)に基づいたチェアや、高さ調整が可能なデスクを導入することで、長時間快適に作業でき、作業効率の向上も期待できます。
さらに、適度な温度や湿度、明るさを維持することで、従業員が快適に過ごせる環境が整い、パフォーマンスの向上につながります。
人間関係・企業文化の改善施策
職場環境の改善には、従業員の意見を取り入れることが必要不可欠です。匿名性を確保した社内アンケートや相談窓口を設置し、実際に働く従業員の声を集めることで、現状の問題点や改善すべき課題を明確にできます。
また、メンタルヘルス対策として、厚生労働省の指針による「メンタルヘルスケア」も有用です。特に「セルフケア」を含む4つのケアについて理解を深めることで、職場ストレスによる影響を軽減しやすくなります。
ハラスメントやコンプライアンス、適切なコミュニケーション方法などを学ぶ研修も検討しましょう。加えて、心理的安全性を確保するために、従業員の意見を尊重し、誰もが安心して発言できる環境を整えることが重要です。
労働条件の改善施策
良好な職場環境を整えるためには、労働条件や社内制度の見直しが必須です。Web会議システムやグループチャットなどのITツールを導入し、ペーパーレス化や業務の効率化を進めることで、多様な働き方をスムーズに実現できます。また、従業員の業務量を見直し、残業や休日出勤を減らすことで、ワークライフバランスの向上につながります。
加えて、休暇を取得しやすい風土を醸成することも重要です。給与や昇進の評価基準を明確にし、公正な評価が給与や待遇に反映される仕組みを整えることで、従業員のモチベーションアップの向上につながります。
関連記事:「職場環境改善アイデア15選!改善の取り組みに成功した事例も紹介」
まとめ
職場のストレスは、従業員の健康だけでなく、企業全体の生産性や社会的信用にも影響を及ぼします。ストレスの要因は物理的・心理的・業務的な側面があり、それぞれの適切な対策を講じることで改善が可能です。
働きやすい職場を実現すれば、従業員の満足度向上や離職率の低下などの効果も期待できます。労働環境や人間関係、労働条件を見直して、快適に働ける職場環境の構築を目指しましょう。
ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。