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働き方の多様化が進む中で、働きやすい職場環境の整備が企業に求められています。職場環境を整備することで、従業員の満足度や業務の効率化、組織全体のパフォーマンス向上といったさまざまな効果が期待できます。ただ、どこから手をつけるべきかわからず悩んでいる担当者もいるでしょう。
本記事では、企業が職場環境を整備すべき理由と、取り組むべき施策について解説します。最適な職場環境の構築に向けてぜひお役立てください。
職場環境の定義
職場環境とは、従業員が働く場所や条件を取り巻くあらゆる要素を意味します。大きく分けると「物理的な要素」「心理的な要素」「業務的な要素」の3つで構成され、それぞれの項目には以下の要素が含まれます。
・物理的な要素:空間レイアウト・動線・照明・湿度温度
・心理的な要素:上司や同僚との関係(ハラスメント・いじめ問題)
・業務的な要素:仕事量・勤務時間・プレッシャー、賃金・労働時間・福利厚生など
業務スペースの設備が整い、快適な室温・湿度が保たれている環境では、業務効率の向上が期待できます。また、従業員が安心して働ける職場を作るためには、信頼関係と風通しのよい社内文化が必要です。さらに、労働条件が適切で、ワークライフバランスが保たれていれば、従業員のモチベーションや定着率も高まります。
物理的・心理的・業務的な要素をバランス良く改善することで、従業員が心身ともに健康で、最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を構築することが可能です。
関連記事:職場環境とは?改善の必要性と働きやすい職場づくりの改善ポイントを解説
職場環境の整備が必要な理由
職場環境は、従業員のパフォーマンスや心身の健康に直結するため、快適な状態を整備する必要があります。ここでは、職場環境の整備が求められる具体的な理由について詳しく解説します。
・労働者の安全・健康を守るため
・組織全体の生産性を左右するため
・人材確保が難化するため
1つずつ確認しましょう。
労働者の安全・健康を守るため
職場環境の整備は、労働者の安全や衛生を確保するために重要です。労働契約法では事業主の責務として「安全配慮義務」が定義され、労働安全衛生法でも「快適な職場環境の形成」が事業主の努力義務として定められています。
従業員が多くの時間を過ごす職場環境が良くない場合、労働災害やハラスメントなどのリスクも高まります。
組織全体の生産性を左右するため
快適な職場環境を整備することは、生産性の向上に寄与します。労働環境は、従業員のモチベーションや企業に対するエンゲージメント、業務効率などに直結する要素です。
オフィス空間の快適さや良好な人間関係、適切な労働条件が整っていない場合、従業員は本来の力を発揮できず、チーム間のコミュニケーションも滞ってしまう可能性があります。また、ミスの増加や業務の遅延を招き、組織全体における生産性の低下につながるでしょう。
人材確保が難化するため
労働者の安全や健康が確保されていない職場では、離職率が高くなり、優秀な人材が定着しにくくなります。少子高齢化による労働力不足が深刻化している現代は、雇用の流動性が高く、従業員が働きづらいと感じればすぐに離職してしまうケースも少なくありません。
また、常に求人を募集している企業や、従業員満足度が低いと噂されている企業は求職者からの人気が低く、新しい人材の確保が難航しやすいでしょう。既存社員の定着率向上はもちろん、優秀な人材を採用するためにも職場環境の整備が必要です。
関連記事:職場環境が悪い会社の特徴とは?働きやすい職場を作るための改善策も解説
労働者が安心して働ける職場環境の整備に有効な取り組み
労働者が心身ともに健康で、安心して働き続けられる職場を実現するには、企業による環境整備が必須です。企業が取り組むべき取り組みとして、以下の2つを紹介します。
・長時間労働の抑制・有休の取得促進
・仕事と家庭の両立支援
・レキシブルな働き方の導入
・福利厚生の拡充
・適切な評価制度の導入
・コンプライアンス研修・ハラスメント対策の徹底
1つずつ確認しましょう。
長時間労働の抑制・有休の取得促進
働きやすい職場環境の条件として、長時間労働の抑制と業務量の調整、有給休暇の取得促進が挙げられます。
若い世代を中心に、ワークライフバランスを重視する価値観が浸透している現代において、労働時間の適正化は企業としての魅力にも直結します。「上司より先に退勤できない」「理由がなければ有休を取りにくい」といった古い慣習は、職場環境の悪化を招き、従業員のモチベーション低下や優秀な人材の流出にもつながります。
近年では、政府が企業に対して年次有給休暇の取得率向上や労働時間見直しガイドラインの周知を促しています。社会全体における働き方改革が進む中で、各企業が長時間労働や有給取得について適切な改善に取り組むことが大切です。
仕事と家庭の両立支援
共働き世帯の増加や少子高齢化の進行により、育児や介護をしながら働く社員が増加しています。企業は、仕事と家庭を両立できる環境を整備する責任があり、従業員の要望に応えることは組織の持続的な成長につながります。また、労働基準法や育児・介護休業法において、企業は育児休業や介護休業の取得を認めることが義務付けられています。従業員がライフステージに応じた柔軟な働き方を選択できる環境を確立することで、定着率の向上にも寄与するでしょう。
フレキシブルな働き方の導入
企業が多様な人材を確保し、個人が活躍できる環境を整えるために有効な対策の1つが、時間や場所にとらわれないフレキシブルな働き方の導入です。具体的には、以下のような制度の導入や整備があります。
・リモートワーク
・フレックスタイム制
・フリーアドレス
・ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)
・ジョブ・シェアリング
コロナ禍を経て、テレワークやコアタイムなしのフルフレックス制を本格導入する企業が増加しています。柔軟な働き方ができる職場環境を整備することで、ライフステージの変化に応じて継続的に働ける従業員が増え、企業の競争力向上も期待できるでしょう。
関連記事:ABWで働き方改革!フリーアドレスとの違いや導入事例も紹介
福利厚生の拡充
福利厚生の充実は、企業が他社との差別化を図る上で重要な手段です。具体的には、住宅手当や通勤手当などの経済的サポートを導入することで、従業員の生活に対する金銭の不安を軽減することができます。
また、オフィス環境を整備し、心身へのストレスを減らしたり、業務や社内コミュニケーションを円滑にできる設備を備えるのも効果的です。例えば、社内に無料のドリンクバーやフリースナックを設置したり、リラックススペース・仮眠スペースを確保したりすると、リフレッシュや集中力アップが期待できます。
その他、各種休暇制度やスポーツジムの優待、健康診断などの健康支援、資格手当や学習費補助など心身の健康やキャリアアップを支援する幅広い制度により、従業員のエンゲージメント向上や離職防止が期待されます。
適切な評価制度の導入
働きやすい職場環境を整備する上で、納得感のある適切な評価制度を整備することも重要です。かつて主流だった年功序列型の評価制度が見直され、現在は能力主義や成果主義、役割主義に基づく人事評価へと移行しつつあります。
評価に納得できる職場環境が整えば、従業員は安心して働くことができるため、主体的にキャリアアップに取り組む人も増えるでしょう。明確で客観的な基準を設定するとともに、営業成績などの数値に加えて、プロセスを踏まえた公正な評価方法を導入する必要があります。
コンプライアンス研修・ハラスメント対策の徹底
コンプライアンスの遵守やハラスメント対策は、快適な職場環境の整備にとどまらず、企業の信頼性や業績を守る上でも欠かせません。近年はSNSやインターネットの普及により、企業の不祥事やトラブルが一瞬で拡散されるリスクが高まっている状態です。
コンプライアンス違反やハラスメント問題が一度でも表面化すれば、企業イメージが低下し、経営全体に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。
定期的なコンプライアンス研修を実施することで、従業員が法令遵守や社会的倫理について理解を深められます。また、パワハラやセクハラなどハラスメントへの対策を強化するために、無記名アンケートや相談窓口の設置、ハラスメントに関する啓発研修の実施なども有用です。
まとめ
職場環境の整備は、従業員の安全や健康を守り、生産性の向上や人材確保にも寄与する重要な取り組みです。行うべき改善策は会社によって異なりますが、長時間労働の抑制や柔軟な働き方の実現、福利厚生や評価制度の整備、コンプライアンス意識の向上など基本を押さえた施策から優先的に進めるとよいでしょう。
オフィス環境の見直しを含めた改善を検討する際には、専門知識や実績が豊富な企業への相談も有用です。
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