会社に仮眠室を設置する3つのメリットとルールづくり

長時間勤務の有無にかかわらず、新たに仮眠用のスペースを設ける企業が増えています。仕事の合間に仮眠を取るのはメリットがあるからです。どのようなメリットがあり、新たに設置する場合は、どのように運用すれば良いのか紹介します。

この記事は約7分で読み終わります。

仮眠室・仮眠スペースを会社に設置するメリット

まずは、仮眠用のスペースをオフィスに設置するメリットについて知っておきましょう。

作業効率がアップする

短時間の仮眠によって、作業効率を改善できることが証明されています。

NASAが1995年に行った研究によると、26分間の仮眠(昼寝)で、パフォーマンスが34%、覚醒度が54%向上したという結果が得られたそうです。

その後、社会心理学者ジェームス・マースが1998年に発表した著書の中で、「パワーナップ(Power-nap)」を提唱しています。パワーナップとは、15~20分程度の昼寝です。仕事のパフォーマンスや学習能力を向上させるだけでなく、心臓病による死亡率の低下も期待されています。

パワーナップは、近年あらゆる企業で取り入れられており、特にグーグルやナイキなど、欧米の企業で積極的に導入されています。

また、厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠指針2014」でも、以下のようなことが示されています。

・睡眠不足が注意力や集中力の低下につながる

・昼間に30分以内の短い昼寝をすると、作業能率の改善に効果がある

仕事の合間に仮眠を取ることで、睡眠不足が引き起こす作業効率の低下を防ぐことができるのです。

心の健康に役立つ

睡眠を取ることは、仕事の能率を上げるだけでなく、心の健康にも役立ちます。睡眠不足が続くと、脳の疲れやストレスが蓄積され、うつ病を発症したり、悪化させたりするケースも少なくありません。

成人であれば、6~8時間ほど睡眠を取るのが望ましいとされていますが、何らかの理由で十分に取れない人もいます。

厚生労働省が2018年に行った「国民健康・栄養調査」によると、一日の睡眠時間が6時間未満と答えた人は全体の38%、6~8時間と答えた人は全体の54%でした。

日本の成人5人のうち、平均して約2人は睡眠不足であることが分かります。

社員が心の健康を損ねるのは、企業にとって経済的な損失にもつながりかねません。昼間の仮眠は、こうした睡眠不足を少しでも解消して脳の疲れを回復し、心の健康を維持する効果があるのです。

企業ブランディングにつながる

企業が社員の健康維持に取り組むと、「社員を大事にする企業」というイメージが定着します。顧客に好印象を与えるだけでなく、採用ブランディングにもつながるでしょう。

仮眠室は比較的低コストで導入できるので、費用をかけなくてもブランドイメージの向上を図ることができるでしょう。

仮眠室・仮眠スペースはルールの運用が大切

会社に仮眠室や仮眠スペースを設置して、これらのメリットを享受するには、ルールの運用が大切です。

全社員が快適に利用し、パワーナップを実現するために、以下のようなルール作りをしましょう。

アラームの音量を決める

仮眠のメリットを最大限に発揮するため、睡眠時間は長くとも30分までに留めておかなければなりません。そのため、パワーナップを実施する多くの人がアラームを設定するでしょう。

しかし、アラームの音が業務スペースに漏れてしまうと、ほかの社員の集中を妨げる恐れもあります。

仮眠室や仮眠スペースを運用する際は、あらかじめアラームの音量を決めておくことが大切です。基本的にはバイブレーションを推奨し、アラームを使用する場合は音量を20以下に絞るなど、周囲の迷惑にならない方法を考えます。

最近は、バイブレーション機能を搭載したアイマスクやリストバンドが数千円で販売されています。企業側で購入して貸与するのも良いかもしれません。

清潔に利用する

仮眠するためのソファやベッドは複数の社員で共有するため、清潔さを維持できるよう使用ルールや掃除担当を決めておきましょう。

例えば、以下のようなルールです。

・枕にはハンカチやタオルをかけて、直に頭が触れないようにする

・使用後に除菌スプレーを散布する

・布団や毛布などは元の状態に整えておく

掃除も、週に1、2回程度は行えるようにしましょう  。

利用時間の上限を決める

限られた仮眠室や仮眠スペースを、できるだけ多くの社員に使用してもらうには、時間の上限を設けておくと良いでしょう。

30分以上の仮眠は逆効果になるため、30分以内での使用を義務付けることをおすすめします。中には、公平性を保ちつつ、待ち時間を作らないよう、予約制を取り入れている企業もあるようです。

もうひとつ注意したいのは、仮眠によって勤務時間が延びたり、残業時間が発生したりするのを防がなければならない点です。あくまでも生産性の向上が目的ですから、仮眠後は業務に集中させて、業務時間内に終えられるよう徹底しましょう。

その上で、定期的に仮眠の効果を検証し、残業時間が増えていたり、生産性が向上していなかったりする場合は、運用の見直しが必要です。仮眠の時間が適切か、ルールは守られているか確認しましょう。自由に使わせるのではなく、ある程度の管理体制が求められます。

仮眠室・仮眠スペースを会社に設置するときのポイント

最後に、オフィスに仮眠室や仮眠スペースを設置するときのポイントを見てみましょう。

業務スペースと区切る

仮眠用のスペースは、業務スペースとは明確に区切っておくことが大切です。別の部屋にするのが望ましいですが、仕切るのであれば、防音対策は欠かせません。

業務スペースの音が仮眠スペースに入るのを防ぐだけでなく、仮眠スペースの音が業務スペースに入るのを防ぐためです。

例えば、個室ブースを設置したり、遮音パネルで外部の音が聴こえるのを防いだりなどです。隙間は遮音テープでふさぐと良いでしょう。

音の大きさはdB(デシベル)という単位で表されます。仮眠するのであれば、20dB以下が目安となります。業務スペースにおける音の大きさが60dBなら、40dBの防音効果があるものを選びましょう。

仮眠に適切な環境をつくる

仮眠に適切な環境として、以下の3つのポイントがあります。

・寝る体勢

・遮光

・ホワイトノイズ

それぞれ説明していきましょう。

1.寝る体勢

長時間勤務で数時間の仮眠を必要とするのであれば、布団やベッドで横になるほうが、しっかりと脳や体を休められます。しかし、30分以内の仮眠では熟睡する恐れがあるため、フラットな寝床はあまり適していません。

睡眠の深さは、脳波によって4つの段階に分けられます。ステージ1~4(浅い眠り~深い眠り)となり、3以上になるとほとんど熟睡状態に入ってしまいます。しかし、完全に横にならなければ2よりも深くはなりません。

そこでおすすめしたいのが、リクライニング式のソファや椅子です。頭や体をしっかりと支えてくれるので仮眠しやすく、完全に横にはならないので、深い眠りに入る心配もありません。頭の周りを遮音パネルで囲めば、さらに防音効果が高まります。

2.遮光

業務スペースと同じ明るさでは仮眠を妨げてしまうため、光の対策が必要です。

スペースごとに照明を調節するのが難しければ、アイマスクをつけてもらうなどして、目の周りだけでも光を遮れるようにしましょう。先ほどのように、頭の周りを遮音パネルで囲むのも、光を遮るのに効果的です。

3.ホワイトノイズ

もし、仮眠スペースだけで音を流せるのであれば、「ホワイトノイズ」をかけるのも良いといわれています。例えば、海が波打つ音や川のせせらぎ、雨の音などの自然音などがあります。

ホワイトノイズには、雑音を覆い隠して聴こえにくくする効果があると言われ、あらゆる周波数の音がバランス良く聴こえる状態になります。特に仮眠スペースが業務スペースと隣接している場合は、眠りに集中しやすくなるでしょう。

このように、オフィスに仮眠室や仮眠スペースを設置するには、ルールの運用や環境の整備が重要です。作業効率を高め、ブランドイメージの向上につなげられるよう、管理体制も整えていきましょう。

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自社に適した仮眠室・仮眠スペースについて相談したい方も、一度お問い合わせください。

まとめ

仮眠を取ると、脳の疲れが解消され、作業効率の向上や心の健康の維持に役立ちます。社員の健康を大切にする企業として、企業ブランディングにもつながるでしょう。

導入にあたっては、仮眠しやすい環境づくりをすると共に、ルールの運用が重要です。仮眠室・仮眠スペースのメリットを享受するため、企業側の管理体制も整えておくことをおすすめします。