インナーブランディングとアウターブランディングの違いとシナジー効果とは

企業のブランド価値向上には、社内に向けたインナーブランディングと社外を対象としたアウターブランディングが不可欠です。本記事では、ブランド価値向上を図るために、インナーブランディングとアウターブランディングの効果と必要性について解説します。

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企業のブランド価値向上には、社内に向けたインナーブランディングと社外を対象としたアウターブランディングの両方を必要とします。しかし、それぞれの効果をきちんと理解しないまま、「どちらか一方だけで良いのではないか」と考えられることも多いのが現状です。

本記事では、適切にブランディングを実施するために、インナーブランディングとアウターブランディングのそれぞれのメリットと効果的に実施するポイントについて解説します。

インナーブランディングとアウターブランディングの違い

企業のブランディングには、インナーブランディングとアウターブランディングがあります。どちらもブランディング戦略の一環ですが、それぞれ役割が異なります。そもそもブランディング活動は、企業のブランド価値に関するステークホルダーの理解を深め、認知拡大を目的とするものです。

インナーブランディングは、社員を対象として自社のブランド価値の理解を浸透させることを指します。成功すれば、社員は自社での仕事にやりがいを感じるようになり、自社の魅力を顧客に効果的に伝えることが可能となるでしょう。結果として、自社の商品やサービスが市場で認められやすくなり、ブランド価値の向上につながります。

他方で、アウターブランディングは、主に顧客や取引先、消費者といった社会を対象とし、自社のブランド認知を拡大することです。さらに、競合との差別化を図ることができ、企業の成長につながります。

自社の企業価値を高めるためには、インナーブランディングとアウターブランディングの両方が不可欠です。車の両輪のようにそれぞれが補完し合う関係性にあるため、両方を効果的に実施することが企業の成長に必要だといわれています。

インナーブランディングとは

前述のとおり、インナーブランディングとは企業が自社の社員に向けて実施するブランディングのことです。社員に自社のビジョンや経営理念を理解してもらい、社内に浸透させる取り組みを指します。

インナーブランディングを実施して、自社のビジョンや経営理念が浸透すれば、それらに基づいた行動につながり、質の高い商品・サービスの提供が実現します。結果として、顧客が自社のブランドに良い印象を持つようになり、企業に対する信頼感が高まったり利用・消費が増えたりすることが期待できます。

市場の中での企業優位性を維持するためにも、インナーブランディングは不可欠といえるのです。

関連記事:インナーブランディングとは?目的・メリット・手法から成功事例まで解説

インナーブランディングが注目されている背景

昨今、インナーブランディングが注目を集めている背景には以下の3つがあります。

・雇用形態の多様化
・グローバル化
・サステナビリティ経営の普及

終身雇用が一般的であった時代とは異なり、近年は雇用形態が多様化しています。企業は専門や職種の異なる人材を雇用する傾向があるのが現状です。こうした傾向に拍車がかかり、企業内でブランド価値の理解を浸透させる必要性が出てきています。

同時に、社会のグローバル化も加速しています。グローバル化により新しい技術が生まれやすくなり、企業は競争優位性を勝ち取るために、従業員一人ひとりのパフォーマンスを上げ、市場の変化に対応する必要性が高まっているのです。

さらに、カーボンニュートラルやSDGsなど、社会への貢献度の高さも企業の価値を計る指標となったことから、近年はサステナビリティ経営が普及しています。このサステナビリティ経営を後押しするためには、社員の価値観を変えていかなければなりません。

こうした背景から、インナーブランディングを実施して、企業の価値観への理解を深め、社員が一体となって業務に取り組める組織を作ることが求められているのです。

インナーブランディングのメリット・効果

企業のブランド価値向上など、インナーブランディングにはさまざまなメリットがあります。

・自社のブランド価値の向上
・社員のエンゲージメント向上
・社内コミュニケーションの活性化
・人材の定着率の向上
・組織のパフォーマンスアップ

ここでは、上記のとおりインナーブランディングのメリットについて解説します。

自社のブランド価値の向上

インナーブランディングの実施により、社員が意識統一を図ることができるため、ブランド価値向上につながる点がメリットといえます。

インナーブランディングにより、各社員が自社の共通するビジョンや企業理念などへの理解を深めることで、組織として進むべき方向性が明確になります。社員の社内文化に対する意識や価値観が一致することで、社外へ発信するメッセージに説得力が増し、顧客のブランドへの信頼性や誠実性の強化につながるでしょう。

結果として、市場における競争力を高めることにもつながるのです。

社員のエンゲージメント向上

社員の会社への愛着や貢献意識を高め、社員のエンゲージメント向上に役立つ点も、インナーブランディングのメリットの1つです。

社員が企業のブランド価値への理解を深めることで、自社の魅力を再認識できます。各社員が会社や仕事への愛着を持つようになると、社員全体が仕事に対して熱心に取り組むようになり、全員が同じ目標に向かって一体感を高めることが可能です。また、生産性や創造性の増進も期待できます。

社員のエンゲージメントの向上は、企業のブランド価値を構築することに貢献するでしょう。

社内コミュニケーションの活性化

インナーブランディングの実施で、社内のコミュニケーションが活発化し、円滑な業務遂行と組織の効率的な運営につながるというメリットもあります。

社員が自社のブランド価値への理解を深める過程では、円滑なコミュニケーションを図り、透明性のある情報を共有する必要があります。結果、社員が自身の考えを発信しやすい環境が構築され、誤解や連絡ミスを防止し、他チームとの連帯感や協調性を増進させることが可能です。

誰とでも気兼ねなく活発にコミュニケーションを取れる心理的安全性が高い組織では、多様な意見が出てくることから、イノベーション創出にもつながるでしょう。

人材の定着率の向上

インナーブランディングは人材の離職防止、定着率の向上にも寄与するといえます。

インナーブランディングを適切に実施することで、社員は自社への愛着や仕事へのやりがいを感じられるようになります。貢献意識が高い社員同士でコミュニケーションが活性化すると、さらに社員の一体感や満足度が高まるという好循環が生まれ、働きやすい職場環境が維持されるようになるでしょう。

人手不足が課題となる昨今では、インナーブランディングは人材確保にもつながるのです。

組織のパフォーマンスアップ

インナーブランディングにより個人だけでなく、組織のパフォーマンスも向上します。

まず、同じ目標達成に向けて協力して業務に取り組める環境は、社員のエンゲージメントやモチベーションを向上させ、個人のパフォーマンスが高まります。また、社内コミュニケーションの活性化と人材の定着率アップにより、チームの連携力が強化されれば、組織全体の業務効率化や生産性の向上が期待できます。

組織のパフォーマンスがアップすれば、自社の商品やサービスのブランド価値が向上し、競合との差別化が図れます。市場における競争力の向上も期待できるでしょう。

関連記事:インナーブランディングの成功事例10選|施策を失敗させないコツとは?

アウターブランディングとは

社内に対して実施するインターブランディングに対して、企業が社外に向けてブランド価値を向上させるための戦略が、アウターブランディングです。たとえば、顧客や取引先、消費者などを対象とします。

自社のブランドを外部に拡散させる戦略を指し、社外の人に自社の商品やサービスを認知してもらうための戦略のことです。対象が異なるもののインナーブランディングと同じ、その企業のブランド価値を伝える戦略を指します。

企業のブランド価値を効果的に拡散させるためには、インナーブランディングとアウターブランディングの両方を実施することが大切です。

アウターブランディングのメリット・効果

企業のブランド価値向上には、インナーブランディングだけでなく、アウターブランディングも欠かせません

ここでは、以下のとおりアウターブランディングのメリットや効果について解説します。

・ブランド認知の向上
・企業の好感度の向上
・購買意欲の向上
・ステークホルダーの信頼獲得
・長期的な企業の成長

1つずつ確認しましょう。

ブランド認知の向上

アウターブランディングを実施することで、自社のブランドが広く拡散され、ブランド認知の向上が期待できる点は重要なメリットといえます。

ブランド価値がポジティブな評価を受け認知を広げると、商品やサービスを初めて利用する場合の心理的ハードルを下げることにつながります。結果として、新規顧客を獲得しやすくなるでしょう。また、取引先から自社のブランドについて共感を得ることで、新規顧客の獲得につながるだけでなく、継続的な利用も期待できます。

企業の好感度の向上

継続的にアウターブランディングを実施することで、社会からの企業に対する好感度の向上が期待できます。

人は、同じものに触れ続けると、警戒心が薄れ、関心や好意を持ちやすくなる心理を持っています。マーケティングの世界において「ザイオンス効果」と呼ばれています。企業のブランドへの認知が広がり続ければ、商品やサービスはもちろん、その会社に対する好感度が継続的に高まっていくのです。

効果的にアウターブランディングを実施するためには、一貫したブランドメッセージを発信し、継続して認知を広げていくことが重要です。

購買意欲の向上

企業の商品やサービスへの認知度や好感度が高まれば、顧客の購買意欲も向上します。

人が、商品やサービスを購入するまでには、まず商品やサービスを「認知」しなければなりません。続いて「興味」「関心」を持つことで、初めて購入の検討の段階に入り購入へとつながります。つまり、購買意欲を高めるには、顧客が購入に至るために必ず必要な「認知」を広げることが重要なのです。

アウターブランディングでは、特に購入に至るための入口である「認知」を拡散できます。商品・サービスへの認知を高めることで、自社の魅力を知ってもらうことができるでしょう。

ステークホルダーの信頼獲得

アウターブランディングにより企業ブランドが社会で認知されると、ステークホルダーからの信頼獲得も可能です。

自社の商品やサービスの魅力が認知され、購買につながった状態は、ブランド価値が高まっていることを意味します。ブランド価値が高い企業は、安心感を与え、顧客・取引先・株主といったステークホルダーからの信頼獲得にもつながります。

また、各方面のステークホルダーからの信頼を得ていること事態が、企業の評価につながり、競争優位性の更なる向上が期待できます。

長期的な企業の成長

アウターブランディングによってリピーターや優良顧客を獲得することで、長期的な企業の成長が期待できます。

アウターブランディングでは、会社や商品・サービスの魅力が発信されます。そのメッセージを受け取った人たちが好感を持ち、実際に商品やサービスを購入した際に、ブランドイメージと差異がなければ、購入に対する満足感が生まれます。その満足度が高ければ、長期的な顧客=企業ブランドのファンを獲得できるでしょう。

一貫したブランドメッセージの発信と、メッセージから得られる魅力を商品やサービスに感じられれば、企業の長期的な成長につながるのです。

インナーブランディングとアウターブランディングの連携を!

ここまで会社のブランド価値向上に不可欠なブランディングについて解説してきました。社内に向けたインナーブランディングと社外を対象としたアウターブランディングは、両方を実施することでより高い成果を発揮することが可能です。

最後は、インナーブランディングとアウターブランディングの相乗効果を発揮するために、会社が取り組むべきことを解説します。

・一貫性のあるブランドづくりに取り組む
・全社的にブランド戦略に取り組む

具体的な取り組み内容についてみていきましょう。

一貫性のあるブランドづくりに取り組む

ステークホルダーがブランドに接触する機会に、イメージや価値観にぶれを感じさせないよう、一貫性のあるブランドメッセージを発信することが大切です。

長期的なブランド構築には、ステークホルダーからの信頼を獲得することが必要不可欠です。ただしブランディングにおいて、社内外でブランドメッセージが異なると、会社への信頼度の低下につながりかねません。

具体的には、トップメッセージと広告でのブランドメッセージにずれがあったり、顧客によって異なるメッセージを発信していたりすると、ステークホルダーからの評価が低下するおそれがあります。

全社的にブランド戦略に取り組む

効果的にブランディングを実施し、ブランドの認知を拡大させるためには、全社員の認識を統一し、会社全体で取り組む必要があります。各社員の意識統一を図るために、会社にはビジョンや企業戦略といったブランド価値の明確な提示が求められます。

ただし、「ブランディング」に関して、定義があいまいになっているケースもあります。ロゴやホームページ、広告宣伝などは、コミュニケーション戦略であり、外部から目に見える表面的なものです。ブランド戦略とは、コミュニケーション戦略やマーケティング戦略、会社のミッション・ビジョン・バリューを具現化する戦略の総称です。

ブランド戦略に取り組む場合は、広告や宣伝のような表面的な取り組みに捕らわれず、ブランド戦略全体における認識を統一しましょう。

まとめ

本記事では、企業のブランド価値向上のために不可欠なインナーブランディングとアウターブランディングについて解説しました。

社内に向けたインナーブランディングの実施は、社員のエンゲージメントやモチベーション向上につながります。他方、社外に向けたアウターブランディングにより、企業の認知拡大やステークホルダーからの信頼獲得が期待されます。

企業のブランド価値向上のためには、インナーブランディングとアウターブランディングの両方のメリットをきちんと理解し、効果的に実施することが重要です。

なお、オフィスデザインの改装は、インナーブランディングとアウターブランディングの両方につながる取り組みです。社員の働きやすさ・エンゲージメントの向上や経営理念の浸透においては、社内向けの戦略といえます。対して、環境の整ったオフィスは企業ブランドの象徴的な存在となり、採用戦略や企業ブランドの発信、認知度・企業価値の向上につながる点で社外向けの戦略です。

ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。

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