インナーブランディングの成功事例10選|施策を失敗させないコツとは?

インナーブランディングを適切に実施することは、企業のブランド価値向上に不可欠です。本記事では、インナーブランディングの成功事例を紹介します。企業独自の成功事例を知ることで効果的な進め方を理解し、自社の施策につなげてください。

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企業のブランド価値向上のためには、自社の企業理念やビジョンに即して適切にインナーブランディングを実施することが不可欠です。しかし、インナーブランディング施策の効果的な進め方が分からないというケースが多いでしょう。

本記事では、インナーブランディングの成功事例を紹介したうえで、ブランド価値の向上という成果を出すためのポイントも解説します。本記事を参考にして、自社にとって最適なインナーブランディングを実施しましょう。

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インナーブランディングの成功事例10選

インナーブランディングを効果的に実践するために、企業の成功事例をみていきましょう。

ここでは、以下10社における事例をご紹介します。

・Google
・株式会社オリエンタルランド
・ヤンマー株式会社
・スターバックス コーヒージャパン
・ぺんてる株式会社
・ソニー株式会社
・株式会社リクルートライフスタイル
・Zappos
・カルビー株式会社
・株式会社ギフトホールディングス

ポイントは、各企業の柱となる企業理念やビジョンを従業員に適切な方法で浸透させ、行動につなげている点です。

Google

Free Macro view of a smartphone displaying Google and other app icons on the home screen. Stock Photo

Googleが実施しているインナーブランディング戦略の根底には、自由で革新的な思考を求める社風があります。代表的な施策として挙げられるのが「20%ルール」でしょう。従業員の創造性とイノベーションを最大限引き出すために、社員の勤務時間のうち20%を「普段の業務とは異なる」業務に割いてよいという内容です。

従業員が各々自分の情熱を生かせる時間を設けることで、仕事に対するモチベーションは向上します。自由な社風を尊重するGoogleのインナーブランディングは、高い従業員満足度を誇ります。

結果として、革新的なアイデアが生まれやすくなり、GmailやGoogleマップ、Googleニュースといった数々の成果を生み出しました。インナーブランディングが常に市場をリードする企業ブランドを生み出しているといえるでしょう。

株式会社オリエンタルランド

東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを運営していることで知られる。株式会社オリエンタルランド。同社のブランディングでは「顧客に夢と魔法を提供する」という確固たるイメージを確立しています。各従業員がブランド意識を強く持ち、高品質な接客サービスにより社内文化を体現しているのです。

オリエンタルランドでは、従業員に向けてブランド教育プログラムを提供しています。この教育プログラムでは、基本的には行動指針や考え方を学びますが、各従業員の業務がブランド価値価値にどう影響するのかも徹底して共有されます。その結果、従業員自らがブランドを具現化し、サービスとして目に見える形で顧客に向けて提供することができるのです。

こうした教育プログラムにより、同社ではサービスマニュアルがなくても高品質な接客サービスを提供できています。

ヤンマー株式会社

ヤンマー株式会社は、「資源を無駄にせず社会の発展に寄与する」ことを理念に掲げ、産業機械の製造により事業を拡大してきました。そのようなヤンマーでは、「お客様とともにヤンマーの価値を創り出していく」ことをブランディングとして注力しています。

具体的には、ブランディング実現の土台となる従業員に対して、「HANASAKA」の価値観を浸透させるためのワークショップを実施。HANASAKAとは、創業時から受け継がれてきた価値観で、「人の可能性を信じる」「挑戦を後押しする」ことを表現しています。

ワークショップは、すでに日本、アメリカ、シンガポールなど海外の主要拠点で実施されされました。「HANASAKA」という共通の定義について各従業員が考え、言語化することに重点を置いています。ヤンマーの企業活動の基礎となるHANASAKAを従業員が自分事として考えることで、従業員の自発性や自主性を養うことを目的としています。

このワークショップの取り組みにより、社員が自発的に行う業務改善量が増加したといいます。

スターバックス コーヒージャパン

Free Starbucks Coffee photo and picture

世界中であらゆる世代からの支持を集めているアメリカ・シアトル発のコーヒーチェーンであるスターバックスコーヒー。スターバックスのインナーブランディングは、企業が従業員の満足度と働きやすさに重点を置いた行動指針を掲げている点が特徴です。行動指針には、「お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくること」が設定されています。

ただし、具体的なマニュアルはなく、コミュニケーションを「スタースキル」と呼び、従業員に以下の3つの内容を常に意識させています。

・自信を保ち、さらに高める
・相手の話を真剣に聞き、理解する努力を怠らない
・困ったときには助けを求める

注目すべきポイントは、スタースキルについて企業側が明確に定義づけしていない点です。各従業員の受け止めにゆだね、それぞれの考えにもとづいて行動することに重きを置いています。

結果として、マニュアルがなくても高品質なサービスの提供につながっています。

ぺんてる株式会社

ぺんてる株式会社では、インナーブランディングのための企画を「会社の楽しさ」を伝えるための武器として活用しています。アイデンティティの確立を目標とし、「正解からはみだそう」というブランドメッセージを掲げてインナーブランディングを進めました。

具体的には、シンポルプロジェクト「Pentel RAKUGAKI WEEK」を全世界の従業員で実施し、グループごとに絵を描き、茨城工場の敷地に展示。また「Pentel DAY」というリモートでのファンイベントも開催しています。

多くのイベントの開催により、インナーブランディングに関する取り組みの活性化につなげている代表例です。従業員もイベントに参加することで、会話が増え、「表現するよろこびをはぐくむ」というコーポレートビジョンに立ち返って業務にあたるようになりました。

結果として、2022年度のブランディング事例コンテストで優秀賞を受賞しています。

ソニー株式会社

ソニー株式会社のインナーブランディングでは、社内から新規のビジネスアイデアを募集し、事業化を推進しています。

取り組みの背景には、社内で「新しいアイデアはあるが、どこに持っていったらよいのかわからない」という声が聞かれたことにありました。そこで、多くの従業員が新規事業のアイデアを提案できる仕組み作りに取り組みます。

事業化を検討する際には、アイデアをムービーや3Dプリンターなどで目で見える形で提案してもらいます。また、アイデアが事業として実現されるまでの過程も見える化。自分のアイデアが実際に事業として世に出ること・実現する過程を実感できることにより、従業員のモチベーションは大きく向上しました。

この取り組みにより、ソニーはスマートウォッチ「wena wrist」や産業用ドローンの「エアロセンス」、ロボットトイ「toio」など14の新事業を創出し、グループ全体の利益を増加させることに成功しています。

株式会社リクルートライフスタイル

「じゃらん」や「ホットペッパーグルメ」など生活に身近な分野に関する事業を展開している株式会社リクルートライフスタイル。同社では、全国で働く従業員の防災リテラシーを高めることでインナーブランディングを推進しています。

企業として従業員やその家族を守るために、あらゆる災害に備え、防災・減災・縮災するための「らすた防災プロジェクト」を発足。オフィス・仕事中の被災に対する行動マニュアルを制作・配布し、全従業員が有事の際に自分を優先して守ることを社内に浸透させました。また、社内にAEDを設置し、衛生用品や食料品も備蓄することで、防災インフラも整備。

実際に、2018年に発生した北海道胆振東部地震では、らすた防災プロジェクトの備蓄品やAEDが現地の災害対策本部で配布されました。日ごろから会社が有事に十分に備えているという安心感は、従業員のエンゲージメント向上に寄与しています。

Zappos

アメリカのラスベガスに拠点を置く、靴のネット通販会社「Zappos」では、自由で幸福な職場環境の構築を目指すことでインナーブランディングに取り組んでいます。

Zapposでは、従業員の服装や髪型がすべて自由。デスクにおいても装飾や机の高さなどに決まりはなく、各々が自由に飾り付けをしています。オフィス内にはボールプールで遊ぶスペースや大きな水槽、フィットネスジムを設置。さらに、ペットを連れて出社することもでき、休憩ルームでのお昼寝も推奨されています。

従業員の幸せを考えた企業文化は、従業員が給与以上の意義を持って働けるエンゲージメントを構築しました。従業員たちは会社に愛着や働くことに幸せを感じており、顧客にも同じように幸せを届けるため、決められたルールではなく、自分の判断で行動します。

結果、Zapposは充実したカスタマーサービスが評価され、クチコミによる新規顧客開拓が43%、顧客のリピート率が75%という驚異的な顧客満足度を獲得しています。従業員へのインナーブランディングが、企業全体のブランディングに繋がった代表例です。

カルビー株式会社

カルビー株式会社では、社内報の役割を重要視したインナーブランディングを実施しています。紙とWEBを組み合わせて、社員参加型の形態で社内報を運営している点がポイントです。2012年からスタートしたWEB版では、社長が入れたコメントに対して社員が匿名でコメントを付けられます。

大手企業では、現場の従業員と経営層との距離が開きがちです。しかし、社内報を通して発信・返信できることで、現場と経営層のコミュニケーションが活性化されました。WEB版社内報上で、課題と解決策が議論されることもあります。コミュニケーションを重ねるうちに信頼関係が構築され、さらに従業員からの意見や反応は増えていきました。

こうした取り組みにより、「経団連推薦社内報」にて企画賞を受賞しているほか、「社内報アワード2020」を受賞。育休中で社内の情報を得られず不安になりがちな従業員の復帰の安心感を与えるなど、会社へのエンゲージメントや働くことへのモチベーション向上につながっているといえるでしょう。

株式会社ギフトホールディングス

株式会社ギフトホールディングスでは、従業員の働きやすい環境の整備に注力しています。なかでも、渋谷サクラステージSHIBUYAタワーへの本社オフィスの移転により、ブランディング強化と働きやすさを追及したデザイン性の高いオフィス空間を構築しました。

同社は、「シアワセを、自分から。」という企業理念のもと、ともに働く仲間や顧客といった「大切な人」を笑顔にすることを重視しています。前述した本社移転の背景には、仕事を楽しめる環境のもと、サクセスストーリーを描けるような環境を作りたいという思いがありました。

新オフィスの入口やワークエリアにはレッドカーペットが敷かれ、従業員が会社に誇りやあこがれを感じられる演出がなされています。さらに、フリーアドレス制が導入されたので、業務に合わせて個別ブースやコミュニケーションスペースを利用することが可能です。オフィスの目に入りやすい壁には、企業理念が記されており、従業員の意識や価値観の統一につながる工夫もあります。

移転によるオフィス空間の再構築により、求人への応募数が増加しているほか、移転後の離職率は低下しています。

参考:株式会社ギフトホールディングスの事例詳細

インナーブランディングの施策を成功させる秘訣

自社でインナーブランディングを成功させるためには、前述した成功事例を把握して自社に適切な方法を実践していくことが重要です。ただし、インナーブランディングの取り組みを開始するだけでは適切とはいえません。

ここでは、インナーブランディング施策を実践して実際に成果を挙げていくために必要な以下の秘訣を紹介します。

・社員に求める価値観・行動を明確にする
・ブランドを体現する行動を推奨・評価する文化を作る
・社員に自由と責任を与える
・継続的に戦略の見直しと改善を続ける

インナーブランディングに取り組んだ企業がどのようなテクニックで成功したのかを交えながらみていきましょう。

社員に求める価値観・行動を明確にする

単に企業側が経営理念やビジョンを共有するだけでは、従業員の具体的な行動につなげられません。ブランディング成功には、従業員が企業理念や行動規範に共感して、実践をとおして企業に貢献しているという自覚がもとめられます。そのため、ブランド価値や求める行動を明確に提示し、ブランド価値を従業員へ浸透させることが重要です。

たとえば、株式会社オリエンタルランドによる、ブランド価値の徹底した共有が良い例でしょう。株式会社ギフトホールディングスのように、オフィス内に社員に求める価値観・行動を常に目に入るようにしておくのも有効です。

ブランドを体現する行動を推奨・評価する文化を作る

企業の経営理念や行動規範を理解していても行動へ移さなければ、インナーブランディング施策が成功しているとはいえません。従業員に積極的に行動に移してもらうためには、ブランド価値を体現する積極的な従業員の行動が、評価・賞賛される社内文化の構築が不可欠です。また、現場で働く従業員が気兼ねなく行動できるよう、経営層や管理職が従業員の挑戦を妨げないことも必要となります。

たとえば、ソニー株式会社のように、社内からビジネスアイデアを吸い上げたうえで、第三者が適切に評価できるように見える化するといった取り組みが、従業員の挑戦を支えるために効果的です。

社員に自由と責任を与える

企業が、社員を信じて彼らに判断や行動をゆだねることも欠かせません。

企業がブランド価値やビジョンを明確に提示することが重要である反面、従業員の自律性を促す環境の構築も必要です。企業理念やビジョンを提示され、常に受け身の姿勢で仕事をしていてはブランド価値を体現できません。社員に自由と責任を与えることで、自律性が養われ、マニュアルとルールで固めるよりも高い品質の業務を実現できます。

たとえば、スターバックス コーヒージャパンのように、日ごろのコミュニケーションの重要性を従業員に意識させたうえで、具体的な受け止めやスキルの定義づけは従業員に任せてみましょう。受け身の業務が減り、自ら考え、最適な行動や効果的な行動へ促すことにつながるかもしれません。

継続的に戦略の見直しと改善を続ける

インナーブランディングを実施して成果を出すためには、長期的な視点が必要です。適切にPDCAを回し、継続的な戦略の見直しと改善を図ることが求められます。具体的には、3年・5年後の目標を達成するための長期戦略が必要といえるでしょう。

ブランド価値の浸透には、従業員との密なコミュニケーション、さらに定量的・定性的な分析とブラッシュアップが必要です。また、施策から顧客に浸透するまでには一定の時間がかかります。さらに、商材によっては、シーズンによって成果が現れるまでの期間が異なるため、効果測定のタイミングもあわせて検討することが重要です。

企業によって成果までにかかる時間は異なります。慎重かつ長期的な視点で、実施していくことが肝心です。

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まとめ

本記事では、インナーブランディングの成功事例と、効果的に実施するための秘訣を解説しました。成功事例を踏まえたうえで、他社の事例をそのまま真似るのではなく自社の企業理念やビジョンに即した施策を検討し、実施することが大切です。

具体的には、従業員の自律性を尊重しつつ、企業のブランド価値を従業員に明確に示してきちんと浸透させることを重視しましょう。ブランドを体現する行動の評価や、定期的な効果測定も欠かせません。

インナーブランディング成功までの課程や取り組みは企業によってさまざまです。企業独自の視点でブランディングを実現するために、本記事の成功事例を参考にしてみてください。例えば、オフィス空間を見直し、自社らしい要素を取り入れるだけでもインナーブランディングに効果があります。

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