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オフィスの一人当たりの面積とは?
オフィスの一人当たりの面積は、社員一人当たりに割り当てられるスペースの広さを指します。適切な面積を確保することは、社員の働きやすさと働く環境への満足度につながります。
一人当たりの面積が狭い場合、オフィスの快適さが損なわれ、集中力が低下しストレスを感じてしまう恐れがあります。一方で広すぎる場合も、余分なコスト負担となり、社員同士のコミュニケーションも減少する可能性があります。適切なスペースのバランスを見つけ、最適な設計を行うことが重要です。
オフィスの一人当たりの面積の目安
さて、オフィスの一人当たりの面積はどのくらいを目安に考えれば良いでしょうか?一般的な適正値としては、「一人当たり3坪(10㎡)」 が一つの目安とされています。以下は、オフィス家具メーカーや大手不動産企業がWEBページで案内している目安です。
メーカーや不動産企業の考え方で、バラつきがありますね。データが作られた時期もそれぞれ違うので、どの数字を目安にすればよいのか分かりづらいですね。ここでは、実際のオフィス事例より、最適な一人当たりの面積目安を探っていきましょう。
なお法律「労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)事務所衛生基準規則 第2章 第2条)にて、面積ではありませんが、オフィスの気積について以下のように定められています。
「事業者は、労働者を常時就業させる室の気積を、設備の占める容積及び床面から4メートルを超える高さにある空間を除き、労働者一人について、10立方メートル以上としなければならない。」
ヴィスの場合
それでは、ヴィスのオフィスを例に挙げて検証してみましょう。今回は、ヴィスの東京、名古屋、大阪のそれぞれの、社員数と面積を調査しました。さらに、2016年2月に移転をした東京オフィス、2017年3月にサテライトオフィスを開設した大阪オフィスの移転・開設前後の変化も比較をしてみました。
さて、いかがでしょう?基本的にはどのオフィスも一人当たりの面積が3坪(10㎡)よりもコンパクトなオフィス空間となっています。
ヴィスではグループアドレスの導入や、オリジナルの収納付きの造作フリーアドレスデスクを使用するなど、効率的なオフィスレイアウトを実現しているため、狭いと感じることはありません。
しかし、移転前の東京オフィスとサテライト開設前の大阪オフィスにも着目してみると、どちらも一人当たりの面積が2坪よりも狭く、人数や規模に対して適正な広さとは言えませんでした。
実際に移転前の東京オフィスを使用していた印象としては、非常に窮屈さを感じていました。増員に伴い、既に2回のレイアウト変更を行っていましたが、フリーアドレスデスクは満席で、デスク間の距離も狭く、チェアの後ろを通るのも難しいほど。さらに、書類や備品の保管スペースの確保にも苦労していました。打合せスペースや会議室も限られており、増加するプロジェクトチームや来客に対応する場所が不足している状況でした。
これは、オフィススペースが業務効率に大きく影響を与えることを身を持って実感した機会でした。スムーズな動線、整理された収納、思い立ったときに集まれる打合せスペースの確保は、生産性に直結します。つまり、オフィス環境を改善することで、業務効率を向上させ、企業の生産性を高められるということです。オフィスのスペースは、人員計画と働き方改革に大きく結びついているということですね。
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日経ニューオフィス受賞オフィスの場合
それでは次に、2016年に日経ニューオフィス賞の推進賞を獲得したオフィスを例に挙げてみましょう。2016年の推進賞を受賞したオフィスは全国で16社です。そのうち、研究所や店舗を含むオフィスを除外し、計10社の事例を検証したところ、結果は以下の通りとなりました。
やはり企業によって一人当たりのオフィス面積はさまざまだということが分かりますね。業種や規模によって、オフィスの使い方が違うので、このような差が生まれるのも当然です。以上の情報を踏まえると、オフィスにおける一人当たりの面積として、2.5坪から4.5坪が妥当な広さだと考えられるでしょう。
オフィスの1人当たりの面積が大きくなる場合
前述のニューオフィス推進賞受賞オフィスの中でも、特にオフィス面積を広く取っていた企業Fと企業Gは、外資系のバイオテクノロジー企業と、弁護士事務所でした。
外資系の企業は、一人ひとりの社員に対して、デスクスペースを広くとる傾向があります。L字型のデスクがパーテーションで囲まれていたり、マネージャークラスの社員には個室が割り当てられたりすることが一般的で、比較的ゆったりとしたオフィスレイアウトが必要となります。そのため、一人当たりの面積が5坪を超えることもあります。
また、弁護士事務所や会計事務所などは、機密性の高い個室での打合せが必要です。大規模な事務所では、弁護士ごとに個室を設ける場合もあります。さらには、保管すべき書類や参考図書が通常のオフィスよりも多くなるため、倉庫スペースや書庫スペースが必要となります。そのため、全体的に一人当たりの面積が4坪以上と大きくなる傾向があります。
個人の席を広く確保したい、役職者の個室や会議室を多数設置したい場合は、通常よりも一人当たりのオフィス面積を大きく考えて物件を検討する必要がありそうです。
オフィスの1人あたりの面積が小さくなる場合
前述のニューオフィス推進賞受賞オフィスの中で、最も一人当たりの面積が小さかったのは企業Jで、その面積は5.3㎡、つまり1.6坪でした。実は、企業Jはオフィスの規模が非常に大きい企業で、オフィスの総面積が約19000坪、総席数も12000席という大規模オフィスなのです。このような規模のオフィスでは、当然ながら会議室やリフレッシュスペースを多くの社員と共有する必要が生じるため、必然的に一人当たりのオフィス面積は小さくなります。
また、フリーアドレスやフレックス制度の導入は、オフィスの総面積を小さくできます。例えば、フリーアドレスで社員数分の席を用意する必要がない場合や、フレックス制度で全社員が揃って出社する時間がない場合、通常のオフィスの8割程度の席数を確保するだけで良く、スペースを削減できます。
その他にも、デスクトップPCからノートPCへの切り替えによって、デスクの幅を狭めたり、ペーパーレス化によって書庫スペースを削減したりすることが可能です。
新型コロナウイルスの影響を受けて変化したオフィス面積の考え方
新型コロナウイルス感染症の蔓延は、オフィス環境にも大きな影響を及ぼしました。多くの企業がリモート出社や新しい働き方を採用するようになり、これに伴い、オフィス面積の考え方も変化しています。
新しい働き方の導入により、従来のように毎日全社員がオフィスに出社するというスタイルだけでなくなりました。オフィス面積の求め方も、従来通りの「オフィス利用人数×一人当たりの面積」だけでなく、「席数×一人当たりの面積」で考える2つの計算パターンに分かれました。
従来通り、全社員が毎日オフィスに出社する企業は利用人数での計算方法を、リモートワークなど柔軟な働き方を推奨する企業は席数での計算方法を使用すると、企業に合わせた最適なオフィス面積が計算できるでしょう。
オフィス面積の計算方法
オフィス面積を正確に計算するためには、企業の働き方に合わせて適切な計算方法を選択する必要があります。以下では、オフィススタイルのパターンに合わせたオフィス面積の計算方法について、詳しく説明します。
オフィス利用人数で計算する場合
オフィス利用人数で計算する方法は、コロナ禍発生以前から使われているオフィス面積の求め方です。この方法は、従来通り全社員の出社を前提としており、オフィス利用人数とオフィス在籍人数がほぼ同値となる企業であれば有効です。以下の式で表されます。
「オフィス面積=オフィス利用人数(=在籍人数×出社率)×一人当たりの面積」
この計算式を用いることで、オフィスの必要な総面積を計算できます。コロナ禍収束後の出社率の意向は企業によって異なるため、企業の具体的な働き方に合わせて使用してください。
席数で計算する場合
席数で計算する方法は、働き方改革や新型コロナウイルスの影響により、新しく採用されるようになったオフィス面積の求め方です。この方法は、リモートワークなど柔軟な働き方を取り入れており、オフィスを利用する人数が流動的となっている企業で有効です。以下の式で表されます。
「オフィス面積=席数(=在籍人数×出社率×席余裕率)×一人当たりの面積」
席余裕率はオフィスに出社する社員一人に対する席数割合を意味しています。この計算式を使用することで、新しい働き方に対応したオフィス面積が計算できます。
オフィスの一人当たりの面積を適正化する方法
オフィスの一人当たりの面積を適正化するには、ペーパーレス化、オフィスレイアウト変更、フリーアドレスやリモートワーク制度の導入など、複数の方法があります。これらの方法を組み合わせて、最適なオフィス面積を確保しましょう。
ペーパーレス化を推進する
ペーパーレス化は、オフィス内の紙の使用を最小限に抑えることで、キャビネットや収納スペースを削減する方法です。書類保管のスペースを節約できるため、余ったスペースを他の目的に活用することができます。
書類や文書をデジタル化し、クラウドストレージを活用すれば、情報の共有やアクセスも容易になり、社員の作業効率が向上するでしょう。ペーパーレス化はオフィスの効率化に貢献し、一人当たりの面積を適正化する手段の一つです。
オフィスレイアウトを変更する
オフィスレイアウトの最適化は、空間効率を上げるために効果的です。デスクや家具の配置を工夫することで、一人当たりの面積を最適化できます。
オフィスレイアウトの種類としては、対向型・背面型・同向型・クラスター型・ベンゼン型の5つが代表的なものとしてあげられます。自社に合ったレイアウトの形を選択しましょう。通路の幅や形が変わることで、スムーズな動線やコミュニケーションが促進され、効率的な作業環境を整えることができます。
フリーアドレスを採用する
フリーアドレスは、従来の固定席から社員が自由に席を選ぶ、柔軟な制度です。フリーアドレスデスクの導入時には、社員数に対しどのくらいの席数を用意するかを事前に検討します。座席設定率を適切に見直すことで、オフィススペースを最適化して、余剰スペースを有効活用することにつながります。
これにより、オフィスの席数を削減し、一人当たりの面積を効果的に利用できます。フリーアドレスは、新しい働き方に適応するための選択肢の一つです。
フリーアドレスについて詳しくは下記の記事も参考にしてください。
オフィスのフリーアドレスとは?メリットとデメリット、他社事例も紹介
リモートワークを導入する
リモートワークは、出社せずに自宅や遠隔地から業務を行う働き方です。オフィスに毎日出社する必要がない場合、リモートワークを導入することで、オフィスに常駐する社員の数を削減し、効率的なオフィス運用が可能になります。
オフィスの一人当たりの面積を適正に管理するために、リモートワークポリシーを策定し、必要な場合にオフィスに出社する社員を調整しましょう。リモートワークは、スペースの有効活用とコスト削減ができる施策の一つです。
オフィス面積の最適化・オフィス移転はプロに任せよう
オフィス面積の最適化やオフィス移転には、プロのアドバイスを受けることがおすすめです。事業内容や企業規模、働き方によって必要なオフィススペースは異なるため、プロに相談することで、企業のニーズに合わせた効果的なオフィス環境が実現できるでしょう。
ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。