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面積が限られる個人事務所レイアウトでは、家具や設備の選び方よりも、日々の仕事の流れに合わせた動線とゾーニングの設計が鍵になります。小さい事務所のレイアウトでも、入口から受付、執務、収納までの流れを素直に整えるだけで、来客対応の質と集中度は大きく変わります。本稿では、面積・人数から逆算する考え方、士業やクリエイティブなど業務別の最適化、そして省スペースでも機能を落とさない家具・設備の選び方までを、順を追って具体的にまとめます。
個人事務所レイアウトの考え方
個人事務所のレイアウトを考える際に最も重要なのは、「誰が、どのような目的でこの空間を使うのか」を明確にすることです。限られた面積を最大限に活用するためには、単に家具を詰め込むのではなく、業務の流れに沿った動線設計とゾーニングを意識する必要があります。ここでは、基本的な考え方を3つの視点から整理します。

誰のための空間かを決める
個人事務所といっても、士業のように来客対応が多い業種と、クリエイティブ職のように集中作業が中心の業種では、求められるレイアウトが異なります。まずは「来客対応を重視するのか」「社員の集中度を高めるのか」「オンライン会議を頻繁に行うのか」といった優先事項を洗い出しましょう。これにより、受付や打合せスペースの配置、執務席のレイアウト、収納の位置などが自然に決まります。
業務プロセスから動線を設計する
動線設計は、個人事務所レイアウトの成否を分ける要素です。入口から受付、執務スペース、収納までの流れがスムーズであるほど、業務効率は高まります。例えば、来客が頻繁にある場合は、受付から打合せスペースまでを直線的に配置し、執務エリアを奥に設けることでプライバシーを確保できます。一方、社員同士のコミュニケーションを重視する場合は、執務席を中央に集め、周囲に打合せスペースを配置する「ハブ型」レイアウトが有効です。
小さい事務所レイアウトでも効く「3つの基本」
限られた面積でも快適なレイアウトを実現するためには、次の3つの基本を押さえましょう。
- 入口—受付—執務—保管の直線動線:来客時の移動を最短にし、社員の動きもスムーズにするため、入口から奥に向かって機能を並べる配置が理想です。
- 集中と打合せのゾーニング:執務スペースと打合せスペースを明確に分けることで、集中度を高めつつ、会話のノイズを抑えます。パーティションや家具で緩やかに区切るのも効果的です。
- 収納を動線上に置く発想:書類や備品の収納は、執務席から手が届く位置に配置することで、無駄な移動を減らし、作業効率を向上させます。
【参考記事】
狭いオフィスでも広く感じるレイアウトとは?コツやポイントをご紹介
生産性を上げるオフィスのレイアウトは?2つのポイントをご紹介
面積・人数から逆算するゾーニングと配置
面積目安と席数設計の考え方
一般的に、1人あたりの執務スペースは3〜4㎡が目安とされています。例えば、10坪(約33㎡)の個人事務所なら、執務席は6〜8席が限界です。ここに収納や打合せスペースを加える場合、固定席を減らしてフリーアドレスを導入する選択肢も検討できます。重要なのは「席数を増やす」よりも「動線を確保する」こと。動線が狭いと、来客時や社員の移動でストレスが生じます。
デスク配置の型:壁付け/背合わせ/島型/L字
- 壁付け型:壁沿いにデスクを並べる配置。省スペースで動線を確保しやすい反面、社員同士のコミュニケーションは減りがちです。
- 背合わせ型:デスクを背中合わせに配置し、中央に収納やパーティションを置く方法。限られた面積でも集中度を高めやすいのが特徴です。
- 島型:複数のデスクを島状に配置し、中央に共有スペースを設けるスタイル。コミュニケーション重視の事務所に向いています。
- L字型:デスクをL字に配置し、作業スペースを広げる方法。クリエイティブ職や資料を広げる業務に適しています。
【参考記事】
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来客導線と受付の作り方
来客対応がある事務所では、入口から受付までの導線をシンプルにすることが重要です。受付を入口近くに設けることで、来客が執務エリアを通らずに済み、プライバシーを守れます。限られた面積では、受付と打合せスペースを兼用する「カウンター+テーブル」型も有効です。
小さい事務所レイアウトでの会議スペースの扱い
専用会議室を設けるのは難しい場合、可動パーティションで執務スペースを仕切る方法が有効です。オンライン会議が多い場合は、遮音性のあるブースを1つ設けるだけで十分です。
業務別の最適化:士業・フリーランスのケース
弁護士・税理士・社労士など書類中心業務
士業事務所では、収納スペースの確保が最優先です。執務席の近くにキャビネットを配置し、動線上に書庫を設けることで効率化できます。
クリエイティブ職のレイアウト
集中作業とレビューを分けるゾーニングが重要です。素材や機材の収納は作業動線上に設け、照明や防音対策も忘れずに。
在宅兼用
固定席を減らし、フリーアドレスを導入することで柔軟性を確保。オンライン会議用の個室やブースも設置しましょう。
セキュリティ・防音
顧客情報を扱う士業では、耐火金庫や施錠可能なキャビネットを導入。防音パネルや簡易ブースで音漏れを防ぎます。
家具・収納・設備の選び方
机・椅子・収納
エルゴノミクス設計の椅子、奥行き60cm以上の机を選び、収納はキャスター付きワゴンや壁面収納で省スペース化。
書類管理
キャビネットや耐火金庫を設置しつつ、電子化を進めて収納スペースを削減。
音と光
吸音パネルやカーテンで防音、自然光+タスクライトで目の疲れを軽減。
配線とネットワーク
ケーブルトレーで配線を整理し、Wi-Fiルーターは中央に配置。
レイアウトの見直し手順とチェックリスト
現状把握
動線を観察し、滞留ポイントを特定。動画撮影で可視化も有効。
課題化
収納不足、来客導線、会議過多などをリスト化し、社員アンケートで補強。
チェックリスト
入口視認性、執務集中度、収納アクセス性、配線安全性などを確認。
まとめ
個人事務所レイアウトは、限られた面積でも工夫次第で快適性と生産性を両立できます。重要なのは、業務プロセスに沿った動線設計とゾーニング、そして家具や収納の選び方です。入口から受付、執務、収納までの流れをシンプルに整え、集中と打合せのエリアを分けることで、ストレスの少ない環境が実現します。また、士業やクリエイティブ職など業務特性に応じたレイアウトを取り入れることで、より効果的な空間づくりが可能です。さらに、定期的な見直しとチェックリストを活用し、柔軟に改善を続けることが、長期的な快適性を支えるポイントです。
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