テレワーク廃止を検討する際に押さえておきたいデメリットとは?

コロナ禍によりテレワークを導入する企業が急増しました。オフィスに出社しないことによるデメリットも徐々に明らかになり、テレワーク廃止を検討している企業も増えてきています。 しかし、テレワークの廃止に抵抗を感じる社員もいるため企業は慎重に判断する必要があります。今回はテレワークを取り巻く環境やテレワーク廃止による弊害、廃止する前に考えるべきことについて解説します。

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「テレワーク」は一部の企業で縮小傾向にある

現在、テレワークは多くの企業で実施されています。テレワークは企業側には交通費をはじめ出社にかかるコストを削減できること、社員側には通勤ストレスの減少などのメリットがあり新しい働き方として定着しました。

テレワークのメリットについては、以下の記事で解説しています。
リモートワークのメリット・デメリット|いま求められるオフィスとは

一方でテレワークを導入したものの課題が明らかになり縮小や廃止を進める企業も増えています。コロナ禍が長期化する中でのテレワークの現状について解説します。

テレワークの実施率が高いのはIT企業

総務省がまとめた「令和3年 情報通信白書」によると、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を機にテレワークの導入が急速に進みました。

一時は半数以上の企業がテレワークを実施していましたが、感染の動向に応じて落ち着きを見せ、3~4割程度が実施を続けている状況です。

テレワークの実施率は業種により差があり、もっとも高いのはテレワークとの相性が良い情報通信業(IT企業)で実施率は55.7%でした。

出典:「令和3年 情報通信白書」(総務省)

一部の企業で「テレワーク」の縮小が進んでいる

新型コロナウイルス感染拡大にともないテレワークの実施率が高まりましたが、徐々に縮小や廃止を始める企業も増えてきています。

廃止の理由として挙げられるのは、出社しないことによる社員のコミュニケーション不足です。また、業務マネジメントが難しいことや、業務を社外に持ち出すことによる情報漏洩のリスクなどの課題も生じています。

特に在宅勤務によるコミュニケーション不足を課題と捉える企業は多いです。テレワークを導入した企業の中には、ホンダのように週5の完全オフィスワークへと戻したところも存在します。

テレワーク実施率が高かったIT企業でもオフィス回帰が顕著にみられる状況です。AppleやGoogleは週3出社を求めるようになり、楽天グループでは原則週3出社を週4へと変更しました。

テレワークの廃止で考えられるデメリット

現在のテレワークの廃止や縮小の動きから、具体的に廃止の検討を始めた企業もあるでしょう。しかし、出社する働き方に戻す際には以下のようなデメリットも考えられるため、自社に合わせて慎重に判断を行うことが大切です。

優秀な人材が離職する可能性がある

株式会社ヴィスが実施したアンケート調査によると、コロナ終息後もテレワークを取り入れたいとする回答が全体の67%(「可能な限り」25%・「週1~2日程度」42%)を占めました。 また、収入が下がってもテレワークを継続したいという声もあり、テレワーク需要の高さがうかがえます。

そのため社員の意見を聞かないまま廃止を決定すると、より自分らしい働き方を実現したいと考える優秀な人材が流出する可能性があります。

採用においてもテレワークを実施していないことが不利に働くケースもあるため、自社に合う働き方を明確化しておくことが大切です。

ワークライフバランスの実現が難しくなる

テレワークは多様な働き方を実現する方法のひとつです。テレワークにより通勤時間が削減されたことで、空いた時間をプライベートの充実に使ってきた方もいるのではないでしょうか。

しかし、テレワークが廃止されれば削減できていた通勤時間も元通りになります。

また、テレワークは対人ストレスの軽減にも役立っていました。再び出社となることでストレスが発生し、プライベートに影響が及ぶ可能性のある社員へのケアも視野に入れておきましょう。

コスト増につながる

テレワークを廃止すれば、これまで削減できていた社員への通勤手当の支給が必要になります。

また、出勤人数が減ることで減少していた、オフィススペースの維持費用についても従来通りに発生します。すでにオフィス縮小に取り組んでいた企業の場合は、元に戻すコストも想定する必要があるでしょう。

BCP対策が不十分になる

BCP対策とは緊急時に事業継続するための手段を決めておくことです。

在宅で業務を行えるテレワークはBCPの実効性を高める方法としての側面もあります。安易にテレワークを廃止すると、災害時や通勤インフラのトラブル時に業務が停止してしまうなど、BCP対策が不十分になるおそれも出てきます。

テレワークを廃止する前に考えるべきこと

出社する働き方にはデメリットも生じます。出社により負担がかかる社員がいないか、本当にテレワークを廃止すべきなのかを十分に検討しましょう。

社員の状況を把握する

テレワークで自分らしい働き方を実現している社員は多くいます。オフィスワークを希望する声もありますが、廃止に対する抵抗感は残るでしょう。

世間一般的な流れに合わせるのではなく、社員一人ひとりの状況を認識しながら、自社にとって廃止が適切か考えましょう。テレワークを希望する理由を把握することが重要です。

例えば、育児や介護をしながら在宅で働いている社員はテレワークの廃止により大きな影響を受けます。事情によっては離職につながりかねないため十分な配慮が必要です。

廃止前後のコストバランスを把握する

テレワークの導入は企業のコスト削減にも有効でした。廃止を検討する際にはテレワークと出社にかかるそれぞれの費用を計算して、コストバランスを把握することも大切です。

単純なコスト比較ではなく、どちらがより費用対効果を期待できるか、業務効率化が期待できるかなどの観点から判断しましょう。

ツールやシステムを使いやすいものにする

社員から「テレワークのほうが仕事をしやすい」という声が挙がっているなら、すぐにテレワークを廃止するのではなく、やり方を見直すのもひとつの手段です。

テレワーク廃止の背景には、業務管理が難しい、コミュニケーション不足によりチームが機能していないなどの課題があります。

このような課題がある場合には、コミュニケーションツールやマネジメントシステムを見直すことで課題解決につながることも多いです。

まずは現在のテレワークにおける課題の解決に取り組み、改善が見込めない場合にテレワーク廃止を検討してみても良いでしょう。

「ハイブリッドワーク」を検討する

ハイブリッドワークとは出社とテレワークを掛け合わせた新しい働き方です。

必要に応じて出社とテレワークを選択できるようにすることで柔軟な働き方ができます。両者の良いとこ取りによって生産性の向上が期待でき、社員の満足度を低下させずに済むでしょう。

ハイブリッドワークのメリット・デメリットや成功ポイントは以下の記事で解説しています。
ハイブリッドワークで柔軟な働き方へ|成功させる5つのポイント

テレワークの継続に課題を感じているなら、一度ハイブリッドワークを実施してみるのも有効です。コミュニケーションの様子やマネジメント方法を評価しながらテレワークの廃止が最善であるかを検討するのがおすすめです。

出社のメリットが感じられるようなオフィスにする

テレワークの廃止・縮小やハイブリッドワークを実施する場合には、出社のメリットが感じられるようなオフィス環境を整えることが大切です。

アイペット損害保険社では、「リモートワークに対応した新しい働き方の実現」をキーワードにオフィスを改装しました。

改装のポイントは、オフィスの半分以上をフリーアドレスにしたことです。業務に応じて働く場所を選択できるようにし、複数のコミュニケシーションポイントを設けています。社員同士のコミュニケーション活性化や創造性の向上を実現し、社員が出社するメリットを感じられるようにしました。

まとめ

テレワークにはデメリットもあり、テレワークを縮小・廃止する動きも見られます。しかし、テレワークにより自分らしい働き方を実現できている社員もいます。安易に廃止すると社員のモチベーション低下を招きかねません。 出社とテレワークのどちらのメリットも活かせるハイブリッドワークを導入するなど、自社や社員の状況も考慮した上で働く環境を整えていくことが大切です。