目次
オープンイノベーションとは
ここでは、オープンイノベーションの意味と5つの種類を紹介します。
外部パートナーと新しい価値を創ること
オープンイノベーションとは、組織内の技術革新を起こすための手段です。外部パートナーと連携しながら、リソース(知識や技術・サービスなど)を最大限に活用し、新しい価値を創出します。
組織の枠にとらわれず、社内外のリソースを的確に組み合わせることで、技術革新にともなうリスクを最小化することが可能です。また、新たな製品・サービスの開発にかかる時間を最大限節約する効果も見込めます。
このように、外部資源を柔軟に活用することで企業の枠を超えた事業展開を実現でき、市場を拡大させていくことができるのです。
オープンイノベーションに必要な5つの要素
オープンイノベーションには、以下の5つの要素を考慮することが必要です。
【人材】
経営資源のひとつである「人材」は、オープンイノベーションを進めるうえで必要不可欠です。
オープンイノベーションにおける人材とは、社内外を問わず、多様で優秀な人材を指します。社内だけでは見方が偏ってしまうことも、社外の人材とともに進めることで新たな気づきを得ることができます。
【アイデア、マインド】
オープンイノベーションではアイデアやマインドも社内外問わず、幅広く活用します。新規事業の創出やイノベーションに活かすため、組織に必要な情報を収集します。
また、技術革新を進めるには、収集したアイデアやマインドを自社で活かせるように修正・統合することも大切です。
【知的財産】
知的活動によって生まれたアイデアのなかでも、財産的な価値をもつものを知的財産と呼びます。知的財産で特許権や実用新案権などがある場合、社内だけにとどめていたものもあるでしょう。
オープンイノベーションでは、社内の知的財産を社外にも開放します。自社以外に活用できる場を増やし、技術革新に活かします。相互に知的財産を活用することで、新しい知的財産の創出やビジネスモデルの構築を実現できるでしょう。
【研究】
外部研究の成果や知識を活用するオープンイノベーションは、新サービスや新製品の創造に欠かせません。
研究開発には、基本的に時間や資金が必要です。自社だけでは賄えない場合でも、数多くの研究内容を集めることで、新たな価値を創り出すことが可能となります。
【市場】
オープンイノベーションによるビジネスモデルを構築するためには、開かれた市場が必要です。人材やアイデア・マインド、知的財産や研究などを総動員し、外部と連携して開発された製品・サービスを送り出します。
オープンイノベーションが広まった背景
オープンイノベーションはどのように広まったのでしょうか。時代背景も含め、オープンイノベーションの必要性を解説します。
技術革新によって競争率が増した
オープンイノベーションが急増した背景に、プロダクトライフサイクルの短期化があげられます。プロダクトライフサイクルとは、企業の製品が市場に出回ってから撤退するまでの変化のことです。ある製品が寿命を迎える前に、企業は次の製品やサービスを創出するよう動き出します。
しかし、近年のプロダクトライフサイクルは以前よりも短期化しています。そのため、短期間で新たな製品やサービスを生み出さなければならなくなりました。
結果、スピーディーに製品やサービスを創出できるオープンイノベーションに注目が集まっているのです。オープンイノベーションは、社外のリソースを活用できるため、効率良く新しい価値を生み出すことができ、プロダクトライフサイクルの短期化にも適応できます。
VUCA時代には「柔軟性」が必要
オープンイノベーションが拡充するきっかけとなったのが、VUCA時代の到来です。従来の常識を覆すような変化が激しく起こる時代をVUCA時代と呼び、ビジネス界の混沌を意味しています。
VUCAは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)とそれぞれの頭文字からつけられました。
先行きが不透明な現代において、将来を予測するのは難しいものです。長い時間をかけて研究開発を続けたとしても、無駄になってしまうこともあるかもしれません。
製品の品質やコストが際立っていれば安定した購入量を見込めた時代と違い、事業を存続させるには柔軟性が必要です。
このような背景から、社内外で協力して事業展開できるオープンイノベーションが急拡大しました。
オープンイノベーションのメリット・デメリット
次に、オープンイノベーションのメリットとデメリットを紹介します。自社の状況と照らし合わせて、参考にしてみてください。
【メリット】低コスト・高スピード
オープンイノベーションにより、低コストかつ高スピードで事業展開できます。新規事業の立ち上げには、研究開発費やマーケティング費用など多くの資金が必要です。
オープンイノベーションでは、他社技術を取り入れて活かすことが可能です。また、外部パートナーとの連携により、客観的な知見や技術を容易に学ぶことができます。そのため、新規事業開拓を低コストで進められるのです。
技術のほかに、営業のノウハウや仕事の進め方などの知識を吸収できるのもメリットのひとつです。オープンイノベーションは自社にとっても、インプットとアウトプットの場になるため、事業の成長に必要な知見を蓄積できます。
【デメリット】情報漏洩・利益率に関するリスク
オープンイノベーションで外部パートナーと連携するデメリットは、情報漏洩のリスクを避けられないことです。相互協力のもと進めるため、自社の技術も他社に共有します。
情報漏洩のリスクを抑えるためには、あらかじめ企業倫理や社会的良識、社会規範などを守っているか確認することや、共有する情報の範囲をしっかり決めておくことが重要です。アクセス権限の範囲などの細かい取り決めも事前に行っておきましょう。
また、利益配分でトラブルが起こる可能性もあります。自社だけで研究開発した製品であれば、すべての利益を自社で得ることができるでしょう。しかし、外部パートナーと連携する場合は利益率が変わります。そのため、正当な利益を得られるように、事前に調整することが大切です。
オープンイノベーションを活用した事例3選
オープンイノベーションを活用した事例を3社紹介します。メリットを活かした成功事例ですので、自社でオープンイノベーションを取り入れる際の参考にしてください。
【株式会社ヴィス×株式会社ラフール】組織改善サーベイココエル
デザイナーズオフィス事業を展開する株式会社ヴィスと、組織診断ツールを提供する株式会社ラフールは、事業拡大や新規ビジネスの構築のために提携しました。オープンイノベーションにより創られたのが組織改善サーベイ「ココエル」です。
近年、感染症の流行により在宅勤務が増加し、働き方が多様化しています。その結果、社員のコミュニケーション不足やエンゲージメント低下などの課題に直面する企業が増えました。
社員の健康状況をデータで把握するのに特化したサーベイツール「ココエル」は、そのような課題を解決に導くツールとして活用できます。社員の健康状態やエンゲージメントを把握できるため、社員のメンタルヘルス管理に有効です。
アンケート結果を分析し、特定した課題を素早くフィードバックしてくれるので、オフィス環境や社内外の人間関係の改善点を探すのに役立つでしょう。
株式会社ヴィスは多様な働き方に対応し、可能性を最大限に引き出すワークデザインを提案する会社です。興味のある方はお気軽にお問い合わせください。ヴィスへのお問い合わせは、こちらからどうぞ。
【富士通株式会社×株式会社アジラ】帰宅困難者を見守るサービス
クラウド型IoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」を提供している富士通株式会社と、施設向けAI警備システムを提供している株式会社アジラが連携し、帰宅困難者を見守るサービスを創りました。
富士通株式会社のクラウド型IoTデータ活用基盤サービスは、IoT専用のプラットフォームサービスで数多くのセンサーデータを収集したり蓄積したりしながら、アプリケーションと連携してリアルタイムイベント処理を実行できるサービスです。
一方、株式会社アジラはAI警備システムにより異常行動をいち早く察知し、即時通知することで事件・事故を早期発見できるシステムを構築しています。
オープンイノベーションにより生まれたサービスでは、専用アプリを使用することで帰宅困難者の画像と位置情報を特定でき、家族に知らせることができます。
【JR西日本×ナブテスコ株式会社】世界初のフルスクリーンホームドアの開発
安全性と生産性向上のためにJR西日本とナブテスコ株式会社が連携して、フルスクリーンホームドアを共同開発しました。ナブテスコ株式会社は、自動車や鉄道車両および産業機械の油圧や空圧機器の販売やメンテナンスなどを行う会社です。
2023年に開業予定の「うめきた(大阪)地下駅」の安全対策の一環として、オープンイノベーションによる世界初のフルスクリーンホームドアの開発に取り組みました。
それまでも、JR西日本で展開している昇降式ホーム柵などがありましたが、対応が困難となるため車種を問わず対応できるホームドアの開発が必要とされていました。
オープンイノベーションにより共同開発することで、さまざまな車種や編成に応じて、ドアの開閉を構成できるホームドアを設置することが可能となりました。モーターの過負荷検知機能やセンサーなども導入し、安全面も強化されました。
まとめ
プロダクトライフサイクルの短期化にともない、オープンイノベーションは事業成長に役立つ方法として広く認知されるようになりました。いち企業だけでは何年もかかってしまう課題でも、外部パートナーとの連携によりスピード感をもって進めることができます。既存の技術を吸収すれば、低コストで新たな価値を生み出せるでしょう。オープンイノベーションを取り入れる際は、今回紹介した導入事例を参考にしてみてください。