目次
労働生産性の種類
労働生産性は投入量に対する産出量の割合を示す概念です。そして産出量の捉え方の違いにより、次のふたつの種類に大別できます。
物的労働生産性:生産量と販売金額が対象
物的労働生産性は、産出の対象を生産量や販売金額と捉えた場合の労働生産性です。同じ労働時間なら、より多くの製品を製造し、より多く売れば労働生産性が高いといえます。
付加価値労働生産性:付加価値額が対象
付加価値労働性は、産出の対象を付加価値と捉えた場合の労働生産性です。付加価値とは粗利に近いもので、売上金額から経費を差し引いたものです。
人件費も経費の一部であるため多くの人件費がかかっている場合には、付加価値労働性が低くなることもあります。
労働生産性の計算方法
労働生産性の改善を図る前には、まず自社の労働生産性を計算し、自社の現状を把握することが大切です。ここでは労働生産性の計算方法について、物的労働生産性と付加価値労働性に分けて解説します。
物的労働生産性の求め方
物的労働生産性は「生産量÷投入量」で求められます。しかし、基準にする投入量の捉え方により、複数の求め方があります。
投入量を労働者の人数で捉える場合には、1人当たりの労働生産性として計算し、その計算式は次のとおりです。
生産量÷労働者数
投入量を労働時間として捉えるなら、次の計算式で1時間当たりの労働生産性を計算します。
生産量÷労働者数×労働時間
資本に対する物的労働生産性を把握したい場合には、次のような計算式で資本労働生産性を計算します。
生産量÷資本ストック
また、特定の要素に限らず総合的に見た場合の物的労働生産性は、全要素労働生産性を次の式で計算します。
生産量÷(労働+資本+原材料)合成投入量
いずれも生産量は生産するものの個数や重さなど物量を単位として計算します。
付加価値労働生産性の求め方
付加価値労働生産性は「付加価値額/投入量」で求められます。こちらも物的労働生産性と同様に、基準となる投入量により求め方は様々です。
1人当たりの労働生産性の求め方は、次の計算式のとおりです。
付加価値額÷労働者数
1時間あたりの労働生産性は、次の計算式で求められます。
付加価値額÷労働者数×労働時間
資本に対する労働生産性も物的労働生産性の場合と同じように求められます。
付加価値額÷資本ストック量
すべての要素を総合的に加味した全要素付加価値労働性の計算式は次のとおりです。
付加価値額÷(労働+資本+原材料)合成投入量
計算する際に用いる付加価値額は、売上から原材料費・減価償却費・賃借料・人件費などを差し引いたものです。
労働生産性が低下する7つの理由
労働生産性が低い場合には、何かがボトルネックになっているケースがあります。そのボトルネックを取り除くことで、労働生産性も改善できる可能性があります。そのため、まずはボトルネックになっている事象を探ることが重要です。
例えば、次のような理由で労働生産性が低下していないか確認してみましょう。
・長時間労働が続き社員が疲弊している
・マルチタスクになっている
・属人化している
・離職者が多い
・アナログ業務が多い
・自社に合わないシステムを導入している
・デスク同士の幅が狭い、キャビネットが足りないなどでオフィスが雑然としている
上記の中で自社に該当することがないか確認し、労働生産性の悪化となっている要因がないかを探してみましょう。
労働生産性が高い人の特徴
労働生産性が高い組織を作るうえで「人」は大切な要素です。
労働生産性低下の要因を改善すると、働く人のエンゲージメントが向上し、生産性の高い組織になっていきます。
そのため、労働生産性が高い人の特徴を把握しておくことが、労働生産性改善に必要なフローを抽出することにつながります。
労働生産性の高い人は本質を追求し、最短でゴールに向かう能力が高い人のことです。
・優先順位をつけられる
・集中力が高い
・情報収集能力が高い(情報整理ができる)
・ツールを利用して情報の一元化ができる
・コミュニケーション能力が高い(特に共感力・心の知能指数の高い人)
上記に該当する社員がいる場合は、労働生産性改善のロールモデルとしてみてはいかがでしょうか。
労働生産性を改善する5つの方法
ここでは労働生産性を改善するためのノウハウを紹介します。
業務の標準化
業務が属人化していると社員によって進め方が異なり、組織全体として見たときに時間がかかってしまうことが多々あります。そのため、業務の進め方が属人化している場合には標準化することが必要です。
また、労働生産性の高い社員がいるなら、その社員のやり方を全員で共有しましょう。マニュアルを作成し、いつでも全員が確認できる状態を整えることで、組織全体の労働生産性の向上を見込めます。
ITツールの導入
ITツールを導入して業務の効率化を図るのもおすすめです。例えば、ビジネスチャットツール・名刺管理ツール・タスク管理ツール・ペーパーレス化ツールなどです。
メールよりもビジネスチャットツールの方がスムーズに情報を共有できます。紙媒体での情報の管理に比べても、デジタル化した方が管理に割く時間を短縮可能です。
バックオフィス業務を自動化できるRPAを導入するのも良い方法です。大企業では多く取り入れられています。
株式会社ヴィスでは、2019年3月からMicrosoft365を導入し業務のデジタル化を進めています。それ以前は社内のやり取りとファイル管理を別のツールで行っていましたが、Teamsに統一したことでコミュニケーションの速度が格段にアップしました。
働きやすい環境づくり
社員が快適に働けるように労働環境・就業規則・評価制度を整えることも重要です。働きやすく、努力が正当に評価される環境であればモチベーションも上がります。
近年ではテレワークの拡大により働き方を見直す企業が増えてきました。生産性を向上させるためには、オフィスデザインやレイアウトの工夫も大切です。
エイチ・ツー・オー リテイリング社ではオフィス移転を機に、各種ワークデスクの設置をはじめワークスペースに工夫を施しました。フリーアドレスの導入と合わせて、社員が自ら働く場所を選択できるようになりました。
ほかにも、大型モニターやひな壇を置いたコラボレーションエリアを設置しました。これにより社内外のコミュニケーションの促進につながっています。
アウトソーシングの活用
人的リソースが不足している場合は、アウトソーシングの利用も検討してみましょう。社外に任せても支障をきたさない業務をアウトソーシングすると、社内ではコア業務にのみ集中できます。
ただし、アウトソーシングに向かない業務もあるため注意が必要です。あらかじめコア業務とそうでないものを精査してリスト化することで、アウトソースコストの削減と業務効率化の両立につながります。
社員エンゲージメントの向上施策を実施する
社員エンゲージメントとは会社への愛着や信頼を意味するものです。社員エンゲージメントを高める施策を実施すれば労働生産性の向上が見込めるでしょう。労働生産性を数値で可視化し、低下の要因を改善することで、社員が「会社が好きだ」と感じられる状態を作り出すことにつながります。
効果的な施策を実施するには、サーベイを活用して社内の現状を把握し、明確にした課題に沿った施策を打つことが大切です。
そこで、ココエルを利用するのをおすすめします。ココエルは心身の健康状態やエンゲージメントなど、目に見えにくい人事課題を定量的に把握できるのが特徴。課題の解決策となるアイデアも得られるため、組織改善に役立てられます。
まとめ
社員によって労働生産性に差がありますが、労働環境や属人化による業務過多などがボトルネックになり悪化しているケースも多くあります。
労働生産性を向上させるためには、業務を標準化したりITツールを導入したりすることが有効です。そのうえで働きやすい環境を整え、社員エンゲージメントを高める施策を実施してみてください。