オフィスの改装を検討する際、最も気になるのが「費用」の問題ではないでしょうか。働き方の多様化やテレワークの普及により、企業はオフィスの在り方を見直す必要に迫られています。そんな中で、限られた予算の中でどのように空間を刷新し、社員の満足度や業務効率を高めるかは、多くの総務担当者にとって大きな課題です。
本記事では、「オフィス改装費用」に関する基本的な知識から、費用相場や内訳、コストを抑えるための工夫、工事の流れまでを網羅的に解説します。さらに、ヴィスが手がけた最新の改装事例も紹介し、実際のプロジェクトから学べるポイントをお届けします。
改装を成功させるためには、単に価格だけでなく、目的や課題に応じた設計・施工の工夫が欠かせません。この記事を通じて、費用に対する理解を深め、より納得感のある改装計画を立てる一助となれば幸いです。
1. オフィス改装費用の基本知識
オフィスの改装は、単なる内装の変更にとどまらず、企業の働き方やブランドイメージを大きく左右する重要な施策です。近年では、テレワークの普及や人材確保の観点から、オフィスの在り方そのものを見直す企業が増えており、それに伴って改装のニーズも高まっています。
まず「オフィス改装」とは、既存のオフィス空間を目的に応じて再設計・再構築することを指します。これには、レイアウト変更、設備更新、内装の刷新などが含まれます。一方で「オフィスリフォーム」は、老朽化した設備の修繕や機能回復を目的とするケースが多く、改装よりも部分的な対応が中心です。両者は似て非なるものであり、費用感や工事内容にも違いが生じます。
改装費用に影響する要素は多岐にわたります。代表的なものとしては、以下のような項目が挙げられます。
- 改装範囲の広さ:全面改装か一部改装かによって、必要な工事量と期間・費用が大きく異なります。
- 施工内容の種類:内装変更、設備更新、電気・空調工事など、工事の種類によって費用が変動します。
- デザインの複雑さ:ブランディングを意識したデザインや特殊素材の使用は、費用を押し上げる要因になります。
- 施工業者の選定:業者によって見積もりの内容や価格に差が出るため、複数社からの比較が重要です。
また、業務を止めずに改装を進める場合は、夜間工事や段階的な施工が求められ、追加費用が発生することもあります。
このように、オフィス改装は単なる「模様替え」ではなく、企業の戦略や働き方に直結する重要な投資です。次の章では、具体的な費用相場や内訳について詳しく見ていきましょう。

2. オフィス改装費用の相場と内訳
オフィス改装にかかる費用は、企業の規模や改装範囲、施工内容によって大きく異なります。とはいえ、ある程度の目安を知っておくことで、予算計画や業者選定がスムーズに進みます。ここでは、改装費用の相場や内訳について詳しく見ていきましょう。
2.1 平米単価で見る費用相場
一般的に、オフィス改装の費用は「1㎡あたり○円」という形で算出されることが多く、改装内容によって単価が変動します。例えば、内装の刷新のみであれば1㎡あたり3万円〜5万円程度が目安ですが、設備更新やレイアウト変更を含む場合は、1㎡あたり7万円〜10万円以上になることもあります。
小規模な改装(50㎡未満)では、最低でも200万円〜500万円程度の予算が必要とされるケースが多く、逆に大規模な改装(300㎡以上)では、1,000万円を超えることも珍しくありません。
2.2 工事内容別の費用目安
改装費用は、工事の種類によっても大きく変わります。以下は代表的な工事内容とその費用目安です。
- 内装工事:壁紙・床材の張り替え、塗装など。1㎡あたり2万円〜4万円程度。
- 電気・照明工事:配線の整理や照明器具の交換。1箇所あたり5万円〜15万円程度。
- 空調設備工事:エアコンの更新や換気設備の設置。1台あたり20万円〜50万円程度。
- 什器・家具の導入:デスクやチェア、収納など。1席あたり5万円〜10万円程度。
これらの工事を組み合わせることで、改装の総額が決まります。特に、ブランディングを意識したデザインやオーダーメイドの什器を導入する場合は、費用は上記目安よりも高額になる傾向があります。
2.3 トイレリフォームの費用相場と注意点
オフィス改装の中でも、トイレのリフォームは衛生面や快適性に直結する重要な工事です。費用相場は1室あたり50万円〜150万円程度で、以下の要素によって変動します。
- 配管の更新が必要かどうか
- 男女別トイレの設置有無
- バリアフリー対応の有無
- 自動洗浄・温水洗浄機能の追加
トイレリフォームは、工事期間中の使用制限や臭気対策など、施工時の配慮も必要です。改装全体の中でも、計画段階でしっかりと検討しておくべきポイントです。
2.4 見積もりの取り方と比較のポイント
改装費用を適正に把握するためには、複数の施工業者から見積もりを取得し、内容を比較することが重要です。見積もりの際には、以下の点をチェックしましょう。
- 工事内容が明確に記載されているか
- 材料や設備のグレードが明示されているか
- 追加費用の発生条件が記載されているか
- 工期と施工体制が明確か
また、見積もりの比較だけでなく、過去の施工事例や担当者の対応も含めて総合的に判断することが、後悔のない改装につながります。
なお、改装費用の考え方や進め方についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になります。
参考記事:オフィス改装のメリット|流れと注意点について解説
参考記事:オフィスリノベーションで働き方を変える:目的・進め方・事例から学ぶ空間づくりのヒント
3. 費用を抑えるための工夫と補助制度

オフィス改装は企業にとって大きな投資ですが、工夫次第で費用を抑えつつ、満足度の高い空間を実現することが可能です。ここでは、コスト削減のための具体的な工夫と、活用できる補助制度について紹介します。
3.1 コスト削減のための設計・施工の工夫
改装費用を抑えるためには、設計段階から無駄を省く工夫が重要です。例えば、既存の什器や設備を活用することで、新規購入のコストを削減できます。また、内装材や仕上げの選定においても、見た目の質感を保ちつつ、コストパフォーマンスの高い素材を選ぶことで、費用を抑えることができます。
さらに、施工のタイミングを工夫することも有効です。繁忙期を避けて工事を依頼することで、施工業者のスケジュールに余裕が生まれ、割安な価格で対応してもらえる場合があります。夜間や休日の工事は追加費用が発生するため、業務に支障が出ない範囲で日中施工を選ぶことも検討しましょう。
3.2 補助金・助成金の活用方法
近年では、働き方改革や省エネ推進を目的としたオフィス改装に対して、自治体や国からの補助金・助成金が用意されているケースがあります。例えば、以下のような制度が該当する可能性があります。
- テレワーク環境整備補助金:テレワーク対応の改装に対して支給される制度。
- 省エネ設備導入支援制度:空調や照明の更新に対して補助が出る場合あり。
- 中小企業向け設備投資支援:一定の条件を満たす改装に対して補助金が支給される。
これらの制度は、申請条件や対象工事が細かく定められているため、事前に自治体や専門機関に相談することが重要です。補助金を活用することで、改装費用の一部を軽減できる可能性があります。
3.3 節約しすぎて失敗するケースとは?
費用を抑えることは重要ですが、過度な節約はかえって業務効率や社員満足度を損なう結果につながることもあります。例えば、安価な素材を使用したことで耐久性に問題が生じたり、レイアウトの工夫が足りずにコミュニケーションが取りづらくなったりするケースがあります。
また、施工業者の選定において価格だけで判断すると、施工品質やアフターサポートに不安が残ることもあります。改装は一度きりの工事ではなく、長期的な運用を見据えた設計が求められるため、費用と品質のバランスを慎重に見極めることが大切です。
このような失敗を避けるためにも、改装の目的を明確にし、必要な投資と節約すべきポイントを整理したうえで計画を立てることが成功への近道です。
4. オフィス改装工事の流れと注意点

オフィス改装を成功させるためには、費用だけでなく、工事の流れや注意点を事前に把握しておくことが重要です。改装は業務に影響を及ぼす可能性があるため、スケジュール管理や社内調整を含めた計画的な進行が求められます。
4.1 改装工事の一般的な流れ
オフィス改装は、以下のようなステップで進行するのが一般的です。
- 現状調査・ヒアリング:改装の目的や課題を明確にし、現状のオフィス環境を調査します。
- 設計・レイアウト提案:ヒアリング内容をもとに、空間設計やレイアウト案を作成します。
- 見積もり・予算調整:設計案に基づいて見積もりを提示し、予算に応じた調整を行います。
- 施工準備・スケジュール調整:工事のタイミングや業務への影響を考慮し、施工計画を立てます。
- 施工開始・完了検査:実際の工事を行い、完了後に品質確認を実施します。
この流れを踏むことで、改装の目的と実施内容が一致し、無駄のないプロジェクト進行が可能になります。
4.2 工期の目安とスケジュール管理
改装工事の工期は、改装範囲や施工内容によって異なりますが、一般的には以下のような目安があります。
- 小規模改装(〜50㎡):1週間〜2週間程度
- 中規模改装(〜200㎡):2週間〜1ヶ月程度
- 大規模改装(200㎡以上):1ヶ月〜2ヶ月以上
工期が長くなるほど、業務への影響も大きくなるため、スケジュール管理が重要です。特に、業務を止めずに改装を行う場合は、夜間工事やフロアごとの段階的施工など、柔軟な対応が求められます。
また、社内の関係部署との調整や、社員への事前周知も欠かせません。改装中の一時的なレイアウト変更や仮設スペースの確保など、業務継続のための工夫も必要です。
4.3 工事中の業務への影響と対策
改装工事は、騒音や振動、スペースの制限など、業務に支障をきたす要因が多く存在します。これらの影響を最小限に抑えるためには、以下のような対策が有効です。
- 施工時間の調整:業務時間外に工事を行うことで、社員のストレスを軽減できます。
- 仮設オフィスの設置:一時的に別スペースを活用することで、業務を継続できます。
- 社内コミュニケーションの強化:改装の目的やスケジュールを共有することで、社員の理解と協力を得やすくなります。
改装は一時的な不便を伴いますが、長期的には働きやすさや生産性の向上につながる施策です。事前の準備と社内の連携をしっかりと行うことで、スムーズな改装が実現できます。
5. ヴィスのオフィス改装事例紹介
オフィス改装における費用感や設計の工夫をより具体的にイメージするためには、実際の事例を参考にするのが効果的です。ここでは、株式会社ヴィスが手がけた最新の改装プロジェクトの中から、目的や課題に応じた空間づくりを実現した事例をご紹介します。
鈴与シンワート株式会社

コロナ禍以降、在宅勤務と出社のハイブリッドワークやフリーアドレスを導入しているものの、ベースデスクが並ぶ執務室の中では固定席化が定着しており、交流の機会が減少しているという課題がありました。ワークデザインサーベイを実施し、オフィスに必要な要素を洗い出すことで、高集中作業が多いエンジニアのために集中スペースを多く確保したり、プロジェクト単位での仕事に対応するためにチームで働けるエリアを用意するなど、最適なオフィスレイアウトを構成していきました。
事例の詳細はこちら:鈴与シンワート株式会社
株式会社YTE

社名変更に伴うオフィス空間の一新を目的とした改装プロジェクト。「エンタメは国籍・言語・文化・性別・年齢・地位すべての壁を越えてつながり、ひとつにするような、心を豊かにするために欠かせないもの。」という想いのもと『BORDERLESS』というコンセプトを策定。「エンタメとは何か?」という問いから紐解き、オフィスの中央動線を「BORDERLESS LINE」とし、果てなく続く空と海を表現。そこから繋がる各会議室や執務室には、さまざまな世界へのつながりやエンタメ的な驚きがある世界観を表現しました。
事例の詳細はこちら:株式会社YTE
株式会社朝日新聞社

来客対応のメインエントランスとして、空きスペースを利用した会議室や待合スペースをつくりたいというご要望から発足したプロジェクト。長い歴史の中で集積された深く濃い知見を基盤に、世の中に必要とされる情報を公正敏速に発信し、新しい価値を創造している朝日新聞社様の姿からデザインコンセプトを『温故知新』と策定。来客対応のメインエントランスとして、朝日新聞社らしさを体現できるよう、家具やマテリアルには古くからものづくりに採用されてきた素材やサステナブルな素材を中心に選定しました。
事例の詳細はこちら:株式会社朝日新聞社
JFEミネラル株式会社

慢性的な打合せスペース不足やデッドスペース有効活用を目的とした改装プロジェクト。社員の声を収集しデザインに反映させることで、エクスペリエンスの向上を図りました。良質なコミュニケーションが生まれる空間を構築し、働き方の多様化に対応できる環境を整えることで、社員がより快適に働ける空間を設計。プロジェクトの前後でWORK DESIGN PLATFORMを活用し、スタイルスコア(働き方に対する満足度)が20ポイント上昇、プレイススコア(場所に対する満足度)は41ポイントから82ポイントと2倍に上昇しました。
事例の詳細はこちら:JFEミネラル株式会社
JFE商事株式会社

WORK DESIGN PLATFORMによる分析データをもとに、座席数、上長席、会議室、キャビネットの最適化を図り、多くのコミュニケーションスペースを確保しました。また、グループ会社間の間仕切りを撤廃し、全体を回遊できる設計とすることで、会社や個人間の垣根を超えた新しい偶発的な出会いやつながりが生まれ、エンゲージメントの向上に寄与しています。さらに、エントランス正面をガラスにすることで、空間の広がりを感じさせるとともに、働く人々が行き交う様子を来客者にも見せることで、企業の透明性をアピールしています。
事例の詳細はこちら:JFE商事株式会社
6. まとめ
オフィス改装は、単なる空間の刷新ではなく、企業の働き方やブランド価値を高めるための重要な投資です。費用の相場や内訳を理解し、目的に応じた設計・施工の工夫を施すことで、限られた予算の中でも高い効果を得ることが可能です。
また、補助金制度の活用や事例の参考によって、より納得感のある改装計画を立てることができます。今回紹介したヴィスの事例のように、課題に応じた空間づくりを実現することで、社員の満足度や業務効率の向上にもつながります。
オフィス改装を検討されている方は、まずは自社の課題と目的を整理し、信頼できるパートナーとともに計画を進めてみてはいかがでしょうか。
ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。
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