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オフィスの床が持つ役割とは?
オフィス空間を構成する要素として、床は重要な役割を果たしています。
床はオフィス内でも占める面積の割合が大きく、訪れた人が受ける印象やそこで働く人の気持ちに影響します。その空間がどのような目的を持っているかによって、選ぶ床材も変わってくるのです。
また、床の色や模様を意図的に変えることで、家具やパーテーションなどを置かなくても、視覚的に空間を仕切ることが可能です。
選ぶ素材の特性に応じた効果を取り入れられることも特徴です。
オフィスに使われる床の種類
一般的なオフィスに使われる床の種類は、主に次の3種類です。
- タイルカーペット:色や柄などの種類が豊富で、オフィスで最もよく使われている。
- ビニルタイプ:フロアタイルとフロアシートの2種類。撥水性がよくメンテナンスしやすい。
- 天然素材:木材や大理石など。コストはかかるが、高級感を演出できる。
それぞれ詳しく解説します。
タイルカーペット
防音性に優れたタイルカーペットは、人や物の動きが多いオフィス空間でもっとも使用されている素材です。
物音や話し声の反響も少ないため、多くの人が働くオフィスで使われる床材として適しています。
色や柄などの種類も豊富で、オフィスのイメージや予算に合わせて選ぶことも可能です。
軽くて扱いやすく、汚れたらその部分だけ交換すれば良いため、メンテナンスやコストの面で選ばれることも多いです。
ビニルタイプ
ビニルタイプの床は、タイル型のフロアタイルとロール型のフロアシートの2種類が使われることが多いです。
木目調や石目調などデザインも豊富でリーズナブルなため、天然素材の代替案として使われることも多くあります。
施工も簡単なので、工事にかかるコストや期間も抑えることが可能です。
撥水性に優れており、お手入れは水拭きだけでOKと取り扱いが楽なところも、ビニルタイプのメリットです。
天然素材
木や大理石など天然の素材を生かした床材は、来客が訪れるスペースなどで部分的に使われることが多いです。
先に紹介したタイルカーペットやビニルタイプと比べて、コストが高くメンテナンスの手間もかかりますが、高級感を演出できるというメリットがあります。
また、木材を利用した床はぬくもりを感じられる空間になることから、リフレッシュスペースで使われることもあります。
オフィスの床の選び方
ここでは、オフィスの床を選ぶ際のポイントとして、以下の4つを紹介します。
- ゾーニングで選ぶ:色や素材を変えることで、エリアをゾーニングする
- 配色で選ぶ:心理的な効果に合わせて配色を選ぶ
- 掃除のしやすさで選ぶ:メンテナンス性の高い素材を選択する
- コンセプト・目的で選ぶ:空間の目的や用途に応じて色や素材を使い分ける
ゾーニングで選ぶ
ゾーニングとは、目的や用途に応じて空間を区分けすることです。空間に制限があってパーティションや棚などを設置できない場合でも、床の素材や色、デザインなどを切り替えることでゾーニングが可能です。
例えば、執務スペースと通路で床のデザインを変えれば、導線が明確になり、来客をスムーズに誘導できます。また、休憩スペースだけ他の空間と異なる落ち着いた色味の床を採用すると「ここはリラックスする空間」ということを視覚的に明示できます。
配色で選ぶ
社員や来客に与えたい印象、心理的効果に合わせて配色を選ぶのも一手です。色彩は人の心理に影響するといわれており、オフィスの色調によって社員の生産性向上や来客のイメージアップに有効と考えられます。以下のように、与えたいイメージに応じて空間ごとに色を使い分けるといいでしょう。
色 | 与えるイメージ | 効果的な場所 |
緑 | 森林、リラックス、新鮮 | リラックススペースや食堂など。 |
青 | 冷静さ、涼しさ、集中 | 執務室や集中スペースなど。 |
黄色 | 幸福、気軽さ、明るさ、ポジティブ | 会議室、制作職などが利用する執務室。 |
ブラウン | 落ち着き、安定、堅実さ | 事務職が利用する執務室、食堂など。 |
ブラック | 重厚感、スタイリッシュ、威圧感 | 社長室や応接室など。 |
掃除のしやすさで選ぶ
オフィスの床は、メンテナンス性を考慮することも重要です。メンテナンス性の低い床を採用してしまうと汚れが蓄積してしまい、状態によっては清掃業者に依頼する必要が出てくるかもしれません。
例えば、往来の多い通路部分や食べ物が落ちる食堂には、汚れの落ちやすいビニルタイプを採用する、配線の多いエリアには、配線の引き回し作業が容易なタイルカーペットを利用するなどの選択が考えられます。
コンセプト・目的で選ぶ
オフィス空間といっても、執務スペース、来客スペース、会議スペース、通路や休憩スペースなど、場所によって使われる目的が異なります。用途に合わせて床材の色や種類を変えると、メリハリがついてわかりやすくなるでしょう。
また、目的に応じた選び方は、これまで紹介したゾーニング・配色・掃除のしやすさによる選び方の要素を内包できる方法です。空間のコンセプトや目的に合ったゾーニング・配色・掃除のしやすさを意識すると、より快適な空間を演出できます。
休憩スペース
心身を休ませ、リフレッシュできる休憩スペースでは、目にやさしいアースカラーがおすすめです。
例えば、木々をイメージさせるグリーンや、土をイメージさせるブラウンなどが挙げられます。赤などの刺激が強い色はリラックスできないため、休憩スペースでは避けるのがベターです。
執務スペース
PC業務などの作業を行う執務スペースでは、集中力や冷静な判断力が高まるブルー系が良いでしょう。
グレー系の色も照明の光を吸収する効果があるため、作業をしている人の集中力を高めてくれます。目を使う仕事が多いところでは、目に優しいアースカラーも有効です。
ミーティングスペース
ミーティングスペースは、意見交換やアイデア出しが行われる空間です。活発にアイデアが出るようにオレンジなどのビビッド系の色を選ぶと良いでしょう。ビビッドカラーは、交感神経を刺激し、活動的にさせる効果があるといわれています。
応接室
来客対応を行う応接室は、会社のイメージを左右する場所であるといっても過言ではありません。
清潔感や高級感が演出できるよう、シンプルなホワイトやスタイリッシュな黒系の色が適しています。応接室は奇抜な色やデザインのものより、シンプルで上品なものが好まれる傾向にあります。
オフィスの床を張り替える際に注意すべき点
オフィスリフォームの際に、床を張り替える上で注意すべきポイントとしては、次の4つがあげられます。
- レイアウトのしやすさ:場所によっては床材の張り替えや配線の移動が容易な素材を選ぶ
- 原状回復のしやすさ:退去時に原状回復をしやすい素材を選ぶ
- 掃除・メンテナンスのしやすさ:日々の手間を考慮し、清潔を保ちやすい素材を選ぶ
- 配線整理のしやすさ:タイルカーペットなど、デスク周りの配線を整理しやすい素材を選ぶ
レイアウトのしやすさ
レイアウト変更の多いエリアについては、床材の張り替えや配線の移動が容易な素材を選ぶといいでしょう。
最も簡単に取り外しができるのはタイルカーペットで、配線の多いオフィスでもよく採用されています。反対に、ビニルタイプや天然素材は接着剤を使用するため、簡単にレイアウト変更はできません。オフィスの床によっても貼れる素材が異なりますので、確認してみましょう。
原状回復のしやすさ
原状回復とは、賃貸物件を退去する際に入居前の状態に戻しておくことで、賃貸オフィスには基本的に原状回復義務があります。将来的にオフィスを移転する可能性がある場合、原状回復のしやすさを考慮して床材を選ぶと、原状回復工事の手間やコストを削減できます。
原状回復しやすい素材としては、取り外しの簡単なタイルカーペットがあげられます。先述でも触れた通り、ビニルタイプや天然素材は接着剤を使用するため、剥がすのが難しく原状回復には手間がかかる点に注意が必要です。
掃除・メンテナンスのしやすさ
床材により、掃除方法やメンテナンスの方法、掃除する頻度が異なります。例えば、人通りの多い通路や汚れやすい飲食スペースなどにメンテナンスの難しい素材を採用してしまうと、汚れが蓄積し、日常的な掃除では落ちなくなってしまうかもしれません。
日々の手間にならないよう、検討している床材のメンテナンス方法を必ず確認するようにしましょう。
配線整理のしやすさ
パソコン周りの配線がごちゃごちゃしやすいオフィスでは、配線整理のしやすさも考慮するといいでしょう。床に這った配線を放置していると、踏みつけによる断線や積み重なったホコリによる火災などのリスクが高まります。
タイルカーペットは一部を剥がして床下の作業ができるため、配線と組み合わせやすい代表的な素材です。
オフィスの床の配線を整理する方法
清潔感のあるオフィスを目指すには、配線の整理が欠かせません。床に貼られた配線を整理整頓し、すっきり見せるポイントを解説します。
- 配線整理グッズを使う:スパイラルチューブや配線ボックスを使い、コードをまとめる
- 床をOAフロアに変える:配線類を床下に収納できるOAフロアに改装する
配線整理グッズを使う
配線をバラバラな状態で床に這わせておくと、空間を圧迫して見た目の印象を行います。スパイラルチューブや結束バンドなどを利用して複数のコードを1つにまとめると、見た目が改善するだけでなく、踏みつけによる断線なども防止できるでしょう。
手間をかけたくない場合には、コードをまとめて中にしまえる配線ボックスを使用するのも一手です。
床をOAフロアに変える
OAフロアとは、ケーブルや電源といったOA機器の配線類を床下に収納できる二重構造の床です。オフィスをOAフロアに改装すれば、床上に配線が出ず、レイアウト変更時にも配線が邪魔になることがありません。
OAフロアは、大きく「置敷タイプ」と「支柱タイプ」の2種類に分類され、それぞれコストや施工条件が異なります。まずは自社のオフィスでどちらが導入可能か確認をとってください。
オフィスの床の掃除方法
オフィスの床を掃除する方法は、選んだ床材によっても異なります。ここでは、基本的な床掃除のやり方や目立つ汚れの落とし方などを紹介します。
- 黄ばみ汚れの落とし方:ホコリを取り、中性洗剤で拭く
- 黒ずみ汚れの落とし方:アルコールスプレーでカビを防ぐか、ワックスを新しく塗布する
- 油汚れの落とし方:油が付いたら放置せず、すぐに中性洗剤で拭く
黄ばみ汚れの落とし方
床についた水滴を放置すると、素材の成分と反応して、黄色に変色したシミがつくことがあります。特にビニルタイプの床に発生しやすいため、注意が必要です。
黄ばみ汚れが発生したら、中性洗剤で除去しましょう。掃除機やモップでホコリを取り除いた後、雑巾に中性洗剤を数滴落として泡立て、シミ部分を拭いてください。
黒ずみ汚れの落とし方
黒ずみ汚れは、塗れた床を放置して発生したカビか、ワックスの劣化によるものです。特に、カビによる黒ずみを放置すると内部までカビが浸透して汚れが落ちにくくなるため、早めの対処が肝心です。
カビによる黒ずみには、アルコールスプレーを吹き付けてカビの繁殖を防ぎます。ワックスの劣化が原因であれば、一度ワックスを剥離し、新しくワックスを塗布してください。
油汚れの落とし方
社員がデスクで食事を取る際に、食べ物をこぼしたり汁物を床に飛ばしたりすると、油ジミができます。油は透明なため気づかれにくく、放置されると黒ずみ汚れへと変化し、落ちない汚れになってしまいます。
黒ずむ前であれば中性洗剤での拭き取りで簡単に落とせますが、放置しないことが肝心です。デスク周りでの食事を禁止するルールを設けるなど、掃除の難しい場所に汚れを作らない工夫もあわせて考えるといいでしょう。
オフィスの床選びはプロの相談しよう
オフィスの床選びは、空間ごとのコンセプトや目的に沿って選択するのはもちろんのこと、現状回復のしやすさや、掃除・メンテナンスのしやすさなど、長期的な視点を持つことが重要です。
また、建物の構造などによっても選べる床材は変わってきます。最適な床を選ぶためにも、早い段階で内装デザインのプロに依頼し、相談しながら進めた方が確実です。内装デザインや移転にかかる手間を削減し、担当者が本業に集中できるといったメリットもありますので、まずは信頼できる会社に相談してみましょう。
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