ワークエンゲージメントを高めるには何が必要?大事な要素や取り組みを紹介

ワークエンゲージメントは、社員の仕事に対するポジティブな心理状態のことを指します。組織を活性化させるために重要な要素といわれていますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。 今回は、ワークエンゲージメントを高めるメリットや方法などについて解説します。

この記事は約9分で読み終わります。

ワークエンゲージメントを高めるメリット

ワークエンゲージメントは、オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ教授によって提唱された概念で、「仕事に対して持続的かつポジティブな感情や心理状態のこと」を指します。仕事全体を対象としており、特定の対象に対する一時的な感情や心理状況のことではありません。

まずは、ワークエンゲージメントを高める4つのメリットについて見てみましょう。

生産性が向上する

ワークエンゲージメントを高めると、社員一人一人のモチベーションがアップします。

・自らのスキルアップに力を入れる社員が増える
・前向きな発言が増える
・企業価値を高めるための提案が増える

など、仕事に取り組む姿勢がポジティブになります。このように、社内全体が活性化し、生産性が向上するメリットがあります。

仕事にやりがいを感じてもらえる

仕事に対してやりがいを見出してもらえるのもメリットといえます。仕事におけるモチベーションの源泉はさまざまありますが、給与や労働環境といった外的要因の場合、社員個人ではコントロールすることができません。そのため、不満につながりやすいという特徴もあります。

一方、仕事自体に楽しさややりがいを感じることができれば、モチベーションを維持しやすくなります。「もっと成長したい」「良い仕事をしたい」という気持ちから、社員一人ひとりのパフォーマンスの向上が期待できるでしょう。

離職率を抑える

厚生労働省の調査により、ワークエンゲージメントが高いほど、離職率が低く、定着率が高いことが示されています。
出典:「労働経済の分析 ―人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について―」(厚生労働省)

同時に、ワークエンゲージの向上によって、仕事におけるストレスや疲労感を軽減できる可能性も指摘されています。社員一人一人の働きがいに着目し、労働環境を整えることで、帰属意識を向上させることができるともいえるでしょう。

人材育成がスムーズにできる

前述のとおり、ワークエンゲージメントが向上すると、次のような効果が得られます。

・自身のパフォーマンス向上に関心が髙まる
・組織のコミットメントが高まる

人材育成には、指導者のスキル以外にも受け手のモチベーションや自発性が必要になる場面も多いです。育成担当者側としても、スムーズに人材育成に取り組むことができるでしょう。

また、社員同士の関係も良好になるため、社員が自発的に周囲へスキルを共有してくれるなど、相乗効果が得られる可能性もあります。

ワークエンゲージメントが低いとどうなる?

ここまでで、ワークエンゲージメントを高めるメリットについて紹介してきました。では、ワークエンゲージメントが低い状態を放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

次に、ワークエンゲージメントが低いことで起こりうるリスクについて紹介します。

モチベーションが低下する

ワークエンゲージメントが低下すると、社員のモチベーションも下がります。

積極的に仕事に取り組む姿勢がみられなくなるため、全体的なパフォーマンスが低下するおそれがあります。業務効率も悪くなり、生産性の悪化へつながってしまうのです。

メンタルヘルスに影響する

ワークエンゲージメントが低い状態が続くと、会社への不満や対人関係のストレスによってメンタルヘルスに影響が出てしまう場合もあります。

メンタルヘルスへの影響は、突然意欲を失う「バーンアウト」やネガティブな状態で仕事に打ち込む「ワーカホリズム」に陥ってしまうおそれもあるため注意が必要です。

また、近年問題視されているのが「プレゼンティーズム」という現象です。これは、心の病を抱えながら仕事を続けている状態のことを指します。

プレゼンティーズムについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ご参照ください。
健康経営オフィスで社内を活性化!3つのメリットを紹介

メンタルヘルスに悪影響が出ると、休職せざるを得なくなるケースも多いです。人手不足を招くだけでなく、組織全体の士気が下がることにもつながります。

業務に関するトラブルが増える

やる気が低下すると、仕事の質に大きな影響を与えます。集中力が下がって業務が円滑に進まないだけでなく、人的ミスが増えたり、社内連携がうまくいかないなど、トラブルが増えてしまうおそれもあります。

さらに、ワークエンゲージメントが低く、心に余裕がない状態だと、対人関係に支障をきたすおそれがあります。人間関係の悩みは離職する原因として挙げられることも多いため、退職者が増えるなど会社経営に悪影響を及ぼしかねません。

日本のワークエンゲージメントが低いといわれるのはなぜ?

日本は、その国民性によって、海外よりもワークエンゲージメントが低いといわれています。具体的に説明していきましょう。

日本の国民性が影響している

日本人は「自己批判バイアス」が強い傾向にあります。自己批判バイアスとは、自分自身に厳しく接し、否定することをいいます。ポジティブな要素を当たり前に受け入れることが難しく、ネガティブな要素に着目してしまうため、「自分は幸せでない」と感じてしまうことがあります。

また、「相互協調的自己」という傾向もしばしば指摘されます。自分という軸を持っているのではなく、他人や周囲との関係性の中で自分を定義づけることです。日本人は協調性が高いといわれるのもこうした国民性にあります。このことから、自分自身で今の状態を幸せだと肯定できる人は少なく、むしろ周囲に対して「やりがいを持って働いている」ように見せない面があるといわれます。

日本のワークエンゲージメントの数値が低く出ているのは、このような国民性に起因するとも考えられるでしょう。

ワーカホリズムに陥っている場合がある

ワーカホリズムは、活動水準は高いものの、仕事への態度はネガティブな状態を指します。「仕事に熱心に取り組む」という点はワークエンゲージメントと似ていますが、休む罪悪感や不安から仕事に依存してしまっているネガティブな状態であるため、良い状態とはいえません。

ワーカホリズムに陥ることは、働かなければならないという強迫観念から仕事に熱中しているということなので、心理状態はポジティブではなくネガティブなものとなってしまっています。

ワークエンゲージメントを高める4つの方法

ワークエンゲージメントは、仕事に対して以下の要素が揃っている状態であることが必要です。

1.活力:仕事から活力を得ている
2.熱意:仕事に対する誇りや思い入れ、やりがいがある
3.没頭:熱心に仕事に取り組んでいる

ここでは、ワークエンゲージメントの研究をしている慶應義塾大学教授の島津明人氏が提案する、ワークエンゲージメントを高める方法を紹介します。

参加型討議

ワークエンゲージメントを高めるために、社員同士が意見交換をする場をつくりましょう。日頃困っていることや悩み、気になっている課題などについて意見を交換し、全員で対策を考えます。

いきなり討議を始めても、スムーズな進行ができない可能性があるため、事前にアンケート調査や共通のチェックリストなどで意見をまとめ、分析しておくことも大切です。また、その場限りの討議で終わらないようにしましょう。

CREWプログラム

CREWとは、「Civility(礼節、丁寧さ)、Respect(敬意)and Engagement(エンゲージメント) in the Workplace」の略です。

CREWプログラムは、2005年にアメリカで開発されたプログラムで、敬意をもって人間関係を構築し、働きやすい職場環境を作ることを目的として導入されています。

テーマを用意し、週に1回、もしくは隔週など、実施しやすい頻度と実施しやすい時間帯において短時間で行うことが大切です。一度きりではなく、3ヶ月以上継続して行うのが望ましいとされています。

ジョブ・クラフティング

ジョブ・クラフティングは、個人的にやりがいをもって働く方法や、社員同士のコミュニケーションの方法を工夫しながら、モチベーションを高めていく手法のことです。スケジュール管理方法の提案やToDoリストの共有などを実施してもらうと良いでしょう。

社員個人に仕事への取り組み方や他の社員との接し方について考えてもらうことで、やりがいを見つけることを目的としています。

思いやり行動

思いやり行動については、「思いやって行動しよう」という呼びかけではなく、自分が欲しいサポートの内容や具体的なサポートの方法について話し合うことが大切です。

話し合いの中で出た思いやりの行動について実際に職場で実践します。

加えて、2週間ほど経ったところで再度話し合いを行うことがポイントです。実践後に、実際はどうだったか、もっとよくするにはどうしたら良いかなどの話し合いをすることで、職場の雰囲気が改善し、組織全体のエンゲージメントの向上につながります。

ワークエンゲージメントが高い企業での取り組み事例

ワークエンゲージメントが高い企業では具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、ワークエンゲージメントが高い企業で取り組まれている事例を紹介します。

モチベーションアップのための体制づくり

適材適所の人員配置を行うために、所属や業務内容の見直しを行うことが大切です。業務内容や結果へのポジティブなフィードバックなども社員のモチベーション維持には欠かせません。

また、成果報酬制度の導入などでモチベーションを維持している企業もあります。

働き方の多様化

多様な働き方を認めるということは、社員の多様な生き方を認めることでもあります。結婚後や出産後も働きやすい環境づくりのために産休・育休を導入する企業も増えてきました。

そのほか、時短勤務やテレワーク、サテライトオフィス勤務など、コロナ禍によって新しくできた働き方もあります。

制度を整えるほか、ワークスペースの見直しもひとつの手です。フリーアドレスやABWなど、社内でより自由な働き方を実現できるような工夫をしていきましょう。

オフィスレイアウトでできる工夫やポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
生産性を上げるオフィスのレイアウトは?2つのポイントをご紹介

良好な人間関係がつくれる職場環境づくり

ミーティングスペースや休憩スペースの設置など、社員同士がコミュニケーションを取りやすい環境にすることは最も大切です。リフレッシュスペースや社内カフェなどリラックスできる場も必要となります。

たとえば、兼松エレクトロニクス株式会社 / ケー・イー・エルテクニカルサービス株式会社の事例を見てみましょう。

ここは2社が入居するオフィスですが、会社を超えたコミュニケーションが生まれるオフィス設計になっています。

こちらのオフィスではワークスペースのいたるところにミーティングスペースがあり、いつでも気軽に集まることができます。 オフィス設計とは、まずどこに何を配置するかのゾーニングから始まり、ワークスペースの席配置の決定やテーブルの大きさなどを細かく計画することをいいます。

社員のモチベーションを高め、最大のパフォーマンスを発揮してもらうためにも、ワークエンゲージメントを高めるオフィス設計が必要です。

社員のモチベーションを高めるオフィスデザインならヴィスまでご相談ください。働きやすいオフィス設計に特化し、物件の選定から移転のコンサルティング、新オフィスのデザインまで細かく対応可能です。

まとめ

今回は、ワークエンゲージメントを高めるための方法やポイントについて紹介しました。ワークエンゲージメントを高めるには、社内の人間関係やコミュニケーションのとり方などが大切ですが、それ以外にもオフィス設計も欠かせません。

コミュニケーションが生まれやすく、ワークエンゲージメントを高めるオフィス設計ならぜひヴィスまでご相談ください。社員のモチベーションを高めるオフィスデザインをご提案いたします。