採用できる企業は取り組んでいる「採用ブランディング」確立の5ステップ

近年、労働人口の減少により、企業の採用活動が厳しいものになってきています。とくに認知度の低い企業は、求職者に選ばれにくいものです。 「何度も求人をかけているのに全然応募が来ない」「優秀な人材が獲得できない」と悩む採用担当者もいるのではないでしょうか。このような厳しい状況で役立つのが「採用ブランディング」です。 今回は採用ブランディングの概要や重要性、採用ブランディングの具体的な確立方法などについて紹介しますので、採用活動の成果が出ずに悩んでいる方は参考にしてください。

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優秀な人材を獲得する上で注目の「採用ブランディング」とは

採用ブランディングとは、自社のブランドイメージを構築するための戦略のことです。就職先を探す際に、聞いたことがない企業、これといった特徴がない企業に積極的に応募する人はなかなかいません。

採用ブランディングによって自社の特徴や強みを把握し、「うちはこんな会社です」とアピールできれば、求職者に選ばれやすくなるのです。

また、自社の理念や社風、事業内容を適切に示すと、それに共感した人が応募してくるようになるため、自社にマッチする人材を集めやすくなります。

情報が詳細で正確であるほど入社前後のギャップが少なくなるので、内定辞退者や早期退職者も減るでしょう。内定辞退者や早期退職者が減るということは、長期的に見れば採用コストの削減にもつながります。

「採用ブランディングは大企業がやるもの」と考える方もいるかもしれません。しかし、採用コストを抑えられる可能性があることから、採用にかける予算が限られている中小企業でも採用ブランディングに取り組むところが増えているのです。

採用ブランディングはなぜ重要?近年の傾向からみる採用課題

求職者に自社をアピールするための採用ブランディングですが、近年企業が抱える採用課題によって、その重要性が高まっています。なぜ採用ブランディングが重要なのか、理由を見ていきましょう。

社風(雰囲気)を入社理由とする求職者が多い

採用ブランディングの重要性が高まっている理由のひとつが、社風を入社理由とする求職者が増えていることです。

株式会社学情が運営する「あさがくナビ」の2022年卒業予定者向けアンケートの調査結果によると、入社を決めた理由が「社員の人柄や雰囲気」と答えた人は全体の2割以上で、入社理由の2位となっています。

しかし、社内の様子は企業側が発信しない限り、外部からは知りようがありません。そのため、企業側から積極的に情報を提供する必要があります。このとき、求職者の興味を引くような内容にするために、採用ブランディングが役立つのです。

出典:あさがくナビ

接点が多様化している

インターネットを活用したツールの普及や就職活動のオンライン化によって、求職者と企業の接点が多様化していることも、採用ブランディングが重要な理由です。求職者と企業の接点となるツールや方法として、以下のようなものがあります。

・企業のホームページ

・就職情報サイト

・SNS

・コミュニティサイト

・企業説明会

・就活セミナー

・インターンシップ など

自社をアピールする場が多いのは良いことですが、発信する情報が媒体ごとに変わると求職者が混乱します。そのため、採用ブランディングによって、どの媒体でも一貫したメッセージを発信する必要があるのです。

分業していると全体最適が難しい

採用ブランディングが重要な理由として、近年企業の採用活動の分業化が進んでいることも挙げられます。

企業が自社をアピールする場が増加したことにより、それにともなう業務も増えています。企業内だけでは対応しきれないことも多く、採用代行会社やデザイン会社など、専門の会社に業務を依頼することが増えています。

しかし、間に入る会社が多いほど、それぞれの領域の業務は完結していても、全体で見ると最適化されていなかったり軸がブレてしまっていたりするものです。

そのため、全体が同じ方向を向けるように、採用ブランディングによって企業が伝えたいメッセージを明確にする必要があります。

【5ステップ】採用ブランディングを確立する方法

「採用ブランディングの重要性は理解したものの、具体的に何をすれば良いのかわからない」という方もいるでしょう。そこで、採用ブランディングを確立する方法を解説します。

採用ターゲットの明確化

採用ブランディングを始めるときは、どのような人材を求めているのか、ターゲットを明確化することが重要です。ここがはっきりしていないと、求める人材に合ったメッセージが発信できなくなります。

採用ターゲットを明確化するには、「MUST」と「WANT」を意識しましょう。

・MUST:求職者に求める必須の条件

・WANT:できれば備えていてほしい条件

このふたつを洗い出しておくと、学歴や資格、スキルなど、自社が希望する条件を満たした人材のなかから、より良い人材を絞れるようになります。

採用ニーズの明確化

採用ターゲットを明確にしたら、次は採用ニーズを洗い出しましょう。自社の強みや他社との差別化ポイントを分析し、採用ニーズを明確化することで、候補者を絞り込みやすくなるうえ、採用後のミスマッチも防止できるようになります。

強みや差別化ポイントの分析には、「SWOT分析」が役立ちます。SWOT分析とは、以下の4つの単語の頭文字を並べた造語です。

・Strength=強み

・Weakness=弱み

・Opportunity=機会

・Threat=脅威

経営やマーケティング戦略を立てるためのフレームワークで、採用ブランディングにも役立ちます。

たとえば、「強み×機会」で、競合優位となる強みがわかります。また、「弱み×脅威」を知れば、最悪の状況を避けるための対策を事前に立てることが可能です。これらの分析結果をしっかり求人情報に反映できれば、採用効果の高まりを期待できます。

採用コンセプトの決定

採用ターゲットと採用ニーズが明確化できたら、その結果を踏まえて採用コンセプトを決定しましょう。

自社が求める人材に、どのようなメッセージを発信してアピールするのか、具体的な戦略を立てます。採用コンセプトは頻繁に変えるものではないので、3年後、5年後など長期的な経営的視点も踏まえたうえで確立させることが重要です。

発信方法を選択する

採用コンセプトが決まったら、その情報をどのように発信していくかを考えましょう。たとえば、自社の採用サイトを作れば、文章や写真、動画などを用いて制約なく伝えたい情報を存分に発信できます。

会社説明会なら、求職者と直接会って自社の強みや魅力を伝えることが可能です。SNSは拡散力が高いため、求職者に刺さる情報を発信できれば自社の認知度アップにつながります。

もちろん、複数のツールを駆使して、さまざまな方向から求職者にアピールしてもかまいません。どうすればより効果的かつ効率的に自社をアピールできるか考えてみましょう。

管理・運用を継続する

採用ブランディングは長期施策であり、1度確立すれば終わりではありません。採用KPIをもとに、データを分析してPDCAサイクルを回すことが重要です。採用ブランディングにおけるKPIの例として、以下のようなものがあります。

・応募者数

・選考通過人数(通過率)

・内定数(内定率)

・内定辞退数(辞退率)

採用にかかったコストや、内定者1人あたりの採用単価を出すことも大切です。また、入社後の離職率や配属部署での評価なども調査しておくと、採用ブランディングの成果をより正確に分析できます。

採用ブランディングの企業事例4選

採用ブランディングを確立するにあたり、ほかの企業はどのように取り組んでいるのか知りたいという方もいるでしょう。そこで、採用ブランディングを行っている企業の事例を4つ紹介します。

【ポテンシャル採用】サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社は、ポテンシャル採用を取り入れているのが特徴です。採用サイトにはポテンシャル採用の紹介ページや、ポテンシャル採用枠で入社した社員のインタビュー記事を掲載しています。

また、「100人いたら100とおりの働き方があっていい」という考えのもと、社員それぞれが自分で働き方を決められる「働き方宣言」を企業の強みとしてアピールしているのも特徴です。

【ピープルビジネス】日本マクドナルド株式会社

日本マクドナルド株式会社は、すべてにおいて人を大切にする「ピープルビジネス」という考え方をもとにビジネスを行っています。

そのために「ピープルビジョン」を定め、企業が社員を大切にすることで、社員にもブランドに対する愛着をもってもらえるよう工夫しているのが特徴です。

採用サイトでは、こうした日本マクドナルド株式会社の理念やビジョンを伝えるために、現役クルーへのインタビュー、柔軟な働き方、応募コンシェルジュへの導線などを設置しています。

【採用サイトの改善】フォーシーズ株式会社

不動産物件の家賃保証を行うフォーシーズ株式会社は、採用ブランディングの一環として、「社員が輝く社内環境」を軸とした採用サイトを制作しています。

インタビュー記事や社員の声を充実させ、社内の雰囲気や業務内容が伝わりやすいよう工夫しているのがポイントです。

また、育休・産休制度といった働き方をサポートする制度などもくわしく掲載し、求職者が応募前に知っておきたい情報を積極的に発信しています。

【オフィス移転  】株式会社PR TIMES

対話から信頼と創造性が高まる、“共感を育む”オフィス

株式会社PR TIMESでは、「対話から信頼と創造性が高まる、“共感を育む”オフィス」をコンセプトに、採用ブランディングも見込んだオフィス移転を行っています。

オフィスの移転にあたり、「オープン&フラット」「フェイス・トゥ・フェイスによる共感醸成」「健康」の3つの明確なテーマを打ち出しているのが特徴です。

1フロアは社員の対面でのコミュニケーションを重視したレイアウトにされており、窓の多さやガラスの間仕切りを利用した開放的な空間にされています。

ワークフロアは「固定席+Activity Based Working」をテーマに、自然に社員同士の視線が合うような空間作りを意識しているのがポイントです。

採用ブランディングにおいては、SNSなどのツールを駆使した情報発信に意識が行きがちですが、社員が働きやすい環境を用意することも求職者へのアピールにつながります。

まとめ

労働人口の減少や起業と求職者の接点の多様化など、さまざまな要因によって、企業の採用活動の難易度が上がっています。

厳しい状況のなかで優秀な人材を獲得するには、採用ブランディングによって企業のブランドイメージを構築し、積極的に求職者へアピールすることが重要です。

採用ブランディングの確立にはさまざまなステップがあり、1度やれば終わりでもないため、「手間がかかる」と躊躇することもあるかもしれません。

しかし、多くの企業が採用ブランディングに取り組むなか、何もせずに待っていては、どんどん採用活動の成果が出づらくなっていくでしょう。今回紹介した内容を参考に、少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。