ワークエンゲージメントの3つの尺度と測定方法・質問例を解説!

本記事では、ワークエンゲージメント測る尺度と測定方法について解説します。ワークエンゲージメントを高めるためには、まずは現状を測定・分析し、課題を見つけなければなりません。

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 ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブな心理状態のことです。ワークエンゲージメントの測定方法にはいくつか種類があり、「どれを採用したや良いのか」「回答方法やスコアの判断方法がわからない」といった悩みを抱えている人もいるでしょう。

本記事では、ワークエンゲージメントの定義や概念などの基礎知識から、尺度と測定方法、ワークエンゲージメントを高める方法などについて解説します。現在のワークエンゲージメントを測定し、向上に向けて適切な取り組みを始めるために、ぜひお役立てください。

ワークエンゲージメントとは?

ワークエンゲージメントとは「仕事に対してポジティブかつ満たされている心理状態」を指します。オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授によって、以下のように定義されています。

”ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲイジメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である”

引用:島津 明人:ワーク・エンゲイジメントに注目した個人と組織の活性化(日本職業・災害医学会会誌第63巻第4号)

ワークエンゲージメントが高い人は、従業員が仕事に誇りを持ち、やりがいを感じて熱心に取り組んでいる状態にあるといえます。

ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントの違い

ワークエンゲージメントと似た言葉に、「従業員エンゲージメント」があります。従業員エンゲージメントとは、所属する企業や組織に対する愛着や帰属意識のことです。学術的定義はありませんが、ワークエンゲージメントより大きい概念といえます。

ワークエンゲージメントが仕事内容に対する従業員の態度や心理状態を指すのに対し、従業員エンゲージメントは従業員と企業・組織との関わりを示します。

ワークエンゲージメントと従業員満足度(ES)の違い

従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)は、従業員の会社への評価のことです。具体的には、職場の人間関係や働きがい、福利厚生などに対する満足度を表します。

従業員満足度とワークエンゲージメントトは、従業員との関わりが想定される対象が異なります。ワークエンゲージメントが仕事内容を対象としているのに対し、従業員満足度では仕事内容や給与、職場環境、人間関係などが対象です。

ワークエンゲージメントを構成する要素

ワークエンゲージメントは、「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素が揃った状態として定義されています。ここでは、各要素について詳しく解説します。

関連記事:ワークエンゲージメントとは?構成要素・測定方法・高める方法を解説

活力

活力(Vigor)とは、仕事に対するエネルギーが十分にある状態のことです。活力が高い従業員は、目の前の仕事に懸命に取り組みながら、生き生きとして仕事を楽しむことができます。よって、企業への貢献意欲も強く、業績アップや目標達成のために働くことが期待されます。

トラブルや困難にぶつかってストレスを感じても、休息により回復し、業務に復帰するため周囲からの期待や信頼性も高まるでしょう。

熱意

熱意(Dedication)とは、仕事内容へのやりがいやキャリアへの誇りを持っている状態です。熱意のある従業員は積極的に仕事に取り組むため、生産性の向上につながります。

また、仕事に対する工夫や努力を継続し、新たな知識やスキルのインプットにも取り組みます。新しい商品やサービスの開発、イノベーションにつながるアイデアを生み出すことで、業績アップも期待できるでしょう。

没頭

没頭(Absorption)とは、時間を忘れるほど集中して仕事に取り組んでいる状態です。仕事が楽しいと感じ、企業や組織、仕事への愛着が形成されています。没頭するほど熱心に仕事ができれば、業務品質や効率の向上につながります。

また、仕事に没頭することで幸福感も得ており、時間が早く進むような感覚もあります。

ワークエンゲージメントに関連する概念とそれぞれの位置付け

ワークエンゲージメントを理解するためには、関連する用語を理解しておくと良いでしょう。ここでは、以下3つの概念について解説します。

引用:厚生労働省「令和元年版労働経済の分析─人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について─」

・バーンアウト(燃え尽き症候群):仕事への態度や認知が否定的で、活動水準も低い状態
・ワーカホリズム(仕事中毒):仕事の活動水準は高いが、強迫観念から仕事をしている状態
・職務満足感(リラックス):仕事への態度や認知は肯定的だが、活動水準は低い状態

各項目についてみていきましょう。

バーンアウト(燃え尽き症候群)

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、仕事や企業に対する不満や、心身の疲労感から意欲的な態度を取ることができず、活動水準も低い状態のことです。ワークエンゲージメントとは対極に位置する概念といえます。

多くの場合、熱意を持って仕事に取り組んだものの、期待した結果が得られず、燃え尽きたように企業や仕事に対応できなくなります。バーンアウトの状態では、生産性が低下するだけでなく、他責的な言動が増えて周囲の人に悪影響を及ぼす可能性もあります。

ワーカホリズム(仕事中毒)

ワーカホリズム(仕事中毒)とは、仕事に対してネガティブな態度や認知を持っているものの、活動水準は高い状態のことです。ワーカホリズムの状態にある従業員は、「不安や恐怖を回避するために仕事をしなければならない」という心理に陥っており、長時間働くほか、プライベートの時間も必要以上に仕事のことを考える傾向が見られます。

ワーカホリズムが「働かなければならない」という脅迫概念に基づいているのに対し、ワークエンゲージメントは「働きたい」という気持ちから仕事に取り組む点が異なります。

職務満足感(リラックス)

職務満足感(リラックス)は、仕事の結果や評価から生じるポジティブな心理状態を指します。ワークエンゲージメントと同様に、仕事から活力を得ている状態といえますが、仕事に没頭はしておらず、活動水準は低めです。

職務満足感は仕事自体への認知や態度を指しており、ワークエンゲージメントは仕事に取り組んでいるときの心理状態を示すという違いがあります。

ワークエンゲージメントの尺度と測定方法

ワークエンゲージメントを測る尺度には、以下の3種類があります。

・UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度)
・MBI-GS(マスラック・バーンアウト・インベントリー)
・OLBI(オルデンバーグ・バーンアウト・インベントリー)

国際比較が容易であるという理由から、「ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)」が最も一般的な尺度です。それぞれのメソッドについて詳しく見ていきましょう。

UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度)

UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度)は、社員に対してワークエンゲージメントの3要素(「活力・熱意・没頭)に関する質問を行い、回答をスコア化する手法です。日本でも最も多く利用されています。

質問項目・質問例

UWESには、「活力」「熱意」「没頭」それぞれに関する設問が用意されています。具体的な質問には、以下のようなものがあります。

・仕事をしていると活力がみなぎるように感じる
・自分の仕事に誇りを感じる
・私は仕事に集中している

測定方法・回答方法

UWESでは、17の設問に対し、以下の7段階評価から該当するものを選択します。

・全くない:0
・ほとんど感じない:1
・めったに感じない:2
・時々感じる:3
・よく感じる:4
・とてもよく感じる:5
・いつも感じる:6

それぞれの平均値をワークエンゲージメントスコアと呼び、スコアが高いほうがエンゲージメントが高いと判断できます。

MBI-GS(マスラック・バーンアウト・インベントリー)

MBI-GS(マスラック・バーンアウト・インベントリー)とは、バーンアウトの状態であるかどうかを測定する手法です。ワークエンゲージメントの真逆にあたるバーンアウトの程度を測定し、ワークエンゲージメントの高さを調べます。

質問項目・質問例

MBI-GSの設問は、疲労感・シニシズム・達成感などに関する合計16項目で構成されています。具体的な質問例としては、以下があります。 

・1日の仕事が終わると疲れ果てることがある
・仕事のために心にゆとりがないと感じることがある
・自分は職場で役に立っていると思う

測定方法・回答方法

MBI-GSの設問に対し、そのように感じる頻度に応じて回答します。選択肢は以下の通りです。

・全くない
・年に2~3回
・月に1回
・月に2~3回
・週に1回
・週に2~3回
・毎日

上記の回答は、頻度が上がるほど数値は高くなります。よって、回答結果のスコアが低いほどバーンアウトの程度が低く、エンゲージメントが高い状態といえます。

OLBI(オルデンバーグ・バーンアウト・インベントリー)

OLBI(オルデンバーグ・バーンアウト・インベントリー)とは、MBI-GSと同様にバーンアウトの程度を測定することで、ワークエンゲージメントを把握する手法です。「疲労」「離脱」などに関する質問に回答し、スコアを測定します。

質問項目・質問例

MBI-GSの質問項目は、「疲労」と「離脱」についての合計16項目です。具体的な質問には、以下のようなものがあります。

・働く前にすでに疲労感を感じている
・仕事を終えると疲れ果てていることがある
・ネガティブな発言が増えている
・他の職業は考えられないと思っている

測定方法・回答方法

回答は、「全くそう思わない」から「とてもそう思う」の4段階から選択します。各設問の数値を合計したものがOLBIのスコアです。スコアが高いほどバーンアウト傾向が強く、低いほどワークエンゲージメントが高い状態を示します。

日本企業におけるワークエンゲージメントの実態

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが、2019年11月に行った「ワーク・エンゲージメント実態調査」によると、ワークエンゲージメントのスコア平均値は「活力2.35、熱意2.92、没頭2.57」となりました。

また、厚生労働省が発表した「令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」の資料によれば、日本におけるワークエンゲージメントスコアは「活力2.78、熱意3.92、没頭3.55」です。

スコアの平均値は3.42で、他国と比べて相対的に低い結果となりました。ただ、日本人は自己批判バイアスが強い傾向があるため、スコアが低く出やすい点は踏まえる必要があるでしょう。

ょう。

ワークエンゲージメントを高める要因

ワークエンゲージメントを高める要素は「個人の資源」と「仕事の資源」に分類され、両者は相互に関連しています。最後は、それぞれの要素について説明します。

個人の資源

個人の資源とは、ポジティブな心理状態を生み出すための内的要因のことです。具体的には、自己効力感や楽観性、目標に対する粘り強さといったものが挙げられます。

仕事のやり方や捉え方、職場の人間関係などを見直し、従業員が主体的に仕事に携わることで、個人の資源が増加し、ワークエンゲージメントの向上につながります。

仕事の資源

仕事の資源とは、仕事の成果や職場の人間関係など、本人以外の外部から得られるモチベーションアップにつながる要因です。具体的には、正当な評価や裁量権、キャリアアップや昇給などのチャンス、働きやすいオフィス環境などが該当します。

仕事の資源が増えると従業員の向上心や働く意欲が高まり、ワークエンゲージメントの向上が期待できます。

まとめ

ワークエンゲージメントを測定することで、従業員のワークエンゲージメントについて把握し、向上に向けて適切な施策を考えることが可能になります。ワークエンゲージメントが高いと、従業員は仕事に誇りややりがいを感じ、企業に対して高い貢献意欲を持っている状態であるといえます。

今回紹介したワークエンゲージメントの測定方法の中から、自社に合ったものを選び、ワークエンゲージメントの向上につなげましょう。

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