フリーアドレスの課題「席が足りない」を解決!適正な座席数の設定とは

フリーアドレスで席が足りない状態はどうして起こるのか、よくある原因と解決策について解説します。席数の不足をはじめ、フリーアドレス導入で起きがちな課題を理解し、社員が快適に使えるオフィス環境を構築するためにぜひお役立てください

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フリーアドレスを導入したものの、「席が足りない」という課題を抱えるケースは珍しくありません。オフィスに必要な席を確保するためには、オフィスのリニューアルや移転のほかにも、複数の解決策が考えられます。

本記事では、フリーアドレスで席が足りない状況を招く原因や解決方法について説明します。フリーアドレスで必要な席数やスペースを正確に把握し、自社に最適なオフィス環境を構築するためにぜひお役立てください。

フリーアドレスでは「席が足りない」問題が頻発している

フリーアドレスオフィスでは、スペースを有効活用するために、社員数よりも座席数を少なく設定しているところが一般的です。しかし、oVice株式会社が実施した「フリーアドレスに関する実態調査」によると、フリーアドレスを導入している企業のうち、約50%が「座席が足りないときがある」と回答しています。

席がないからと、仕方なく会議室やミーティングスペースで仕事をすることで、今度は会議室が足りなくなる、という悪循環に陥るケースもあります。

フリーアドレスを導入した企業では、「席が足りない」という問題は珍しくないのです。

参考:oVice株式会社「フリーアドレスに関する実態調査」

フリーアドレスの導入で「席が足りない」問題が起きる理由

フリーアドレスを導入した後で席数が不足してしまう場合、主に以下4つの原因が考えられます。

・導入目的が不明確だった
・準備・設計が不十分だった
・空いている席を見つけにくい
・オフィス外での業務環境が整っていない

各項目について詳しくみていきましょう。

導入目的が不明確だった

まず席が足りなくなる大きな理由として挙げられるのが、目的が曖昧なままフリーアドレスを導入した場合です。

フリーアドレスの導入目的は、オフィススペースの効率化や労働環境の改善、コミュニケーションの活性化など企業によって異なります。しかし、フリーアドレスを導入すること自体が目的になってしまうと問題が起き始めます。たとえば、リモートワークが活発な他社のフリーアドレスオフィスを真似たが、自社では出社率が高く、席数が足りなくなるといった具合です。

自社のワークスタイルに合ったレイアウト・デザインを設計しないと、席数が不足する自体を招きます。

準備・設計が不十分だった

フリーアドレス導入の準備や設計が不十分な場合も、席が足りなくなる原因です。何人の社員がいつ出勤するのか正確に把握できていなければ、必要な席数を下回る可能性があるため、どうしても席の不足が発生します。

また、紙の資料を扱う経理や人事、総務など、フリーアドレスよりも固定席が適している部署やチームもあります。安易に席数を減らしても、席から動かず仕事をする人が多ければ、働く席がない人が発生します。

空いている席を見つけにくい

実際に席が不足しているのではなく、空席が見つけにくいことで席が足りないと感じている可能性もあります。特に広いオフィスの場合、十分な席を配置しても使える場所を探しにくいことが考えられます。

また、席を使用するときのルールが決まっていない、または徹底されていない場合、荷物が置きっぱなしにされて、席が使えないというケースもあります。

オフィス外での業務環境が整っていない

フリーアドレス化によって席を減らす場合、自宅やサテライトオフィスなどオフィス外でも快適に作業できる環境が必要です。社外でも仕事ができる環境が整っていないと、結局出社することになって席が不足します。

たとえば、業務で使う資料やパソコンがオフィスにしかない場合や、自宅では十分なインターネット環境が整えられない場合、部署・チーム内での連携が必要な場合などです。

フリーアドレス導入を成功させる!適正な座席数を設定する方法

それでは、フリーアドレスの適正な席数を設定するにはどうすればよいのでしょうか。

  1. 出社社員数を調査する

まず、曜日や時間ごとに出社する社員の数を調べます。曜日や月などによって人数が大きく変動していないかチェックし、変動する時期と理由を把握することで現実的に必要な席数を把握できます。

  1. フリーアドレス対象者を明確にする

フリーアドレスの対象となる部署や職種を明確にします。紙の書類を多く扱う部署やデスクトップパソコンでの作業が必要になる部署では、固定席が向いているのでフリーアドレス対象外とします。

  1. 座席設定率からフリーアドレス席数を設定する

最後に、フリーアドレス席数を計算します。

フリーアドレス対象者 × 座席設定率 = フリーアドレス席数

座席設定率は、フリーアドレス用の席を社員数に対してどのくらいの割合で用意するかを表します。サイオステクノロジー株式会社の「フリーアドレス職場調査」によると、フリーアドレスの座席割合の平均値は60.8%です。

この数値を用いると、フリーアドレス対象者が100人の場合、下記のような式となり、最低でも61席が必要とわかります。

100人 × 60.8% = 60.8席

適切な座席設定率は、部署やチームごとに異なるため、出社社員数の調査を基に設定しましょう。

参考:サイオステクノロジー株式会社「フリーアドレス職場調査」

フリーアドレスで「席が足りない」ときの解決方法

フリーアドレスで席が足りない状況を解消するためには、以下3つのような解決策が考えられます。

・オフィスをリニューアル・移転する
・遮蔽物を無くして視認性を高める
・座席管理システムを導入する

それぞれについて詳しく解説します。

オフィスをリニューアル・移転する

フリーアドレスの席数が足りない状態が続けば、業務効率や生産性、社員のモチベーションの低下につながります。結果的に業績低下を招きかねないため、場合によってはオフィスのリニューアルや移転が必要です。

まずは、レイアウト変更により席数を増やせないか検討してみましょう。オフィスが狭すぎる・出社人数を調整できない場合は、広い物件へ移転する必要があります。そのほかに、同じビルの別のフロアを借りて増床するという選択肢も有用です。

遮蔽物を無くして視認性を高める

フリーアドレスのエリアが見渡せるように遮蔽物を無くすことで、視認性が高まり、空席を見つけやすくなります。本棚やパーティションなどの背の高い家具は撤去するか、壁際に寄せるのがポイントです。

小規模なオフィスでも、使いやすいローテーブルや扉付きローキャビネットなどを採用することで視界が開けます。書類の保管が多い場合はペーパーレス化を進めるのもよいでしょう。

さらに、遮蔽物がなくなれば、空間の圧迫感が解消され、ストレス軽減にもつながります。

座席管理システムを導入する

座席管理システムを導入することで、空席を簡単に把握することが可能です。予約機能があるシステムであれば、席の取り合いにならず、効率的に限られた席数を循環させられます。

座席管理システムでは、利用状況がリアルタイムで反映されるため、空席はもちろん、他の社員の居場所もすぐに見つけられます。また、出社している社員だけでなく、リモートワークなど社外で業務に当たっている社員の把握にも有用です。

システムに記録された席の履歴は、座席率の確認やレイアウト調整、座席数の最適化にも役立つしょう。

フリーアドレスを社員が苦痛に感じるその他の理由と考えるべき課題

フリーアドレスでは、席の不足以外にも幅広い要因により社員が苦痛を感じる可能性があります。

・誰がどこにいるのか把握できない
・コミュニケーション・連携不足を感じる
・荷物の持ち運びが大変
・周囲が気になって集中できない
・毎回どこに座るか考えるのが面倒

最後は、フリーアドレスに不満を感じる主な5つの理由について解説します。

誰がどこにいるのか把握できない

フリーアドレスでは毎日席が変わるため、誰がどこにいるのか把握しにくい場合があります。仕事の相談がスムーズに行えず、生産性に影響しかねません。また、電話や来客の取り次ぎで居場所を見つけるのに時間がかかれば、相手からの印象を悪くしてしまいます。

対策としては、座席管理システムの導入が有用です。在席状況がリアルタイムで更新され、特定の社員の居場所を検索できるシステムを利用すれば、誰かを探す手間が省けます。

コミュニケーション・連携不足を感じる

フリーアドレスでは、部署やチーム内の個人がバラバラに席を変えて座るため、一部で社員同士の交流が減ってしまう場合があります。連携作業がしにくくなるだけでなく、新人の適切な教育・指導に支障が出る可能性も。

対策として、部署やチームのエリアを固定し、範囲内でフリーアドレスを実施する「グループアドレス」の導入が有用です。また、コミュニケーションを取る機会として、定期的に面談やミーティングを実施することも大切です。

荷物の持ち運びが大変

フリーアドレスでは、1日の終わりにデスク上の荷物をすべて片付けて退社します。仕事に使う書類や私物をその日使うデスクに持ち運ぶことに、負担やストレスを感じる人もいます。また、置き場所を忘れて荷物を紛失してしまう可能性もあるでしょう。

私物管理には、個人ロッカーの設置が有用です。また、郵便物の受け渡しや保管には郵便BOXが役立ちます。事務用品や消耗品は会社側で一括管理すると、持ち運ぶ私物を減らせるでしょう。

周囲が気になって集中できない

フリーアドレスのオープンな環境では、話し声や人の動きが気になって集中できない場合があります。周囲が騒がしいと苦痛やストレス増加につながり、生産性に影響することも考えられます。

対策として、集中ブースや電話用ブースを導入し、作業に集中したい人向けの隔離スペースを設けましょう。フリーアドレスエリアに雑談や通話ができないエリアを作るのも有効です。

毎回どこに座るか考えるのが面倒

毎日席を自由に選ぶこと自体が、人によってはストレスとなる場合があります。席を探す時間や手間が負担だという理由で、いつも同じ席に座るようではフリーアドレスの意義がなくなってしまいます。

この場合、グループアドレスで座る場所をある程度限定する、または座席管理システムで空席状況を可視化するといった対策が有用です。また、席をランダムに決める機能がある座席管理システムを導入して、席選びの負担を軽減すれば、固定席化の防止にも役立ちます。

フリーアドレスの成功ポイントについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

関連記事:フリーアドレスが失敗する原因10選|導入時のポイントや成功事例を紹介

まとめ

フリーアドレスオフィスで「席が足りない」という課題が生まれる原因には、準備不足や社外での仕事環境などが考えられます。オフィスの適切な座席数の設定には、詳細に現状を洗い出し、必要な席数を計算するとともに、座席管理システムの導入や視認性の改善などの対策を講じる必要があります。

オフィスリニューアルや移転によりスペース拡大を検討するなら、オフィス構築の専門家に相談してみましょう。

ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。

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