オフィス退去・移転の流れ|2つの退去費用と原状回復工事の注意点を徹底解説!

オフィスの退去や移転は、多くの事務処理や手続きが必要となり、一筋縄ではいきません。物件の選定から契約、退去の準備、そして新しいオフィスの設営まで、一つひとつのステップには細心の注意が必要です。 特に原状回復工事や退去にかかる費用は、予期せぬ出費を強いる可能性があります。それらをスムーズに進めるためのポイントや、費用を抑えるコツ、また失敗を避けるための秘訣など、オフィス退去・移転に関する全てをこの記事で詳しく解説します。 これからオフィス退去・移転を考えている企業、担当者様は本記事を参考に、費用削減と同時に円滑なオフィス移転を実現しましょう。

この記事は約13分で読み終わります。

オフィス退去の流れ・移転スケジュール

オフィス退去・移転は、計画的なスケジュールを組むことで円滑に進めることができます。以下で主要なステップを解説します。

まず、新しい物件の検索を始めます。期間は、物件の規模にもよりますが、目安としては退去予定日の6ヶ月以上前からスタートするとよいでしょう。

次に、新旧の物件契約を行い、旧物件への退去予告(退去の意思表示)を提出します。退去予告は契約によりますが、一般的には3〜6ヶ月前が目安です。

新物件の契約が完了したら、入居工事を開始します。同時に、旧物件における原状回復工事の準備も始めていきます。

最後に引越しを行い、原状回復工事が完了したら旧物件の契約は終了です。この流れを把握し、各ステップで必要な作業を計画的に進めることで、スムーズなオフィス移転が可能となります。

物件検索

オフィス移転のスタートとなる「物件検索」は、新たなオフィスの立地や広さ、設備など、新たなビジネスの可能性を広げるチャンスです。しかし、多くの選択肢から最適な物件を見つけ出すためには、事前に明確な基準を設けることが重要です。

まずは以下のような観点でリストアップしましょう。

  1. 立地条件:アクセスの良さ、駅近か、周辺環境等
  2. 物件規模:必要な広さ、部屋数、設備等
  3. 賃料・費用:予算内で収まるか、初期費用や管理費を含めたトータルコスト
  4. 契約形態:定期借家契約か普通賃貸借契約か

このように全ての要素を考慮した上で物件探しを進めると、後々のオフィス運営において円滑に事を進められます。

物件契約、物件退去予告(退去の意思表示)

新たなオフィスへの契約は退去予告前に進めることが一般的です。契約手続きは物件によりますが、通常は賃貸借契約書の作成、必要書類の提出、初期費用の支払いなどが求められます。

【物件契約の一般的な流れ】

  • 賃貸借契約書の作成・確認
  • ・必要書類の提出(例:会社の登記簿謄本、等)
  • ・初期費用の支払い

一方で、退去予告は、現在のオフィスから退去することを賃貸人へ正式に伝える行為で、契約書で定められた通知期間を守ることが必要です。通知方法は内容証明郵便や直接手渡し等があります。

【退去予告の一般的な流れ】

  • ・退去日の決定
  • ・退去予告の書面作成
  • ・退去予告の送付・手渡し

両者はそれぞれ正確に進行することが重要で、特に退去予告は通知期間を遵守しないと違約金が発生することもありますので注意が必要です。

物件契約開始・入居工事スタート

新たなオフィス物件契約が成立したら、次に進めるべきは入居工事のスタートです。まず、物件の状況を確認し、内装や設備に必要な改修をリストアップします。

次に適切な業者を選び、実際の工事を始めます。予算と工期をしっかりと把握し、それに沿った進行計画を立てることが重要です。また、工事の進行状況は定期的に確認し、必要な手直しがあれば速やかに行うことが求められます。

項目

内容

物件の状況確認

内装や設備の改修リストアップ

工事業者選定

予算と工期を考慮

工事進行

定期的な確認と手直し

上記のように、物件契約開始から入居工事スタートまでは緻密な計画と業者の選定が重要となります。

お引越し・原状回復工事スタート

引越しの準備が整ったら、次はオフィスの原状回復工事に着手します。この工事は、物件を借りる際の契約内容に基づいて行われます。以下にその主な作業項目を示します。

【原状回復工事の主な作業項目】

  • ・内装の解体及び撤去:壁紙、床材などの撤去
  • ・設備の解体及び撤去:空調、照明、電話線などの撤去
  • ・清掃:全体的な清掃と、特に汚れが目立つ部分の清掃

一般的にはビル管理会社の進行のもと、ビルの指定した内装会社が原状回復工事を行うため、イレギュラーなケースを除き、テナント側が自ら業者選定することはありません

作業時は、入居工事を依頼している内装会社(PM会社)に、原状回復についてもビル管理会社とやり取りして進めてもらうことがおすすめです。また、工事期間中は物件使用が難しくなるため、移転スケジュールに組み込む必要があります。

原状回復工事完工

原状回復工事の完工時には、以下のような確認ポイントが存在します。。

【原状回復工事完工後の確認ポイント】

  • ・壁や床、天井部分の傷や汚れは綺麗になったか
  • ・配線類は適切に取り外され、元の位置に戻っているか
  • ・全てのオフィス家具や設備は撤去されたか
  • ・レイアウトは契約時の状態に戻っているか

とはいえ、原状回復工事および完工時のチェックは、ビル管理会社の進行のもと進められるため、入居者自身が細かくチェックを行うことはありません。担当者は上記のようなチェック項目が存在することを頭に入れておくとよいでしょう。

また、作業が完了したら、退去の報告を大家や管理会社へ行い、必要であれば引き渡しの日時を設定します。これでオフィス退去・移転の大部分の作業が終了となります。

オフィス退去・移転にかかる費用一覧

オフィス退去・移転には、多種多様な費用がかかります。以下に主な費用をリスト化しました。

  1. 物件契約費用(二重賃料): 新たな物件に契約すると同時に旧物件の契約が残っている場合、一時的に二重の賃料が発生します。
  2. 原状回復費用: 退去時には、物件を入居前の状態に戻す「原状回復工事」が必要です。その工事費用が発生します。
  3. 解約違約金: 契約期間内に物件を解約する場合、違約金が発生することがあります。
  4. 内装工事・設備工事費用: 新オフィスで必要な内装工事や設備工事の費用も考慮しなければなりません。
  5. オフィス什器の新規購入: 新オフィスのレイアウトに合わせて新たに什器を購入する場合の費用も発生します。
  6. 引越し費用: 物品の搬出入には業者を利用するため、その費用が発生します。
  7. 建設設備防災工事費用: 新オフィスでの防火設備や避難設備の整備には、専門的な工事が必要となります。

これらの費用を頭に入れて、しっかりと予算計画を立てておきましょう。

物件契約費用(二重賃料)

オフィス移転では、新旧の物件契約が一時的に重なるため、「二重賃料」が発生します。具体的には、新しいオフィスを契約し始め、旧オフィスの契約がまだ完全に終了していない期間にかかる費用のことを指します。

【旧オフィス退去日を2024年4月末、新オフィス契約開始日を2023年9月初旬とした場合】

旧オフィス費用

新オフィス費用

2023年9月

×

2023年10月

2023年11月

2023年12月

2024年1月

2024年2月

2024年3月

2024年4月

×

このように2023年10月から2024年3月の間で二重賃料が発生します。この期間は移転準備や、内装工事に使用する期間で、計画的な移転スケジュール作りが重要です。

一般的な二重賃料の目安は6か月〜12か月程度とされているため、余裕をもった移転スケジュールと費用を準備しておく必要があります。

原状回復費用

オフィス退去時には、原状回復費用が必要です。この費用は、賃貸契約が終了した際に、物件を契約前の状態に戻すためにかかる費用のことを指します。

  • ・修繕工事:壁紙の張替え、床材の交換、設備の修復など
  • ・解体工事:間仕切りの撤去、設備の取り外しなど
  • ・清掃工事:最終的な清掃作業
  • ・廃棄物処理:不要家具やオフィス機器の撤去・廃棄

以上の作業が一般的な原状回復作業です。費用は、物件の大きさや改装の内容、使用した材料などにより大きく変動しますが、一般的な費用は1坪3万円~10万円とされています。

  • ・小中規模オフィス・・・1坪あたり3万円~7万円
  • ・大規模ビル・・・1坪あたり8万円~12万円
  • ・ハイグレードビル・・・1坪あたり15万円~20万円

また、物件を適切に利用していない場合、通常よりも高額な原状回復費用が発生することもありますので注意が必要です。

解約違約金

オフィスの退去や移転時には、解約違約金が発生する場合があります。これは、契約期間中に物件を退去することで発生する費用です。

通常、契約書に違約金についての規定が記載されており、原則として契約期間満了前の解約には違約金が必要となります。

ただし、状況によっては違約金が免除される場合もあります。新物件との契約日や、退去日を調整することで節約可能な場合もありますので、退去計画の立案時には解約違約金についても考慮することが重要です。

内装工事・設備工事費用

オフィス退去時、新たなオフィスへの移転では、内装工事や設備工事が必要となります。これらの費用は、移転の大きな出費の一つです。具体的には、床材や壁材の張替え、間仕切り工事、エアコンや照明設備の設置等が含まれます。

移転先のオフィスが居抜き物件であれば、一部の内装や設備はそのまま利用できる場合がありますが、それでも自社の業務に適した環境を整えるためには、内装の改装や設備の追加・交換が必要です。

また、内装工事・設備工事の費用は、工事内容や規模により大幅に変動しますので、早めに見積もりを取ることをおすすめします。その際は複数の業者から見積もりを取り、比較検討することで、適正な費用を把握し、余計な出費を抑えることが可能となります。

一般的に、内装工事・設備工事費用は、1坪あたり20万円〜40万円です。

オフィス什器の新規購入

オフィス退去・移転に伴う設備更新は、新しいオフィス環境を構築する大きなチャンスといえます。新規購入を行う際、まずは必要な什器のリストアップから始めましょう。具体的には、デスク、チェア、キャビネット、会議用テーブルやホワイトボードなどが含まれます。

次に、各什器の価格を調査します。購入予定の什器の種類、数量、新品または中古品などを明確にし、それぞれの費用を見積もります。

また、新規購入に際しては、オフィスのデザインやブランディング、そして従業員の働きやすさを考慮することが重要です。これらを踏まえた上で最終的な什器選定を行いましょう。

オフィス什器の購入費用は、社員1人あたり10万円~が目安です。

引越し費用

オフィス退去にあたって欠かすことのできない「引越し費用」。これは、新たなオフィスへの物品移動にかかる費用のことを指します。具体的には、引越し業者への料金や、梱包資材費、新たなオフィスでのレイアウトに伴う配置替えなどが含まれます。

費用項目

内容

引越し業者料金

業者に依頼した場合の料金

梱包資材費

梱包材の購入費用

配置替え費用

新オフィスでの配置変更費用

これらの費用は全て見積もりを取ることで事前に把握できます。費用目安は、社員1人あたり5万円~になりますので、比較検討時の参考にしてください。

また、複数の引越し業者から見積もりを取り、比較検討することでコスト削減も可能となりますので、計画的に進めることをおすすめします。

建設設備防災工事費用

オフィス移転に伴い、新たな物件での防災対策も重要なポイントです。これには「建設設備防災工事費用」が必要となります。

具体的には、消防法や建築基準法に基づく防火対策、災害時の避難経路の確保、非常用電源設備の設置など、オフィスの安全確保に必要な工事にかかる費用を指します。これらは法律で義務付けられているため、無視することはできません。

具体的な内訳としては以下のようになります。

  • ・スプリンクラー・自動火災報知器・誘導灯・空調工事:1坪5~10万円

※これらは一例であり、物件の規模や要件により異なります。

その他の経費

また、その他の経費として、以下のような項目があります。

  • ・PM設計費:要問い合わせ
  • ・細かい備品

PM設計費は施工会社のPMやデザイナーの実働にかかる費用、細かい備品は冷蔵庫・シュレッダー・コピー機などを指します。

オフィス退去費用を削減する方法

オフィス退去・移転にはさまざまな費用が発生します。そのため想定していたよりも高額な見積もりに驚かれる担当者様も少なくないでしょう。ただし、オフィス退去に必要な費用は、企業様の努力によっていくらか削減することが可能です。

今回はオフィス退去費用を削減する方法として、下記の4つの方法を紹介します。

  • ・居抜き交渉
  • ・原状回復工事の見積査定
  • ・廃棄物処分(什器、家電など)
  • ・オフィス退去の専門会社に依頼する

居抜き交渉

オフィス退去時に発生する原状回復費用を抑える方法の一つが「居抜き交渉」です。居抜き交渉とは、退去時に設備や内装をそのままにしておくことで、次のテナントがそれらを利用しやすくすることを目指す交渉です。

メリット

デメリット・注意点

原状回復費用の削減

次のテナントが内装を利用しない場合、原状回復費用が発生

環境負荷の軽減

建物所有者の許可が必要

ただし、この交渉は次のテナントがその内装を利用できるかどうか、また建物所有者の許可が得られるかどうかに大きく左右されます。したがって、居抜き交渉は早めに開始し、複数の関係者とコミュニケーションを取ることが重要です。

原状回復工事の見積査定

原状回復工事はビル指定会社が施工することがほとんどです。

この方法はビルの維持管理をするビルオーナー側にはメリットはありますが、借主側は他の会社へ相見積もりを取れないため、金額が適正か判断ができないというデメリットがあります。

専門的な知識があれば自ら金額の査定、交渉も不可能ではありませんが、交渉の労力や時間を考えると現実的ではありません。

廃棄物処分(什器、家電など)

意外と後回しにしがちなものが廃棄物処分ですが、引越し作業や原状回復工事の前にできるだけ綺麗に片付いていると、その分コストダウンを図ることができます。

不要な什器はオフィスの中古リサイクル会社等に依頼して買い取ってもらえば、単純に廃棄するよりもコストダウンになる上に、冷蔵庫や電子レンジなどは社員から利用者を公募して再利用してもらうことも可能です。

オフィスで過ごす中で発生するごみに関しては、日頃から市区町村のルールに従い、こまめに処分しておくことで、結果的にオフィスの退去費用の削減につながります。

一度社内で処分方法のルール化を検討してみましょう。

オフィス移転の専門会社に依頼する

オフィス移転の専門会社に依頼することで、多くの作業をスムーズかつ専門的に進行できます。専門会社は、物件の契約から引越し、原状回復工事まで一連の流れをトータルでサポートするため、企業側は業務に専念できるメリットがあります。

また、専門会社は、退去・移転費用の適正価格を知っているため、費用削減のアドバイスが期待できます。そのため不必要な出費を抑えることが可能です。

企業の規模やニーズにより、費用削減の適切な方法は異なりますが、専門的な知識やスキルが求められる場合は専門会社への依頼が有益と言えるでしょう。

オフィス退去・移転作業の依頼方式

オフィス移転作業の依頼方式は、主に2通りあります。

【分離発注方式】

  • ・それぞれの作業を個別の専門業者に依頼
  • ・費用は安い
  • ・多くの労力と時間を要する

【ワンストップ方式】

  • ・オフィス移転に関わる作業を一括でマネジメントするプロに一任
  • ・費用は高い
  • ・労力と時間を軽減できる

オフィス移転までの期間や予算、自社のリソースなど状況を見ながら、金額と作業のバランスがとれた方法を選択しましょう。

また、後のトラブルを防ぐため、見積りの中に何が含まれているかをきちんと擦り合わせ、重複や漏れがないかを細かく確認しておく必要があります。

オフィス退去・移転を失敗させないコツ

オフィス退去・移転を失敗させないために、下記の注意点を押さえておきましょう。

注意点

よくある失敗例

追加コストの発生

・内装工事の工期が伸びる

・移転契約や費用の見直しが発生

認識の齟齬

・不動産契約に関して認識の違いが発生

・工事コストの説明が曖昧

また、担当者とのコミュニケーションが取りやすいか、アフターフォローは丁寧かどうか、といった点も考慮する必要があります。オフィス退去・移転にあたり、費用削減を目指すことは重要ですが、理想のオフィスを作るために、きめ細やかなコミュニケーションを取れるかどうかも大切にしなければならないポイントです。

企業の担当者は、オフィス退去・移転のスケジュールにおいて、どのような失敗例があり、またリスクが潜んでいるのかについて、さまざまな情報収集を行うことをおすすめします。

オフィス退去・移転の流れ まとめ

オフィス退去・移転の流れは大きく分けて「物件検索」「物件契約・退去予告」「入居工事スタート」「お引越し・原状回復工事」「原状回復工事完工」の5つのステップに分けられます。

物件検索から契約、そして退去までの一連の流れを確認し、退去費用を把握することで、スムーズかつ経済的に移転計画を進められます。特に原状回復費用は、見積もり段階でしっかりと確認・交渉することが重要です。

また、オフィス退去費用を削減する方法として「居抜き交渉」や「原状回復工事の見積査定」、「専門会社への依頼」などが有効です。

移転作業はプロに依頼するのが一般的ですが、自社で行う場合もあります。どちらにせよ、失敗しないコツは計画性といえるでしょう。

全体を通して、オフィス退去・移転は煩雑な作業が多く、コストもかかりますが、適切な計画と準備により、スムーズに進行させることが可能です。

ヴィスでは、原状回復工事費用・オフィス移転費用の適正化によって生まれたコストを使い、企業様のより充実したオフィス作りに尽力しております。オフィス退去、オフィス移転のトータルサポートにも対応しておりますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。