目次
個室ブースのニーズが高まっている背景とは
個室ブースとは、特定の方法により周囲の視線や音を遮断したスペースのことです。
電話ボックスのような完全に密閉されたタイプもあれば、単にパーテーションで仕切っただけの簡易的なタイプのものまで、幅広くあります。タイプによっては、オフィスのデッドスペースを有効活用できるでしょう。
設備はデスクとコンセントが基本ですが、タイプによっては椅子やサイドテーブルなども備わっています。密閉タイプの場合、換気機能に加えて簡易的なスプリンクラーが設置されています。ウレタンやフェルトといった吸音効果のある素材を使うことで、反響や音漏れを抑えられる個室ブースもあります。
個室ブースのニーズが急増しているのは、一人で作業しなければいけない機会(または、ひとりで作業したい機会)が多くなったためです。
たとえば、後述するテレワークやWeb会議の普及、最近では新型コロナウイルスへの対策による個室ブースの導入などが挙げられます。
会議室や休憩スペースなど、ほかのスペースで代用するのは、本来の目的を優先しなければいけないため、あまり現実的ではありません。専用の部屋を設けるのは、スペースの都合で困難だったり、消防法や建築基準法などの法令をクリアしなければいけなかったり、費用もかかったりします。
しかし、個室ブースであれば簡単に設置できるうえ、タイプによっては低コストに抑えられるというメリットがあります。
近年、増えつつある「オープンスペース型でフリーアドレス」のオフィスだけでなく、従来の「島型で座席固定のオフィス」でも個室ブースは有効とされています。今後も働き方の多様化によって、個室ブースのニーズはますます高まるでしょう。
オフィスに個室ブースを設置することで得られる効果
オフィスに個室ブースを設置するメリットは、主に3つあります。
社員の集中力が高まり業務効率の向上につながる
一般的には、オフィス内に複数の社員がいるため、常に何らかの音が聞こえてしまう環境です。周囲の話し声などが聞こえてしまうと、人によっては集中が妨げられてしまうでしょう。たとえ話し声が気にならない人であっても、誰かに話しかけられてしまえば、仕事を中断することになります。
視線が気になる場合もあります。オープンスペース型のオフィスでは、基本的に周りの視線を遮る物がありません。機密文書やファイルを扱っている場合、周囲から覗かれないか、人によっては心配になることがあります。
しかし個室ブースがあれば、音で集中が妨げられたり、誰かに邪魔されたり、覗かれたりするのを軽減できます。目の前の仕事に集中できるので、業務効率の向上につながります。
Web会議・オンライン商談に活用できる
新型コロナウイルスの影響や、テレワークの推進によって、Web会議を導入する企業が増えています。とはいえ、従来型のオフィスやオープンスペース型のオフィスの場合、周りの音までマイクが拾ってしまうため、相手に話し声が伝わりづらくなることも多いです。周囲の会話も筒抜けになります。
しかし個室ブースがあれば、周囲の音を遮断できるため話し声が伝わりやすく、Web会議に集中できます。周囲の社員も、仕事や会話がしやすくなるでしょう。
個室ブースの中には、数人でWeb会議に参加できるよう、ソファでテーブルを囲みながらモニターを見られるタイプもあります。ちょっとしたミーティングに使うことも可能です。
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フリーアドレスのセキュリティリスクを抑えられる
個室ブースは、機密情報や個人情報が外部に漏れるリスクを抑えられます。
とくにフリーアドレスを導入している場合、開放的であるために、セキュリティリスクが高くなります。Web会議をしているそばに、取引先の方が訪れることもあるでしょう。会議の内容が聞こえてしまい、社外秘の情報が洩れてしまいかねません。
また、オープンスペースでは不意に顧客情報などがほかの人の目に触れる可能性があります。
個室ブースは周囲の音や視線を遮れるので、セキュリティ対策としても有効です。
【オフィス】個室ブースの設置が好ましい場所の特徴
個室ブースは、適切な場所に設置しないとメリットを活かしきれません。そこで、設置が好ましい場所の特徴を3つ紹介します。
周囲の雑音が届きにくい場所
周囲を気にせずひとりで作業できるといった、個室ブースのメリットを引き出すためには、周囲の雑音が届きにくい静かな場所への設置が好ましいです。
個室ブースはある程度の遮音効果が期待できるものの、人が多い環境や人が少なくても雑音が聞こえやすい環境だと遮音効果が減少します。
とくに、メンバーが頻繁に打ち合わせをするような場所の近くでは、人の話し声が気になることもあるでしょう。そのため、個室ブースを設置する際は、周囲の雑音が届きにくい場所であるか確認が必要です。
周囲の視線が集まりにくい場所
個室ブースを設置する際は、遮音だけでなく視線への配慮も重要です。個室ブースには他者の視線を遮る効果があるものの、閉塞的にならないよう窓などが設けられているので、人の多い場所では視線や気配を感じてしまいかねません。
そうなると、落ち着かなくなり、個室ブースの「パーソナル空間で集中できる」というメリットが減少します。
部屋の中央や出入口は避け、人の視線が集まりにくい壁際やコーナーなどに設置するのがおすすめです。
社員の動線を妨げない場所
個室ブースの設置には、ある程度のスペースが必要です。個室ブースを設置したことで、スペースに余裕がなくなり、ほかの業務に支障が生じる場合があります。
とくに出入り口や人の行き来が多い通路近くに設置すると、動線が悪くなって混雑が起こったり、業務効率が低下したりするので注意が必要です。
また、個室ブースがオフィス空間に圧迫感を与えない場所を選ぶことも大切です。とくに大き目のブースや複数のブースを設置する際は、オフィス全体の動線について配慮しましょう。
余裕のある動線を確保できる通路幅については、以下の記事で解説しています。
オフィスの通路幅は安全・安心と快適さを考慮すべき!法律で規定されているスペースは?
オフィスに設置するブースの種類
オフィスに設置できるブースの種類について紹介します。
パーテーションを活用したブース
パーテーションで区切るブースです。パーテーションだけで販売されていたり、デスク(天板)や椅子とセットになっていたりするなど、さまざまなタイプが用意されています。
密閉型のブースほどではありませんが、周囲の音や視線を軽減できるので、仕事に集中したり、Web会議したりするのに効果的です。
パーテーションだけなら、既存のデスクやスペースを活用できるというメリットもあります。必要に応じてレイアウトを変更することも難しくありません。デスクに設置するタイプなら1万円台~と、価格も手頃です。
個室ブース
四方を壁で囲まれた個室のブースです。独立した部屋のようであり、周囲の音が入らないのが特徴です。
壁やドアの一部がガラス張りになっているのは、開放感を出したり、採光したりするためです。閉鎖された空間が苦手な社員でも、安心して利用できるでしょう。
天井は、開放されているタイプと、ふさがっているタイプがあります。前者は可動式ブースといい、オフィスの空調をそのまま使えるのがメリットです。後者は換気装置が搭載されており、使用中に温度が上昇するのを防いでくれます。簡易スプリンクラーが内蔵されているタイプなら、設置時に消防設備の工事をする必要もありません。
キャスター付きであれば、簡単に移動できます。移動後は金具で床に固定することができるので、設置後にブースが動く心配はありません。
価格は1台あたり数十万円~数百万円と、前述したパーテーションと比べると高額ですが、部屋を新設するとなれば、消防法や建築基準法に則った工事や手続きが必要であり、退去時には原状回復しなければいけません。
しかし個室ブースの設置だけなら、こうした手間はほとんど不要であり、費用もかかりません。オフィスを移転する際にも移設することができます。
ソファ型のブース
個室ブースの中には、椅子をソファにしたタイプもあります。数人で利用できるソファもあれば、一人用のソファ型ブースもあります。
ソファ型ブースは仕事やWeb会議に集中できるだけでなく、リフレッシュ機能も備わっています。たとえば、フルリクライニングで仮眠できる機能です。ソファやデスクの角度、上下の位置を細かく調節できるタイプであれば、楽な姿勢で仕事ができるでしょう。
そのほか、パーテーションを追加して、周囲の音や視線を軽減できるタイプもあります。
オフィスに設置する個室ブースの選び方
オフィスに適した個室ブースを設置する際は、選び方も重要となります。機能性や素材、サイズの検討以外にも建築基準法・消防法を遵守しなければなりません。ここではオフィスに個室ブースを導入する際の選び方について紹介します。
防音性・遮音性はあるか
多様な働き方が増えるなか、Web会議や面談をする機会も増えています。個室ブースを使用する機会も多いため、周囲の音を拾わないか確認しておくことが重要です。
遮音性や吸音性、それぞれの防音機能の特徴を把握し、どの程度音を遮断したいか考えて、オフィスに合うものを選びましょう。
ただし、ブースタイプによって防音性や遮音性が異なるため注意が必要です。防音性が高い個室ブースならクローズ型がおすすめです。防音性を強化したい場合は、防音壁や防音パネルを使用した製品が適しています。
自社のオフィスに合ったデザインであるか
個室ブースによってガラスや木材、防火材など使用されている素材は異なります。オフィスの雰囲気に合った素材や色のものを選ぶことも大切です。
ガラスパネルを使用すれば開放感のある個室ブースに、木材を使用すれば温かみのあるオシャレな個室ブースになります。デザイン重視の個室ブースを選ぶ際は、木製ブースやカスタマイズできるタイプがおすすめです。
価格帯は適正か
個室ブースの素材や機能性により、価格が大きく変動する場合があります。そのため同タイプのブースの価格帯に見合っているかを確認することも大切です。
ブースの見た目は変わらなくても、数万円から十数万円の差が生じるケースもあります。導入後の稼働率に不安を抱えているなら、試しやすい価格帯のものを選ぶことがおすすめです。
建築基準法・消防法に抵触していないか
個室ブースを置く際、建築基準法・消防法を遵守している商品であるかどうか確認することが必要です。
建築基準法とは、建築物の最低基準となる基本ルールを定めた法律です。建築基準法では、個室ブースの設置により居室空間の面積が変更することによる影響が問われます。
消防法は、火災発生時に利用者の安全を守るために消防設備の設置や点検について定めた法律です。消防法ではクローズ型は「部屋」、天井のみ開いているセミクローズ型は「家具」とみなされます。
該当する場合は建築基準法・消防法が適応されて、制限がかかる場合があります。万が一火災が起きた際に、火災報知器の音が聞こえない、煙がこもりやすいなどの原因により、避難が遅れてしまう可能性があるからです。
「建築基準法・消防法の規格対応」と表示されている製品であれば、基本的に問題なく使用できます。ただし、不明確な場合は基準を満たしているかどうか販売元に確認しましょう。
個室ブースを設置する際の注意点
ここからは個室ブースを有効活用するための注意点を紹介します。
個室ブースのルールを事前に決めておく
さまざまな社員が個室ブースを利用するため、利用時間や飲食の可否などのルールをあらかじめ設けておくことが必要です。ルールを決めておくことで、トラブル防止にもつながります。作業に集中できるように通話や私語がOKなブースとNGなブースを分けておくことも有効です。
社内ルールを浸透させる
社員数が多い場合や、社外の人も個室ブースを利用する機会がある場合は、利用者全員にルールが伝わりにくい場合があります。
そのため、事前にルールを周知したり、社員の目につきやすい場所に掲示したりしながらルールを浸透させていくことが大切です。
例えば、それぞれの個室ブースにわかりやすい運用ルールを表示したり、使用中または空席の表示を設置し、使用可能かどうかひと目で分かるようにしたりするなどの工夫が必要となります。
オフィスにブースを設置している企業事例
実際に、オフィスにブースを設置している企業事例をふたつ紹介します。
株式会社 PR TIMES
株式会社 PR TIMESのオフィスは、ガラス間仕切りを使用して開放感のある明るい空間で、フロア全体を通してコミュニケーションを重視したレイアウトです。自然と視線が交差するポイントを用意し、「対面による共感」と「自律した働き方」を両立させています。
ブースは完全個室型や半個室型・ソファ型を併用し、ニーズに合わせた使用を実現していることが特徴です。
シンポー情報システム株式会社
シンポー情報システム株式会社は、大人の秘密基地をコンセプトに、機能性とデザイン性に富んだコワーキングスペースを設けています。
開放的でコミュニケーションの取りやすいレイアウトでありながら、奥にはパーテーションを活用した集中ブースを設置しています。メンバー一人ひとりが業務に集中できる環境を選ぶことが可能です。
自社に合ったブースを導入するならプロへの相談がおすすめ
個室ブースにはメリットが多いですが、導入するとなれば費用がかかり、場所も確保しなければいけません。
密閉型のブースであれば、音や視線を遮断する効果は高いですが、費用が高くて場所を取るのが難点です。
一方、パーテーションを活用するのは安価で場所を取らない反面、音や視線を遮断する効果には限度があります。
設置場所も重要です。単に空いているスペースに設置すると、動線をふさいで邪魔になったり、人の動きが気になって集中できなかったりと、かえって業務の妨げになってしまうおそれがあります。パーテーションのように、音や視線を完全に遮断できないタイプは、特に静かな場所を選ぶよう配慮しなければいけません。
そのほか、オフィスの狭さや配線による制約など、個室ブースの導入には検討すべきさまざまな要素があります。
ヴィスであれば、オフィスの課題やレイアウトを考慮して、最適な個室ブースを提案できます。個室ブースの選定から設置、アフターフォローに至るまで、ワンストップでの対応が可能です。
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