中東情勢が直撃するオフィス構築コスト――2026年のナフサショックが建材・塗装剤に与える影響と、総務担当者が今すぐ取れる対策

2026年に深刻化した中東情勢を発端とするナフサショックが、塗装剤・断熱材などの建材輸入コストを急騰させ、オフィスの改装・新規構築プロジェクトの予算とスケジュールに直接影響を与えています。本記事では、その背景と現場で起きている実態を整理したうえで、総務担当者が今すぐ実践できる具体的な対策を解説します。

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目次

オフィスの移転や改装を計画していた担当者の方から、「見積もりを取り直したら金額が大幅に上がっていた」「工事業者から材料の納期が読めないと言われた」という声が、2026年に入ってから急増しています。

その背景にあるのが、2026年2月末に発生した米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃と、それに伴うホルムズ海峡の事実上の封鎖です。石油輸送の大動脈が機能不全に陥ったことで、日本の塗料・建材業界は原材料の調達難と価格急騰という二重の打撃を受けています。塗料大手の日本ペイントが2026年3月19日発注分よりシンナー製品を75%値上げしたことは、業界に衝撃を与えました。しかしこれは氷山の一角に過ぎず、断熱材・内装ビニルクロス・配管資材といったオフィス内装を構成する多くの素材が、連鎖的な価格上昇にさらされています。

「中東の紛争は遠い話」と感じるかもしれませんが、実際にはオフィス構築の予算とスケジュールに直結する問題です。今この時点でどのような状況が起きているのかを正確に把握し、プロジェクトの判断に活かすことが、総務担当者には求められています。

本記事では、中東情勢とナフサショックがオフィス建築・改装コストに与える影響のメカニズムを整理し、2026年現在の最新動向をふまえたうえで、総務担当者が実践できる具体的な対応策をご紹介します。

この記事のまとめ

【この記事の結論】

2026年の中東情勢に端を発したナフサショックにより、塗装剤・断熱材・内装材などオフィス構築に不可欠な建材が急騰・供給不足に陥っており、総務担当者は「見積もり再精査・資材早期発注・代替素材の検討」を今すぐ実行する必要があります。

【3つの要点】

  • コスト急騰の構造:日本はナフサ調達の約4割を中東に依存しており、ホルムズ海峡の事実上の封鎖がシンナー最大75%値上げをはじめとする建材価格の連鎖高騰を引き起こしている。
  • 高止まりリスク:代替調達ルートへの切り替えに伴う輸送コスト増により、停戦後もコストが元の水準に戻る可能性は低く、中長期的な高止まりを前提に計画を立てる必要がある。
  • 5つの即効対策:見積もりの材料費確認・資材先行確保・水性塗料への切り替え・段階的工事設計・ワンストップ業者との連携が有効。

【この記事で解決できる悩み】

  • オフィス移転・改装の予算が突然増えた理由が分からない
  • 工事の着工・竣工スケジュールへの影響をどう見積もればよいか分からない
  • 資材高騰局面でもオフィス投資を成功させる判断軸が欲しい

1. 何が起きているのか――2026年中東情勢とホルムズ海峡危機の概要

1.1. イランへの軍事攻撃とホルムズ海峡の「事実上の封鎖」

2026年2月末、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃が実施されました。イランは直ちに報復措置としてホルムズ海峡の通航制限を宣言し、同海峡を行き来するタンカーへの監視・妨害活動を強化しました。ホルムズ海峡は、世界の原油とLNG(液化天然ガス)の海上輸送量の約20%が通過する、いわば「エネルギーの咽頭部」とも呼ぶべき要衝です。完全な封鎖には至っていないものの、通航リスクの急上昇により大手海運各社が同海峡を忌避し、事実上の封鎖状態が続いています(出典:PwC Japanグループ、2026年4月)。

この事態は、日本のエネルギー調達に深刻な影響を与えています。WTI原油先物は2026年3〜4月にかけて1バレル90〜100ドル台で推移し、LNG(液化天然ガス)の輸入コストも連動して上昇しました。エネルギー価格の高騰は製造業全般のコストを押し上げ、その影響は建設・内装業界にも着実に及んでいます。(出典:新電力ネット原油価格推移、2026年4月平均WTI:98.63ドル)

1.2. 日本のナフサ・石油輸入における中東依存の実態

日本が輸入する原油のうち、中東産が占める割合は約94〜95%に上ります。原油だけでなく、石油化学製品の基礎原料となるナフサについても、国内調達全体のうち約4割を中東地域からの輸入に依存しています。この構造的な依存体質が、今回のホルムズ海峡危機の影響を日本市場にとって特に深刻なものにしています。(出典:2025年貿易統計、公益財団法人中東調査会・JBpress、2026年3月25日/経済産業省資料、2026年3月24日、経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」、2026年3月24日)

ナフサとは、原油を蒸留して得られる石油製品のひとつで、沸点が低く揮発性の高い軽質油です。ガソリンの原料としても知られていますが、石油化学工業においてはエチレン・プロピレン・ベンゼンなどの基礎化学品を製造するための出発原料として不可欠な存在です。これらの基礎化学品は、プラスチック・合成樹脂・塗料・接着剤といった無数の工業製品の製造に使われており、建材もその例外ではありません。

中東からのナフサ輸入が滞ると、国内の石油化学コンビナートの稼働に支障が生じ、川下にある塗料メーカーや建材メーカーへの原料供給が細ります。その結果として生じるのが、塗装剤・断熱材・内装材の価格急騰と供給不足という、オフィス建設現場が直面している現実です。

2. なぜオフィス構築に影響するのか――ナフサと建材・塗装剤の深い関係

2.1. ナフサとは何か、そして建材とどうつながるのか

前章でも触れたとおり、ナフサは石油化学工業における最も重要な基礎原料のひとつです。原油を精製する過程で得られるナフサは、石油化学コンビナートのエチレン分解炉(ナフサクラッカー)で熱分解され、エチレン・プロピレン・ブタジエン・ベンゼンといった基礎化学品へと変換されます。これらはさらに加工され、合成樹脂・合成ゴム・合成繊維・塗料・接着剤など、現代の産業を支える無数の素材の原料となります。(出典:経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」、2026年3月24日)

私たちが「オフィスの内装」と聞いてイメージする素材の多くが、この連鎖の末端に位置しています。壁に塗られる塗料、床に貼られるビニルタイル、天井に張られるクロス、空調ダクトを包む断熱材、配線を通す塩化ビニル管――これらはすべて、ナフサを起点とした石油化学製品です。つまり、ナフサの輸入が滞れば、オフィス内装を構成する素材の大部分が影響を受けるという構造になっているのです。

2.2. 塗装剤・シンナーの急騰:現場で起きている実態

ナフサショックの影響が最も端的に現れているのが、塗料・塗装剤の分野です。塗料の主要成分である合成樹脂(アクリル樹脂・ウレタン樹脂・エポキシ樹脂など)はナフサ由来の石油化学製品であり、塗料を希釈するシンナーもナフサそのものや、ナフサを分留して得られる有機溶剤が原料です。

国内塗料大手の日本ペイントは2026年3月19日発注分より、建築用シンナー製品全般を75%値上げしました(出典:Bloomberg、2026年3月25日/日本経済新聞、2026年3月25日)。また、関西ペイントもシンナー類について50%以上の値上げと出荷統制を実施しており、アステックペイントは受注残が1,000件を超え受注一時停止の可能性を警告するなど(出典:児玉塗装、2026年5月11日更新)、塗料業界全体で価格改定と供給制限の動きが相次いでいます。施工現場では価格上昇だけでなく、納期の長期化という問題も深刻です。原材料の入荷見通しが立たないことから、塗料メーカーが受注を絞るケースも出ており、「発注したくても材料が手に入らない」という状況が各地の施工会社で報告されています。

オフィスの新規構築や改装では、壁面・天井・床の塗装工程は避けて通れません。特に、壁面をペイント仕上げにするデザイン性の高いオフィスや、エントランスや会議室に防汚・耐傷塗装を施す場合は、塗装工事の比重が高くなるだけに、今回の価格急騰の影響を直接受けやすいといえます。

2.3. 塗装剤以外にも広がる影響――断熱材・内装材・配管資材

塗装剤・シンナーの問題は、建材コスト上昇の入り口に過ぎません。オフィスの内装工事を構成する素材を見渡すと、石油化学製品に依存している項目が非常に広範囲にわたることがわかります。

まず断熱材について見てみましょう。ウレタンフォームやスチレンフォームといった発泡系断熱材は、いずれもナフサ由来のプラスチック原料から製造されます。天井や壁の内部に使用されるこれらの断熱材は、工事費全体の中でも一定の比重を占める材料であり、価格上昇の影響が見積もり額に反映されやすい項目です。

次に内装材です。オフィスの壁面仕上げとして最も広く使われるビニルクロス(壁紙)は、塩化ビニル樹脂を主原料としており、原料価格の上昇がそのまま製品価格に転嫁されています。また、床材として多用されるフロアタイルやクッションフロアも、同様に塩化ビニル系の製品です。床材の選び方については、以下の記事も参考になります。

参考記事:オフィスの床材はどう選ぶ?張り替え時の注意点や掃除方法も解説!

さらに、電気配線を保護する電線管や給排水管に使用される塩化ビニル管(塩ビ管)も影響を受けています。これらの配管資材はオフィス工事における設備工事の基幹材料であり、代替が利きにくいため、価格上昇が工事コスト全体を底上げする要因のひとつとなっています。

2.4. オフィス構築コストへの波及:総務が知っておくべき数字

では、実際にオフィス構築・改装の予算にどの程度の影響が生じているのでしょうか。以下の表に、代表的な石油系建材の価格動向を整理しました(出典:各メーカー公式発表、児玉塗装2026年5月更新資料、株式会社MMKブログ2026年5月更新資料等を参考に編集部作成)。

材料カテゴリ主な製品価格上昇率の目安(2025年比)備考
塗料・シンナー(溶剤系)油性塗料、シンナー50〜75%日本ペイントが3月19日発注分より75%値上げ、関西ペイントが50%以上値上げ
塗料(水性系)水性塗料全般15〜25%エスケー化研が5月11日出荷分より値上げ発表
断熱材・防水材ウレタンフォーム、防水材料20〜35%一部メーカーが出荷停止(日新工業等)
壁材ビニルクロス15〜25%塩化ビニル樹脂の価格に連動
床材フロアタイル、クッションフロア15〜25%同上
配管・シーリング資材塩ビ管、シーリング材20〜30%サンスター技研等が30%値上げ発表

一般的なオフィス改装工事において、内装・設備工事の材料費は工事費全体の35〜50%程度を占めるとされています。仮に材料費が平均20〜30%上昇した場合、工事費全体では10〜15%程度のコスト増が見込まれる計算です。50坪規模の標準的なオフィス改装であれば数百万円、100坪を超える大規模プロジェクトであれば1,000万円以上の予算超過につながりかねません。

オフィス改装費用の相場や内訳についてより詳しく把握しておきたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。資材高騰前の標準的なコスト構造を理解しておくことで、今回の価格上昇がどの項目にどう影響しているかが、より具体的につかめます。

参考記事:オフィス改装費用の相場と内訳を徹底解説|リフォーム・工事のコストを抑えるポイントも紹介

3. 先行きはどうなるのか――供給回復の見通しと長期リスク

3.1. 代替調達の動きと「コスト高止まり」という現実

ホルムズ海峡の通航リスクが高まるなか、日本の石油・石油化学各社は中東以外からの代替調達に動いています。北米産の原油やナフサ、東南アジア・豪州からの調達比率を引き上げる動きが見られますが、代替調達には構造的なコスト高がつきまといます。

最大の問題は輸送コストです。中東から日本へのタンカー航路は比較的短距離ですが、ホルムズ海峡を回避して喜望峰(アフリカ南端)経由のルートを使うと、航行距離は大幅に延びます。LSEGの試算によると、代表的な大型コンテナ船のケースで運航コスト増は約35%とされており、保険料の上昇なども含めた荷主の実質負担は条件次第でさらに大きくなります。原料価格が仮に落ち着いたとしても、輸送コストの上昇分が製品価格に転嫁され続けるという構図が生まれています。また、北米やオーストラリアからのナフサは、もともと中東産より割高な傾向があるため、代替調達による価格上昇の緩和効果には限界があります。(出典:「代替ルートのアフリカ回り海運コスト増はどの程度か」global-scm.com、2026年3月21日)

このことが意味するのは、「中東情勢が落ち着けばコストも元に戻る」という単純な期待は、現実には成り立ちにくいということです。供給ルートが変わった時点で、コスト構造そのものが変化しており、建材・塗装剤の価格は当面、高止まりが続くと考えておく必要があります。

3.2. 「停戦=問題解決ではない」――構造的リスクを正しく理解する

仮に停戦合意が成立したとしても、ホルムズ海峡を取り巻くリスクが完全に消滅するわけではありません。2026年5月時点の報道では、イランがオマーンと協力してホルムズ海峡を通る海上交通に対する管理を正式化する恒久的な通行料制度の枠組みを検討しているとも報じられており(出典:Trading Economics、2026年5月22日)、停戦後も海峡の通航コストが構造的に引き上げられるリスクが残存しています。停戦後も、イランの核開発問題や米国・イスラエルとの外交的緊張は残存し続ける可能性が高く、「いつでも再燃しうるリスク」として日本のエネルギー調達戦略に組み込んでいく必要があります(出典:キヤノングローバル戦略研究所「ホルムズ危機が脱石油政策を終わらせる」、2026年4月22日)。

加えて、今回の事態はナフサ・建材だけの問題ではなく、電力・物流・製造コストの全般的な上昇を通じて、オフィス工事にかかわる多くのサプライチェーンに波及しています。原材料のコスト上昇は、製品価格に転嫁されるまでに一定のタイムラグが生じることが多く、今後数か月から半年にかけて、建材・塗装剤の価格改定が追加で発生する可能性も否定できません。

総務担当者としては、「今後コストが下がるタイミングを待つ」という判断が、必ずしも正解とはならないシナリオを念頭に置いておくことが重要です。価格が元の水準に戻ることへの過度な期待は、プロジェクトの先送りによる機会損失につながりかねません。

3.3. オフィス工事のスケジュールと資材調達に生じる遅延リスク

コストの問題と並んで深刻なのが、工期への影響です。塗料・断熱材・床材などの石油系建材は、いずれも製造リードタイムに余裕がなくなっており、施工会社が発注してから現場に届くまでの期間が、2025年以前と比較して長期化しています。特に特注品やカラー指定のある製品については、標準品よりもさらに調達に時間を要するケースが増えています。

オフィスの移転や改装には、退去日・引き渡し日・入居日といった動かせない締め切りが存在します。資材の納期遅延が生じた場合、工事の着手を遅らせることはできても、竣工日を後ろ倒しにできないケースがほとんどです。その結果として生じるのが、職人の工期圧縮による追加コストや、突貫工事による品質リスクです。

オフィス工事全体の流れとスケジュール設計については、以下の記事で詳しく解説しています。資材調達の遅延リスクを踏まえたうえで、余裕をもったスケジュールを組む重要性についても触れていますので、現在プロジェクトを進めている方はぜひ参考にしてください。

参考記事:総務が知っておきたいオフィス改装の基礎知識―業者比較から発注フローまで、失敗しないための実務ガイド―

4. 総務担当者が今すぐ取れる5つの対策

中東情勢に端を発したナフサショックは、個々の企業が単独で解決できる問題ではありません。しかし、状況を正しく理解したうえで適切な手を打つことで、コストの膨張やスケジュールの混乱を最小限に抑えることは十分に可能です。ここでは、オフィスの移転・改装・新規構築を検討している総務担当者が、今すぐ実践できる5つの対策をご紹介します。

4.1. 現在の見積もりを「材料費別途」で確認・再精査する

まず取り組んでいただきたいのが、手元にある見積もりの内容を改めて精査することです。資材高騰が急速に進んでいる現在、数か月前に取得した見積もりはすでに実勢価格と乖離している可能性があります。特に確認すべきは、材料費が工事費に含まれているのか、それとも「材料費別途」「変動あり」といった条件付きで提示されているかという点です。

一般的な見積もりには、工事着工時点の材料費を前提とした「材料費込み一式」の形式と、資材価格の変動を後から反映させる「材料費変動条項付き」の形式があります。後者の場合、着工時点での価格が見積もり提示時より高騰していれば、追加請求が発生する可能性があります。現在進行中のプロジェクトがある場合は、施工会社に対して材料費の取り扱いを明確に確認し、必要であれば見積もりの再提示を依頼することをお勧めします。

4.2. 早期発注・資材の先行確保を施工会社と相談する

資材の価格上昇と納期長期化が同時進行している現在、「工事着工直前に材料を手配する」という従来の慣行は通用しにくくなっています。施工会社と協議のうえ、可能な範囲で資材を早期に発注・確保する「資材先行手配」を検討することが有効です。

特に、塗料・シンナー・断熱材・ビニルクロスといった価格上昇が著しい材料については、工事着工の2〜3か月前を目安に発注を完了させることで、さらなる価格上昇のリスクをヘッジできる可能性があります。一方で、先行手配には在庫保管コストや、設計変更が生じた場合の材料ロスというリスクも伴います。設計が固まった段階で速やかに施工会社と協議し、早期発注のメリットとリスクを天秤にかけながら判断することが重要です。

4.3. 水性塗料など代替材料への切り替えを検討する

塗装剤については、石油系溶剤を多用する油性塗料から、水を溶媒とする水性塗料への切り替えが有効な選択肢となります。水性塗料はシンナーの使用量が大幅に少ないため、シンナー価格の急騰による影響を受けにくいという特徴があります。近年の水性塗料は品質が向上しており、耐久性・発色・施工性においても油性塗料に遜色のない製品が多く流通しています。

また、壁仕上げについても、ビニルクロスの代わりに珪藻土・漆喰・石膏ボード仕上げなど、石油化学製品への依存度が低い素材を検討することができます。これらの代替素材は、デザイン面でも独自の質感や温かみをオフィス空間に与えるという副次的なメリットもあります。ただし、代替素材への切り替えは施工方法や工期にも影響を与える場合があるため、設計の初期段階から施工会社や内装デザイナーと連携して検討を進めることをお勧めします。

比較項目油性塗料水性塗料
主な溶媒シンナー(石油系有機溶剤)
資材高騰の影響大きい比較的小さい
耐久性高い近年向上、ほぼ同等
臭気強い少ない
環境負荷高い低い
コスト(現在)高騰中相対的に安定
施工性やや難扱いやすい

4.4. 工事の優先順位を整理し、段階的なアプローチを設計する

資材コストの上昇が避けられない局面では、「すべてを一度にやりきる」という従来型のアプローチを見直し、工事の優先順位を整理したうえで段階的に進める方法が有効です。具体的には、業務上の必要性が高いエリア・設備から先に着手し、デザイン性向上を目的とした工事や、緊急性の低いエリアの改装は次フェーズに先送りするという考え方です。

この段階的アプローチには、複数のメリットがあります。まず、一度に投じる予算を抑えることで、コスト管理がしやすくなります。次に、資材価格の動向を見ながら次のフェーズの発注タイミングを柔軟に調整できます。さらに、工事中の業務への影響を分散できるという実務上の利点もあります。オフィスリノベーションの目的・進め方の全体像については、以下の記事で体系的に解説しています。段階的なアプローチを設計するうえでの参考にしてください。

参考記事:オフィスリノベーションで働き方を変える:目的・進め方・事例から学ぶ空間づくりのヒント

4.5. 信頼できるワンストップ業者とのパートナーシップを構築する

資材高騰・納期長期化という複合的な課題に対応するためには、複数の専門業者を個別に管理する「分離発注方式」よりも、設計から施工・資材調達までを一元管理できるワンストップ業者に依頼する方が、現在の環境においては合理的な選択といえます。

ワンストップ業者は、複数の資材メーカーや施工業者との継続的な取引関係を持っており、資材の優先的な確保や代替素材への素早い切り替えについて、個別発注よりも有利な立場にあることが多いです。また、設計段階から資材調達の見通しを組み込んだスケジュール管理が可能なため、納期リスクへの対応力も高くなります。信頼できるパートナーを早期に選定し、プロジェクトの上流から関与してもらうことが、資材高騰局面でのオフィス構築を成功に導くうえで重要な要素となっています。

5. 資材高騰の時代だからこそ、オフィス投資の「目的」を明確にする

5.1. コスト上昇局面でこそ設計品質が問われる

資材価格が上昇している局面では、「コストを抑えること」が自己目的化してしまいがちです。しかし、オフィスへの投資は単なる内装工事費用ではなく、そこで働く社員の生産性・エンゲージメント・採用力といった、企業の競争力に直結する要素への投資です。コストが上がるからこそ、「何のためにオフィスを構築・改装するのか」という目的の明確化がこれまで以上に重要になります。

限られた予算のなかで最大の効果を引き出すためには、全体を平均的に仕上げるよりも、目的に応じてメリハリをつけた投資配分が求められます。たとえば、採用強化が目的であればエントランスや来客動線を重点的に磨き、社員のコミュニケーション活性化が目的であればコラボレーションエリアに集中投資するといった発想です。コスト上昇局面においては、設計の質――何に投資して何を省くかの判断力――が、プロジェクトの成否を大きく左右します。

まとめ

2026年に深刻化した中東情勢とホルムズ海峡危機は、日本のナフサ輸入に直撃し、塗装剤・断熱材・ビニルクロス・配管資材といったオフィス内装を構成する石油系建材の価格急騰と供給不足を引き起こしています。この影響は一時的なものではなく、代替調達ルートへの切り替えに伴うコスト高止まりや、停戦後も残存する構造的リスクを考慮すると、中長期にわたって続く可能性が高い状況です。

総務担当者にとって重要なのは、この状況を「外部環境の問題だから仕方がない」と受け身で捉えるのではなく、今できる対策を積み重ねることです。見積もりの再精査、資材の早期発注、代替素材の検討、段階的な工事設計、信頼できるワンストップ業者との連携――これらの対策はいずれも、今日から着手できるものばかりです。

また、コストが上昇しているからこそ、オフィス投資の「目的」を起点とした戦略的な設計判断が求められます。何のためにオフィスを構築・改装するのかを明確にし、限られた予算のなかで最大の効果を引き出す設計品質を追求することが、資材高騰局面におけるオフィスプロジェクトを成功に導く鍵となります。

株式会社ヴィスは、『はたらく人々を幸せに。』というパーパスのもと、働く場を設計する「ワークプレイスデザイン」と、そこで生まれる体験を設計する「エクスペリエンスデザイン」という二つのアプローチを通して『ワークデザイン』を実現し、人と組織のエンゲージメントを高めながら、企業価値の持続的な向上に貢献します。
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