オフィス移転の工事区分とは?A工事・B工事・C工事の違いとテナント負担の費用を解説

オフィス移転における工事区分とは?A工事・B工事・C工事の違いや対象範囲、テナントの費用負担を解説します。B工事による追加費用や工期遅延を防ぐ確認ポイントも紹介します。

この記事は約24分で読み終わります。

オフィス移転では、レイアウトやデザインの検討と並行して、内装、空調、電気、防災設備、通信環境など、さまざまな工事を進めます。しかし、すべての工事を自社が選んだ施工会社へ依頼できるとは限りません。賃貸オフィスの工事には、一般的に「A工事」「B工事」「C工事」という工事区分があり、それぞれ業者を選ぶ人、工事を発注する人、費用を負担する人が異なります。

なかでも注意したいのが、テナント負担でありながら、ビルオーナー側が指定する業者によって施工されるB工事です。オフィス移転の計画段階でB工事の範囲を把握していないと、想定していなかった費用が追加されたり、見積もりや承認に時間がかかって工期が延びたりする可能性があります。専有部で行う工事でも、空調や電気、防災設備など、建物全体の機能や安全性に関わる部分はB工事になる場合があるため、事前確認が欠かせません。

また、A工事・B工事・C工事の対象範囲は、すべてのビルで共通しているわけではありません。同じ間仕切り工事や照明工事でも、移転先のビルによって区分が異なることがあります。新築ビルへの入居や既存オフィスの改装を計画する際も、一般的な区分だけで判断せず、賃貸借契約書、工事区分表、貸方基準書、入居工事要項などを確認することが大切です。

この記事では、オフィス移転における工事区分の基本をはじめ、A工事・B工事・C工事の違い、専有部におけるテナント負担の範囲、費用や工期のトラブルを防ぐポイントを分かりやすく紹介します。工事区分を正しく理解し、予算とスケジュールを無理なく管理するために、ぜひ参考にしてください。

この記事のまとめ

結論

オフィス移転では、A工事・B工事・C工事の範囲を契約前から確認し、費用と工程を一体で管理することが重要です。

3つの要点

  • A工事はオーナー負担、B工事は原則としてオーナー指定業者によるテナント負担、C工事はテナントが業者を選定・負担します。
  • 専有部でも、空調・電気・防災設備など建物全体に関わる部分はB工事になる場合があります。
  • 工事区分はビルごとに異なるため、工事区分表や貸方基準書を早めに確認します。

この記事で解決できる悩み

  • 工事区分の違いやテナント負担の範囲を理解し、想定外の追加費用や工期遅延を防ぐ方法が分かります。

1.オフィス移転で確認する工事区分とは

オフィス移転では、内装や設備に関する複数の工事が発生します。これらを円滑に進めるには、工事内容だけでなく、「誰が施工業者を選ぶのか」「誰が発注するのか」「誰が費用を負担するのか」を明確にしなければなりません。その役割分担を整理するのが、A工事・B工事・C工事と呼ばれる工事区分です。

1.1.工事区分は発注・施工・費用負担の役割を明確にする

工事区分とは、賃貸オフィスにおける工事の責任範囲を整理するためのルールです。一般的には、施工業者の選定者、工事の発注者、費用負担者という観点から、A工事・B工事・C工事に分けられます。

複数の企業が入居するオフィスビルでは、テナントの専有部で行う工事であっても、建物全体に影響が及ぶ場合があります。たとえば、会議室を新設するために間仕切りを設置すると、空調設備の吹き出し口や煙感知器、スプリンクラーなどの位置を変更しなければならないことがあります。建物の安全性や設備の保守に関わる工事をテナントが自由に実施すると、ほかの入居者やビル全体の管理に影響するおそれがあるため、工事区分によって施工範囲と責任の所在が定められています。

オフィス移転の担当者は、工事区分を確認する際、主に次の点を整理しましょう。

  • 施工業者の選定者:工事を担当する会社を、ビルオーナーとテナントのどちらが選ぶのかを確認します。指定業者による施工が必要な場合、自社で複数の業者を比較できないことがあります。
  • 工事の発注者:施工会社に対して、ビルオーナーとテナントのどちらが正式に工事を依頼するのかを確認します。見積もりや契約、請求の流れにも関係する項目です。
  • 費用負担者:工事費用をビルオーナーとテナントのどちらが負担するのかを明確にします。特にB工事は、業者をオーナー側が指定する一方で、テナント負担になる場合が一般的です。
  • 管理と原状回復の条件:工事によって設置した設備や造作の管理主体と、退去時にどこまで原状回復する必要があるのかを確認します。

工事区分を早い段階で把握しておけば、内装費用だけでなく、空調や電気、防災設備などの関連費用も予算へ反映しやすくなります。施工業者間の役割や作業の前後関係も整理できるため、工期遅延や認識の食い違いを防ぐうえでも重要です。

1.2.A工事・B工事・C工事の違い

A工事・B工事・C工事の違いは、施工場所だけで決まるものではありません。業者選定、発注、費用負担の主体を組み合わせて判断することが基本です。

工事区分業者選定発注者費用負担主な対象の例
A工事ビルオーナービルオーナービルオーナー建物の躯体、外壁、共用部、エレベーター、基幹設備など
B工事ビルオーナー側契約条件によって異なるテナント専有部の空調、防災、電気、給排水など、建物全体に影響する設備
C工事テナントテナントテナント専有部の内装仕上げ、家具、什器、サイン、LAN配線など

A工事は、ビルの躯体や共用部、基幹設備などに関する工事です。原則としてビルオーナーが施工業者を選び、発注と費用負担も担います。テナントが希望するオフィス改装とは直接関係しないことも多いものの、共用部の工事やエレベーターの使用制限などが、移転スケジュールへ影響する場合があります。

B工事は、テナントの要望に伴って行われるものの、建物全体の安全性や設備管理に関係するため、ビルオーナー側が指定する業者によって施工される工事です。費用はテナント負担となることが多く、空調、防災、電気、給排水設備などが対象になりやすい傾向があります。業者選定の自由度が低いため、費用や工期を早めに確認することが重要です。

C工事は、テナントが施工業者を選定し、発注と費用負担を行う工事です。専有部の床や壁、造作家具、什器、サイン、LAN配線など、オフィスのデザインや使い勝手に大きく関わる部分が中心です。ただし、C工事であってもビルの工事規則に従い、着工前に図面や施工内容について承認を得る必要があります。

1.3.工事区分はビルごとに異なる

A工事・B工事・C工事には一般的な考え方がありますが、具体的な対象範囲はビルごとに異なります。同じ工事内容であっても、あるビルではC工事としてテナントが選んだ業者へ依頼できる一方、別のビルではB工事として指定業者による施工が必要になることがあります。

たとえば、間仕切りの設置自体はC工事でも、それに伴う空調設備や防災設備の移設はB工事になる場合があります。コンセントの増設も、専有部内の末端配線はC工事、分電盤や幹線へ影響する部分はB工事というように、同じ目的の工事が複数の区分へ分かれる可能性があります。

また、「専有部の工事だからテナントが自由に依頼できる」とは限りません。専有部に設置されている設備でも、ビル全体の空調、電気、防災、給排水などにつながっていれば、オーナー側の管理対象となることがあります。反対に、一般的にはB工事と考えられる内容でも、ビルの基準や工事条件によっては、承認を得たうえでC工事として進められる場合があります。

そのため、過去に別のビルでオフィス移転を経験していても、以前と同じ区分だと判断しないことが大切です。候補物件を比較するときは、賃料や立地、専有面積だけでなく、工事区分と入居工事の条件も確認しましょう。工事区分の違いによって、移転に必要な費用や準備期間が変わる可能性があります。

1.4.工事区分表や貸方基準書を確認する

移転先の工事区分を正確に把握するには、ビルオーナーや管理会社が定めた資料を確認する必要があります。主な確認資料は、工事区分表、賃貸借契約書とその特約、貸方基準書、入居工事要項、管理規約などです。

工事区分表には、空調、電気、防災、給排水、内装、通信、セキュリティといった項目ごとに、A工事・B工事・C工事のどれに該当するかが記載されています。貸方基準書や入居工事要項では、標準仕様、設計条件、使用できる材料、作業可能な時間帯、施工申請の方法、図面提出の期限などが定められている場合があります。

資料を確認するときは、工事区分の名称だけでなく、次の点まで具体的に把握しましょう。

  • 指定業者へ見積もりを依頼する窓口
  • 見積もり提出から承認までに必要な期間
  • 設計図面の提出期限と承認手順
  • 工事可能な曜日と時間帯
  • 搬入経路、エレベーターの利用条件、養生のルール
  • B工事とC工事の施工順序
  • 竣工検査や消防検査などの実施条件
  • 退去時の原状回復範囲

記載内容が抽象的な場合や、工事区分表と契約書の表現が一致しない場合は、自己判断せず、ビル管理会社へ書面で確認しましょう。確認結果を内装会社や設計会社とも共有しておくと、工事区分の認識違いを防ぎやすくなります。

なお、オフィス移転では入居工事だけでなく、旧オフィスの原状回復工事にも費用が発生します。退去までの手順や原状回復の注意点もあわせて確認しておくと、移転費用の全体像を捉えやすくなります。

参考記事:オフィス退去・移転の流れ|2つの退去費用と原状回復工事の注意点を徹底解説!

2.A工事・B工事・C工事の対象とテナント負担

オフィス移転の工事費用を正確に把握するには、A工事・B工事・C工事の対象範囲と、テナント負担になる工事を整理する必要があります。ただし、以下で紹介する内容は一般的な例です。実際の区分は移転先のビルによって異なるため、工事区分表や貸方基準書などを必ず確認してください。

2.1.A工事はオーナーが発注・負担する共用部中心の工事

A工事とは、ビルオーナーが施工業者を選定し、工事を発注したうえで、費用も負担する工事です。建物の資産価値や安全性、基本的な機能を維持するための工事が中心で、一般的には建物の躯体、外壁、屋上、共用廊下、共用トイレ、エレベーターなどが対象になります。

建物全体に関わる空調、電気、防災、給排水などの基幹設備も、A工事に含まれる場合があります。ただし、テナントの希望によって専有部の設備を増設・変更する場合は、同じ設備に関する工事でもB工事として扱われる可能性があります。

A工事はオーナー負担となるため、テナントが直接工事費用を支払う場面は多くありません。しかし、オフィス移転の工程と無関係ではありません。共用部の改修によって搬入経路が制限されたり、エレベーターを使用できる日時が限られたりすると、家具や什器の搬入、引っ越しの予定に影響します。

専有部に設置されている既存設備も、オーナーの資産としてA工事の対象になる場合があります。既存の照明や空調設備を変更したいときは、テナント側で撤去や移設を判断せず、所有区分と工事区分を確認しましょう。

2.2.B工事はオーナー指定業者が施工しテナントが費用を負担する

B工事とは、テナントの要望に基づいて行われる工事のうち、ビルオーナー側が指定する施工業者によって実施され、費用をテナントが負担する工事です。発注者や契約の流れはビルによって異なるものの、業者選定の権限がオーナー側にある点が大きな特徴です。

主な対象として、専有部の空調設備、防災設備、分電盤、電気幹線、給排水設備、建物側のセキュリティ設備などが挙げられます。これらは専有部内に設置されていても、変更によってビル全体の安全性や設備管理へ影響する可能性があるため、建物を熟知した指定業者が施工する仕組みになっています。

B工事で注意したいのは、テナント負担でありながら、施工業者を自由に選びにくいことです。複数の施工会社から相見積もりを取得することが難しく、当初の想定より費用が高くなることがあります。また、指定業者への見積もり依頼やビル側の承認に時間がかかり、C工事の着工時期にも影響する可能性があります。

見積書を受け取った際は、工事の数量や単価だけでなく、仮設費、現場管理費、諸経費、申請費なども確認しましょう。内装会社が作成した図面とB工事の見積内容を照合し、不要な工事や数量の重複がないかを確認することも大切です。

ただし、費用を抑える目的だけでB工事を避けるのは適切ではありません。必要な設備を減らすことで、快適性や安全性が損なわれる可能性があるためです。既存設備を生かせるレイアウトへ変更するなど、働きやすさを維持しながら工事範囲を調整できないか、設計会社やビル管理会社と相談しましょう。

2.3.C工事はテナントが業者を選びやすい専有部の工事

C工事とは、テナントが施工業者を選定し、発注と費用負担を行う工事です。専有部の内装仕上げ、造作家具、オフィス家具、什器、サイン、LAN配線、電話設備など、建物全体への影響が比較的小さい工事が対象になります。

テナントが複数の施工会社を比較できるため、デザイン、機能、費用、実績などを踏まえて依頼先を選びやすい点が特徴です。自社の働き方や企業イメージを反映したオフィスをつくるうえで、C工事は重要な役割を担います。

一方、C工事であれば自由に施工できるという意味ではありません。着工前には図面や施工計画書を提出し、ビルオーナーや管理会社の承認を得るのが一般的です。使用可能な材料、作業時間、騒音が発生する工事の時間帯、搬入経路、エレベーターの利用方法なども、ビルの規則に従う必要があります。

オフィス改装で床や壁の仕上げを変更する場合も、下地や既存設備の扱いによって工事区分が変わる可能性があります。見積もりを依頼する前に、内装会社へ工事区分表を共有し、C工事として実施できる範囲を確認しておきましょう。

2.4.一つのレイアウト変更がB工事とC工事に分かれる場合がある

オフィス移転では、一つのレイアウト変更にB工事とC工事の両方が発生することがあります。代表的な例が、専有部への会議室や個室の新設です。

間仕切り壁の設置や内装仕上げはC工事でも、部屋を区切ることで空調の吹き出し口、煙感知器、非常放送設備、スプリンクラーなどの移設や増設が必要になれば、その部分はB工事になる可能性があります。照明やコンセントの増設についても、専有部内の器具や末端配線はC工事、分電盤や電気幹線に関わる部分はB工事というように分かれる場合があります。

このような工事では、B工事とC工事を別々に計画すると、設備と間仕切りの位置が合わない、天井を仕上げた後に設備工事が必要になるといった問題が起こりかねません。基本レイアウトを作成した段階で、内装会社、ビル管理会社、指定業者の間で図面を共有し、工事範囲と施工順序を確認することが重要です。

3.オフィス移転の工事区分で起こりやすい費用と工程の問題

オフィス移転では、工事区分の確認が遅れると、予算超過や設計変更、工期の遅延につながることがあります。特にB工事は、テナントが費用を負担する一方、施工業者や手続きについてビル側の条件を受けるため、内装会社が担当するC工事とは異なる管理が必要です。

ここでは、工事区分に関して起こりやすい問題と、未然に防ぐための考え方を紹介します。

3.1.B工事費用を後から把握して予算を超過する

オフィス移転の予算を検討する際、内装会社から提示されたC工事の見積もりだけで判断してしまうと、後からB工事費用が加わり、予算を超過する可能性があります。

B工事には、空調設備の移設や増設、分電盤の改修、防災設備の変更、給排水設備の工事などが含まれる場合があります。会議室や個室を増やすほど、空調や防災設備の調整箇所が増え、想定以上の費用が発生することもあります。

また、B工事は指定業者が施工するため、テナント側で自由に相見積もりを取れないことがあります。工事費そのものに加え、現場管理費、共通仮設費、申請費、諸経費などが計上される場合もあるため、総額だけでなく見積もりの内訳を確認することが重要です。

予算超過を防ぐには、基本レイアウトがまとまった段階で、B工事の対象範囲を確認し、概算費用を取得しましょう。その後も設計変更が生じるたびに、B工事とC工事の両方について増減を更新します。移転予算は、内装工事だけでなく、家具、ICT、引っ越し、原状回復なども含めて管理する必要があります。

オフィス移転に必要な費用の全体像や内訳を把握したい場合は、規模別の考え方やコストを抑える方法もあわせて確認しておくと、予算計画を立てやすくなります。

参考記事:オフィス移転費用はいくら?相場・内訳・規模別シミュレーションから削減策・新リース会計基準まで解説

3.2.工事区分を確認せずにレイアウトを決めてしまう

希望するレイアウトを先に確定し、その後で工事区分を確認すると、大幅な設計変更が必要になることがあります。たとえば、会議室を細かく区切った結果、空調設備や煙感知器、スプリンクラーの移設が多数発生し、B工事費用が増えるケースです。

オフィスのレイアウトを検討する際は、既存の空調、照明、防災設備、分電盤などの位置を確認し、できるだけ活用できる計画を立てることが有効です。既存設備と間仕切りの位置を調整すれば、設備の移設を抑えられる可能性があります。

ただし、B工事を減らすことだけを優先し、必要な会議室や集中スペースを設けられなければ、オフィス移転の目的を達成できません。費用、働きやすさ、デザイン、安全性の優先順位を整理したうえで、既存設備を生かせる部分と、必要な投資を行う部分を見極めましょう。

3.3.B工事とC工事の工程が合わず入居が遅れる

B工事とC工事は、異なる施工業者が担当することが多いため、作業の順序や日程を正確に調整する必要があります。B工事の見積もりやビル側の承認が遅れると、C工事を予定どおりに着工できず、家具の搬入や引っ越しにも影響する可能性があります。

たとえば、天井内の空調や防災設備を変更するB工事は、内装の天井仕上げを完了する前に実施しなければなりません。間仕切りを設置してから設備位置の不整合が判明すると、施工済みの部分をやり直すこともあります。

工程の遅れを防ぐには、設計確定、図面提出、ビル側承認、B工事の見積もりと発注、C工事、各種検査、家具搬入、引っ越しまでを、一つのマスタースケジュールで管理しましょう。各工程の担当者と期限に加え、前の作業が終わらなければ開始できない工程も明確にします。

特に新築ビルや入居工事が集中する時期は、指定業者のスケジュールを確保するまでに時間がかかる場合があります。オフィスの利用開始日から逆算し、ビル側の承認期間や予備日を含めて余裕のある計画を立てることが大切です。

4.工事区分を踏まえてオフィス移転を進めるポイント

オフィス移転に伴う追加費用や工期の遅れを防ぐには、物件契約後に工事区分を確認するのではなく、候補物件を比較する段階から入居工事の条件を把握することが重要です。

工事区分表を入手したら、設計会社や内装会社へ早めに共有し、レイアウト、設備、費用、工程を一体で検討しましょう。ここでは、A工事・B工事・C工事を踏まえて、オフィス移転を円滑に進めるためのポイントを紹介します。

4.1.物件選定時に工事区分と既存設備を確認する

工事区分は、オフィス移転に必要な費用とスケジュールを左右します。そのため、移転先を契約してからではなく、候補物件を比較する段階で確認することが理想です。

物件選定時には、工事区分表や貸方基準書を入手し、空調方式、電気容量、防災設備、給排水設備、既存照明、セキュリティなどの条件を確認します。あわせて、現地調査を行い、既存設備の位置や状態が希望するレイアウトに適しているかを確認しましょう。

たとえば、会議室を設けたい位置に空調設備や防災設備が十分に配置されていなければ、B工事による移設や増設が必要になる可能性があります。執務エリアで使用するパソコンやモニターが多い場合は、電気容量が足りるか、分電盤の改修が必要かどうかも重要な判断材料です。

主な確認項目は、次のとおりです。

  • 空調設備:空調方式、運転可能な時間、吹き出し口の位置、増設や移設の可否を確認します。時間外空調の利用方法や費用も、入居後の運用に影響します。
  • 電気設備:契約電力、分電盤の容量、コンセント増設の工事区分を確認します。電気容量が不足すると、幹線や分電盤に関するB工事が必要になる場合があります。
  • 防災設備:煙感知器、スプリンクラー、非常放送設備、誘導灯などの位置を確認します。間仕切りの計画によっては、移設や増設が必要です。
  • 給排水設備:カフェスペースや社内キッチンなどを設ける場合は、給排水管を引き込める位置と工事区分を確認します。
  • 搬入条件:搬入経路、エレベーターの寸法と利用時間、養生方法などを確認します。大型家具や什器を搬入できるかどうかにも関係します。

候補物件を比較するときは、賃料や立地、専有面積だけでなく、入居に必要なB工事とC工事の概算費用も含めて判断することが大切です。賃料が比較的低い物件でも、設備の移設や増設が多ければ、オフィス移転の初期費用が大きくなる可能性があります。

4.2.B工事の概算を早期に取得して費用を管理する

B工事費用を正確に算出するには、ある程度具体的なレイアウトや設備計画が必要です。一方で、すべての設計を確定した後に初めて見積もりを依頼すると、提示された金額が予算を上回った際に、大幅な設計変更が必要になります。

このような事態を防ぐには、基本レイアウトがまとまった段階で、B工事の対象範囲を洗い出し、指定業者から概算見積もりを取得しましょう。作成した図面には、間仕切り、会議室、個室、什器、照明、コンセントなどの位置を示し、空調、電気、防災設備への影響を確認します。

概算見積もりを受け取ったら、内装会社や設計会社の担当者とともに内容を精査します。設計図面と見積数量が一致しているか、同じ作業がB工事とC工事の両方に計上されていないか、現場管理費や諸経費の対象が明確かといった点を確認しましょう。

B工事をC工事へ変更できるか、既存設備を流用できるかなどについても、ビル管理会社へ相談できる場合があります。ただし、工事区分の変更はテナント側だけで判断できません。建物の安全性や保守管理に関わるため、オーナーや管理会社の承認が必要です。

概算費用が予算を超える場合は、設備の必要性を確認したうえで、レイアウトや仕様の調整を検討します。たとえば、既存の空調設備や照明を生かせる位置へ会議室を移す、固定した間仕切りを減らして家具で空間を区切るなど、オフィスの機能を保ちながら工事範囲を見直せることがあります。

4.3.設計・B工事・C工事を一つの工程として管理する

オフィス移転では、設計会社、内装会社、ビル管理会社、B工事の指定業者、家具会社、ICT事業者、引っ越し会社など、多くの関係者がプロジェクトへ参加します。それぞれが個別に工程を管理すると、作業の重複や確認漏れが起こりやすくなります。

特にB工事とC工事は、互いの作業に影響します。間仕切りを設置する前に天井内の設備を調整する、床を仕上げる前に電源や通信の配線を行うなど、施工順序を誤ると手戻りが発生します。

そのため、次の工程を一つのマスタースケジュールへまとめて管理しましょう。

主な工程確認する内容
工事区分の確認A工事・B工事・C工事の対象、指定業者、申請条件を把握
現地調査既存設備、電気容量、空調、防災、搬入条件などを確認
基本設計レイアウトと設備計画を作成し、B工事の対象範囲を整理
概算見積もりB工事とC工事の概算を取得し、移転予算との整合性を確認
ビル側の承認図面や施工計画書を提出し、修正の有無や承認時期を確認
実施設計・発注工事内容と金額を確定し、指定業者と内装会社へ発注
B工事・C工事施工順序、作業範囲、検査日程を関係者間で共有
検査・搬入ビル側の検査後、家具、ICT機器、荷物などを搬入

工程表には、開始日と完了日だけでなく、各作業の担当者、承認者、前提条件も記載します。たとえば、ビル側の図面承認が完了しなければB工事を発注できない場合は、その関係を明確にしておくことが重要です。

また、施工中に仕様変更が必要になった場合は、C工事だけでなく、B工事やビル側の承認へ影響しないかを確認します。変更内容、費用、工期への影響を記録し、関係者へ共有する仕組みも整えましょう。

オフィス移転全体の進め方を把握したい場合は、物件選定から業者比較、各種工事、引っ越しまでの流れを確認しておくと、工事区分を移転プロジェクト全体の中で捉えやすくなります。

参考記事:オフィス移転の進め方完全ガイド|スケジュール・物件選定・業者比較・費用概要を解説

社内だけで複数の業者や工程を管理することが難しい場合は、オフィス移転のプロジェクトマネジメントを外部へ依頼する方法もあります。コンサルティング会社へ依頼できる業務や選定時の注意点は、次の記事で詳しく紹介しています。

参考記事:オフィス移転コンサルとは?依頼するメリットや失敗しない選び方を徹底解説

4.4.新築ビルへの移転は竣工前の変更期限を確認する

新築ビルへのオフィス移転では、建物の工事が進行している段階で、テナントの要望を反映できる場合があります。竣工前に空調、照明、電気、防災設備などの仕様や位置を調整できれば、完成後に設備を撤去して再施工する手間を抑えられる可能性があります。

ただし、いつでも変更できるわけではありません。建物本体の工事には工程があり、設備や資材の発注時期、施工時期に応じて、テナントの要望を受け付ける期限が設けられます。変更期限を過ぎると、要望を反映できなかったり、追加費用を負担して完成後に改修したりする必要が生じます。

新築ビルへの移転を検討する際は、次の点を確認しましょう。

  • テナント側の設計図面を提出する期限
  • ビル本体工事へ変更を反映できる範囲
  • 変更に伴う費用の負担者
  • 設備や材料を選定できる期限
  • 建物の引き渡し日と入居工事の着工可能日
  • B工事とC工事を実施できる期間
  • 消防検査やビル側の竣工検査の日程

新築ビルでは、建物の完成前に現地の状態を十分確認できないこともあります。設計図面や設備資料だけで判断せず、定例会議や現場確認の機会を設け、建物側の工事とテナント工事の取り合いを確認することが大切です。

入居予定日から逆算するだけでなく、ビル本体工事の変更期限からも逆算し、レイアウトや設備要件を早めに決定しましょう。

4.5.オフィス改装でも既存の工事区分を見直す

オフィス移転を伴わない改装でも、空調、電気、防災、給排水、間仕切りなどを変更する場合は、工事区分の確認が必要です。現在使用している専有部であっても、テナントがすべての工事を自由に実施できるとは限りません。

入居時に使用した工事区分表を保管していても、同じ内容で進められるとは限らない点に注意しましょう。入居後にビルオーナーや管理会社が変わったり、管理規約や工事に関する基準が更新されたりしている可能性があります。改装を計画する際は、最新の工事区分表や工事要項を改めて取得することが重要です。

また、業務を継続しながらオフィス改装を行う場合は、工事区分に加えて、従業員や来訪者への影響も考慮する必要があります。騒音や振動が発生する時間、電気や空調を停止する時間、工事中に立ち入れない範囲などを確認し、必要に応じて仮設スペースや在宅勤務を組み合わせます。

改装範囲が複数の工事区分にまたがる場合は、工区を分けて施工する方法もあります。ただし、工期を分割すると仮設費や管理費が増えることもあるため、業務への影響と費用の両面から判断しましょう。

オフィス改装にかかる費用の内訳やコストを抑える考え方については、工事内容別のポイントをまとめた次の記事も参考にしてください。

参考記事:オフィス改装費用の相場と内訳を徹底解説|リフォーム・工事のコストを抑えるポイントも紹介

5.建物条件を踏まえたオフィス移転・改装事例

工事区分はビルごとに異なるため、オフィス移転や改装では、建物の既存設備や区画特性を理解したうえで空間を計画することが大切です。ここでは、建物条件を生かしながら、働き方やコミュニケーションの課題に応えた株式会社ヴィスの事例を紹介します。

5.1.デジタルリユース株式会社

事業成長に伴う人員増加や採用体制の強化へ対応するため、オフィスを移転した事例です。社員の働きやすさとコミュニケーションの活性化に加え、企業らしさを感じられる空間づくりが求められていました。

横長で両側に窓がある区画の特性を生かし、自然光の通り道を優先してレイアウトを構成しています。また、天井高が低く築年数を重ねた建物に対して、白く塗装したルーバーを設置することで、高さ方向の開放感を確保しながら、躯体の状態を自然にカバーしています。既存建物の条件を把握し、その制約をデザインへ生かした事例です。

事例の詳細はこちら:デジタルリユース株式会社

5.2.株式会社ヴィス大阪オフィス

人員増加によるスペース不足と、リブランディング後の価値観を体現する新たな拠点の必要性を背景に、大阪・うめきたエリアへ移転した事例です。

L型の区画に対し、空間の中心へ円形の構造物を配置することで、分断されやすい二つのエリアを緩やかにつなげています。構造物の周囲には回遊動線を設け、社員同士の偶発的な出会いやコミュニケーションを促す計画としました。働く場所としての機能だけでなく、多様な体験や交流が生まれるラウンジのような空間を構築しています。区画の形状を踏まえながら、レイアウト、動線、造作、家具を一体的に計画した事例です。

事例の詳細はこちら:株式会社ヴィス大阪オフィス(2025年)

5.3.株式会社コムクラフト

新たな開発センターの竣工に伴って一部の組織が移転することを受け、本社の役割を見直したオフィス改装事例です。設立50周年という節目も重なり、今後の本社に必要な機能と働き方を整理し、次の成長へつながる環境づくりを進めました。

執務室や会議室がビル内に点在する既存構成を踏まえ、1フロア全体をラウンジ型の多目的スペースへ改装しています。ランチやミーティングなど、用途を限定せず利用できる場とすることで、社員が自然に集まり、交流できる拠点を実現しました。暗さが課題だったエントランスには間接照明を追加するなど、既存オフィスの問題を一つずつ解決しています。移転を伴わないオフィス改装でも、現状の設備や建物条件を確認し、工事範囲を整理することの重要性が分かる事例です。

事例の詳細はこちら:株式会社コムクラフト

まとめ

オフィス移転における工事区分とは、施工業者の選定者、発注者、費用負担者を整理するための区分です。一般的にはA工事・B工事・C工事に分けられますが、具体的な対象範囲はビルによって異なるため、工事区分表や賃貸借契約書、貸方基準書などを確認する必要があります。

A工事は、建物の共用部や基幹設備などを対象に、ビルオーナーが発注・負担する工事です。B工事はオーナー側の指定業者が施工し、費用はテナントが負担するのが一般的です。C工事は、専有部の内装や家具、LAN配線などを中心に、テナントが業者を選び、発注・負担します。

ただし、専有部の工事でも、空調、電気、防災、給排水など建物全体に関係する部分はB工事になることがあります。特にB工事は費用や工程を調整しにくいため、基本レイアウトの段階で対象範囲と概算費用を確認することが大切です。

設計、B工事、C工事、家具、ICT、引っ越しを一つの工程として管理し、建物条件を踏まえて計画することが、追加費用や工期遅延を防ぐポイントです。判断が難しい場合は、ビル管理会社やオフィス移転に詳しい設計会社へ早めに相談しましょう。


株式会社ヴィスは、『はたらく人々を幸せに。』というパーパスのもと、働く場を設計する「ワークプレイスデザイン」と、そこで生まれる体験を設計する「エクスペリエンスデザイン」という二つのアプローチを通して『ワークデザイン』を実現し、人と組織のエンゲージメントを高めながら、企業価値の持続的な向上に貢献します。
ワークデザイン、オフィス・ワークプレイスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。