オフィス移転の進め方完全ガイド|スケジュール・物件選定・業者比較・費用概要を解説

オフィス移転の進め方を初めての担当者向けに解説。全体スケジュールや物件選定、業者比較、費用の内訳、移転後の対応まで、失敗を防ぐためのポイントを事例とともに紹介します。

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オフィス移転は、単に新しい物件を探して荷物を運ぶだけの業務ではありません。移転の目的や予算を整理したうえで、現オフィスの解約、移転先の物件選定、レイアウト設計、内装工事、ITインフラの整備、引越し、社内外への周知など、複数の業務を並行して進める必要があります。通常業務を担当しながらプロジェクトを進行する総務担当者にとっては、「何から始めればよいのか」「どのくらいのスケジュールを見込むべきか」と不安を感じる場面も多いでしょう。

また、物件や業者を比較する際に価格だけで判断すると、必要な設備が整わなかったり、想定外の追加費用が発生したりする可能性があります。オフィス移転を成功させるには、企業が抱える課題と将来の働き方を明確にし、物件、空間、設備、運用を一体で検討することが大切です。

本記事では、初めて移転を担当する方にも分かりやすいように、オフィス移転の進め方と全体スケジュールを整理し、物件選定や業者比較のポイント、把握しておきたい費用概要を順を追って解説します。移転後の働きやすさや企業成長まで見据え、計画を進めるための全体像をつかんでいきましょう。

この記事のまとめ

結論

オフィス移転は、目的と条件を明確にし、業務開始日から逆算して物件選定・設計・工事・引越しを一体管理することが成功の鍵です。

3つの要点

  • 現オフィスの課題と将来の働き方を整理し、移転条件に優先順位を付ける
  • 工程表で担当者・期限・依存関係を可視化し、抜け漏れや遅延を防ぐ
  • 物件と業者は価格だけでなく、対応範囲・工事条件・運用コストまで比較する

この記事で解決できる悩み

  • オフィス移転の進め方や必要な準備が分からない
  • 物件・業者選定や費用管理で失敗したくない
  • 物件・業者・費用を比較する際の判断基準が分からない

1.オフィス移転を始める前に整理したい目的と条件

オフィス移転を検討するとき、すぐに物件情報を集め始めると、候補を評価する基準が曖昧になりがちです。まずは移転によって解決したい課題を整理し、必要な条件へ落とし込むことが重要です。目的、将来の働き方、社内体制、条件の優先順位を明確にすることで、その後の物件選定や業者比較を進めやすくなります。

1.1.オフィス移転は「場所を変えること」ではなく、経営課題を解決するプロジェクト

オフィス移転のきっかけは、社員数の増加によるスペース不足、複数拠点の統合、賃料の適正化、契約更新など、企業によって異なります。しかし、移転を住所や設備の変更だけで終わらせず、経営課題を解決する機会として捉えることで、新しいオフィスの役割が明確になります。

例えば、部門間の交流が少ない企業では、社員が自然に集まる共用スペースや動線の設計が必要です。採用に課題がある場合は、求職者に企業文化や働きやすさを伝えられるエントランス、会議室、執務環境が検討対象になります。移転の目的が異なれば、重視する立地、面積、レイアウト、設備、予算配分も変わります。

一方で、オフィス移転には費用や担当者の負担が生じ、立地の変更が社員の通勤に影響する可能性もあります。メリットだけで判断せず、自社にとっての効果と注意点を整理したい場合は、オフィス移転で期待できるメリットと注意すべきデメリットも参考にしてください。

また、採用力の向上を移転目的に含める場合は、見た目の新しさだけでなく、企業の価値観と実際の働き方が空間から伝わるかを考える必要があります。採用とワークプレイスの関係については、オフィス移転で採用は強くなるのかで詳しく紹介しています。

1.2.現オフィスの課題と将来の働き方を整理する

移転条件を決める前に、現オフィスで起きている問題を具体的に把握します。「狭い」「会議室が足りない」といった感覚的な意見だけでなく、社員数、出社率、座席や会議室の稼働状況、収納量、来客数、オンライン会議の頻度などを確認すると、必要な機能を判断しやすくなります。

現在の不満だけで物件を選ぶと、数年後の増員や働き方の変化に対応できない可能性があります。事業計画や採用計画を踏まえ、移転後に社員数がどの程度増えるのか、固定席を維持するのか、フリーアドレスやハイブリッドワークを取り入れるのかも整理しておきましょう。

社員アンケートや部門別のヒアリングも有効です。経営層、管理部門、営業、開発などでは、オフィスに求める機能が異なります。各部門の要望を集めながら、全社共通の課題と部門固有の課題を分けて整理することが、移転後の使いにくさや認識のずれを防ぎます。

1.3.プロジェクト体制と意思決定のルールを決める

オフィス移転では、総務だけでなく、経営層、情報システム、人事、経理、広報、各事業部など、多くの関係者が意思決定に関わります。プロジェクトの初期段階で責任者を決め、各部門が担当する業務と承認範囲を明確にしておくことが大切です。

例えば、総務は全体スケジュールや契約、情報システム部門は通信環境、人事は働き方や社員への周知、経理は予算管理を担当します。加えて、物件の決定、予算変更、レイアウト確定など、重要事項の最終決裁者も決めておくと、判断待ちによる遅延を防ぎやすくなります。

社内に移転経験者がいない場合や通常業務への影響を抑えたい場合は、専門会社の支援も選択肢になります。依頼できる範囲や会社ごとの得意分野を確認したい方は、オフィス移転コンサルへ依頼するメリットや失敗しない選び方をご覧ください。

1.4.移転条件に優先順位を付ける

移転条件を整理するときは、立地、面積、賃料、入居時期、設備、セキュリティ、通勤利便性、企業ブランディングなどをすべて同列に扱わないことが重要です。「必ず満たす条件」「できれば満たしたい条件」「状況に応じて調整できる条件」の3段階に分けると、物件や提案を比較しやすくなります。

例えば、移転期限と必要面積は必須条件、駅からの距離やビルの築年数は希望条件、内装の一部は予算に応じた調整条件とする考え方があります。ただし、どの条件を優先するかは企業によって異なります。経営課題との関係を確認しながら優先順位を決め、関係者間で共有しておきましょう。

判断基準がそろっていれば、魅力的な物件や低価格の提案が出てきたときも、その場の印象だけで決めず、移転目的に合っているかを冷静に評価できます。

2.オフィス移転の進め方と全体スケジュール

オフィス移転では、新旧オフィスに関する複数の業務が同時に動きます。移転日だけを先に決めるのではなく、新オフィスで業務を開始する日から逆算し、各工程の前後関係を踏まえてスケジュールを組むことが大切です。

準備期間は企業規模、物件の状況、工事範囲、社内の承認手続きなどによって異なります。余裕を持って計画を立て、遅延が後工程へ影響しやすい業務から優先的に進めましょう。

2.1.移転計画を立て、現オフィスの契約を確認する

最初に、移転目的、希望する業務開始日、予算の上限、必要な機能、プロジェクト体制を整理します。そのうえで確認したいのが、現オフィスの賃貸借契約です。解約予告期間、退去期限、原状回復の範囲、指定業者の有無、敷金や保証金の返還条件などを確認します。

解約予告期間を見落とすと、移転後も旧オフィスの賃料を支払う期間が長くなり、想定以上の二重賃料が発生する可能性があります。ただし、新オフィスの契約が固まる前に現オフィスの解約を通知すると、物件選定や工事が遅れた場合に業務拠点を確保できなくなるおそれもあります。解約通知は、移転先の確定状況と全体スケジュールを確認しながら慎重に判断しましょう。

移転の工程表には、タスク名だけでなく、担当者、期限、承認者、関係部署、先行して完了すべき業務を記載します。例えば、レイアウトが決まらなければ、什器の発注や電源・LAN配線の設計を確定できません。タスクの依存関係を可視化することで、どこに遅れが生じているのかを把握しやすくなります。

総務業務をWBSや工程表へ落とし込む具体的な方法は、オフィス移転チェックリスト完全ガイド|総務タスクと工程表の作り方で詳しく紹介しています。移転準備で何を、いつまでに、誰が行うのかを実務レベルで整理したい場合に役立ちます。

また、住所変更に伴う手続き、原状回復、費用なども含めて準備事項を確認したい方は、事務所の移転で失敗しないために|手続き・費用・原状復帰まで総務担当者が押さえるべきポイントもあわせてご覧ください。

2.2.移転先の物件選定と賃貸借契約を進める

物件選定では、立地、面積、賃料、共益費、入居可能時期といった基本条件だけでなく、実現したい働き方を収容できるかという視点が欠かせません。必要な座席数、会議室数、来客エリア、オンライン会議ブース、収納、休憩スペースなどを整理し、候補物件の中に配置できるかを確認します。

同じ面積の物件でも、柱や窓、共用部、エレベーターホール、設備スペースの位置によって、実際に利用できる範囲やレイアウトの自由度は異なります。そのため、面積の数字だけで判断せず、契約前に簡易レイアウトを作成し、必要な機能が収まるかを検証することが重要です。

電源容量、空調の方式と利用時間、通信回線の引き込み状況、天井高、床荷重、セキュリティ、搬入経路も確認します。内装工事に指定業者を利用する必要がある場合や、工事可能な曜日・時間帯が限られている場合は、費用や工期に影響します。賃料が抑えられていても、工事や設備に想定以上の費用がかかれば、総額では予算を超える可能性があります。

候補物件は共通の評価表を使って比較し、内覧時の印象だけで決めないようにしましょう。必須条件を満たしているか、将来の増員へ対応できるか、毎月の運用コストは適正かなど、移転目的に沿って評価することが大切です。

2.3.レイアウト・内装・インフラを一体で設計する

物件の契約後は、レイアウト、内装、家具、電源、LAN、電話、会議室設備、入退室管理などを具体化します。これらを別々に検討すると、デスクの近くに電源がない、会議室の通信環境が不安定になる、複合機の設置場所に必要な配線が届かないといった手戻りが生じやすくなります。

まずは、誰が、どこで、どのように働くのかを整理しましょう。集中作業、チームでの打ち合わせ、オンライン会議、来客対応、休憩など、活動ごとに必要な環境を定めます。そのうえで、各エリアの配置と動線を計画し、それに合わせて設備やインフラを設計します。

特にインターネット回線は、建物への引き込み状況や工事条件によって開通までに時間を要する場合があります。物件を契約してから検討を始めるのではなく、物件選定の段階から利用可能な回線や工事条件を確認しておくと安心です。また、LAN配線はレイアウトと同時に検討し、必要なポート数、Wi-Fiの利用範囲、ネットワーク機器の設置場所などを決めます。

回線、LAN、電話、サーバー、複合機、廃棄、セキュリティまで含めた実務の進め方は、オフィス移転でインフラを止めないための手順・チェックリストで確認できます。情報システム部門や専門業者と共有する確認項目を整理したいときに活用してください。

2.4.工事・引越し・社内外への周知を進める

設計と発注内容が確定したら、内装工事、家具の搬入、IT工事、引越し準備を進めます。各業者の作業日が重なると、搬入経路やエレベーターを同時に使用できないことがあります。ビル管理会社への工事申請や搬入申請を含め、誰がいつ作業するのかを一つの工程表で管理しましょう。

引越しに向けては、移設する家具や機器、廃棄する備品、社員が荷造りする範囲を明確にします。移転当日の責任者、搬出入の立会担当、緊急連絡先も事前に共有しておくと、予定外の事態へ対応しやすくなります。

社員に対しては、移転の目的、新住所、出社開始日、交通経路、荷造りの期限、新オフィスの利用ルールなどを段階的に伝えます。情報を一度に公開するのではなく、決定事項と検討中の事項を分け、適切なタイミングで更新することが混乱の防止につながります。

取引先や関係者には、新住所、電話番号、業務開始日などを正確に案内します。案内状、ハガキ、メール、Webサイトなどを組み合わせ、相手との関係性に応じて通知方法を選びましょう。文面、宛名、送付先、通知のタイミングを詳しく確認したい場合は、事務所移転のお知らせハガキ|挨拶・文面テンプレート・マナー・宛名・郵便の基礎知識を参考にしてください。

2.5.移転後の不具合対応と効果測定まで行う

オフィス移転は、荷物を運び終えた時点で完了するわけではありません。移転直後には、ネットワークにつながりにくい、収納が足りない、会議室の予約が取りづらい、音が気になるなど、計画段階では気づかなかった問題が表面化することがあります。

不具合や要望を受け付ける窓口を決め、緊急度と重要度に応じて対応しましょう。設備の不具合と運用ルールの問題を分けて整理すると、工事による改善が必要なのか、社内ルールの見直しで解決できるのかを判断しやすくなります。

移転から一定期間が経過したら、社員アンケートや利用状況の確認を行い、当初の目的を達成できているかを検証します。例えば、コミュニケーションの活性化を目的としていた場合は、共用スペースの利用状況や部門間交流の変化を確認します。出社率や採用力の向上が目的なら、それぞれに対応した指標を設定し、移転前後で比較することが大切です。

また、取引先などから移転祝いを受け取る場合に備え、受領可否、設置場所、管理担当、お礼の連絡方法も決めておくと安心です。花や贈答品の受け取りから返信、辞退の伝え方まで確認したい場合は、オフィス移転のお祝い対応ガイド|受け取る側のお礼メールと辞退の伝え方をご覧ください。

オフィス移転の全体スケジュール

各フェーズの期間は一律ではありませんが、次工程へ進むための条件を設けることで、判断が不十分なまま作業だけが進むことを防げます。

フェーズ主な検討事項主な関係者次工程へ進むための条件
計画・要件整理移転目的、予算、体制、希望時期、現契約経営層、総務、関係部署目的、優先条件、意思決定者が明確になっている。
物件選定立地、面積、設備、契約条件、簡易レイアウト総務、経営層、不動産会社候補物件を共通の基準で比較し、必要な機能が収まることを確認している。
設計・発注レイアウト、内装、家具、IT、見積もり総務、情報システム、設計・施工会社仕様、予算、工期、発注範囲が確定している。
工事・移転準備工事、搬入、引越し、社員説明、社外通知各部門、ビル管理会社、各専門業者業務開始に必要な設備と運用体制を確認している。
移転後不具合対応、手続き、費用精算、効果測定総務、各部門、支援会社移転目的に対する効果と改善課題を確認している。

3.物件・業者・費用を比較するときの判断ポイント

オフィス移転では、物件、業者、費用を個別に判断するのではなく、相互の影響を踏まえて比較することが重要です。賃料の低い物件でも工事費が高額になる場合があり、見積金額の安い業者でも対応範囲が狭ければ、別途発注によって総額が増える可能性があります。

比較条件をそろえ、初期費用から移転後の運用コストまで含めて評価しましょう。

3.1.物件選定は賃料以外の総合条件で比較する

物件を比較するときは、月額賃料と共益費だけでなく、保証金や敷金、礼金、仲介手数料、更新料などの契約条件も確認します。さらに、内装工事や設備工事に関する制約、空調の利用時間、電源容量、通信回線の引き込み状況、搬入経路、工事可能時間なども重要な判断材料です。

特に注意したいのが、図面上の面積と実際に利用できる面積の違いです。柱、設備スペース、窓、扉などの位置によっては、想定していた座席数や会議室数を確保できない場合があります。候補物件を絞り込む段階で簡易レイアウトを作成し、必要な機能が無理なく収まるかを確認しましょう。

また、入居後の働きやすさも評価します。社員や来客のアクセス、周辺施設、災害リスク、避難経路、セキュリティ、ビルの開館時間などを確認し、自社の勤務形態や事業特性に適しているかを判断します。現在の条件だけでなく、将来の人員計画や組織変更にも対応できる物件を選ぶことが大切です。

物件ごとの違いを客観的に判断するため、必須条件、希望条件、調整可能な条件を評価表にまとめ、同じ基準で点数化すると比較しやすくなります。

3.2.オフィス移転に関わる業者の種類と役割を理解する

オフィス移転には、不動産仲介会社、設計・デザイン会社、施工会社、家具会社、IT・通信会社、引越し会社など、複数の専門業者が関わります。不動産仲介会社は物件情報の提供や契約交渉、設計会社は働き方を反映したレイアウトやデザイン、施工会社は内装や設備の工事を担うのが一般的です。

家具会社はデスクやチェアなどの選定と納品、IT・通信会社は回線やLAN、電話、会議室設備などの構築、引越し会社は什器や荷物の搬出入を担当します。依頼先によって対応範囲や得意分野が異なるため、会社名や見積金額だけでなく、自社が必要とする支援を提供できるかを確認しましょう。

発注方法には、業務ごとに専門業者へ個別発注する方法と、移転全体を一括して依頼する方法があります。個別発注は各分野で選択肢を広げやすい一方、発注者側に全体調整の負担が生じます。一括発注は窓口をまとめやすい反面、契約前に対応範囲や協力会社の体制を明確にしておく必要があります。

どちらが適しているかは、移転規模、社内の人員、プロジェクト経験、品質やコストに対する考え方によって異なります。自社が主体的に管理する範囲と外部へ任せる範囲を先に決めてから、依頼先を選びましょう。

3.3.業者比較では見積金額だけでなく条件をそろえる

複数の業者から相見積もりを取る場合は、依頼内容と前提条件を統一します。業者ごとにレイアウト、材料、家具の数量、工事範囲が異なる状態では、金額の妥当性を正確に比較できません。

見積依頼時には、対象範囲、必要な仕様、数量、希望納期、成果物、既存什器の転用範囲などを整理して提示しましょう。見積書を受け取った後は、項目ごとの単価と数量に加え、養生、搬入、廃棄、現場管理、申請、夜間・休日作業などが含まれているかを確認します。

「一式」とまとめられた項目が多い場合は、具体的な作業内容を確認してください。契約時点で含まれていない業務が多いと、工事開始後に追加費用が発生しやすくなります。どのような場合に金額が変わるのか、変更時の承認方法はどうするのかも事前に決めておきましょう。

価格以外では、類似規模の実績、担当者の対応力、工程管理の方法、関係業者との調整力、不具合発生時の対応、移転後のサポートを比較します。提案内容が移転目的と結び付いているか、自社の要望をそのまま受け入れるだけでなく、専門的な観点から改善案を提示しているかも重要な評価ポイントです。

3.4.オフィス移転の費用概要を旧オフィスと新オフィスに分けて整理する

オフィス移転の費用は、新オフィスにかかる費用だけでなく、旧オフィスの退去費用や移転期間中の間接費用まで含めて整理します。

新オフィスでは、保証金や敷金、礼金、仲介手数料などの契約費用に加え、内装工事、設備工事、オフィス家具、ITインフラ、引越しなどの費用が発生します。消防設備や避難設備の工事が必要になる場合もあるため、物件の状態と工事区分を契約前に確認しましょう。

旧オフィスでは、原状回復工事、不要什器や機器の廃棄、解約条件によっては違約金が発生します。原状回復の範囲は契約内容によって異なり、間仕切りや床材、配線、設備の撤去などが対象になる場合があります。契約書と入居時の図面や写真を確認し、管理会社と工事範囲を早めにすり合わせることが重要です。

さらに、新旧オフィスの契約期間が重なることによる二重賃料、社員の移動や残業に伴う人件費、名刺や封筒の更新、住所変更の手続きなども考慮します。費用を「新オフィス」「旧オフィス」「移転実務・間接費」の3区分に分け、予算管理表へ記載すると見落としを防ぎやすくなります。

退去から入居までの流れや、二重賃料、原状回復工事を含む費用項目を詳しく確認したい方は、オフィス退去・移転の流れ|2つの退去費用と原状回復工事の注意点も参考にしてください。

3.5.初期費用だけでなく移転後の運用コストも確認する

移転費用を比較するときは、契約や工事にかかる初期費用だけでなく、入居後に継続して発生する費用も確認します。主な運用コストには、賃料、共益費、水道光熱費、通信費、清掃費、警備費、設備の保守費などがあります。

例えば、賃料が安い物件でも、個別空調の利用料や時間外空調費、駐車場代、廃棄物処理費などを加えると、毎月の負担が大きくなる可能性があります。反対に、初期費用が高くても、省エネルギー設備や効率的なレイアウトによって、長期的な運用コストを抑えられる場合があります。

また、将来のレイアウト変更や増員を想定し、追加工事のしやすさも確認しておきましょう。電源やLANの増設が難しい物件では、組織変更のたびに大規模な工事が必要になる可能性があります。契約期間を基準に数年間の総費用を試算し、初期費用と運用費用の合計で判断することが重要です。

オフィス移転業者を比較する際の確認項目

業者比較では、見積金額だけを一覧にするのではなく、依頼できる範囲や品質、進行体制まで含めて確認します。次の項目を共通の比較表にまとめると、各社の違いを客観的に判断しやすくなります。

比較項目確認する内容注意点
対応範囲物件、設計、施工、家具、IT、引越し、移転後対応見積もりに含まれない業務と自社側の担当範囲を明確にする。
見積もり項目、数量、単価、諸経費、追加費用の条件「一式」の内容を確認し、各社の前提条件をそろえる。
実績類似する規模、業種、移転目的の支援経験写真だけでなく、課題への対応内容や担当範囲を確認する。
担当体制責任者、窓口、専門担当者、協力会社契約後も同じ担当者が対応するかを確認する。
工程管理工程表、進捗共有、課題管理、変更管理遅延や仕様変更が発生した場合の報告・承認方法を決める。
移転後対応不具合修正、追加工事、保証、効果検証対応期間、費用、連絡窓口を契約前に確認する。

比較表を作成した後は、価格、品質、対応力、社内負担のバランスから総合的に評価します。最安値の提案を選ぶことではなく、自社の移転目的を理解し、計画から移転後まで安定して伴走できる業者を選ぶことが、手戻りや追加費用の抑制につながります。

4.ヴィスが支援したオフィス移転事例

オフィス移転では、企業の規模や成長段階、移転の目的によって、求められる空間や進め方が異なります。ここでは、大規模な本社移転による採用・組織連携の強化、働き方の見直しと企業理念の空間化、増員に伴う拡大移転という3つの観点から、ヴィスが支援した事例を紹介します。

Sky株式会社

新卒・中途採用の強化と本社機能の拡大を背景に、約20年間入居したオフィスビルから新築ビルへ本社を移転した事例です。同社には、企業の魅力をより効果的に発信して優秀な人材を迎え入れるとともに、拡大する組織の連携を促進できる環境を整えたいという課題がありました。

新オフィスのコンセプトには、『one sky -「好き」の想いが社会を変える-』を掲げています。これまで培ってきた企業文化を継承しながら、新たな挑戦へ積極的に取り組み、従来以上にチームが一丸となって仕事に向き合えるワークプレイスを目指しました。

組織間のシームレスな連携を促すため、3フロアを縦断するスカイブルーの内階段を設置し、その周辺に自然な交流が生まれるスペースを配置しています。窓際には、会議室を使わずにカジュアルな打ち合わせができる対話ゾーンを設け、フロアを越えた一体感と意思決定のスピードを高められる環境を整えました。

また、採用強化を見据え、エントランスにはR曲面ビジョンを採用しています。ビジョンと窓外の景色を動線でつなぎ、白やモルタルを基調とした空間に多階調の青を重ねることで、企業の透明感や未来への展望、ブランドイメージを来訪者へ伝えられるデザインとしています。

事例の詳細はこちら:Sky株式会社

株式会社WDI

従来の個人を中心とした働き方を見直し、部署間のコミュニケーションと協力体制を強化することを目的としたオフィス移転事例です。同社には、社員が快適に働ける環境を整えながら、組織としての一体感を高め、新たな価値を生み出せるワークプレイスを構築したいという課題がありました。

オフィスデザインでは、同社の企業理念である「ダイニングカルチャーで世界をつなぐ」というメッセージを軸にしています。食事そのものだけでなく、食の場で生まれる会話や空気感、記憶に残る体験をオフィスへ落とし込み、働く場所全体で企業理念を体感できる空間を目指しました。

エントランスからブランドの歴史を紹介するヒストリーウォールを経て、オフィスの中心となるキッチン・ラウンジへ自然に移動できる動線を設計しています。その先には、日常業務と社内イベントをつなぐ「Stage」を配置し、企業の歩みと未来への発信が一つの空間で共存するレイアウトとしました。

執務エリアには、部署の特性に応じた「Base Work」エリアだけでなく、窓際のABWエリアやオンラインブースも設けています。業務内容や集中度に応じて社員自身が働く場所を選べるため、組織の一体感を高めながら、多様な働き方にも対応できるオフィスとなっています。

事例の詳細はこちら:株式会社WDI

FunTre株式会社

増員に伴い、事業規模に適したオフィス環境を整えるために拡大移転した事例です。同社には、20代後半から30代前半を中心とした採用効率の向上と、社内メンバーのコミュニケーション活性化を図り、企業の成長を支えられる働く環境へ刷新したいという課題がありました。

新オフィスでは、『Future Groove 〜未来への高揚感と、個性が共鳴するリズム〜』をコンセプトに設定しました。社員一人ひとりの主体性や個性が企業の成長と重なり合う状態を、不規則なパネルレイアウト、遊び心のある壁紙、動きのある床のデザインによって表現しています。さらに、個々の要素をブランドカラーの青でつなぎ、組織全体が未来へ進む力強さを演出しました。

通路は単なる移動経路にせず、人が滞在して交流できる場所として設計しています。通路沿いに設けたカウンターやスツールによって、歩く社員と座っている社員の視線が自然に交わり、偶発的な会話や情報交換が生まれやすい環境を整えました。

また、変形デスクや濃淡をランダムに組み合わせたタイルカーペットを採用し、社員が自ら働く場所を選び、柔軟に動けるワークスタイルを支援しています。自然素材の温かみとブルーの先進性を組み合わせることで、採用候補者や社員が、この場所で働く自分の未来をイメージできる空間に仕上げました。

事例の詳細はこちら:FunTre株式会社

5.まとめ

オフィス移転を成功させるには、移転そのものを目的にせず、現オフィスの課題や将来の働き方を踏まえて、移転後に実現したい状態を明確にすることが重要です。社員数の増加への対応、コミュニケーションの活性化、採用力の強化、企業ブランディング、コストの適正化など、目的によって選ぶべき物件やレイアウト、必要な設備は異なります。

移転計画を立てる際は、現オフィスの解約や原状回復、新オフィスの物件選定、レイアウト・内装設計、ITインフラの整備、引越し、社内外への周知といったタスクを整理しましょう。新オフィスでの業務開始日から逆算し、担当者、期限、承認者、タスク同士の依存関係を工程表で管理することが、抜け漏れやスケジュール遅延の防止につながります。

物件や業者を比較するときは、賃料や見積金額だけで判断しないことも大切です。物件の工事条件、設備、レイアウトの自由度、入居後の運用コストまで含めて評価します。業者選定では、対応範囲、類似実績、担当体制、工程管理、追加費用の条件、移転後のサポートを同一条件で比較しましょう。

また、移転後に社員アンケートや利用状況の確認を行い、当初の目的を達成できているかを検証する必要があります。設備の不具合や働きにくさが見つかった場合は、工事と運用ルールの両面から改善を重ねることで、新しいオフィスを組織に定着させられます。

オフィス移転は、企業の働き方や組織のあり方を見直す大きな機会です。目的の整理から物件選定、設計・施工、移転後の運用までを一貫した計画として捉え、自社の成長と社員の働きやすさにつながるワークプレイスを実現しましょう。


株式会社ヴィスは、『はたらく人々を幸せに。』というパーパスのもと、働く場を設計する「ワークプレイスデザイン」と、そこで生まれる体験を設計する「エクスペリエンスデザイン」という二つのアプローチを通して『ワークデザイン』を実現し、人と組織のエンゲージメントを高めながら、企業価値の持続的な向上に貢献します。
ワークデザイン、オフィス・ワークプレイスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。