オフィスリニューアルとは?改装・移転の違い・費用相場・進め方を解説

オフィスリニューアルを成功させるために、改装と移転の違いや選び方、費用の内訳、進め方、業者比較、注意点を、具体的なオフィス事例とあわせてわかりやすく解説します。

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働き方の多様化や出社率の変化に合わせて、オフィス環境を見直したいと考える企業は多いでしょう。オフィスリニューアルは、内装や設備を新しくするだけでなく、働き方や組織の課題に合わせて、空間や運用方法などを総合的に見直す取り組みです。本記事では、改装・移転との違いや選び方、費用相場、具体的な進め方、注意点について解説します。

この記事のまとめ

結論

オフィスリニューアルを成功させるには、現状と将来の働き方を整理し、改装・移転を比較したうえで、設計・工事・運用を一体的に計画することが重要です。

3つの要点

  • 改装は現在の拠点を活用し、移転は立地・面積・設備を根本から見直す方法です。
  • 費用は内装工事だけでなく、設計、家具、ICT、引っ越し、原状回復まで含めて比較します。
  • 利用開始後も効果検証と運用改善を続けることが重要です。

この記事で解決できる悩み

  • 自社に改装と移転のどちらが適しているかを判断し、費用の内訳、進め方、業者選び、失敗を防ぐ注意点を整理できます。

1.オフィスリニューアルとは?

オフィスリニューアルとは、企業が抱える課題や働き方の変化に合わせて、オフィスの空間・設備・ICT・運用方法などを見直し、より働きやすい環境へ刷新する取り組みです。壁や床を新しくするといった内装工事だけを指すものではなく、業務効率やコミュニケーション、従業員満足度、企業ブランディングなどの向上を目指して行われます。

1.1.オフィスリニューアルの意味

オフィスリニューアルの対象には、壁・床・天井などの内装、レイアウト、家具、照明、空調、通信環境、セキュリティ設備などが含まれます。さらに、フリーアドレスやABWといった働き方の導入、書類や私物の管理方法、会議室や共有スペースの利用ルールなど、完成後の運用も見直しの対象です。

そのため、オフィスリニューアルを単なる老朽化への対応や模様替えとして捉えるのではなく、企業が抱える課題を解決するプロジェクトとして位置づけることが大切です。例えば、部署間の交流を増やす、出社人数に合った座席数に見直す、集中とコミュニケーションを両立できる場所を整えるなど、実現したい働き方を明確にしたうえで計画します。

なお、既存のオフィスを企業の働き方やカルチャーに合わせて再構築する考え方については、以下の記事でも詳しく紹介しています。

参考記事:オフィスリノベーションで働き方を変える:目的・進め方・事例から学ぶ空間づくりのヒント

1.2.オフィスリニューアルを検討するタイミング

オフィスリニューアルは、内装や設備の老朽化が目立ち始めたときだけでなく、現在の働き方とオフィス環境にずれが生じたときにも検討が必要です。具体的には、次のような状況が挙げられます。

こうした課題を放置すると、業務効率や従業員満足度の低下につながる可能性があります。現在の利用状況だけでなく、将来の人員計画や働き方も踏まえ、オフィスを見直す必要性を判断しましょう。

2.オフィスリニューアルにおける改装・移転の違い

オフィスリニューアルを実現する代表的な方法には、現在の拠点を活用する「改装」と、新しい拠点へ移る「移転」があります。どちらもオフィス環境を刷新する取り組みですが、対応できる課題や必要な費用、準備の範囲が異なります。それぞれの特徴を理解し、自社の状況に適した方法を選ぶことが重要です。

2.1現在の拠点を活用する「改装」

改装とは、現在の拠点を継続して利用しながら、内装やレイアウト、設備、家具などを変更する方法です。壁紙や床材の更新といった部分的な工事から、執務エリアや会議室を含めた全面的な再構築まで、目的に応じて実施範囲を設定できます。

現在の立地や通勤環境を維持できるほか、物件選定や引っ越しが不要なため、現拠点に大きな問題がなければ有力な選択肢となります。一方で、床面積や柱、窓、空調設備など、既存物件の条件によって設計が制限される場合があります。また、業務を継続しながら工事を行う場合は、仮設の執務スペースを確保したり、施工範囲を分けたりする計画も必要です。

改装によって得られる効果や具体的な進め方を詳しく確認したい方は、以下の記事も参考にしてください。

参考記事:オフィス改装のメリット|流れと注意点について解説

2.2.新しい拠点へ移る「移転」

移転とは、現在のオフィスから別の物件へ拠点を移し、新しい環境を構築する方法です。立地や面積、ビル設備、フロア形状などを物件選定の段階から見直せるため、現拠点では解決が難しい課題にも対応しやすくなります。

例えば、増員によって床面積が不足している場合や、複数拠点を集約したい場合、希望する設備を現在の建物に導入できない場合などは、移転が適している可能性があります。ただし、移転先の設計・工事に加え、物件契約、引っ越し、住所変更に伴う各種届出、旧オフィスの原状回復なども必要です。新旧オフィスの準備を並行して進めるため、改装よりも検討範囲が広くなる傾向があります。

移転に必要なスケジュールや物件選定、業者比較、費用の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

参考記事:オフィス移転の進め方完全ガイド|スケジュール・物件選定・業者比較・費用概要を解説

2.3.改装と移転の比較

改装と移転の主な違いは、以下のとおりです。

比較項目改装移転
拠点現在の拠点を継続利用する新しい拠点へ移る
立地原則として変わらない目的に応じて選び直せる
面積現在の床面積が前提となる人員計画に合わせて選べる
設計の自由度既存の構造や設備の影響を受ける物件選定から条件を検討できる
主な準備工事区分の確認、仮設計画、段階施工など物件契約、引っ越し、各種届出、原状回復など
業務への影響工事中の執務場所を確保する必要がある移転前後の業務切り替えが必要となる
適しているケース現在の立地や面積に大きな問題がない場合立地、面積、設備などに根本的な課題がある場合

2.4.改装と移転のどちらを選ぶべきか

改装と移転を選ぶ際は、現在の不満だけでなく、立地、床面積、設備、将来の人員計画、契約更新の時期などを総合的に確認します。現拠点の条件を活かしながら課題を解決できる場合は改装が適していますが、スペース不足や設備上の制約が大きい場合は、移転も含めて検討する必要があります。

また、「改装の方が安く、移転の方が高い」と一律に判断することはできません。改装では工事中の仮設オフィスや段階施工の費用が発生することがあり、移転では物件契約、引っ越し、原状回復、二重賃料などが必要です。それぞれにかかる費用と、リニューアル後に得られる効果を整理し、総合的に比較しましょう。

3.オフィスリニューアル・改装の費用相場と内訳

オフィスリニューアルにかかる費用は、オフィスの面積だけで決まるものではありません。改装と移転のどちらを選ぶか、部分的な工事か全面的な工事か、設備や家具をどこまで更新するかなど、さまざまな条件によって変動します。予算を検討する際は、内装工事だけでなく、設計や設備、ICT、移設などを含めた総額を把握することが重要です。

3.1.費用相場は工事範囲や物件条件によって異なる

オフィスリニューアルの費用は、工事範囲、物件の状態、使用する素材、設備の変更内容などによって大きく異なります。床や壁の張り替えを中心とする部分改装と、間仕切りや空調、電気設備まで見直す全面改装では、必要な費用や工期に差が生じます。

また、既存の家具や設備を再利用できるか、新たに購入するかによっても予算は変わります。賃貸オフィスでは、工事区分により施工業者や費用負担者が決められている場合もあるため、坪単価だけで判断せず、見積もりの前提条件と対象範囲を確認しましょう。

3.2.オフィスリニューアルに必要な費用の内訳

主な費用項目と内容は、以下のとおりです。

費用項目主な内容
調査・企画費現状調査、従業員アンケート、課題分析、ワークショップなど
設計・デザイン費コンセプト策定、レイアウト、内装・設備設計など
プロジェクト管理費予算、工程、品質、関係会社の管理など
内装工事費壁、床、天井、間仕切り、塗装、造作工事など
設備工事費電気、照明、空調、換気、防災設備など
ICT・通信費LAN、Wi-Fi、電話、Web会議設備など
セキュリティ費入退室管理、防犯カメラ、セキュリティ区画など
家具・什器費デスク、チェア、収納、会議用家具など
移設・廃棄費既存家具や書類、機器の移動、不要品の処分など
引っ越し費荷物、什器、機器などの移送費用
原状回復費移転時に旧オフィスを契約条件に沿って戻す費用
予備費追加工事や仕様変更など、想定外の支出への備え

移転の場合は、上記に加えて新しい物件の契約費用や、新旧オフィスの賃貸借期間が重なることで発生する二重賃料も考慮します。

3.3.見積もりを比較するときのポイント

見積もりを比較する際は、総額だけでなく、含まれる業務や工事の範囲を確認します。特に、調査・設計・プロジェクト管理費の有無、家具やICT、引っ越し費用の扱い、追加費用が発生する条件などは、依頼先によって異なるため注意が必要です。

また、A工事・B工事・C工事の区分や既存設備の再利用範囲、完成後の運用支援についても確認しましょう。複数の見積もりで条件が異なる場合は、同じ範囲にそろえて比較することで、価格の妥当性を判断しやすくなります。費用相場や工事内容別の目安、コストを抑える方法を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参考記事:オフィス改装費用の相場と内訳を徹底解説|リフォーム・工事のコストを抑えるポイントも紹介

3.4.工事と移転・引越を別々に計画してしまう

工事と引っ越しを別々に計画すると、家具やICT機器の搬入時期が合わず、スケジュールの遅延や追加費用につながる可能性があります。移転では、新オフィスの工事や通信環境の整備、家具の搬入、旧オフィスの原状回復など、複数の作業を並行して進めます。

内装工事と引っ越しを別々に計画すると、家具やICT機器の搬入時期が合わず、工程の遅延や追加費用が発生する可能性があります。特に移転では、新オフィスの工事、通信環境の整備、家具の搬入、旧オフィスの原状回復などを並行して進めなければなりません。

工事と引っ越しのスケジュールを一つの工程表にまとめ、各作業の担当者や前後関係を整理しましょう。設計・施工会社だけでなく、家具、ICT、引っ越しなどの関係会社とも早い段階から情報を共有し、全体を連携させて進めることが重要です。

4.オフィスリニューアルの進め方と期間の目安

オフィスリニューアルでは、内装やレイアウトを先に決めるのではなく、現状の課題と実施目的を整理したうえで、体制構築、設計、工事、運用改善へと段階的に進めることが重要です。改装と移転では必要な作業が一部異なりますが、基本的な流れは共通しています。

一般的な進め方は以下のとおりです。

4.1.現状を調査して目的を決める

最初に、現在のオフィスがどのように利用されているかを調査し、解決すべき課題を明らかにします。座席や会議室の稼働状況、出社率、収納量、Web会議の頻度、従業員の移動や交流の状況などを確認しましょう。従業員アンケートや部門別のヒアリングを実施すると、数値だけでは把握しにくい不満や要望も可視化できます。

調査結果をもとに、「部門間のコミュニケーションを増やす」「出社人数に適した座席数にする」「集中しやすい場所を確保する」など、リニューアルによって実現したい状態を具体化します。目的が曖昧なまま進めると、デザインや設備を判断する基準が定まらず、完成後に期待した効果が得られない可能性があります。

また、現在の課題だけでなく、将来の人員計画や事業方針、今後取り入れたい働き方まで見据えることも大切です。目的ごとに優先順位を付け、経営層と従業員の双方が納得できる方針を整理しましょう。

4.2.プロジェクト体制を整えて業者を選ぶ

目的が決まったら、オフィスリニューアルを推進する社内体制を整えます。総務部門だけに任せるのではなく、経営層、人事、情報システム、経理、広報、各事業部門などから必要なメンバーを選び、部門横断型のプロジェクトチームをつくると円滑に進めやすくなります。

プロジェクト責任者や各領域の担当者に加え、予算やレイアウトなどの重要事項を最終的に判断する決裁者も明確にします。「誰が何を決めるのか」「どの段階で承認を得るのか」を事前に定めておけば、確認待ちによるスケジュールの遅延や認識のずれを防ぎやすくなります。

あわせて、オフィスリニューアルを支援する業者を選定します。企画、調査、設計、施工、家具、ICT、引っ越しなど、会社によって対応できる範囲は異なります。改装の場合はビル管理会社や指定業者との調整、移転の場合は物件選定や旧オフィスの原状回復まで対応できるかを確認しましょう。

移転プロジェクトでは、複数の業務を同時に進める必要があります。担当者や期限、タスク同士の依存関係を整理しながら進行しましょう。

4.3.コンセプトと設計要件を固める

次に、現状分析と目的をもとに、プロジェクトの判断軸となるオフィスコンセプトを策定します。コンセプトは単なるデザインテーマではなく、リニューアル後のオフィスでどのような働き方や体験を実現するのかを示すものです。

例えば、部門間の交流を増やすことが目的であれば、人が自然に立ち寄る共有スペースや、短時間の相談に利用できる場所を計画します。集中環境の改善が目的であれば、個室ブースや静かな執務エリアを設けるなど、目的と空間の機能を結び付ける必要があります。

コンセプトを決めたら、座席数、会議室数、収納量、Web会議スペース、来客エリア、セキュリティ区画、空調、照明、ICTなどの設計要件を整理します。各部門から集めた要望をすべて盛り込むのではなく、目的や利用状況に照らして必要性を判断し、優先順位を付けましょう。

レイアウトや内装デザインを検討する段階では、日常業務の動線や音、視線にも配慮します。また、フリーアドレスなどの新しい働き方を導入する場合は、空間だけでなく、座席の利用方法や私物の管理、予約のルールも並行して検討することが大切です。

4.4.工事・移転と運用開始の準備を進める

設計が確定したら、内装・設備工事、家具の手配、ICT・通信環境の整備、セキュリティ設定、移設・廃棄などを進めます。複数の業者や社内部門が関わるため、各作業の担当者、期限、前後関係を一つの工程表にまとめて管理しましょう。

改装の場合は、工事中の執務場所をどのように確保するかを検討します。工事範囲を分けて段階的に施工する、テレワークを活用する、一時的に仮設オフィスを利用するなど、通常業務への影響を抑える計画が必要です。工事によって騒音や利用制限が発生する場合は、従業員への周知も事前に行います。

移転の場合は、新オフィスの工事や家具の搬入に加え、引っ越し、旧オフィスの原状回復、通信回線の開通、住所変更、行政機関への届出などを並行して進めます。特に通信回線やネットワーク設備は、手配から開通まで時間を要する場合があるため、早い段階で着手してください。

また、利用開始に先立ち、従業員へリニューアルの目的、新しいレイアウト、設備の使用方法、座席や会議室の運用ルールを説明します。完成した空間の使い方だけでなく、「なぜオフィスを変えるのか」を共有することで、新しい働き方への理解と定着を促しやすくなります。

4.5.利用開始後に効果を検証する

オフィスリニューアルは、工事や引っ越しが完了すれば終わりではありません。利用を開始した後は、当初設定した目的が達成されているかを確認し、必要に応じて改善を続けます。

従業員アンケートやヒアリングを実施するほか、座席・会議室の稼働状況、出社率、スペースごとの利用頻度などを確認しましょう。リニューアル前と同じ指標で調査すると、環境や働き方がどのように変化したかを比較しやすくなります。

検証の結果、特定の席や会議室に利用が集中している場合は、家具の配置や予約ルールを見直します。利用されていないスペースがあれば、用途や設備が従業員のニーズに合っているかを確認してください。運用上の課題は、ルールの周知や一部のレイアウト変更によって改善できる場合もあります。

利用開始から3~6カ月程度を一つの目安として効果を検証し、その後も働き方や組織の変化に応じて改善を続けることが、オフィスリニューアルの効果を持続させるポイントです。

参考記事:オフィスと住宅では進め方が違う?リフォーム・改装の違いと失敗しない手順を解説

5.オフィス改装で押さえるべき注意点

オフィスリニューアルの方法として改装を選ぶ場合は、既存物件の構造や設備、工事中の業務への影響を考慮する必要があります。工事内容だけでなく、ビル管理会社との調整や従業員への周知、完成後の運用まで見据えて計画しましょう。

5.1. 改装の目的と優先順位を明確にする

改装を始める前に、現在のオフィスが抱える課題と、改装によって実現したい状態を明確にします。「古くなったから新しくする」といった曖昧な目的では、デザインや設備を選ぶ基準が定まらず、予算を有効に配分できない可能性があります。

例えば、会議室不足の解消、部門間の交流促進、出社人数に合わせた座席数の適正化など、具体的な目的を設定しましょう。複数の課題がある場合は優先順位を付け、限られた面積と予算のなかで、どの課題を重点的に解決するかを決めることが重要です。

5.2. 工事区分とビル側のルールを確認する

賃貸オフィスでは、工事を自由に進められるとは限りません。ビルごとに工事区分や施工ルールが定められており、工事内容によって発注者、施工業者、費用負担者が異なります。

特に空調、電気、防災、共用部に関わる工事は、ビルオーナーや管理会社が指定する業者への発注が必要になる場合があります。設計を固めてから実現できないことが判明すると、仕様変更や追加費用、スケジュールの遅延につながりかねません。計画の初期段階で、工事可能な範囲、指定業者の有無、作業可能な曜日や時間、申請期限などを確認しましょう。

5.3. 工事中の業務継続方法を決める

現在のオフィスを使いながら改装する場合は、工事中の執務場所と業務継続の方法を事前に決める必要があります。工事範囲を複数に分けて段階的に施工する方法や、テレワーク、一時的な仮設オフィスを活用する方法などが考えられます。

段階施工では、工事のたびに家具や荷物を移動する必要があり、通常業務に影響する可能性があります。また、騒音や振動、粉じん、通行制限なども発生するため、工事エリアと執務エリアを適切に区分しなければなりません。業務への影響と仮設対応にかかる費用を比較し、自社に適した施工計画を立てましょう。

5.4. 設備やICTを内装と同時に計画する

オフィス改装では、レイアウトや内装デザインだけでなく、電源、LAN、Wi-Fi、電話、空調、照明、防災設備、セキュリティなども一体的に検討します。家具の配置や利用人数が確定しないまま設備計画を進めると、完成後にコンセントが不足したり、通信環境が不安定になったりする可能性があります。

Web会議の増加や使用するデバイスの変化も踏まえ、必要な電源容量や通信環境を整理してください。入退室管理や機密情報を扱う区画についても、空間設計と運用ルールの両面から検討することが大切です。

5.5. 従業員への情報共有と運用準備を行う

改装によって座席や収納、会議室の利用方法が変わる場合は、従業員への事前説明が欠かせません。完成後のレイアウトだけでなく、改装の目的や新しいオフィスで実現したい働き方も共有しましょう。

特にフリーアドレスやABWを導入する場合は、座席の選び方、私物や書類の保管方法、会議室の予約、集中ブースの利用時間などのルールを整える必要があります。空間だけを新しくしても、利用方法が浸透しなければ期待した効果は得られません。利用開始後も従業員の声や利用状況を確認し、必要に応じてルールや家具配置を改善します。

オフィスと住宅では、関係者の数や設備、工事区分、完成後の運用など、改装の進め方が大きく異なります。オフィス特有の工事条件を確認し、計画的に進めることが大切です。

6.オフィスリニューアルを依頼できる業者の比較

オフィスリニューアルには、課題の整理やコンセプト策定、設計、内装工事、設備工事、家具、ICT、引っ越しなど、さまざまな業務が発生します。依頼できる業者の種類や対応範囲は会社によって異なるため、自社が必要とする支援内容を明確にしたうえで選ぶことが重要です。

6.1. 依頼できる業者の種類

オフィスリニューアルを依頼できる主な業者は、以下のとおりです。

業者の種類主な対応範囲適しているケース
オフィスデザイン会社課題整理、コンセプト策定、レイアウト、内装設計、施工管理など働き方や組織課題から見直したい場合
内装施工会社内装・設備工事、現場管理など工事内容や仕様が明確に決まっている場合
設計事務所建築・内装設計、デザイン監修など設計品質や独自性の高いデザインを重視する場合
オフィス家具会社家具・什器の選定、レイアウト提案など家具の更新や部分的なレイアウト変更を行う場合
ワンストップ型支援会社調査、企画、設計、施工、家具、ICT、移転など窓口を一本化し、全体を一体的に進めたい場合

例えば、壁や床の更新など、実施する工事内容が明確であれば、内装施工会社へ直接依頼する方法があります。一方、オフィスの課題が整理できていない場合や、働き方そのものを見直したい場合は、現状調査やコンセプト策定から対応できる会社が適しています。

また、移転を伴う場合は、物件選定、新オフィスの設計・施工、引っ越し、旧オフィスの原状回復など、改装よりも関係する業務が増えます。各業者の役割と、自社で調整する範囲を事前に整理しておきましょう。

6.2. 業者比較で確認したいポイント

業者を比較する際は、見積金額だけでなく、対応範囲や実績、プロジェクトの管理体制まで確認する必要があります。主な確認項目は、以下のとおりです。

  • 自社と近い規模や課題のプロジェクト実績があるか
  • 課題調査や従業員サーベイから依頼できるか
  • コンセプト策定から設計・施工まで対応できるか
  • 改装と移転のどちらにも対応できるか
  • 家具、ICT、セキュリティ、引っ越しなどの対応範囲はどこまでか
  • ビル管理会社や指定業者との調整を任せられるか
  • 見積もりに含まれる業務と追加費用の条件が明確か
  • 完成後の効果検証や運用改善まで支援を受けられるか

過去の事例を確認するときは、写真やデザインだけでなく、企業が抱えていた課題に対して、どのような調査や提案を行ったのかも確認しましょう。自社の目的や課題を理解したうえで、空間・設備・運用を一体的に提案できるかが重要です。また、担当者との意思疎通のしやすさや、提案内容の根拠、スケジュール・予算管理の方法も確認し、プロジェクトを安心して任せられる会社を選びましょう。

オフィス改装に関わる業者の役割や比較方法、発注までの実務を詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

参考記事:総務が知っておきたいオフィス改装の基礎知識 ― 業者比較から発注フローまで、失敗しないための実務ガイド ―

6.3. 一括発注と分離発注の違い

オフィスリニューアルの発注方法には、企画・設計・施工などを一つの会社へまとめて依頼する「一括発注」と、業務ごとに異なる会社へ依頼する「分離発注」があります。それぞれにメリットと注意点があるため、社内の体制やプロジェクトの規模に合わせて選択します。

一括発注は、相談窓口を一本化できるため、設計、工事、家具、ICTなどの情報を共有しやすく、工程や品質を管理しやすい点がメリットです。社内にオフィスリニューアルの経験者が少ない場合や、通常業務と並行してプロジェクトを進める場合にも適しています。ただし、見積もりの内訳や各業務の責任範囲が分かりにくくならないよう、契約前に確認することが必要です。

一方、分離発注は、設計、施工、家具、ICT、引っ越しなどを個別に比較し、それぞれの分野に適した業者を選べます。費用や仕様を調整しやすい反面、業者間の連絡や工程調整を発注者側で担う必要があり、社内担当者の負担が増える可能性があります。

どちらの方法を選ぶ場合も、価格だけで判断せず、自社で対応できる範囲と外部へ任せたい範囲を整理することが大切です。プロジェクト全体を管理する人材や時間が限られている場合は、調査から設計・施工、完成後の運用支援まで一貫して相談できる会社を選ぶと、認識のずれや作業の抜け漏れを防ぎやすくなります。

7. オフィスリニューアルの事例

オフィスリニューアルの方法や空間の整え方は、企業が抱える課題によって異なります。ここでは、既存拠点を活用した改装と、拠点の統合や働き方の刷新を目的とした移転の事例を紹介します。

7.1. JFEミネラル株式会社(改装)

慢性的な打ち合わせスペース不足やデッドスペースの有効活用を目的として、本社を改装した事例です。同社では、社員の声を空間づくりへ反映し、従業員の働きやすさを高めることも課題となっていました。

そこで、従業員サーベイの結果をもとに、ゾーンアドレスやアーチ型のデスクレイアウトを採用。オープンミーティング、リフレッシュ、集中作業などに対応する多様なスペースを設け、人の移動や交流を促す環境を整えました。改装前後の調査では、働き方に対する満足度が20ポイント上昇し、場所に対する満足度も41ポイントから82ポイントへ向上しています。

事例の詳細はこちら:JFEミネラル株式会社

7.2.株式会社ビーアンドピー(移転)

東京と横浜に分かれていた営業・製作拠点の統合を目的として、オフィスを移転した事例です。同社には、部門を越えた交流を促し、現場の知恵と顧客の声が自然に交わる環境をつくりたいという課題がありました。

そこで、社員だけでなく来訪者も利用できる「OPEN AREA」と、業務に集中できる「WORK AREA」に大きく分けて設計。OPEN AREAには交流の起点となる場所や体験型ショールームを設け、社内コミュニケーションの活性化とブランド価値の発信を両立しました。拠点を一つに集約するだけでなく、組織の連携や来訪者の体験まで見直した移転事例です。

事例の詳細はこちら:株式会社ビーアンドピー

7.3. madoguchi株式会社(移転)

増員への対応と働き方の変化に合わせた環境整備を目的として、オフィスを移転した事例です。移転前は、会議室不足や固定席中心による働き方の制約、チーム間のコミュニケーションのばらつきなどが課題となっていました。

そこで、ファミレスブース、カウンターテーブル、フォンブースなど、多様なワークポイントを配置。社員が業務内容やコンディションに応じて、働く場所を自律的に選べる環境を構築しました。さらに、コーポレートカラーや内装素材を活かしたサイン計画により、機能性だけでなく企業らしさも表現しています。働き方の刷新、交流促進、採用力やブランドイメージの向上を一体的に目指した移転事例です。

事例の詳細はこちら:madoguchi株式会社

まとめ

オフィスリニューアルとは、内装や設備を新しくするだけでなく、企業の課題や働き方の変化に合わせて、空間・設備・ICT・運用方法を総合的に見直す取り組みです。実現方法には、現在の拠点を活用する「改装」と、新しい拠点へ移る「移転」があります。

現在の立地や床面積に大きな問題がなく、既存物件の条件内で課題を解決できる場合は、改装が適しています。一方、床面積や設備、立地などに根本的な課題がある場合は、移転も含めて検討しましょう。どちらを選ぶ場合も、現状調査と目的設定から始め、社内体制の構築、業者選定、設計・施工、利用開始後の効果検証まで計画的に進めることが重要です。

費用を比較する際は、内装工事費だけでなく、設計、設備、家具、ICT、移設、引っ越し、原状回復などを含めた総額を確認してください。将来の人員計画や働き方まで見据え、自社の課題解決につながる方法を選ぶことが、オフィスリニューアルを成功させるポイントです。


株式会社ヴィスは、『はたらく人々を幸せに。』というパーパスのもと、働く場を設計する「ワークプレイスデザイン」と、そこで生まれる体験を設計する「エクスペリエンスデザイン」という二つのアプローチを通して『ワークデザイン』を実現し、人と組織のエンゲージメントを高めながら、企業価値の持続的な向上に貢献します。

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