【画像付き】フリーアドレスのオフィス事例10選|導入時の手順も解説

フリーアドレスオフィスの事例をご紹介。ワークスペースを更新するときに知っておきたい、フリーアドレスの特徴や向き・不向きの判断基準、導入時のポイントを解説します。

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目次

テクノロジーの進化や働き方の多様化などを受けて、オフィス環境をアップデートする企業が増えています。従来の固定席から自由に席を決められるフリーアドレスに切り替えることで、生産性の向上やコミュニケーションの活性化などが期待できます。

ただし、課題や注意点もあるので、自社に最適な形で取り入れることが大切です。

本記事では、フリーアドレスのオフィス事例を紹介するとともに、導入時のポイントについて解説します。貴社におけるフリーアドレス導入にぜひお役立てください。

フリーアドレスとは?

フリーアドレスとは、固定席を設けず、席を自由に選ぶことができるワークスタイルです。執務スペースの他に、リフレッシュスペースや集中ブースなどさまざまなエリアが設置され、その日の気分や業務内容に合わせて場所を決められます。

オフィス空間を有効活用でき、社内コミュニケーションの活性化や生産性の向上といった効果が期待できます。

フリーアドレスが増加している背景

フリーアドレスが求められるようになった背景には、「働き方の変化」や「テクノロジーの発展」といった要因があります。

リモートワークや時短勤務の導入により、オフィスの稼動率が変動するようになり、より柔軟なオフィススペースの活用に焦点が当たるようになりました。また、テクノロジーが発展したことで、オンライン会議やWEB申請、クラウド保存ができるため、働く場所にこだわる必要性も下がりました。

そのほか、新しい価値やアイデアの必要性が高まっているなかで、ナレッジワークを後押しするという面でも、自由度の高いフリーアドレスが注目されています。

フリーアドレスを導入するメリット

フリーアドレスをオフィスに導入することで、企業側にも社員側にもメリットがあります。

・業務効率や生産性の向上
・社内コミュニケーションの活性化
・組織編成や人事異動への柔軟対応
・オフィススペースの有効活用
・賃料や備品コストの削減
・オフィス・デスクの美化
・社員のモチベーションの向上

好きな席で仕事ができるフリーアドレスオフィスでは、主体性が生まれ働くモチベーションや意欲がアップすることが期待できます。また、社内での交流が活発化しやすく、アイデアの創生やイノベーションにもつながります。

また、出社人数に合わせて家具の数を調整すれば、賃料や光熱費などの固定費や備品コストも削減できるでしょう。

フリーアドレスでよくある課題

フリーアドレスはメリットが多いものの、以下のような課題も起こり得ます。

・部署内のコミュニケーション不足が発生する
・雑談が増えて生産性が低下する
・社員の居場所を把握しにくい
・新人の指導・サポートが難しい
・私物や書類の収納・管理が大変
・荷物を毎日片付ける負担が増える
・社内外の人間を区別しづらい
・自由に選べるとはいえ席が固定化される
・無駄なスペースが生まれる

チームメンバーがどこにいるか把握しにくく、報連相やコミュニケーションにハードルが生じる可能性があります。また、毎日異なる席で業務を行うため、書類や荷物を携帯し、片付ける手間が生じます。

ただし、起こり得る課題を把握し適切な対策をすることで、フリーアドレス導入の失敗を防げます。フリーアドレスは単に導入しただけでは、効果的に運用できないので注意しましょう。

フリーアドレスでよくある失敗の原因や成功事例、対策については下記をご確認ください。

関連記事:フリーアドレスが失敗する原因10選|導入時のポイントや成功事例を紹介

フリーアドレスのオフィス事例10選

ここからは、フリーアドレスを採用しているオフィス事例を紹介します。今回取り上げる企業は以下10社です。

・株式会社ドミノ・ピザ ジャパン:自然体で働ける
・エンワールド・ジャパン株式会社:オフィススペースの適正化
・エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 / 株式会社阪急阪神百貨店:イノベーションと交流の活性化
・アイペット損害保険株式会:新しい働き方を後押し
・大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社:発想力を刺激する
・株式会社デンソー:スペースの効率化と交流の活発化
・ACALL株式会社:オフィスの伸縮性の実現
・オークラ輸送機株式会社:歴史とフラットな文化の共存
・キャタピラージャパン合同会社:メリハリのある空間デザイン
・株式会社スヴェンソンホールディングス:清潔感と開放感

どのような工夫が取り入れられたのか参考になるはずです。

自然体で働ける集いの場を実現「株式会社ドミノ・ピザジャパン」





株式会社ドミノ・ピザジャパンでは、「ピザでつながる」というパーパス&ビジョンに合わせて、「FAMIGLIE(家族のイタリア語)」というコンセプトのオフィスを構築しました。

室内にはフリーアドレス制のコワーキングエリアや会議室、リフレッシュスペースなど多様な空間を設置。家族のようなつながりを重視し、自然体で過ごせる雰囲気を実現しています。

また、本社を構えるアメリカ・ミシガン州をイメージしたエントランスデザインや、ロゴ、デジタルサイネージなどを使ったブランドの発信も特徴的です。社員にとっての「第2の我が家」として、企業成長やシナジーを促進する場として設計されています。

この事例の詳細はこちら:株式会社ドミノ・ピザジャパン

オフィススペースの適正化「エンワールド・ジャパン株式会社」




エンワールド・ジャパン株式会社では、出社率に合わせたオフィススペースの適正化を目的とし、オフィス改装プロジェクトを実施しました。

窓際ベンチスペースや個室ブース、カフェテリアなど多様なスペースを設け、気分や業務内容に合わせて働く場所を選べます。コミュニケーションの活性化やモチベーションアップにもつながっています。

コーポレートカラーのブルーが随所に散りばめられており、ブランド意識の向上も期待されています。

この事例の詳細はこちら:エンワールド・ジャパン株式会社

コミュニケーションが自然発生するオフィス構築「エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 / 株式会社阪急阪神百貨店」





エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 / 株式会社阪急阪神百貨店のオフィス移転に伴うフリーアドレスの導入事例です。社内外のコミュニケーションの活性化を重視したオフィス空間へアップデートされました。

執務室内は、ワンフロアで回遊しやすい動線計画と家具配置が特徴。コミュニケーションの促進だけでなく、生産性の向上やイノベーションの創出も期待できます。

また、新オフィスのコンセプトである「CIRCLE FOREST」に合わせ、エントランスや商談スペースは植栽とウッド調で統一された心地よい空間を提供しています。

この事例の詳細はこちら:エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 / 株式会社阪急阪神百貨店

オフィスに出社するメリットを実感できる「アイペット損害保険株式会社」





アイペット損害保険株式会社では、スペースの効率化やコミュニケーションの活性化、新しい働き方の実現といった目標を掲げ、働く場所を自由に選べるオフィスを構築しました。半分以上をフリー席とし、リフレッシュエリアや集中エリア、執務エリアを点在させ、気分や業務内容によって席を選べるようにしています。

また、複数のコミュニケーションポイントや中央の個人ロッカーなど、社内の交流を促す工夫もみられます。アクセント的に施された各所の動物イラストが、温かみのある雰囲気を演出している点も特徴です。

この事例の詳細はこちら:アイペット損害保険株式会社

クリエイティブな発想ができる空間を創造「大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社」





温浴施設やテーマパークを展開する大
江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社では、オフィス移転の際にABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を導入しました。

クリエイティブな発想を後押しするために、大きめのフリーアドレスエリアを確保。人数の増減に合わせて移動しやすい家具を設置し、エントランス周りにはガラスの間仕切りを用いるなど、一体感を維持しつつも挑戦を支援する環境づくりを意識しています。

企業イメージでもある「和」のエッセンスを取り入れた会議室の壁面デザインもこだわりポイントです。

この事例の詳細はこちら:江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社

オフィスの効率化&コミュニケーションの活性化「株式会社デンソー」





株式会社デンソーは、働き方改革の一環としてフレックス制やテレワークの導入を進めたものの、席の固定化や社内のコミュニケーション不足といった課題を抱えていました。

そこで、「街」のように人が行き交うイメージでオフィスを再定義。コンセプト「WORK TOWN」を元にしたオフィス改装プロジェクトを実施しました。

効率的なスペースの活用とコミュニケーションの活性化を目指して、執務スペースにフリーアドレスを採用。また、コーポレートカラーを施した壁を中心とし、ソファスペースやブーメランデスク、窓際のハイデスクやブース席など、多様なスペースを共存させています。

この事例の詳細はこちら:株式会社デンソー

伸縮性のあるオフィスの実現「ACALL株式会社」





ACALL株式会社は、これからの時代に適した次世代の働き方を意識して、本社移転時に柔軟に変更できるオフィスレイアウトを採用しました。自社の「WorkstyleOS」アプリケーションサービスを実践・体感できるライブオフィスを構築し、多様な働き方を再現しています。

従来までの固定席オフィスの概念を超え、ワークエリアのチェアやデスクといったほとんどの家具を可動式へ変更。

時代に合わせた柔軟な働き方の実践とアップデートを続けながら、これからのオフィスのあり方を発信する場所として機能させています。

この事例の詳細はこちら:ACALL株式会社

フラットな文化をオフィスで体現「オークラ輸送機株式会社」





創業95年以上という歴史あるは、オークラ輸送機株式会社フラットな文化の体現を目指して、フリーアドレスをベースとしたレイアウトを構築しました。

フリーアドレス導入に伴い、地下書庫の書類をペーパーレス化。約58.7%の紙の書類を削減することに成功しています。

また、オフィス移転にあたって全社員への意識調査や経営層へのインタビュー、ワークショップを実施し、現状課題を可視化しました。オフィス変更によるストレスを軽減するためにチェンジマネジメント(意識改革プログラム)を実施するなど、利用する社員にも配慮しています。

この事例の詳細はこちら:オークラ輸送機株式会社

集中とリフレッシュのメリハリが効かせたデザイン「キャタピラージャパン合同会社」





キャタピラージャパン合同会社では、多様な働き方を実現するために、仕事内容や気分に応じて場所を選べるオフィスを実現しています。

執務スペースはテレワークとの併用を目指し、フリーアドレスを導入。また、リフレッシュスペース・ワークスペース・集中スペースなど複数のエリアを設置し、床の張り替えや家具の色味でエリアを区別しています。

メリハリを効かせながらもつながりを感じられる空間デザインを取り入れる工夫により、働きやすいオフィス環境が確立されています。

この事例の詳細はこちら:キャタピラージャパン合同会社

開放感・清潔感・信頼感のあるデザイン「株式会社スヴェンソンホールディングス」





ヘアケア事業やコスメ事業を展開する株式会社スヴェンソンホールディングス
。時代に合わせたオフィス空間の改善、社員のモチベーションや生産性の向上などを目的として、オフィス構築を実施しました。

グループ会社のサテライトオフィスとしても利用できるように、フリーアドレスを基本としたレイアウトを採用し、可変性のある家具を導入しています。

事前のデータ収集やレポーティングによってロジカルにオフィスを構成しました。その結果、信頼感や清潔感といった企業イメージと、開放感が共存するオフィスデザインが完成しています。

この事例の詳細はこちら:株式会社スヴェンソンホールディングス

事例から見るフリーアドレス導入に向いている会社

フリーアドレスの導入に向いている企業の特徴として「リモートワークを中心に業務が円滑に進んでいる」点が挙げられます。

リモートワークをすでに採用している企業や、ペーパーレス化やセキュリティ対策を進めている企業などは、フリーアドレスに必要なツールやシステムを導入しやすく、スムーズなオフィス変更につながります。

たとえば、ABWを取り入れた大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社や、サテライトオフィスとして利用できる株式会社スヴェンソンホールディングスは、新しい働き方を導入している良い事例です。

オフィスのフリーアドレス化する手順と成功のポイント

ここからは、オフィスにフリーアドレスを導入する手順と、成功させるためのポイントについて詳しく解説します。導入後に失敗しないためにも要点を押さえておきましょう。

1.導入目的を明確にする
2.在席率を計測する
3.導入対象となる部署・座席数を決定する
4.オフィス内のレイアウトを検討する
5.必要な設備・システムを準備する
6.運用ルールを策定する
7.現場からのヒアリングを基にPDCAサイクルを回す

オフィスのフリーアドレス化は大きく上記の7ステップで進めることができます。

 

1. 導入目的を明確にする

フリーアドレスの成功のためには、なぜフリーアドレスを導入するのか、目的を明確化しておくことが重要です。導入目的や効果を明文化することで、社内から理解を得やすくなり、スムーズな導入と運用につながります。

オフィス空間は働き方へ大きく影響します。ゴールとなるオフィスのあり方や導入メリットが社員に共有されていなければ、固定席がなくなることに不安や不満を感じる社員が出てくる可能性があります。

導入目的を社内に浸透させるために、フリーアドレス化について説明する機会を設けるとともに、社内アンケートなどで社員の声を聞き、意見を反映させることも検討しましょう。

2. 在席率を計測する

フリーアドレスオフィスに必要な座席数を決める際に役立つ指標として「在席率」があります。在席率とは、任意の時間帯に在籍する社員数に対するオフィスの席を利用している社員の割合のことです。

感覚的に座席数を決定すると、導入後に想定以上の社員が出社した場合に、席がないという事態が発生します。反対に、出社人数が少ないと使わない席が多すぎてスペースを有効に活かせないでしょう。

曜日と時間ごとに、「在席」「一時的に離席」「退席」の3つに分けて在席割合を計測しておくと、日中に必要な席数の計算がスムーズに進みます。

3. 導入対象となる部署・座席数を決定する

前述の在席率を基に、フリーアドレスを導入する部署や座席数を決めます。オフィスに必要な座席数をデータに基づいて算出できれば、現実的なデスク数やレイアウトの決定につながります。

フリーアドレスには、完全フリーアドレス・グループアドレス・固定席併用型フリーアドレスといったタイプがあり、業務内容や働き方に応じて選ぶことが大切です。

たとえば、人事や総務、経理など在籍率が高い部署は、資料や備品を多く使用するため固定席のほうが向いています。また、チームやプロジェクト単位で仕事を進める場合は、グループアドレスの活用がおすすめです。

オフィスレイアウトを考える上で重要な面積計算などについては、こちらの記事で解説しています。

関連記事:オフィスの一人当たりの面積目安は?計算方法や適正化のコツもあわせて解説

4. オフィス内のレイアウトを検討する

続いて、オフィスのレイアウトを検討していきます。デスクの置き方には、主に下記の種類があります。

・対向型
・同向型
・背面型
・ブース型
・ベンゼン型

適したレイアウトは広さや事業内容、導入の目的などによって異なるものの、フリーアドレスの特徴であるコミュニケーションの活発化は意識したいところです。

オフィス内のコミュニケーションについては、下記記事で詳しく解説しています。

関連記事:オフィスのコミュニケーションが生まれる仕組みとは?働く環境のトレンドを紹介

また、フリーアドレスオフィスには複数の執務スペース、集中ブースやリフレッシュスペース、ミーティングスペースに加えて、私物や書類を保管・管理するスペースも必要です。

後回しにされがちなリフレッシュルームですが、業務の効率性やエンゲージメントの向上に効果的。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

関連記事:オフィスにリフレッシュルームを作るメリット5つ!導入のポイントは?

5. 必要な設備・システムを準備する

オフィスレイアウトが決まったら、フリーアドレスを機能させるために必要な設備やシステムを準備します。ビデオチャットツールやWeb会議システムは、オフィス内外でのコミュニケーションに欠かせません。また、席が固定されていないオフィスでは、座席管理システムも検討しましょう。

ほかにも、ペーパーレス化に向けや書類の仕分けやデータ管理システム、個人ロッカーなど私物管理用のツールも必要です。各種システムや私物管理ツールは種類が多いため、予算やスペースなどに合わせて検討しましょう。

関連記事:フリーアドレスの座席管理システムとは?座席状況を見える化しよう

関連記事:フリーアドレスの便利グッズ9選!収納やWeb会議におすすめ商品も紹介

6. 運用ルールを策定する

フリーアドレスでよくある課題を解決するために、運用ルールのを策定し、社内でしっかり周知しておくことが大切です。適切な決まりがない、もしくはルールが利用者に認識されていないといった場合、フリーアドレスが形骸化してしまう可能性があります。

効果的なルールの例としては、「前日とは異なる席を選ぶ」「集中ブースの使用は○時間/週を上限とする」などです。グループアドレスの場合は、部署やチームの位置を定期的に変えるなども有用です。

関連記事:フリーアドレスオフィスのルールとは?スムーズな運用に必要なこと

7. 現場からのヒアリングを基にPDCAサイクルを回す

フリーアドレスは取り入れて終わりではなく、効果の分析や検証を通して改善していく必要があります。

現場の声を聞いて改善点を探り、必要に応じて対応を行いましょう。フリーアドレスの導入や成果測定に社員が参与する機会を設けることで、フィードバックが効率よく集まるうえ、社内の一体感が高まる効果も期待できます。

オフィス環境の課題に対するPDCAサイクルを回しながら、社員が快適に仕事ができる環境づくりを目指しましょう。

まとめ

フリーアドレスは、好きな席を選んで働ける自由度の高いオフィスレイアウトです。コミュニケーションの活発化や社員の意欲向上といったメリットを得るためには、導入目的を明確にし、在席率や対象部署の判別など事前調査を通して計画的に準備することが大切です。

今回紹介したフリーアドレスオフィスの事例も参考に、理想とするフリーアドレスオフィスの実現に向けて検討しましょう。

ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。

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