フリーアドレスとは?メリット・デメリットから失敗を防ぐ方法、事例まで紹介

フリーアドレスは、働き方の多様化に対応しやすいオフィス形態ですが、企業や部署によって向き不向きは変わります。本記事は、フリーアドレスのメリット・デメリットや向いている企業、導入を成功させるためのポイントなどを紹介します。

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目次

 

フリーアドレスとは、従来のような固定席を持たず、社員が自由に席を決めるオフィス形態のことです。働き方の多様化やコロナ禍を経てフリーアドレスを導入する企業が増えていますが、業務内容や目的によっては効果を得られにくい場合もあるため、事前によく検討する必要があります。

本記事では、フリーアドレスの特徴やメリット・デメリットと共に、向いている企業の特徴や導入時のポイントなどについて解説します。フリーアドレスについて理解を深め、自社に適したオフィスを構築するために、ぜひご確認ください。

 

フリーアドレスとは?

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まずは、フリーアドレスとはどのような意味か確認しましょう。

フリーアドレスとは、社員が個々の自席を持たず自由に働く席を選択できるワークスタイルです。従来のオフィスだと、決められた位置にデスクを配置し、一人一台デスクが与えられ、その与えられたデスクで働いていました。

フリーアドレスは「自席」という概念をなくすことで、空いている席や自由な場所で働くことができるのです。

フリーアドレスの導入が向いている企業

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ここではフリーアドレスの導入が向いている企業の特徴を紹介します。

ABWを推進している企業

ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の頭文字をとった言葉で、効率良く仕事ができる場所を自分で選べるワークスタイルを指します。

フリーアドレスと異なるのは、オフィス内だけでなく自宅やコワーキングスペース、カフェなども働く場所の選択肢に入る点です。

フリーアドレスは社員自ら働く場所を決められるワークスタイルですが、その範囲はオフィス内に限定されます。しかし、オフィス内であれば業務にあたる場所を自由に選択可能です。

ただし、工夫によってABWに近いワークスタイルを実現できます。例えば、範囲がオフィス内のみと限定的であっても、カフェスペースを設けたり個人ブースを設けたりすることで段階的にABWを実現できます。

このように、オフィス内に複数のワークスペースやブースを設置することで、ABWを推進している企業に向いています。

関連記事:ABWの意味とは?フリーアドレスとの違いやABW導入に成功したオフィス事例を解説!

ペーパーレス化が進んでいる企業

フリーアドレスを導入すると自席がなくなるので、これまで社員が各々のデスク周りに収納していた紙文書の保管場所がなくなります。

紙媒体でのやりとりが主流である企業では、書類の保管場所を用意したり、保管場所まで逐一書類を取りに行ったりしなければならないため、フリーアドレスの導入がかえって非効率の要因になっているケースも。

対して、すでにペーパーレス化を推進している企業であれば、スムーズにフリーアドレスを導入しやすいといえます。

フリーアドレスを推進しやすいワークスタイルである企業

フリーアドレスを導入しやすいワークスタイルを採用していることも重要です。

例えば、ノートPCやタブレットで業務可能な企業なら、場所や席の移動に手間がかからないので、フリーアドレスを導入しやすいといえます。全社的でなくても会議やミーティングが多い、また外出や離席が多い部署にも向いています。

リモートワークや時短勤務が可能な企業も、出社している社員数が日々増減するため、フリーアドレスを導入することでオフィス内のスペースを有効に活用できるようになります。

一方、機密情報を多く扱う企業や、デスクトップパソコンでなければ作業できない業務が多い企業、紙の書類が多い企業はフリーアドレスの導入に向いていません

フリーアドレスの導入を検討する際は、自社のワークスタイルとの相性を考慮することが大切です。

社内のコミュニケーションを強化したい企業

固定席がなく自分の好きな席を選べることから、社員同士や部署間など、社内のコミュニケーションを強化したい企業にもフリーアドレスが適しています。偶然近くに座ったのがきっかけで、新たなコミュニケーションが生まれることもあるでしょう。

また、部署や役職を超えたコミュニケーションの活性化も期待できます。普段違う仕事をしていてあまり関わりがなかった社員との会話から、新たなアイディアが生まれ、付加価値の創造に効果的です。

関連記事:オフィスのコミュニケーションが生まれる仕組みとは?働く環境のトレンドを紹介

スペースを有効活用したい企業

社内の限られたスペースをより有効に活用したい企業にも向いています

例えば、テレワーク率50%だと、固定席の場合は50%のスペースが余ることになりますが、フリーアドレスにすることで、執務面積が50%に収まります。

オフィスを適正面積にできることには2つのメリットがあります。1つは固定費が削減でき、利益の増加につながることです。事業発展を考えた、新たな投資も可能になるでしょう。

2つ目はより働き方に合わせたスペースの活用ができることです。現状と同じオフィスのまま、余ったスペースをオンライン会議用のエリアにしたり、休憩スペースにしたりと、変化していく働き方に合わせてさまざまな用途で使用することが可能になります。

フリーアドレスの導入が増えている背景

企業がフリーアドレス導入を進める背景には、IT技術の進化や働き方革命の推進、知識を活かして働くナレッジワーカーへの需要の高まりなどが挙げられます。ここでは、フリーアドレスを導入する企業が増えている理由や要因について解説します。

テクノロジーの発展

近年、テクノロジーの進化により、インターネット回線を使って場所を選ばず仕事ができる環境が整いつつあります。ペーパーレス化やクラウド化が進み、自分のノートパソコンやモバイル端末があれば仕事ができます。そのため、従来のように固定席で固定電話やデスクトップパソコン、紙の書類を扱う必要性が薄れています。

物理的な制限が撤廃されつつある現在、利用する人が減ったオフィス空間を有効活用する方法として、フリーアドレスがより現実的に捉えられています。

働き方改革の推進

政府が推進する働き方改革も、オフィスのあり方に大きく影響しています。テレワークの普及を受けて、従来のようにオフィスに滞在する働き方から、オフィス以外の勤務場所を自分で選ぶスタイルに移行しつつあります。

また、リモートワークが普及したことでオフィス環境が見直され、より自由度が高く人数の変化に対応しやすいオフィス形態が求められていることも、フリーアドレスが採用される要因となっています。

ナレッジワーカーの活用

ナレッジワーカーとは、「ナレッジ(知識)」と「ワーカー(労働者)」を組み合わせた造語です。日本語では、自身の知識を活用し新たな付加価値を生み出す知識労働者を指します。

前述のテクノロジーの発展などにより、人間だけが生み出せる知的生産物や価値の創造がより重要視されるようになりました。また、変化のスピードが速く、将来の予測が困難な現代社会において、労働者に対しては知識を用いた企業貢献を求める風潮が強まっています。

ナレッジワーカーにとって、偶発的な出会いや接触が生まれやすいオープンかつインタラクティブな環境は必要不可欠であり、その選択肢としてフリーアドレスが挙げられます

フリーアドレスのメリット

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ここで、フリーアドレスのメリットについてまとめてみます。

<フリーアドレスメリット>
・コミュニケーションパフォーマンスが高くなる
・スペースソリューションに繋がる
・コラボレーションの促進
・チーム編成が容易
・決断のスピードが上がる
・環境美化
・省スペース化

フリーアドレスであることは、いつでもどこでも他部署の人と関わる機会にあふれるため、組織の壁がなくなり横に繋がりやすくなります。今まで関わることが少なかったメンバーとコミュニケーションをとることで、新しいイノベーションが生まれることもあるでしょう。

新しい発想は「頭の中」ではなく、「会話の中」から生まれるものです。フリーアドレスは多様なコラボレーション、豊富なコミュニケーションを助長させ、新しいアイディアの創造を促進させることができます。また、自席を持たないことによりオフィス空間全体が共有の場所となるため、抱える書類ストックも減り、環境美化の意識も高まることになります。

フリーアドレスのデメリット

フリーアドレスのデメリットも確認しておきましょう。

<フリーアドレスデメリット>
・適度な距離感を保てない
・組織の中でのアイデンティティロス
・集中しにくい
・ルールの浸透不足
・固定の場所になりがち
・従来のマネージメント方式では対応しきれない

フリーアドレスを導入することにより、オープンコラボレーションの場がスタンダードのオフィス空間となります。プロジェクトの内容やその時の作業内容、そして個々のパーソナリティによっては、あまりにもオープンすぎる空間や、他者との距離が近すぎることにストレスを感じる場合もあるでしょう。

さらに、フリーアドレスで自由に働く場所を選べるがゆえに、集団意識が希薄となり「組織への所属意識の低下」へ繋がることも懸念されます。

これら課題を補うには、適切な相互作用が維持できるように配慮したオフィス空間作り、および組織への所属意識保持(アイデンティティの確保)のための新たな文化を創造する必要があります。

関連記事:フリーアドレスが失敗する原因10選|導入時のポイントや成功事例を紹介

フリーアドレス導入の流れ

スムーズにフリーアドレスを導入するためには、基本的な流れを把握しておくことが大切です。

<フリーアドレス導入の流れ>
1.フリーアドレス導入の目的を明確にする
2.導入する部署や対象者を決める
3.座席設定率と座席の運用形態を決める
4.オフィス家具やツールを選ぶ
5.導入に向けた説明会を実施する
6.運用ルールを策定・徹底する
7.継続的に効果測定を実施して運用を見直す

一つずつ詳しく解説します。

フリーアドレス導入の目的を明確にする

何のためにフリーアドレスを導入するのか、社員としては目的が分からなければ納得感を持って働くことはできません。フリーアドレスを導入する目的を明確に設定したうえでオフィスづくりの方針を定め、社員に共有する必要があります。

例えば、残業時間を短縮したい企業の場合、業務に集中できる環境を構築するといった目的を設定してフリーアドレス化に取り組めば、効果を期待できます。また、離職率が高いことが課題の企業では、コミュニケーションの活性化をフリーアドレス導入の目的に掲げ、風通しを良くすることで定着率を高められるでしょう。

フリーアドレス導入の目的を設定する際は、解決すべき課題と導入により期待される成果を明確化することが大切です。

導入する部署や対象者を決める

いきなり全部門にフリーアドレスを導入するのではなく、適切な部署や対象者に導入していくことが重要です。導入する部署や対象者を決める際は、職種ごとの特性を考慮してフリーアドレスに適した職種かどうかを判断する必要があります。

<フリーアドレスに適した職種>
・パソコンやタブレットで業務が完結する
・営業部門など外出が多い
・会議やミーティングが多い

一方で、座席が決まっていた方が業務の効率が高まる職種もあります。

<固定席が適した職種>
・総務や人事、経理
・紙媒体の書類を扱う

固定席が適した職種であっても、チームごとのエリアの中で自由に席を選ぶ、グループアドレス制を採用することで、業務効率の向上が期待できます。

座席設定率と座席の運用形態を決める

フリーアドレス導入の部署や対象者を決めたら、座席設定率と座席の運用形態を決定します。

座席設定率とは、フリーアドレスの対象となる従業員に対して、何割の座席を用意するかを示す割合です。オフィスに設置するデスクの数やレイアウトを決める際に、座席設定率が必要になります。

また、座席の運用形態には以下の2つがあり、職種や自社の課題などを考慮したうえで事前に検討しておくとよいでしょう。

<座席の運用形態>
・完全フリーアドレス(エリアを決めずに未使用の席の中から選ぶ)
・グループアドレス(グループごとに指定されたエリア内で席を選ぶ)

完全フリーアドレスの場合は、部門を超えたコミュニケーションの活性化が見込めます。他方、グループアドレスの場合は、特定のグループ内での連携がしやすくなるでしょう。

オフィス家具やツールを選ぶ

フリーアドレス導入に向けて、オフィス家具やツールの検討が必要です。

フリーアドレス用のデスクには、社員自身がレイアウトを変更できるキャスター付きのものや、連結できるロングデスクタイプ、大型デスクタイプなどがあります。

オフィスのレイアウトや導入後の運用体制などを考慮したうえで、自社に適したデスクを選びましょう。

また、円滑にフリーアドレスを導入するためには、オフィス内における収納環境の整備が欠かせません。例えば、荷物の移動に便利な「モバイルバッグ」や個人で私用する仕事道具などを管理する「パーソナルロッカー」を導入することで、フリーアドレス化による社員のストレスを軽減できます。

導入に向けた説明会を実施する

目的達成に向けてフリーアドレス化を進めるには、社員の深い理解が不可欠です。運用ルールを作成したら、全ての社員に対して、導入に向けた説明会を実施していく必要があります。

説明会を実施して社員に運用ルールを共有することで、現場でフリーアドレスの効果を発揮していけるでしょう。

フリーアドレスを導入するための環境を整えるのは企業側ですが、実際に現場で運用していくのは、社員一人ひとりです。フリーアドレスを導入した後も、効果的な運用を続けていくために、社員に対して運用ルールをきちんと浸透させましょう。

運用ルールを策定・徹底する

フリーアドレスのルールが形骸化しないように、オフィスの使い方や運用ルールなどを策定し、マニュアルを作成する必要があります。運用ルールを作成する際は、総務担当者だけで進めるのはおすすめしません。運用していく社員にも運用ルールの策定に参加してもらうことで、働き方に対する社員の関心が高まり、徹底させていくことにつながります

そして、単にマニュアルを作成するだけでは、効果的に運用することはできません。マニュアルを公開し、運用ルールについて社員への周知を徹底することが重要です。必要なときに確認できる場所にマニュアルを保管する、またはクラウド上にアップしておけば、より一層社員の理解を深められるでしょう。

継続的に効果測定を実施して運用を見直す

運用ルールに沿ってフリーアドレスを導入しただけでは、十分な効果を期待できません。適切に運用していくために、継続的に効果測定を行い、見直していくことが重要です。

運用ルールをきちんと社員に共有していても、運用していく中で改善点が見えてくる可能性はあるでしょう。

社員にアンケートを取り、フリーアドレスを導入して変化したことや懸念点などに関するさまざまな意見に耳を傾けることが重要です。そして、社員一人ひとりの意見を把握したうえで、生産性向上を目指してルールを見直す必要があります。

ただし、そうした効果測定は、一度だけでなく定期的に実施することで高い成果を出すことができます。

フリーアドレス導入を成功させるためのポイント

つづいて、フリーアドレスの導入におけるポイントについて解説します。フリーアドレスを導入して、効果的に運用するためには事前準備や計画も重要です。

・運用しやすいルールを策定・徹底する
・ペーパーレス化を進めておく
・座席管理ツールを導入する
・電話の取次ぎ方法を決める
・私物の持ち運び・保管のツールを導入する
・文具や備品は一括管理する
・グループアドレスや固定席も検討する
・段階的に導入する
・オフィス構築専門の業者に依頼する

フリーアドレスを採用したものの失敗に終わったケースは少なくないため、失敗を防ぐポイントを押さえておきましょう。

運用しやすいルールを策定・徹底する

フリーアドレス導入に伴い、現場で運用しやすいルールを策定しましょう。適切なルールが設定されていなければ、フリーアドレスを取り入れても形骸化してしまう可能性があります。場合によっては自分勝手に使用する社員も出てくるなど、トラブルに発展する可能性も否めません。

社内の混乱を避けてスムーズな運用を実現するためには、ルールを設定し、社員へよく周知しましょう。例えば、私物の持ち込みや管理方法、退席時の清掃などが挙げられます。また、運用しながら現場の状況や社員からのヒアリングを実施し、必要に応じてルールの変更を検討することも大切です。

ペーパーレス化を進めておく

スムーズにフリーアドレス化を進めるために、前述したペーパーレス化をあらかじめ進めておくことが求められます。そもそも、ペーパーレス化とは、紙の文書や資料を電子データとして保存し、管理することです。紙の印刷や保管にかかるコストを削減し、業務効率を高める効果もあります。

ペーパーレス化を進めるためには、インターネット上でデータを保管・共有できるクラウド保存や、データ化した文書を一元管理できる文書管理システムなどの活用が必要です。

まず、新規で作られる文書や資料のペーパーレス化から始め、次に、既存書類について進めましょう。目的を明確化し、データの保管方法や保管時の分類方法などについて事前に決めておくことで混乱を回避できます。

なお、ペーパーレス化できる文書とそうでない文書があります。なかには、法律で紙での保存が義務付けられている書類も存在します。扱う文書を電子化できるかどうか、適切に見極めたうえで社内に共有しなければなりません。電子化に向いている・向いていない文書の例は下記の通りです。

<ペーパーレス化できる主な文書や資料>
・社内資料(会議資料・マニュアル・教育や研修資料・労務・人事関係の資料など)
・契約書
・領収書
・注文書 ,etc…

<ペーパーレス化できない文書>
・手書きで作成した国税関係帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)
・公正証書
・事業用借地権設定契約書
・農地の賃貸借契約書
・任意後見契約 ,etc…

ペーパーレス化を進める際は、注意点をおさえたうえで、余裕のあるスケジュールを確保することが重要です。

座席管理ツールを導入する

社員がどこにいるのかをリアルタイムで管理できる、座席管理ツールの導入が必要です。フリーアドレス導入には、座席を自由に選べることなどのメリットがあります。一方で、誰がどこに座っているのか分からず、社員を探すことに時間や手間がかかるトラブルも起こり得ます。

座席管理ツールを導入することで、社員の居場所を把握しやすくなり、来客や電話対応時にもスムーズに対応できます。また、出社してから空席を探す手間を省くことも可能です。

一般的に、座席管理ツールには以下のような機能が備わっています。

<座席管理ツールの代表的な機能>
・座席予約
・社員検索
・利用時間の把握

さらに、座席の利用時間を可視化できるため、無駄のないレイアウトを設計するための参考にすることもできます。

電話の取次ぎ方法を決める

出社の度に座席が変わるフリーアドレスでは、電話の取次ぎに時間や手間がかかりやすいといった課題があります。円滑に運用していくためには、電話の取次ぎ方法について決めておくことが不可欠です。

フリーアドレスにおける電話取次ぎの課題を解消する代表的な方法として、以下があげられます。

<電話の取次ぎに関する課題を解消する主な方法>
・デジタルコードレスフォンの活用
・社用携帯の活用
・座席管理ツールの活用

デジタルコードレスフォンとは、社員個人が電話の子機を持ち歩くことができ、固定電話から内線で個々の端末に転送できるといったものです。また、スマートフォンを社員に提供し、内線でつなげられるように機能させる方法もあります。ただし、スマートフォンの導入には、端末や通信にかかるコストやセキュリティ面での対策が必要です。

その他、前述した座席管理ツールを活用すれば、近くの固定電話に内線をつなぐことが可能です。それぞれの特徴を押さえたうえで、自社に合う方法を選択しましょう。

私物の持ち運び・保管のツールを導入する

社員個人の貴重品や私物の他、仕事道具や書類を適切に管理することが欠かせません。

個人ロッカーを設置すれば、貴重品や私物の管理が可能です。ロックをかけられるタイプであれば、セキュリティ面での対策を講じることもできます。ダイヤル式のキーレスタイプや入館証をかざして解錠できるタイプであれば、鍵を紛失する心配もありません。コストと利便性との兼ね合いを考慮して、どのようなタイプのロッカーを導入するかを検討しましょう

また、仕事道具や書類を持ち運べるツールの活用もおすすめです。ワゴンやモバイルバッグなど、さまざまなツールがあります。仕事に必要なアイテムが手元にないと業務効率が落ちるため、下記の記事を参考に収納グッズを揃えましょう。

関連記事:フリーアドレスオフィスで私物を上手に管理する方法&収納グッズを紹介!

文具や備品は一括管理する

文房具や消耗品は、会社側で一括管理できないか検討してみましょう。フリーアドレス導入により共有デスクに変更すると、仕事に使う文房具や事務用品、工具などを保管する場所が不足しがちです。

オフィスで使用する備品を集中管理すれば、個人の手持ちが減って、スムーズな私物管理が実現します。また、個別に購入することがなくなり、結果的に購買コストの削減にもつながるでしょう。

グループアドレスや固定席も検討する

全社的にフリーアドレスを導入するのではなく、向き不向きをふまえてグループアドレスや固定席も検討しましょう。グループアドレスとは、部署やチーム用のエリア内でフリーアドレスを採用する方法です。自由席を取り入れつつ、部署内のスムーズな連携や円滑なコミュニケーションを維持できます。

また、経理部門や管理部門など機密情報を扱う部署は書類管理が多く、パソコンやファイルを毎日持ち運ぶフリーアドレスは現実的とはいえません。加えて、来客対応やコールセンターのように固定電話を使用する職種や、ハイスペックなデスクトップパソコンを使用する職種では、フリーアドレスを導入すると業務が成り立たなくなる可能性があります。

段階的に導入する

フリーアドレスをいきなり全社的に導入すると混乱を招くおそれがあります。社内の混乱を回避するために、段階的に導入することが重要です。具体的には、一部の部署やグループで「パイロットオフィス」を導入する方法があります。

パイロットオフィスとは、特定の部門などにおいて、試験的に新しい働き方を導入する取り組みのことです。社員の意見を反映しつつ、試験的に導入していくことで、社員のニーズを取り入れやすくなります結果として、社員一人ひとりが納得感を持って業務に取り組めるようになるでしょう。

また、段階的に導入していくことで早期に問題点の特定と対応が可能になり、再設計コストの抑制にもつながります。

オフィス構築専門の業者に依頼する

フリーアドレスを導入してから運用に至るまで、フリーアドレスに関するノウハウを持つ専門の業者に依頼することで、過去の経験から得たノウハウを活用できます。結果的に、失敗を防げるだけでなく、高い成果を期待できるでしょう。また、備品やオフィス家具の手配などにかかる社内の負担を最小限に抑えられるメリットもあります。

そもそも、フリーアドレス化を進めるためには、オフィスの現状をきちんと把握し、適切に課題を設定する必要があります。そして、ニーズを考慮したうえでレイアウトを考案し、必要な備品を手配する必要があり、そのプロセスには専門的な知見が必要です。信頼できる業者のサポートを得ながら、効率的に導入していくことをおすすめします。

フリーアドレスオフィスに関する資料

フリーアドレスオフィスのメリットとデメリットをダウンロードできる資料にまとめました。運用のヒントやABW(Activity Based Working)についても紹介しています。ぜひご活用ください。

フリーアドレスを導入したオフィスデザイン事例

効果的にフリーアドレスを導入するためには、他社の事例を参考にして、自社の場合だとどのようなオフィスデザインが考えられるか、イメージを持っておくことが重要です。

ここでは、フリーアドレスを導入したオフィスデザインの事例を紹介します。

株式会社オークファン

アフターコロナにおけるオフィス規模適正化を目的として、移転に伴いフリーアドレスを導入した事例です。同社には、出社とテレワークを両立させたハイブリッドワークにより、社内コミュニケーションを活性化させたいといった課題がありました。課題を克服するため、面積を全オフィスの50%とし、デザインと機能性を工夫して社員の満足度を高めるように設計しています。

コンセプトは、朝の爽やかなカフェを意味する「Re-Café terrace」で、自然の要素とカフェ空間が馴染むレイアウトを実現しています。また、コーポレートカラーであるグリーンを活かした、開放的な雰囲気を味わえるデザインが特徴です。

オフィスの中心には、オープンミーティングエリアとパントリーカウンターを設けています。窓際には、仕事に集中できるスペースやWeb会議ブースを設置しており、仕事に合わせた働き方を実現できることが魅力です。フリーアドレス導入により、課題であったコミュニケーションを増加させることができました。

事例の詳細はこちら:株式会社オークファン

Vialtoパートナーズ税理士法人/Vialtoパートナーズ行政書士法人

働き方のアップデートとともに、“Vialtoらしさ”を感じられるオフィス構築を目的としたオフィス移転の事例です。交流・出会いを加速させられるブランディングオフィスを目指し、ABWを導入しました。

オフィスを「Community(人が集い活気あふれるエリア)」「Co-creation(部門を超えた連携を促すエリア)」「Drive(個人の生産性を高めるエリア)」の3エリアに分け、各エリアをシームレスにつないでいます。個人とチームの両方で生産性を高められるレイアウトが特徴です。

随所にグリーンとコーポレートカラーを取り入れ、ブランドを感じられるオフィスデザインに仕上げました。外資系企業でありながら、ミーティングスペースには日本らしさを感じる松竹梅をプリントしたクロスや和紙のアートを施しています。

事例の詳細はこちら:Vialtoパートナーズ税理士法人/Vialtoパートナーズ行政書士法人

インフォ・ラウンジ株式会社

社員間だけでなく、地元企業とのつながりも重視し、交流やイノベーションの起点となることを目指した移転プロジェクトの事例です。オフィス中央には、コミュニケーションの起点となるキッチンを設置しているユニークなレイアウトとなっています。

フリーアドレスを導入したワークスペースでは、広範囲にホワイトボードを設置し、イノベーションと創造を促進させる環境を実現しました。また、採光を取り入れたリフレッシュエリアのほか、VRルームを設けています。

オフィスを構える横浜の「海」とコーポレートカラーの「ブルー」から連想し、地中海に浮かぶギリシャのサントリーニ島を再現したデザインが特徴です。

事例の詳細はこちら:インフォ・ラウンジ株式会社

オークラ輸送機株式会社

「境界を広げて、次の100年を見に行こう。」をコンセプトに掲げ、役職に関わらず社員の意見を大切にする文化を体現するために、フリーアドレス運用に切り替えた事例です。

このプロジェクトを実施するにあたり、全社員への意識調査や経営層・役職者へのインタビュー、ワークショップを実施して、現状課題をデータ化しています。また、全社員がフリーアドレス化に納得感を持てるように、チェンジマネジメント(意識改革プログラム)を実施し、58%の書類を削減するペーパーレス化にも取り組みました。

「ONE(Okura Natural Enjoy)」をデザインのコンセプトとして、同社の歴史や伝統を感じられるような、落ち着いた印象に仕上げています。

事例の詳細はこちら:オークラ輸送機株式会社

キャタピラージャパン合同会社

多様な働き方を実現するため、出社することやコミュニケーションに価値を感じられる環境を目指して、オフィスの改装を実施した事例です。テレワークを併用していることから、出社の日には、自由に働く場所を選べるように用途ごとに複数のエリアをつくりました

リフレッシュスペース・ワークスペース・集中スペースと、エリアごとに家具の色味を変えるなどして、メリハリのあるデザインに仕上げています。エントランスの壁面や造作カウンターは、重機をイメージしたクールなデザインが特徴です。窓際にはリフレッシュスペースを設け、コンセプトカラーであるイエローを基調とした明るく開放的な雰囲気を演出しています。

事例の詳細はこちら:キャタピラージャパン合同会社

まとめ

本記事ではフリーアドレスを効果的に導入するために、メリットやデメリット、導入を成功させるポイントなどを解説しました。

フリーアドレスの導入には、社員間のコミュニケーションを活性化させ、パフォーマンスを高められるといったメリットがある一方で、いくつか注意点もあります。

段階的に進め、きちんと社員に浸透させるプロセスが大切です。運用後も、定期的な見直しを実施して、改善していくことが求められますそして、導入のプロセスには専門的な知見が必要であるため、専門業者に依頼して社員の負担を軽減することも欠かせません。

ヴィスは、空間づくりにおける知見を用いて、オフィスづくりにとどまらず、企業のニーズに合わせて「はたらく」を包括的に考慮したワークデザインを提供しています。ワークデザイン、オフィスデザイン、オフィス移転・改装・設計についてのお悩みは、お気軽にお問い合わせください。